ビタミンP

苦心惨憺して書いている作品を少しでも褒めてもらうと、急に元気づく。それをトーマス・マンはビタミンPと呼んだ。

5日から始まるノーベル賞ウィーク、今年も日本からの受賞はあるのか?

2020年10月03日 18時29分08秒 | Weblog

ノーベル賞、東大・藤田氏に注目 日本勢3年連続なるか 

(2020/10/3 2:00 日本経済新聞 電子版)

 

 ノーベル賞の発表が5日から始まる。自然科学分野では2000年以降、日本の研究者の受賞が続いており、米国籍の2人を含めて24人になる。3年連続の受賞なるか。

■生理学・医学、エイズ治療薬に注目

 5日の生理学・医学賞で注目されるのは、国立国際医療研究センター研究所の満屋裕明所長だ。「不治の病」といわれたエイズの治療薬「アジトチミジン(AZT)」を世界で初めて開発した。

 その後も新薬を相次いで開発した。そのひとつ「ダルナビル」は途上国が特許料を払わずに使える医薬品として世界で初めて国連の機関に登録され、後発薬の普及を促した。こうした努力により、感染しても早期に治療を受ければ、普通の生活を送れるようになった。

 医薬品は数十年後に思わぬ副作用が見つかったり、効かないとわかったりするため、評価が難しく、受賞しにくいとされる。ただ、満屋氏の成果は多くの命を救い、人類への貢献は計り知れない。

 過剰な免疫細胞の働きを抑える「制御性T細胞」を発見した大阪大学の坂口志文特任教授も注目される。この細胞の量や働きを抑えると、様々な自己免疫疾患やがんの治療に役立つ可能性が高く、治療法の研究が世界で進んでいる。ノーベル賞の登竜門とされるガードナー国際賞を受賞しているほか、今年のロベルト・コッホ賞の受賞も決まった。

 細胞内のたんぱく質の品質管理にかかわる仕組みを解明した京都大学の森和俊教授は国際的な評価が高い。ガードナー国際賞やラスカー賞など国際的な医学賞や科学賞を数多く受賞している。

 海外勢では、ゲノム編集技術「クリスパー・キャス9」を開発したフランスのエマニュエル・シャルパンティエ氏と米国のジェニファー・ダウドナ氏が有力候補とされる。DNAの狙った場所を切り取ったり、別の遺伝子を挿入したりできる。遺伝子治療や農作物の品種改良などへの応用が進んでいる。しかし、基本特許を巡る裁判が米国などで激しく続いており、受賞の妨げになっているとみる研究者もいる。

■物理学、ブラックホール初撮影で

 物理学賞は6日に発表される。物理学の研究は物質や宇宙の成り立ちを探る「素粒子」や「宇宙論」、物質の性質を探る「物性」や極微の世界を解き明かす「量子力学」などの分野がある。物理学賞は「素粒子・宇宙」と「物性・量子」などが1年おきに受賞テーマとなっている。19年は太陽系外の惑星発見や宇宙の進化に関する理論が受賞テーマになったため、今年は物性や量子の番になる。

 物性では優れた成果を上げた日本人研究者が多い。実用性が重視されれば、大同特殊鋼の佐川真人顧問が候補に挙がる。最も強力な永久磁石「ネオジム磁石」を開発した。携帯電話や小型家電から、電気自動車や医療機器、風力発電の発電機まで幅広く使われている。19年の化学賞の受賞テーマとなったリチウムイオン電池と並んで世界を大きく変えたテクノロジーだ。

 東京工業大学の細野秀雄栄誉教授の評価も高い。細野氏は電気が流れる際の抵抗がゼロになる超電導現象を、困難といわれていた鉄を含む材料で実現した。このほか、透明な材料から半導体をつくることに成功し、スマートフォンの画面などへの工業利用が進んでいる。

 慣例が崩れるとしたら、ブラックホールの撮影に初めて成功した国際チームの中から選ばれる可能性がある。科学の歴史に刻まれる成果で、19年4月に発表し、米グーグルや米フェイスブックの創業者らが創設した「ブレークスルー賞」(基礎物理学)を受賞した。国際チームの責任者である米ハーバード大学のシェパード・ドールマン上席研究員は世界の電波望遠鏡を連携させればブラックホールの観測が可能だと示した。同氏の受賞は間違いないが、ノーベル賞は3人までというルールがあり、残りの2人を選ぶのが難しい。

■化学、藤田・北川氏が同時受賞の可能性

 7日の化学賞で注目されるのが東京大学の藤田誠卓越教授だ。登竜門といわれるウルフ賞を米国のオマー・ヤギー氏とともに18年に受賞し、学術情報会社の英クラリベイトが9月、ノーベル賞の有力候補の1人に選んだ。

 藤田氏は炭素や水素を含む有機分子が勝手に組み上がる「自己組織化」という現象を活用。金属イオンと有機分子を混ぜるだけで複雑な構造の材料を作ることに成功した。この材料は微細な穴が多数空いており、その穴にたんぱく質などの分子を閉じ込めて構造を解析できる。調べたい分子の結晶を作るといった難しい作業が不要で、製薬会社や食品メーカーなどが研究を進めている。

 今年の化学賞の選考委員会には、6人の通常の委員のほかに4人の補助メンバーが追加された。その1人に藤田氏とヤギー氏の共同研究者が入っていることから、最終候補に残ったとみられる。

 自己組織化で作った材料を活用する研究では、京都大学の北川進特別教授も先進的な成果を上げている。微細な穴にガスを大量に貯蔵させる応用が進み始めたほか、二酸化炭素(CO2)を吸着させて地中に隔離させる研究も始まった。北川氏も共同受賞する可能性がある。

 医薬品やプラスチック、化学繊維などをつくるのに欠かせない有機化学では、中部大学の2人が注目される。

 1人は山本尚教授だ。効率的に化学反応を起こす触媒を開発し、安全性が欠かせない医薬品などの原料を効率よく低コストで合成できるようにした。有機化学の分野で最も権威があるとされるロジャー・アダムス賞を受賞している。

 もう1人の沢本光男教授は、工業や医療に役立つ高分子材料の精密な合成に関する研究で成果を上げている。高分子材料の多くは数千~数十万個の分子がネックレスのようにつながった構造をしており、従来は分子の長さをそろえるのが困難だった。沢本氏らの技術で実現可能になり、液晶のフィルターなど様々な分野で工業応用が進んでいる。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ホンダ、F1撤退へ EV集中で2... | トップ | ノーベル賞は、こういう人が... »
最新の画像もっと見る

Weblog」カテゴリの最新記事