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ニュースサイト宮崎信行の国会傍聴記

元日本経済新聞記者の政治ジャーナリスト宮崎信行が衆参両院と提出予定法案を網羅して書いています。

友愛会創立100周年記念式典・記念祝賀会 厚労相「理念引き継がれている」連合会長「労働運動の原点」

2012年08月01日 22時19分37秒 | その他の選挙

[写真]友愛会創立100周年記念祝賀会にそろった古賀伸明連合会長、小宮山洋子厚生労働大臣、津田弥太郎・厚生労働大臣政務官(民主党参院議員、JAM)、田中慶秋・民社協会長(民主党衆院議員、JAM)ら、2012年8月1日、東京プリンスホテル、筆者撮影。

 友愛会創立100周年を祝って、記念式典が友愛会館(東京・芝)で、記念祝賀会が東京プリンスホテルで2012年8月1日(水)、開かれました。友愛会館内8階では午前10時、友愛労働歴史館(入場無料、平日午前10時から午後5時)が再オープンし、開館記念特別展「友愛会から連合へ 日本労働運動の100年」(来年2月28日まで)が幕を開けました。

 記念祝賀会には、来賓として小宮山洋子・厚労相、古賀伸明・連合会長や、民社協会の田中慶秋会長ら所属国会議員らがかけつけ、500人以上が出席し、にぎにぎしくも和気藹々と開かれました。

 小宮山厚労相は「少し遅れてしまったが、実は、古賀会長も含めて官邸で(野田佳彦総理も交えて)政府・連合トップ会談を開いていた」と会場をわかせ、「友愛会の理念が脈々と連合に受け継がれているのが、友愛会が労働組合の発祥だと言われているのゆえんだと思います」と語りました。そのうえで、「一体改革法案で、子ども・子育て、年金、医療にかかりきりで、国会でもっと労働分野の審議をしなければならないとおしかりを受けています。今こそ働き方についての議論を政府や国会はもっと努力しないといけない」と気を引き締めました。 
[写真]祝辞を述べる小宮山洋子厚労相(民主党衆院議員)、筆者撮影。

  古賀会長の祝辞は注目していました。というのは、友愛会の系譜を次いでいる「旧同盟」ではなく、連合の母体となった「中立労連」である電機連合出身が古賀さんですので、友愛会100周年をどう位置づけているのか。連合会長は祝辞で「鈴木文治さんが友愛会を創設されたことは、まさに日本の労働運動のスタート、原点になったと言っても過言ではない」と述べ、友愛会創設100周年を事実上の日本の労働運動100周年であると認識した発言をしました。そのうえで、友愛会100周年の現在のナショナルセンターを預かる身として、「きょうこのような機会にお招きいただいたことで、身を引き締め、先輩たちのご労苦に報いたい」と述べました。
 
[写真]祝辞を述べる連合の古賀伸明会長、筆者撮影。

 主催者である「友愛会創立を記念する会」の会長で元参議院副議長の今泉昭さんは「今は格差是正の問題など労働運動が直面する課題はその時勢により変化する」ので、友愛会の精神が大事だとし、「自由で民主的な労働運動を新しい時代に即しながら発展させていきたい」と語りました。

[写真]主催者挨拶をする今泉昭・友愛会創立100周年を記念する会会長(元参議院副議長)、筆者撮影。

 ◇

 これに先立ち、友愛会館会議室で「友愛会創立100周年記念式典」が開かれました。私もきょう初めて知ったのですが、友愛会館は青年クリスチャン鈴木文治が友愛会を創設したユニテリアン教会「惟一館」(ゆいいつかん)に100年間建ち続けているそうです。ここでは今泉会長が「友愛会以来の自由にして民主的な労働運動に貢献した人」を表彰。代表して答礼を述べた天池清次(旧)同盟(元)会長は「いつも渡す方ばかりでしたが、もらうのは初めて。だけどやっぱりうれしいです。昔は労働運動はけんかばかりでしたが、民主主義労働運動が育ってきたのは、みなさんの賜物です。これからも民主主義労働運動を盛り上げていこうではありませんか」と話すと大きな拍手に包まれました。

