[写真]文部科学省(左)と総務省(右)、今月2019年1月、宮崎信行撮影。
安倍晋三首相(自民党総裁)は
「大学等における修学の支援に関する法律案」(198閣法 号)
を第198回通常国会に提出することをけさのNHK日曜討論で明言しました。
といっても、先月12月29日付の「子ども子育て支援法改正案提出」の記事の基にしたペーパーに書いてあったのに、私がうっかり見落としていましたので、今回記事化しました。
3年前から予算措置として実現していた「給付型奨学金」を法的に裏付けるとともに、消費税率10%の見返りとしての「無償化」を実現化するための政治的な案件となります。
法律(案)の施行は、来年新元号2年2020年4月1日(水)となります。
関係閣僚会議合意の上記ペーパーによると、給付型奨学金については、国立大学に通う「自宅生」に年35万円、「自宅外生」には年80万円。「学業に専念するために必要な学生生活費」として、支給する(あげる・もらえる)ことになります。私立大学は自宅生が46万円、自宅外生は91万円。この「学生生活費」「自宅外生」は現行法令に無い言葉ですので、法案で定義が書き込まれることになりそうです。
求める声が強かった、授業料・入学費の減免について。大学の理事長・学長らは、国立大学の授業料を年54万円、入学金を28万円まで減免してもいいことにし、国などが補填します。高専(国立高等専門学校)は年23万円になる場合もあります。いざとなれば親がリボ払いで5年分の授業料を調達しても家庭は保てる程度の金額です。私立大学ですと、入学金を年26万円、授業料を年70万円に減免することが可能になります。
対象は住民税非課税世帯ですので、4割の世帯が減免してもらったり、給付型奨学金をもらったりできます。これに本人名義で日本学生支援機構の有利子奨学金を借りたり、親が非課税でも政府系・民間金融機関の教育ローンをある程度は借りられるでしょうから、大学・短大・高専・専門学校入学の経済的な垣根はかなり低くなります。専修学校は対象外のようです。
法律ということになると、十年単位で政策として維持されると考えられます。
第198回通常国会では、「子ども子育て支援法改正案」(198閣法 号)が衆参内閣委員会で、「大学等における修学の支援に関する法律案」(198閣法 号)が衆参文科委員会で審査されることになると思われます。前者が10月施行、後者が翌年4月施行ですが、ほぼ同時期に議論されることになりそうです。担当大臣は両法案とも前年に過去の言行や就任後の発言が野党から問題視されたこともあり、何らかのハプニングで審議がずれ込むことは、なくはありません。
制度について気になる方も多いでしょうから、上述の関係閣僚会議のペーパーのうち、脚注部分を除いた本文を全部コピペしてこのエントリー記事は終わります。
[関係閣僚会議ペーパーから、該当部分のコピペはじめ]
Ⅱ 高等教育無償化の制度の具体化に向けた方針
1.総論
○ 高等教育の無償化については、「新しい経済政策パッケージ」(平成 29 年 12 月8
日閣議決定)及び「経済財政運営と改革の基本方針 2018」(平成 30 年6月 15 日閣議
決定)を踏まえ、以下の方針に沿って具体的な制度設計を行うとともに、法制化に向
けた検討を進める。
(高等教育の無償化の趣旨等)
○ 高等教育は、国民の知の基盤であり、イノベーションを創出し、国の競争力を高め
る原動力でもある。大学改革、アクセスの機会均等、教育研究の質の向上を一体的に
推進し、高等教育の充実を進める必要がある。
最終学歴によって平均賃金に差があり、また、低所得の家庭の子供たちは大学への
進学率が低いという実態がある。
こうしたことを踏まえ、低所得者世帯の者であっても、社会で自立し、活躍するこ
とができる人材を育成する大学等に修学することができるよう、その経済的負担を軽
減することにより、我が国における急速な少子化の進展への対処に寄与するため、真
に支援が必要な低所得者世帯の者に対して、①授業料及び入学金の減免(以下「授業
料等減免」という。)と②給付型奨学金の支給を合わせて措置する。
○ これらの措置を実現するための法律案(「大学等における修学の支援に関する法律
案(仮称)」)を次期通常国会に提出し、大学等における授業料等減免を制度化する
とともに、現在、独立行政法人日本学生支援機構により行われている給付型奨学金を
大幅に拡充する等の措置を講ずる。
2.対象者・対象範囲等
「新しい経済政策パッケージ」及び「経済財政運営と改革の基本方針 2018」を踏ま
え、具体的には、以下のとおりとする。
○ 対象となる学校種は、大学、短期大学、高等専門学校及び専修学校専門課程(専門
学校)とする 22。
○ 対象となる学生は、住民税非課税世帯の学生とし、全体として支援の崖・谷間が生
じないよう、住民税非課税世帯に準ずる世帯の学生についても、住民税非課税世帯の
学生に対する支援措置に準じた支援を段階的に行う。具体的には、年収 300 万円未満
の世帯 23については住民税非課税世帯の学生に対する授業料等減免及び給付型奨学金
の3分の2、年収 300 万円から年収 380 万円未満の世帯 24については3分の1の額の
