二胡の楽器としての性能を表現するときに、様々な言葉を使いますね。
ところがこれは人それぞれに表現が違いますね。
私としては完全にではないですが、ようやっと最近は、分けて使っているつもりですが、音色も響きも鳴りも含めて皆さんの耳に聞こえてくるのですから、皮を張り替えたら音が変わった！という方もいらっしゃいますし、新しく張り替えたばかりですと響きは強く鳴ったけれど音色が、、という方もいらっしゃいます。
皆さんはこれらを分けて使うわけではないですね。
勿論響きも音色も鳴りも一つの楽器から出てくるのですから、分けようもないのかもしれません。
しかし敢えて言うと、音色は二胡の胴の木の種類によって違いますね。だからこそ黒檀のあるいは紫檀の、音色あるいは音と皆さんも言うのだと思います。
ですから、皮を張り替えると音は変わりますかと聞かれると、音色はその木の音のままで変わりませんと、お応えするように最近はしています。
但し皮を替えるのですから、響きは変わります、ともお伝えしています。
響きが完全に単独で皮によって変わるわけでもないです。
皮を張り替えて新しくピンと張った皮の振動は、それまで使いこんで緩くなった皮よりも、胴の内部の形状によっても、以前の物とは違った響きになるものもありますが、それほど変わらないものもあります。
どうやら蘇州系と北京系では北京系の方が皮を張り替えた時の響きの違いが少ないようなのです。
多分それは北京系の胴の内部が真っ平らな事によるのかもしれません。
蘇州系は胴の内部の一部、棹の通穴の周辺部が薄く削られています。
北京系の音がかなり強くストレートに響くのと違って、何となくふわっとぽわっとした余分な音のふくらみがあるのは、この削りのせいの様な気がします。
皮が引き込まれて緩んでくると新しい時より更に、響きが増すような感じです。
また、棹に伝わってくる左手に感じる振動なども、皮の張り具合によって相当違ってきます。
この棹が鳴るのは、振動するのは棹の木の種類というか木のどの部分が使われているかによって違うと思われます。
同じ紫檀でも木の中心部の硬いところが使われていると、棹はとても良く振動します。
鳴りの良い楽器と言われるものに多いのが、この棹の振動です。
棹までよく鳴る、振動すると楽器全体が振動して、音は遠くまで届くようです。
胴の音の大きさということより、楽器全体の振動だと思います。
私が皮を張り替えるのを依頼されたときに一番気にするのは胴の木の種類とその質ですね。
密度がある木密度が少ない木によって皮を選んでいます。
硬い皮、比較的柔らかい皮、そして薄めの皮集めの皮、鱗の強い皮鱗の薄い皮、そして鱗と鱗の間の狭い物広いもの、同じ蛇皮でも様々違いがあるのです。
薄くて弾力のあるものは、低音二胡には使えません。低音弦が太くて強いからです、振幅も大きいですし振動も強いですから。
また、烏木と言われる黒檀系の木、真黒黒檀、縞黒檀、インドネシア縞黒檀、カリマンタンエボニー、あるいはアフリカ黒檀。
中でも縞黒檀は、かなり硬く固い音が音色がします。むしろ固い音という感じの音がしますので、これにはやはり厚くて柔らかめの皮の方が、音色が出る感じがします。薄くて硬い皮など使うと、音色という二胡の良い音色という感じがせず、ただただ強い響きの楽器になってしまうようです。
良い音色ですね！と言われにくくなるようです。
単に音であったり鳴りであったりと言われることもありますね。ようなとき
真黒黒檀以外の烏木（黒檀系）はむしろ人工皮の方が良い音色になりやすいと最近では思っています。
案外難しいのは、やはり小葉紫檀でしょうね。
何しろ硬さに斑があります。
基本的には一番二胡の良い音色と言われるような音色にはなるのですが、木の部分によって、同じような皮を張ったとしても、例えば同じ蛇皮を使ったとしても、よく鳴る、（大きい音が出る）ものと鳴りは小さくても、とても甘い音色になるものなどもあります。大変微妙な違いではあるのですが、作るものにとってはかなり気になる違いなのです。
こればかりは張ってみないと、確かに小葉紫檀の音色だけれど、微妙に響きも変わってくるものなども多いでようなとき、音色は？響きは？鳴りは？などと考えてしまいます。
ところが、人工皮CDMにすると比較的どの小葉紫檀を使っても似たような音色と響きになるようなのです。
しかし蛇皮にしろCDMにしろピンと均一に張られた皮は（振動板は）楽器に健全な振動を与えますから響きも鳴りも音色もよくなるとは考えています。
この数カ月皮の張替えが続いていまして（蛇皮も人工皮も）、更に皮張りの難しさが分かった気がします。
「全くもう！！」と、ほぉさんに怒られそうなほど無駄を出しています。
工房光舜堂西野和宏＆ほぉ・ネオ
