【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

[今国会の見所]長妻昭・田村憲久厚労相「生活者・改革の党を見せる」岡田・タムゲン代理戦争だ

2013年02月08日 20時26分40秒 | 第183通常国会(2013年1~6月)附則・附帯決議

 さて、今週2月3日週は補正予算での衆・予算委での基本的質疑で各会派の質問が一巡。民主党理事が1名になってしまった光景になじめません。が、質問時間を野党に割り振る理事会決定で、民主党6名、日本維新の会6名が登場。みんなの党2名、日本共産党、生活の党という審議順にも徐々に慣れ始めました。社民党は委員席を失い質問に立てず55年体制が完全に終焉。私は解散後、議員会館をのぞけば、いまだに衆議院に行っていませんが、そのうち、こころの傷もいえてくるでしょう。

 岡田克也さんが久しぶりに「降り番」となりましたので、岡田内閣の官房長官候補を探しているわけですが、やはり6年前の「年金国会」、5年前の「ガソリン国会」の功労者、王子、長妻昭・予算委筆頭理事はたいしたものだと感じます。そして、第1次野党期の衆議院厚生労働委員会で、長妻質問を職権で議事録から削除した委員長が茂木敏充・経産大臣、理事が田村憲久現厚労相、大村秀章現・愛知県知事のtrioでした。この2人が大臣と言うことで、意趣返しに期待したいところです。政治とは情熱と判断力。情熱がなければ仕事ができません。意趣返しを大人げないという人は一生サラリーマンで食ってろという感じです。

 長妻昭さんは今国会最初の予算委員会となった7日の質疑で、「この国会では、民主党のめざす社会と安倍内閣のめざす社会を明らかにしていく」との論陣を立てました。民主党は「生活者の党」であり、そのために右手で財源をぶんどる「改革者の党」ですが、長妻さんは「自民党政権は生活保護の生活扶助を8月から6・5%、3年間下げ続けることを決定しました」とし、「生活保護の生活扶助を下げたら、国民生活の最低限のラインが下がり、生活保護者ではない低所得者に影響が出る」としました。

 ここで、厚生労働省ホームページをごらんください。



 このように、生活保護には「生活扶助」のほかに住宅扶助、教育扶助、医療扶助、介護扶助、出産扶助、生業扶助、葬祭扶助があります。このうち、生活扶助を6・5%カットするのが自民党政権です。ここで、ギモンなのは、総予算額がより多い医療扶助をカットして、一定金額内は生活扶助からも自己負担してもらうようにするシステムもあり得ると私は思いますが、このお金は、行政から病院に直接入ります。ひょっとして、自民党政権は日本医師会に気兼ねして、医療扶助ではなく生活扶助にてをかけようとしているのではないでしょうか。

 長妻質問に戻ると、「この質問に先立ち、厚労省に聞いたら、生活保護の生活扶助を引き下げると30以上の制度に影響がある」としたとして、長妻さんが野党、田村さんが理事時代に舛添厚労相時代に議論した「改正最低賃金法9条」でも生活保護との整合性を図ることになっているとしました。これに対して、田村厚労相は「最賃(最低賃金)が早く追いついて欲しい」と、アベノミクスによる景気浮揚で、47都道府県の最低賃金が上がってほしいと答弁。もともと厚労族の安倍晋三首相(自民党総裁)が「最低賃金法は私の祖父、岸信介内閣で成立し、最賃が平均10円以上あがったのは、過去に第1次安倍内閣だけだ」と答弁をひきとり、場内をわかせました。

 ここで、清和会首相に負けたくない経世会田村大臣は「まずですね、御党(おんとう、民主党)も自民党も生活保護が高いのではないかということで、御党も事業仕分けの対象にしていたでしょう」とすると、長妻さんは「明確な答弁がない」とばっさり。そして、長妻さんは「低所得者対策と生活保護は違う。もちろん生活保護の不正受給は犯罪であり、私たちも徹底して(不正受給の摘発・排除を)やっていく。しかし、不正受給で一番心を痛めているのは、受給者だ。生活保護は最後のセーフティーネットであり、ここにほころびが生じると、受給者には死が待っている。生活保護は社会保障の中核であり、国家の存立にかかわる」とたたみかけました。