支援を行い、支援額の段差をなだらかにする。
22 大学の学部、短期大学の学科・認定専攻科、高等専門学校の学科(4年生・5年生)・認定専攻科
の学生、専修学校の専門課程の生徒を対象とする。 23 市町村民税の課税標準額×6%から調整控除及び調整額を差し引いた額の世帯(学生本人を含む。)
の合計が 25,600 円未満となる世帯。年収 300 万円は、両親・本人・中学生の家族4人世帯の場合の
目安であるが、実際には多様な形態の家族があり、基準を満たす世帯年収は家族構成により異なる。 24 注釈 23 の計算額が 51,300 円未満となる世帯。年収 380 万円は、上記世帯の場合の目安。
3.授業料等減免・給付型奨学金の概要
(1)授業料等減免
○ 授業料等減免は、各大学等が、以下の上限額まで授業料及び入学金の減免を実施
し、減免に要する費用について公費から支出する。
①国公立の上限額
(授業料)
大学約 54 万円 短期大学約 39 万円 高等専門学校約 23 万円 専門学校約 17 万円
(入学金)
大学約 28 万円 短期大学約 17 万円 高等専門学校約8万円 専門学校約7万円
②私立の上限額
(授業料)
大学約 70 万円 短期大学約 62 万円 高等専門学校約 70 万円 専門学校約 59 万円
(入学金)
大学約 26 万円 短期大学約 25 万円 高等専門学校約 13 万円 専門学校約 16 万円
(上限額の考え方)
○ 国公立大学等は、入学金・授業料ともに、省令 25で規定されている国立の学校種
ごとの標準額までを減免する。
○ 私立大学等は、入学金については、私立の入学金の平均額までを減免し、授業料
については、国立大学の標準額に、各学校種の私立学校の平均授業料を踏まえた額
と国立大学の標準額との差額の2分の1を加算した額までを減免する。
(2)給付型奨学金
○ 給付型奨学金は、日本学生支援機構が各学生に支給する。具体的な制度設計につ
いては、現行の給付型奨学金の枠組みを基礎としつつ、下記のとおりとする。
(給付額の考え方)
○ 学生が学業に専念するため、学生生活を送るのに必要な学生生活費を賄えるよう
措置を講じる 26。
具体的には、国公立の大学、短期大学及び専門学校の自宅生は年額約 35 万円、自
宅外生は年額約 80 万円とし、私立の大学、短期大学及び専門学校の自宅生には約
46 万円、自宅外生は年額約 91 万円 27とする 28。
4.支援対象者の要件(個人要件)等
(学業・人物に係る要件)
○ 今般の高等教育の無償化の目的は、支援を受けた学生が大学等でしっかり学んだ上
で、社会で自立し、活躍できるようになることであることから、進学前の明確な進路
意識と強い学びの意欲や進学後の十分な学習状況をしっかりと見極めた上で学生に対
して支援を行う。
○ 高等学校在学時の成績だけで否定的な判断をせず、高校等が、レポートの提出や面
談等により本人の学習意欲や進学目的等を確認する。
○ 大学等への進学後は、その学習状況について厳しい要件を課し、これに満たない場
合には支援を打ち切ることとする。
・次のいずれかの場合には、直ちに支援を打ち切る。なお、その態様が著しく不良で
あり、懲戒による退学処分など相応の理由がある場合には支援した額を徴収するこ
とができる。
ⅰ 退学・停学の処分を受けた場合
ⅱ 修業年限で卒業できないことが確定したと大学等が判断した場合
ⅲ 修得単位数が標準の5割以下の場合
ⅳ 出席率が5割以下など学習意欲が著しく低いと大学等が判断した場合
・次のいずれかの場合には、大学等が 「警告」を行い、それを連続で受けた場合には
支援を打ち切る。
ⅰ 修得単位数が標準の6割以下の場合
ⅱ GPA(平均成績)等が下位4分の1の場合
(斟酌すべきやむを得ない事情がある場合の特例措置を検討)
ⅲ 出席率が8割以下など学習意欲が低いと大学等が判断した場合
(その他)
○ 現在の給付型奨学金の取扱いと同様に、以下を要件とする。
・ 日本国籍を有する者、法定特別永住者、永住者又は永住の意思が認められる定住
者等であること。
・ 高等学校等を卒業し、又は高等学校卒業程度認定試験に合格してから2年の間ま
でに大学等に入学を認められ、進学した者であって、過去において高等教育の無償
化のための支援措置を受けたことがないこと。
・ 保有する資産が一定の水準を超えていないこと(申告による。)。
○ 在学中の学生については、直近の住民税の課税標準額や学業等の状況により、支援
対象者の要件を満たすかどうかを判定し、支援措置の対象とする。また、予期できな
い事由により家計が急変し、急変後の所得が課税標準額に反映される前に緊急に支援
の必要がある場合には、急変後の所得の見込みにより、支援対象の要件を満たすと判
断される場合、速やかに支援を開始する。
5.大学等の要件(機関要件)
○ 大学等での勉学が職業に結びつくことにより格差の固定化を防ぎ、支援を受けた学
生が大学等でしっかりと学んだ上で、社会で自立し、活躍できるようになるという、
今般の高等教育の無償化の目的を踏まえ、対象を学問追究と実践的教育のバランスが