 
[写真]友愛会創立100周年記念式典で挨拶する服部光朗・財団法人日本労働会館理事長、筆者撮影。

 主催者副会長で、友愛会館のビルを運営する財団法人の理事長をかねる服部光朗さんは「4月1日に竣工した友愛会館は5代目になります。今後は芝の地、三田の地を、より幅広い労働運動の拠点にしていきたい」として、連合本部が入る連合会館(6月に総評会館から改称)だけでなく、友愛会館を旧同盟の枠を越えて活用していきたい意向を示しました。

 この場では「友愛会創立100周年宣言」が出席者全員の拍手で採択されました。なかなかいい文章です。抜粋引用します。

 [抜粋引用はじめ]

 友愛会創立100周年宣言

 本日、友愛会創立100周年を迎えた。友愛会は連合へと繋がる日本労働運動の源流であり、大正元年8月1日に創立されている。(略)

 鈴木文治らにより東京・芝のユニテリアン教会・惟一館で誕生した友愛会は「労働者の人格承認」を掲げ、労働組合非合法の時代に多くの労働者の支持を得て組織を拡大していった。大正と改元直後の友愛会創立は、後の大正デモクラシーの先駆となった。(略)

 いま世界はグローバル経済の下、リーマンショックや欧州危機による経済不況、雇用危機、非正規労働者の増大などに直面し、労働運動は厳しい状況下にある。友愛会にさかのぼって労働運動を見詰める視点が求められている。(略)

 100年前、友愛会は(略)団結禁止の時代に友愛組合、共済組合としてスタートし、次第に組織を強化・拡大していくことは、先進資本主義国労働組合の普通の姿であった。(略)

 いま創立100年の節目の年を迎え、友愛会以来の自由にして民主的な労働運動の継承と発展を期すとき、大切なことは先達者の歩んだ道をそのまま歩むのではなく、彼らのめざしたものをめざすことである。友愛会のメッセージは、現在の労働運動にとってもめざすべき目標・理念なのである。

 2012年8月1 友愛会創立を記念する会

[抜粋引用おわり]

 私はきょう1日の取材活動の中で、友愛会綱領にとても興味を持ちました。初めて読んだのですが、100年経っても十分通用するからです。

[全文引用はじめ、旧字体とカナ使いを改めます]

 友愛会綱領
 1、我等は互いに親睦し、一致協力して、相愛扶助の目的を貫徹せんことを期す。
 2、我等は公共の理想に従い、識見の開発、徳性の涵養、技術の進歩を図らんことを期す。
 3、我等は協同の力に依り、着実なる方法を以て、我等の地位の改善を図らんことを期す。

[全文引用おわり]

 ということで、100年経っても通用するところにやはり労組非合法時代に、クリスチャンが教会内の友誼的・共済的な団体から入ったことで、より「普遍性」というものがあるんでしょう。 
[写真]東京プリンスホテルの祝賀会でDVD「友愛会から連合へ」の上映を鑑賞する出席者、筆者撮影。

 式典・祝賀会に先立ち、午前10時に再オープンした友愛労働歴史館に行ってみました。まったく同時刻に野党「国民の生活が第一」の党本部開きがあり、報道されているようですが、現在の与党を理解する、とくに参議院を理解するのには、こちらの方がより有益な情報です。すべての民主党議員や新聞記者はぜひ、友愛労働歴史館に行くべきです。夏休みの自由研究にもいいかもよ。


 

 入って、ビックリするのは、いきなり思想家・慶應義塾創設者の福澤諭吉先生の写真。なんで、諭吉さん?と思うのですが、他にも労働運動と縁がない、資本家に近いように思える人がいっぱい展示にとうじょうします。DVD「友愛会から連合へ」は友愛労働歴史館で上映したり、広く一般に販売したりしているそうですが、このなかで、「鈴木文治が東大法学部を卒業しているので社会的信用があった」とのナレーションがありました。福澤に限らず、日本資本主義の父である渋沢栄一や、日本YMACAの創立者であるマクドナルド女史をはじめ、そうそうたる人が鈴木文治を支援し、労組非合法だった時代に友愛会が友愛会館を持てるよう協力した人たちはそうそうたる顔ぶれ。そういった点もこの歴史館の展示やDVDで知っていただきたいと思います。

