ビタミンP

苦心惨憺して書いている作品を少しでも褒めてもらうと、急に元気づく。それをトーマス・マンはビタミンPと呼んだ。

「ゲーム実況」市場が急成長!

2021年02月20日 05時23分24秒 | Weblog

ゲーム実況、巨大IT乱戦

世界で11億時間に視聴倍増、若者刺さるメディアに

(2021年2月17日 2:00  日本経済新聞社WEB)

 

 ゲームのプレー風景を個人が配信する「ゲーム実況」市場が急成長している。新型コロナウイルス禍による巣ごもりで主要サービスの合計視聴時間は倍増し、世界で1日1億時間に達した。GAFA系の事業者がしのぎを削り、人気実況者が約30億円で引き抜かれるなど競争も過熱。ゲーム作品の売れ行きを左右し、若者を動かす一大メディアとなっている。

「OK、次で100人目だ!」。世界的なゲーム実況者、Ninja氏(29)が操作するプレーヤーがライフル銃を構え、はるかかなたの敵プレーヤーを狙う。豆粒のように小さな標的を1発で倒すと、パソコンから手を離しガッツポーズ。画面には称賛のコメントが一斉に書き込まれた。

 Ninja氏が活動する舞台は米アマゾン・ドット・コム系のゲーム実況配信最大手「Twitch(ツイッチ)」だ。1670万人のフォロワーを抱え、絶大な影響力を持つ。2019年公開の対戦ゲーム「エーペックスレジェンズ」は同氏が集中的にプレー動画を実況し、1カ月で登録プレーヤーが5千万人に達する大ヒットに。制作会社が報酬として100万ドル(約1億円)を支払ったと報じられた。

 ゲーム実況ではプレー画面が真ん中に大きく表示されるのはもちろんだが、テレビでいう「ワイプ」で実況者自身の姿も同時に映す。雑談や食事、思わぬミスに頭を抱える姿にもファンからのコメントが殺到する。技術のみを競う「eスポーツ」と異なり人間味も魅力の一つだ。

 20代の男性ファンは「作品の豆知識や感想などトークが幅広く、知らないゲームでもやりたくなる」と話す。視聴者は「投げ銭」と呼ばれる応援金を送り、それも次々と画面に表示されていく。

■移籍金は30億円

 ゲーム実況は巨大メディアに成長している。米国ではツイッチをグーグル系の「ユーチューブ・ゲーミング」、フェイスブック系「フェイスブック・ゲーミング」が追う。米ストリームラボの調査では、主要サービスの20年の合計視聴時間は前年比約2倍の279億時間に。20年10~12月期は1日あたり9100万時間まで伸びている。

 中国では騰訊控股(テンセント)が「闘魚(ドウユウ)」「虎牙(フーヤー)」の実況配信2強を買収した。両社のサービスは毎月計3億人超が利用する。視聴時間がひとり月1時間としても、米国勢などと合計すればゆうに1日あたり1億時間超の実況が世界で視聴されている。

 冒頭のNinja氏は19年8月、米マイクロソフト系「Mixer(ミキサー)」に約30億円の移籍金で引き抜かれた。ミキサーが不振に陥り20年7月にサービス終了するとNinja氏はツイッチに戻ってきたが、プロスポーツ選手並みの移籍劇が話題になった。

 米中の巨大IT企業がなぜ、ゲーム実況にこれほど力を入れるのか。

19年にはグーグルが「スタディア」と名付けたサービスを始めるなど、GAFA各社は高価な専用端末がなくてもネット経由で遊べる「クラウドゲーム」の開発を競う。オランダの調査会社ニューズーはクラウドゲームの市場規模は23年に48億ドルと予測する。

 テンセントも売上高の約3分の1はゲーム事業が占め、20年7~9月期は414億元(約6700億円)と前年同期比45%増えた。各社は実況をテコに、消費者を自社のゲームに引き込もうとしている。

 発信力はゲーム業界にとどまらない。人気実況者には多様なスポンサーがつき、動画上にロゴやバナー広告を出す。Ninja氏は韓国サムスン電子、オーストリアのレッドブルなど複数社と契約し、20年10月には独アディダスがコラボしたスニーカーを発売した。特に注目されているのは「若者に刺さるメディア」であることだ。

■有名議員が登場

「マイク・ペンス(前副大統領)には呼ばせないけど、みんなはAOCって呼んでね」。20年10月、ツイッチに米民主党のアレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員が登場した。実況したのは、宇宙船内にいる裏切り者を探すゲーム「Among Us」だ。「ごめんねっ」と言いながら人気実況者を殺し、裏切りを疑われた際には他の人に罪をなすりつける高度な技も見せた。

 大統領選を控えたタイミングで参加したのは、若い世代に投票を促すためだった。その日のピークの視聴者数は42万人を突破。さらに21年1月には個人投資家らの「共闘買い」に端を発したゲームストップ株などの取引制限についてもツイッチで意見を配信。若い支持者との交流に活用する。

日本の事業者も米中の巨人たちに割って入ろうとしている。サイバーエージェント傘下のCyberZ(東京・渋谷)が運営する「オープンレック」は、登録ユーザーが400万人を超えた。

「前回の続きから攻略始めますねー」。布団ちゃん(ハンドルネーム、35)が配信を始めるとたちまち数千人の視聴者が集まった。同氏は趣味で動画を配信していたが、プロゲーマーを目指すために20年に福祉系の仕事を退職した。ゲーム会社の広告や芸能人との企画など仕事を広げ、月収は100万円を超える。

 オープンレックは実況者に毎月の定額料金を払うと限定配信を見られる「サブスク」制度も導入。固定収入が得やすくなり「月収が500万円を超える配信者も出てきている」(青村陽介取締役)という。

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