取れている大学等とするため、大学等に一定の要件を求める。
① 実務経験のある教員による授業科目が標準単位数(4年制大学の場合、124 単位)
の1割以上、配置されていること。
※ 例えば、オムニバス形式で多様な企業等から講師を招いて指導を行っている、
学外でのインターンシップや実習等を授業として位置付けているなど主として実
践的教育から構成される授業科目を含む。
※ 学問分野の特性等により満たすことができない学部等については、大学等が、
やむを得ない理由や、実践的教育の充実に向けた取組を説明・公表することが必
要。
② 法人の「理事」に産業界等の外部人材を複数任命していること。
③ 授業計画(シラバス)の作成、GPAなどの成績評価の客観的指標の設定、卒業
の認定に関する方針の策定などにより、厳格かつ適正な成績管理を実施・公表して
いること。
④ 法令に則り、貸借対照表、損益計算書その他の財務諸表等の情報や、定員充足状
況や進学・就職の状況などの教育活動に係る情報を開示していること。
(経営に課題のある法人の設置する大学等の取扱い)
○ 教育の質が確保されておらず、大幅な定員割れとなり、経営に問題がある大学等に
ついて、高等教育の負担軽減により、実質的に救済がなされることがないよう、文部
科学省の「学校法人運営調査における経営指導の充実について」(平成 30 年7月 30
日付 30 文科高第 318 号高等教育局長通知)における「経営指導強化指標」を踏まえ、
次のいずれにもあたる場合は対象としないものとする。
・法人の貸借対照表の「運用資産 30-外部負債 31」が直近の決算でマイナス
・法人の事業活動収支計算書の「経常収支差額 32」が直近3カ年の決算で連続マイナ
ス
・直近3カ年において連続して、在籍する学生数が各校の収容定員の8割を割ってい
る場合
なお、専門学校に適用する際の指標については、大学の指標も参考にしつつ設定す
る。
6.財源
(負担割合)
○ 今般の高等教育の無償化については、制度として確立された少子化に対処するため
の施策として、2019 年 10 月に予定される消費税率 10%への引き上げによる財源を活
用する。国負担分については社会保障関係費として内閣府に予算計上し、文部科学省
において執行する。また、地方負担分についてもこの消費税の増収分を活用する。費
用負担の在り方については、地方自治体の負担軽減にも配慮しつつ、国と地方で適切
な役割分担をすることを基本とし、国と地方へ配分される消費税の増収分を活用する
ことにより、必要な地方財源を確保する。
○ 給付型奨学金の支給(学生個人への支給)については、国が全額を負担し、日本学
生支援機構が学生に直接支給する。
○ 授業料等減免(大学等が実施する減免に対する機関補助)については、以下のとお
りとする。
・ 国公立大学等は、設置者である国又は地方公共団体が全額負担し、各学校に交付
する。
・ 私立大学・短期大学・高等専門学校は、所轄庁である国が全額負担し、各学校に
交付する。
・ 私立専門学校は、国と都道府県が1/2ずつ負担し、所轄庁である都道府県が各
学校に交付する。
(事務費等)
○ 国において、無償化制度の円滑な導入・定着を図るため、授業料等減免に係る費用
の交付事務や機関要件の確認事務に係る全国統一的な事務処理に関する具体的な指針
を早期に策定し、地方に提示するとともに、私立専門学校に係る標準的な事務処理体
制を整理し、その体制構築に要する費用を全額国費により制度開始の 2020 年度までの
2年間措置するものとする。
(参考)
設置者の区分・学校の種類 授業料等減免に係る費用の負担者・割合 機関要件の確認者
国立 大学・短大・高専
・専門学校 国(設置者) 全額 国(設置者)
私立 大学・短大・高専 国(所轄庁) 全額 国(所轄庁)
公立 大学・短大・高専
・専門学校
都道府県・市町村
(設置者) 全額 都道府県・市町村
(設置者)
私立 専門学校 国及び都道府県
(所轄庁) 国 1/2、都道府県 1/2 都道府県(所轄庁)
(地方財政計画及び地方交付税の対応)
○ 今般の高等教育の無償化に係る地方負担については、地方財政計画の歳出に全額計
上し、一般財源総額を増額確保した上で、個別団体の地方交付税の算定に当たっても、
地方負担の全額を基準財政需要額に算入するとともに、地方消費税の増収分の全額を
基準財政収入額に算入する。
7.その他
○ 不正により支援を受けたときは、その額の全部又は一部を徴収するほか、その額に
上乗せした額を徴収することができるものとする。
○ 他の学生とのバランスの観点から、無償化の対象となる学生については、第一種奨
学金(無利子)の併給を調整する。
8.実施時期
○ 今般の高等教育の無償化の実施時期については、2020 年4月1日とし、2020 年度の
在学生(実施の際、既に入学している学生も含む。)から対象とする。なお、法施行
に必要な準備行為については、公布の日から実施する。
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