[英国の事例]のエントリーでは、「ロンドン時間(グリニッジ標準時)」「日本時間」「英紙タイムズに載った付け日」に関して、鈍感に書いていこうと考えます。記者、研究者の方は、ご自身でご確認ください。
このエントリー記事で引用する写真は、すべて、英紙タイムズ(The Times)の(2017)年の紙面(学校法人早稲田大学所有)を個人的な研究用にカラーコピーしたものを、その一部だけ、筆者・宮崎信行がカメラで撮影したものです。
テリーザ・メイ首相(保守党)の、就任わずか9か月(投票日基準)の抜き打ち解散となった、2017年総選挙2017年6月8日(木)施行=日本時間9日午前6時からBBC特番=。
ここに来て、保守党が急失速していて、英紙タイムズは2017年5月31日付1面トップで、650議席(=過半数326)のうち、「保守党(現有330の過半数)が310、労働党(現有229)257、スコットランド民族独立党(現有)50」としています。「その他の6党」(現有33)は私の計算では同じく「33」となっています。調査会社は「ユーガブ」です。ですから保守党が過半数を割り、2年ぶりに連立を強いられないのではないかとの見立てです。
さて、テロが相次いでいます。
まず解散前。3月22日の刃傷沙汰は、トビアス・エルウッド議員(与党・保守党当選3回)の勇敢さもあり、おそらく世論の動揺は一定に収まったのだろうと思います。
その後、2010年に内相、2016年に首相(保守党首)になった、メイさんが、4月18日(火)朝11時に官邸前で記者会見して解散を発表。動議を庶民院に提出。
英紙タイムズも前日付はトランプ大統領が一面だったので、まるっきり抜き打ちだったらしく、自信満々のメイ首相を報じました。なお、「2017年総選挙」のワッペンがすでにできていたのは、日英問わず、新聞マスコミのご愛嬌。
4月19日(水)、庶民院が2010年議会任期固定法にもとづく早期解散の動議を採決し「522対13」という圧倒的多数で可決。5月6日(土)解散。
ところが、5月22日(月)に悲劇。マンチェスターでテロがありました。8歳の女の子も死亡したことは日本でも報じられましたが、英国内で、タイムズ紙は、1面トップに大々的な写真で悲劇を報じました。世論のショックはより大きかったんだろうと思います。ここで、2010年から2016年まで内相だった、メイ首相の責任を問う声が上がったようです。翌日は、諜報機関「MI6は知っていたのに防げなかった」との記事。内務省とMI6の関係を私は知りませんが、メイさんはいずれにせよ、首相ですから、無関係とは言えないでしょう。
そして、もちろん写真はありませんが、ついにきょう、現地の2017年6月3日(土)夜には、ロンドン橋周辺でテロがあり、亡くなりました。
テロの犠牲者とご遺族に哀悼の意を表します。
ここから話が変わります。テリーザ・メイさんの「2度目の試練」とは。
メイさんが初めて、英紙タイムズに載ったのは、1997年4月22日付の12ページのようです。タイトルは「保守党女性候補が投票日をまもなく迎える」という記事で、その冒頭に保守党新人のメイ候補(40歳)が、「保守党女性新人では数少ないテッパン(Safe Seat)だ」と報じられています。これは、いろいろな著作で指摘されているように、保守党は「かわいい子には旅を、させない」方式で、優秀と目される新人ほど、確実に議席を取れそうな金城湯池から出す。現首相(現党首)もまさに、たった20年前にそうやって、なんなく初当選をしたということです。
ただ、「タイムズ・庶民院ガイド」の各版をみると、1997年総選挙で、メイさんは、メイデンヘッド選挙区で、先代の得票率61%から大きく落とします。メイさんの獲得票は2万5344票で、得票率は49%。労働党が18年ぶりに政権交代し、トニー・ブレア労働党首(影の首相)がリアル首相になります。すなわちメイさんは、思いのほか初当選と同時に野党議員になりました。