 
[写真]連合の山岸章初代会長や、連合結成のさきがけとなった全民労協の竪山利文会長の写真。

 ご覧のように、旧中立労連系の竪山さんや、旧総評系全電通の山岸章さんらの写真もあります。

 友愛労働歴史館の間宮悠紀雄事務局長は「どうしても旧同盟の建物の中にあるので、旧同盟系の史料館だと思われてしまうけれども、ぜひすべての労働運動のみなさんに見てもらいたい」「福澤諭吉から始まるのは旧同盟系の人にも驚かれます」とのことです。時間がなくて見られませんでしたが、書庫もかなり充実しているようです。
 
 友愛会館前にできた100周年記念モニュメントである二科会会員の彫刻家、長谷川登(はせがわ・のぼる)さんという方が作製した「暁」(ぎょう)も注目です。

[写真]友愛会館(東京・芝)に新しくできたモニュメント「暁」(ぎょう)、長谷川登さん作、筆者撮影。

 さて、さきほどの記念祝賀会での今泉さんの話の中でこんな話がありました。

 「今労働運動は大変大きな問題をかかえています。若い労働者が組織の大半をしめていた時代は、企業の中で中心的な役割をしている人が労組の委員長や書記長として、嫁探し、家探しから面倒を見ていました。今、労働組合の平均年齢が40代、50代というところもでてきました。時代が大きく変わり、電子化、機械化が進む中で、かつての世話人である高齢者(中年齢者)が自信を失っています」。

 記念祝賀会から帰宅後、朝日新聞の夕刊をみたら、昨日水泳200メートルバタフライで2大会連続で銅メダルを獲った松田丈志選手(28歳、コスモス薬品所属)の話が載っています。松田選手は銅メダリストでありながら、2009年のリーマン・ショックの影響で、その年末に契約を打ち切られたそうです。そして、オリンピックの新聞記事を添えて、東証1部上場企業を中心に600社以上に支援を求める手紙を送ったそうです。面接まで行っても「競泳は宣伝効果が薄い」と断られたこともあり、一時は引退も考えたそうです。翌年春に宮崎県の12企業がスポンサー会をつくる話を進めたところ、現在所属するコスモス薬品が支援を決めたそうです。この話をしった12社会のまとめ役は礼儀がないと激怒したそうですが、松田選手の知らないところで「水泳しか目に入ってないんだから仕方ない」と口添えをしてくれ、両者の支援でロンドン五輪に。この口添えしてくれた人の名前は分かりませんが、今泉さんが言う、昔の労組の委員長や書記長というのはこんな感じの人が多かったのでしょう。

 松田選手は社会への恩返しとして、地元にスイミングクラブをつくる夢を語っているそうです。ところで、北島康介選手は小さい頃からスイミングクラブに通っていましたが、日本代表の平井コーチはこのスイミングクラブのコーチです。前大会出場を逃してテレビで五輪を見た選手も、平井コーチにならって、今回2大会ぶりの出場でメダルを獲得しました。私が知っている限り、北島選手は、実家にしろ、幼稚園、小学校にしろ、我が国の中でも極めて恵まれた環境で育った人です。そのスイミングクラブには私も小学生のころ通っていたので、今でも泳ぎは得意です。しかし、私や北島君のような人間はまれです。

 まさに産業革命の地、ロンドンでオリンピックが開催中です。同じ場所で3度目を開催するのはロンドンが初めてで、それこそ産業革命の遺産です。そしてそれに参加する機会は、現代では広く開かれている。オリンピック選手団の壮行会を開いた野田佳彦総理大臣も自衛官の息子で、無産階級者です。そうはいっても、努力すれば誰でもメダリストや総理になれるわけではありません。

 そのためには友愛会綱領のように、「公共の理想に従い、識見の開発、徳性の涵養、技術の進歩」を図り、「着実な方法をもって、地位の改善」を図る。見て見ぬふりをすることが出世や栄達の道ではありません。地位の改善のためには、ハッキリと物を言い、前に出る。こわいことはなにもありません。友愛会綱領の1番「互いに親睦し、一致協力して、相愛扶助の目的を貫徹」するという思想は人間が本来的に持っているからです。時代が大きく変わり自信を失っている人も前に出ましょう。あなたの背中をみている仲間は必ずいます。

 働く者の世紀(100年)の号砲が、きょう高らかに鳴りました。

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