 そして、「母子家庭と生活保護母子家庭」の比較のパネルを出しました。このなかで「疾病率」が大幅に生活保護母子家庭の方が著しく高いことを明示し、「生活保護の世帯と低所得者対策の違いを比較してもってていねいに検証して掘り下げていく」と予告しました。おそらく、長妻さんは次回以降、私が示した「医療扶助」にも切り込んでいくのではないかと期待しています。



 長妻さんの低所得者対策は、自らがかかわった社会保障と税の一体改革に関する3党合意(2012年6月15日)を具体化する道です。5月中旬の衆議院社会保障と税の一体改革に関する特別委員会で、はじめから経世会代表として保育所利権(厚労省)の用心棒として委員をした自民党・田村さんと、はじめは委員でなかったのに、突然、3党協議に登場して、いいところを取った岡田グループの専務取締役、長妻さん。とはいえ、長妻さんも、田村さんも、真夏の参議院の第1委員会室で、岡田克也副総理・社会保障と税の一体改革担当大臣とおなじ側の席で答弁した仲です。

 その岡田さんは、昨年6月7日の特別委員会で、田村さんをこう諭しました。「結局、田村さんは若いですから期待しておられる有権者の方も多いと思うんですが、あなたの今の発言というのは、また与党になったときに言われてしまいますよ。だから、お互い、そこはやはり踏まえて議論すべきだということを私は申し上げているわけであります」。なぜか岡田さんからしかられた田村さん。これは因縁があり、元々田村さんは三重県経済界のドンである「日本土建(にっぽんどけん)」(本社津市)が家業。政治家としては3代目で、初代の初当選以来、当選し続けている(第45回政権交代選挙では小選挙区落選比例復活)名門。一方、岡田さんは政治家としては初代だし、岡田屋(イオン)は四日市。三重県内においては、田村家が岡田家よりも政界、財界ともに名門となります。また、先代のタムゲンこと田村元(たむら・はじめ)元衆議院議長も含めて、自民党内で経世会(中間グループ)に所属。岡田さんも1期生のときから経世会(田中角栄・金丸信・小沢一郎系)でした。その後、岡田さんが新生党に飛び出し、中選挙区・小選挙区を通じて、一度も一戦を交えたことはありませんが、田村さんには岡田さんへの「劣等感」があったのでしょう。昨年の社会保障と税の一体改革での国会論戦では、田村質問に対して「何であの人あんなにいじわるなの!?」と四日市出身の岡田筋まで驚くしまつとなりましたが、田村さんも「総合子ども園法案」を廃案にした「改訂認定子ども園法」(就学前の子どもの教育、保育に関する法律、子ども子育て支援法、幼保一体化法)の発議者として汗をかいてくれました。

 東京7区勝ち上がりの長妻さんが元世田谷警察署長の父親譲りの正義感で、突っ走る姿を応援するし、しっかりと見守っていこうと考えます。タムゲンも元気だと聞いたことがあります。すばらしい後ろ盾のいる2人。長妻・田村戦争は、岡田・タムゲンの代理戦争です。

 第183通常国会は精緻な世界での議論の応戦となります。政治の世界のセオリーならば、最終的には情熱がある人が勝ちます。政治とは、理想的かつ割に合わない世界です。だから、長妻さんが勝つとは思いますが、7月21日の第23回参院選まで何があるか分かりません。目が離せません。経世会の人材発掘術のすごさを感じながらも、巨船を飛び出した20年前の若さと勇気に、いささかの曇りがないかどうか、日々、鏡の中の自分をチェックしたい。 

 私はこのエントリーを書くに当たり、早朝、24時間営業のマクドナルドを見てきました。



 ことしの朝日新聞は正月から「マクド難民」特集が反響を呼びました。24時間営業のマクドだと、喫煙ルームの方が暖かいので、たばこを吸わないのに、あそこで丸まっているのですね。もちろん、電源がある机でパソコンを叩く学生、腹ごしらえして仕事に向かう女性会社員もいました。これで何が分かるんだと言われれば何も分からない。でも、日本の国益のために向かって生きる生き方を一生していきたい。

 長妻昭の語る「国家」とは。さあいよいよ、第183通常国会の戦いがスタートしました。

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