その次の、2001年総選挙では、メイさんは覇気の無い顔写真で、1・9万票、45・0%とさらに成績を落としながら、2選。
2005年総選挙では、2・3万票と盛り返し、50・8%。
影の厚労相で迎えた、2010年総選挙では、3・1万票で、59・5%と圧勝。初めての与党議員として、わずか当選4回ながら、内相という、驚くべき高位で初入閣しました。
2015年総選挙では、メイデンヘッド選挙区で、3・5万票、65・8%。当選5回。このときの、BBC特番は録画があるので、調べればわかりますが、いずれにせよ、開票特番開始1時間程度で、スタジオに登場して、政局をつくる側で、与党・保守党は連立解消で、単独での内閣をつくることになりました。メイ内相は続投。
そして、2017年は、現役首相として、6選は間違いないですが、首相を続けられるかの窮地に立たされつつあります。ちなみに、保守党が330議席から、326議席未満(325議席以下)になっても、組閣の権利は、現役首相にあります。ただ、ジェレミー・コービン党首(影の首相)率いる労働党は、前回から、スコットランド民族独立党から、仮に勝った場合の連立をもちかけられていました。これは小選挙区の地盤が重なるため、労働党にとっては、弱り目に祟り目の提案となってしまい、影の蔵相、影の外相が落選するという、同国には珍しい事態となりました。
ですから、保守党が300、労働党が250という「宙ぶらりん議会(ハングパーラメント)」になると、首相が組閣を断念した場合は、労働党・スコットランド独立党連立のコービン内閣ということもありうるわけです。投票日が近くなり、「コービン影の首相の原発政策は非現実的だ」という批判も出てきました。
選挙ですから、まったく分かりません。
私が言いたいのは、ただ一つ、メイさんをテッパン選挙区で育てた、保守党はすごい、下野したけど、その13年後に政権交代につなげる底力になっている。長々と書いてきましたが、それだけが言いたいのです。
このエントリー記事は、英国議会インターネット審議中継、英紙タイムズ、タイムズ社の庶民院議員ガイドブックを元にして作成しています。
最新の画像[もっと見る]
- 保守の野田佳彦も「中央線リベラル」からスタート「八王子駅北口」で立憲民主党代表第一声、皮肉な言い方だが「無所属前職」の地元は異例、石破・地方創生解散ながら議席大幅増の首都圏決戦の気配 4時間前
- 【法案】「袴田さんの事案」で無罪が完全確定「刑訴法再審編改正」に向けて法務省に突き上げ強まる「保護司法」の見直しに加えて「刑事訴訟デジタル法案」「区分所有法改正案」いまだ国会提出ならず 1日前
- 連綿と続く我が人生の記録としてそれからの大縄跳びの内側から)港北区全域の神奈川7区で大野拓夫さん出馬へ、無所属・大野トモイ市議の夫 1日前
- 参議院岩手補選スタート、小川淳也・立憲幹事長「安保法制きっかけ野党一本化でお譲したのは地元・香川」とし選挙後も野党第一党中心だとお願いベース 1日前
- 石破首相「小選挙区ごとに政策活動費を使う」との失言にも蓋をして「安倍晋三衆議院議員暗殺」の第49期衆議院は解散される 2日前
- 「会期の延長の件」を申し入れ、野党各党国対委員長 解散日程は崩れず 3日前
- 【岡田克也】石破茂首相による衆議院解散当日朝も、ビラ配りに立つも、横なぐりの雨、石破政権の先行きか、それとも 3日前
- 災害ロシアンルーレット半島で、自民・安倍派の石川・宮本周司さん「予備費が効果的だった」に地方創生の石破首相「私ども山陰と同様に寒くて雪が降る季節」と党内距離感で解散へ 3日前
- 新進党のように石破自民党は比例重複しない方針となり、越智隆雄さんもりかけ声あげず引退、丸川珠代・大塚拓夫妻もピンチ 4日前
- 新進党のように石破自民党は比例重複しない方針となり、越智隆雄さんもりかけ声あげず引退、丸川珠代・大塚拓夫妻もピンチ 4日前
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます