政府は内閣官房が書いた「独立行政法人日本医療研究開発機構法案」いわゆる「日本版NIH法案」を、第186通常国会に提出しています。
アベノミクス3本目の矢「成長戦略」の目玉法案で、アメリカのNIH、「国立衛生研究所」(国立健康研究所)をつくるもの。実現すれば、その経済波及効果は、既存のものも含めて、少なく見積もっても、年間10兆円以上になるだろうと私は考えます。
最も太い3本目の矢といえるでしょう。
ところで、このブログの右上にある検索窓を使って、ブログ内検索をかけると、山中伸弥さんの「iPS」について、合計17本のエントリーで言及しています。ブログ開始まもない2007年11月21日付から。その一方、世間を騒がせている「理化学研究所の小保方晴子研究員のSTAP細胞については当ブログはまったく言及していません。私は発表の時、歓喜しましたが、たまたま国会開会中だったため、言及する機会がありませんでした。相変わらず悪運がついていると感じます。その小保方研究員は、早稲田大学大学院から認定されている博士論文で「NIH」のウェブサイトを20ページ前後丸写しにしたり、雑誌投稿論文に博士論文の画像を説明を変えて切り貼りしたとの疑惑が浮上しています。黒幕がいる可能性も指摘されています。
閑話休題。
日本版NHI法案は、2014年2月12日(水)に国会に提出されました。議案番号は「186閣法22号」(第186常会の内閣提出法案の第22号)となっています。
この法案の第18条には、次のような文面があります。
[法案(PDF)から引用はじめ]
第一八六回
閣第二二号
独立行政法人日本医療研究開発機構法案
(中略)
第四章 雑則
(主務大臣等)
第十八条 機構に係るこの法律(第八条(附則第四条において準用する場合を含む。)を除く。)及び通則法(第十四条及び第二十条並びにこの法律第十三条第一項又は第二項の規定により読み替えて適用する第二十三条第一項を除く。)における主務大臣は、内閣総理大臣、文部科学大臣、厚生労働大臣及び経済産業大臣とする。
(後略)
[引用おわり]
こういう法律・法案って過去にありましたかね。
「主務大臣は、内閣総理大臣、文部科学大臣、厚生労働大臣、経済産業大臣」となっています。
主務大臣は、主任の大臣とも呼ばれます。
塩野宏著『行政法Ⅲ(←ギリシア数字の3)、第四版、行政組織法』の64ページによると、「内閣法は、その国務大臣のうち、行政事務を分担管理する大臣を主任の大臣として位置付けている(3条)。この主任の大臣は、憲法74条で法律および政令に署名する大臣とされているところであるが、国家行政組織法では、各省の長としての各省大臣が、内閣法にいう主任の大臣と定められている」とあります。ただ、「十分には議論されてこなかった」としています。
この法案は内閣官房が書いていますが、事務局は内閣府に置かれるので、前例からして、内閣府特命担当大臣がおかれる可能性が高いでしょう。現在の政治状況ならば、山本一太科学技術担当大臣が担当するのではないでしょうか。そうなると、5人ということになります。
省令は主務大臣が出すことになっており、内閣府・文科省・厚労省・経産省の4府省による省令が官報に掲載されることになりそうです。その前に、調整役の官僚が大変です。
これでは、独立行政法人日本医療研究開発機構が画期的な成果、たとえば、スマップ細胞だとか、ミヤザキ細胞だとか、そういったものを発表したら、とたんに5大臣とそのスタッフは「手柄は俺のものだ」と主張するでしょう。ところが、小保方さんのように転落すると、「失敗はお前のせいだ」というように、責任のなすりつけあいどころか、見て見ぬふりの傍観者を決め込むでしょう。
まさに第2の小保方さん事件を生みかねない、4ないし5名の主務大臣法案。
最も太い3本目の矢が、官僚の縄張り争いを恥ずかしげもなくむき出しにした法案ででてきてしまったことについて、安倍内閣の高支持率はいったい誰のため?という疑問を感じます。
衆議院の各委員会は、内閣委は「総合科学技術・イノベーション会議設立」、文部科学は「教科書無償化改正」、厚生労働は「パートタイム労働法改正」、経済産業は「貿易保険改正」の各法案の趣旨説明がされ、次回に質問を始められる状況で、後半国会を迎えます。
日本版NIH法案は、日切れ指定ですが、提出から1か月たっても、衆議院議院運営委員会(自民党が圧倒的多数)で付託先委員会がまだ決まっていません。