二胡工房 光舜堂

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『東風』マイク スペシャル 狂詩曲【2】

2015-05-07 06:03:36 | ☆店主の鞄持日記 ほぉ舜堂
さて、英会話がまるで駄目な光舜堂の二人組、どうする?!

というところで前回【1】は終わった狂詩曲、
正しくは狂死曲と書きたいところですが、強すぎる漢字なのでタイトルに使うのは控えております。


『東風』 マイク スペシャル 狂詩曲(狂死曲)【2】


お互い英語も日本語も出来ない同士だけのミーティング、
危機的なシチュエーションではありましたが、
しかし、英語力はダメでもコミュニケーション能力&精神力が強靭な店主、
なんとかなるもんですね。
しかもMikeさんがお人柄が良い方ですから、お互い歩み寄り、
コミュニケーションは、ある意味しっかりと成り立っていました。

Mikeさん、朝に店主が「寝る」とつぶやいたFBを見たらしく、
すごく恐縮して感謝して下さっていました。
そして、たった1日で3パターン用意することの大変さも十分理解して下さっているようで、
本当に驚いていました。
そして差し出した3本の弓、
FBに「寝る」とのコメント共に3本の弓の画像も付けてアップしていたのですが、
実際それを目の前にしたMikeさん、これか!という表情で手に取ります。

「1」「2」「3」の弓、
試したド素人ほぉの感想は、「1」より「2」が良く、「3」は更にボリュームアップ、でした。
さて、超プロのご意見はいかに???

まずは、「これが、日曜日の弓ね」と、妥協案の通常の『東風』。
それを手に取り、ふむふむ、と確認してから新作に臨みます。

Mikeさん、弾くまでも無く、まず手に取っての印象だけ。
「1」はすぐ置きました。
「2」、ふんふん、と良い感触そう。
「3」、ちょっと重いのかな?という感じ。

そこで初めて装着します。
「1」ふむふむ。
「2」ふむふむ。
「3」ふむふむ。
3本すべての弓を交互に試し、超絶技巧を弾き、
ココだけは外せない、というようなポイントの感触を真剣に比べています。
しかしどの弓にも真剣な表情を変えず、我々には彼の反応の違いが判りません。
しかし、彼の中では意見がいっぱい有るようで、
Mikeさんは一生懸命単語を駆使して伝えようとしてくれます。
(話は外れますが、何度も何度も弓を交換するのに、
彼の弓の脱着はとってもシンプルにスマートで非常に手早かったです!)

感想としては「2」が一番好きみたい。
しかし、「3」も捨てがたい。でも、竹が。。。

そう、竹が、動いたのです。

通常でも竹に熱をかけると動きます。
だからこそ、福音弓の竹の下準備は時間がかかります。
熱が冷めた後1,2日は動くので、
下準備段階では竹の動きが止まってから次の工程に行くのです。
しかし、時間が無い中での製作、
昨日は真っ直ぐにしていたはずの竹が動き、Mikeさんが言うようにちょっと反っていました。
ただ、それは超プロレベル、普通は影響無い位の反りの違いでしょう。

Mikeさん、弓の見方を示し「ほらね?」と。
うんうん、と店主。
ハイレベルな者同士の会話は、別に言語力は要らなさそうです。
真に目指す物が一緒であれば一流の人間達は通じてしまうのですね。

動いた竹は、ヒートガンでその場で少し直して見せると感心していました。
しかし、このレベルを作るにはもっと時間が欲しかったですね、
厳しい時間的制限の中での挑戦には限度があります。
ただ、そんなところもMikeさんは十分理解して下さっているようでした。


店主は若かりし頃カナダの総合木工工房で仕事をしていたことがあり、
海外の様々な楽器職人たちとも過ごしていたので、
Mikeさんとコミュニケーションをとるうちにだんだん英語を思い出してきたようです。
楽器の専門的な事って、世界共通な部分がありますよね。
だんだんめちゃくちゃでありながら会話の単語数が増えてきました。

ワタクシはiPadを握りしめ翻訳ページをいつでも開けるようスタンバイ(笑)
ちょっとだけ耳が英語に慣れているので
なんとなくMikeさんの言わんとしていることは理解できるのですが、しょせん話せない。
学生時代の英語の成績も最悪だったし。
Tomomiさぁーん、まだぁ? と思ったら、
そこへ待望のTomomiさんがお友達のSさんの車で到着。
はー助かった!

でも、いつも思うのですがTomomiさんというのは本当に不思議な女性で、
人と人を繋ぐ潤滑油みたいな存在でして、
実質的な会話のお助け、というより、ただただ繋いでくれるのですね。
彼女が来てくれたことで更にMikeさんと店主のめちゃくちゃ英語での会話が弾み、
本当に良い時間を過ごせました。

そして、またMikeさんによるレッスン。
彼の超絶テクニックの一端をほんの少しだけ教えて下さったのですが、
その教え方の、丁寧で、理論的で、親切な事!!
凄い演奏家であるのに、教える事もお好きなんだろうな、と思います。
もの凄く熱心に教えて下さって、しっかり手を取って、解るまで解るように示して下さるあたり、
これまた北川浩子先生と共通するところです。
教え方もとても上手!
あー、今日、北川先生を誘っておけばよかった!途中電話しようかと何度思ったか!

近い将来、Mikeさんのマスタークラスのレッスンを絶対に光舜堂で開催したいです!
「是非、日本人の先生たちに教えて欲しい!」と店主が言うと、ご本人もとても意欲的♪
実は日本語の勉強中です、と、日本語ノートの画像を見せてくれました。おお!


さて、本題の弓ですが。
彼が最終的に選んだのは「3」でした。
すぐ置いた「1」も最後の最後までしっかり確認し続けて比べ、
あらゆる技巧を弾いて試して、「2」と迷い、
結局「3」。
彼が普段約100本から探し出す使えるレベルの弓、くらいには良い、
と、竹の棹は及第点をもらえました。
『東風』の毛質は、かなり気に入っているようです。

しかし真の感想は、

彼が帰国するまではわかりません。
ご自分の楽器で弾いて、ご自分の弓と比べた時、
『東風』の毛質の良さはもっと判ると思います。
竹の棹も、どんな具合か、もっと具体的な感想を述べてくださるそうです。
ドキドキしますね!


面白かったのが、
店主が愛用している十分時間が経った弓がMikeさんが好きそうなタイプでしたので
試しに弾いてもらうと、
「とても良い状態だけれど、自分が長く演奏するには重くて続かない」そう。
日頃鉄を叩いているガッチリ腕には全然問題にならない事でしたので「なるほどー」
やはりカスタムメイドは個人の筋肉レベルの話にまで及びますから大変です。
通販や、一般売りの、あらゆる人の為に平均的に対応させている福音弓に対して
時々個人的な細かいご要望を耳にしますが、それに応えていては即倒産です。
Mikeさんでさえ100本買って探すのです。
また、こんなカスタムはプロ演奏家には魅力でしょうけれど、当分やりません。
実際光舜堂でいつか業務として開始する時があるとしたら、
おそらく1本10万は軽く越えることになるでしょう。
今回はMikeさんだから、特別なのです。


Mikeさんは超絶技巧を繰り出しながら本当に全く力を入れないで弾いているのですが、
しかし、別れる時の店主との握手の握力、かなり強かったそうです。
その力強さ、今回で深まった友情と、また会う約束の強さのようですね。

再会!!



追記:
火曜日にMikeさんと撮った写真をFBで見た二胡姫の店長エリィさん、
「西野さん!西野さん!西野さん!顔色悪過ぎ!!!」と、慌ててメッセージを下さいました。
二胡姫さんの納品遅くなっちゃってごめんなさい、と連絡してたのですが、
「西野さん、命削ってまで弓作っちゃダメです!」と。 エリィさん、お優しい!

それでも今回ここまでしたのは、
一流のプロの為に特別な弓を作れる機会を与えて頂いた喜び、も勿論あります。
ですが、それよりも、今回西野がここまでしたのは、
Mikeさんが、光舜堂にご来店の客様達に本当に親切に教えて下さったからです。
一流の腕を持ちながら驕り高ぶる事無く、
何の見返りも求めず、その場に居た人を ただ ただ上達させようという気持ちで
真剣に向き合って下さったからです。
日曜日だけで無く火曜日も、店主とTomomiさんに様々な事を教えて下さいました。
日本に歩み寄ろうと、日本語を覚えて日本人に好意を持って下さって、
ナチュラルな善意を与え続けて下さいました。
で、
「そこまでしていただいたら心からのお礼をしなくちゃ、でしょ! 」
というのが西野なんです。
そしてその為なら、ヨレヨレな写真写りになっても、老体に徹夜は酷だとわかっていても、
どんなに回りの人間が止めても、貫き通してしまうのですね。。。

今夜は早めに帰宅させましたから、今頃爆睡してますから大丈夫です。
主治医のような存在の長生館の先生にも予約入れてあります。
皆様のお気遣いありがとうございます。
そしてMikeさん、本当にありがとうございました!!
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