ビタミンP

苦心惨憺して書いている作品を少しでも褒めてもらうと、急に元気づく。それをトーマス・マンはビタミンPと呼んだ。

ホンダ、F1撤退へ EV集中で21年シーズン限り

2020年10月03日 18時18分03秒 | Weblog

ホンダ、窮地のF1撤退 稼ぐ力はリーマン時以下に 

(2020/10/3 12:25 日本経済新聞 電子版)

 ホンダが自動車レースのフォーミュラ・ワン(F1)からの4度目の撤退を決めた。2日、2021年のシーズンを最後に参戦を終えると発表した。次世代の環境対応車に経営資源を集中する――。撤退の理由はリーマン・ショックが引き金となった08年の3度目の撤退表明とうり二つ。だが足元の状況は当時よりも厳しいといえる。四輪事業の稼ぐ力が大幅に低下しているためだ。

「燃料電池車(FCV)や電気自動車(EV)などの研究開発に経営資源を集中する」。ホンダが発表したリリースにはF1撤退の理由についてこう記されていた。
「今日の発表はホンダの新たな挑戦に向けた決意表明だ」。八郷隆弘社長は2日のオンライン記者会見でこう述べ、前向きな姿勢を強調した。

 一方、08年12月の3度目の撤退表明。福井威夫社長(当時)が理由に挙げたのも、F1の技術者・開発者約400人を「次世代環境車やエンジン開発に投入する」というものだった。F1撤退や費用抑制でリーマン危機による販売急減を乗り切り、市場が回復してくると15年にエンジンなどパワートレイン供給という形で再参戦を果たした。

「今回は短期的な収益が理由ではない」。前回の撤退との違いを問われた八郷社長はこう述べ、新型コロナウイルスの影響も否定した。ただ、ホンダの足元の財務状況をつぶさに点検すると、リーマン危機よりも厳しい状況が浮かび上がる。その象徴が四輪事業の稼ぐ力だ。
 四輪事業の営業利益率は、リーマン危機前の08年3月期には車メーカーでトップクラスの7%を誇っていた。しかし10年代の拡大戦略が裏目に出て収益性が悪化。20年3月期は1.5%にまで低下した。20年4~6月期は新型コロナによる影響も加わり、同事業の営業損益は2000億円近い赤字だった。

 EVや自動運転など「CASE」と呼ばれる次世代技術に向けた投資への圧力も現在の方がはるかに大きい。連結ベースの研究開発費は20年3月期に8200億円と、08年3月期から4割も増えた。
 20年3月期の手元資金こそ2.7兆円と08年3月期(1兆円)に比べて手厚いが本業で稼げないなか、年間数百億円の開発費が必要とされるF1に資金をつぎ込む余裕はないのが実情だ。

 15年にF1に復帰した時、伊東孝紳社長(当時)は「極限の世界で培われた技術や人材を通じてイノベーションを起こす」と宣言した。ある技術者は「社外へのブランディングや、エンジニアの士気高揚という意味合いがあったのだろう」と語る。
 だが、時代の潮流がエンジン車からEVなどに急速にシフトするいま、こうした効果も色あせている。19年シーズンは3勝、今シーズンも2勝しているが、「勝利の美酒」が業績向上につながらない厳しい現実がある。
 F1撤退で生まれた経営資源を振り向けるEVなどの環境対応車だが、ここでもいばらの道が待つ。あるホンダ幹部はEVについて「全然もうからないけど出さなければならない。答えのない地獄だ」と漏らす。
 ホンダは30年をめどに世界の四輪販売の3分の2をハイブリッド車(HV)などの電動車にする方針を示してきた。ただ本命視してきたのはあくまでエンジン技術を生かせるHVで、EV対応については後れを取った。

 10月末に国内で発売する初の量産型EV「ホンダe」。後発組ながら初年度の国内外での販売目標はわずか年1万台強にとどまる。19年に約37万台を販売した最大手の米テスラなどと比べて差は歴然だ。
 世界の自動車市場では環境規制が一段と強まっている。9月下旬には米カリフォルニア州知事が35年までに全ての新車販売を、排ガスを出さない「ゼロエミッションカー」とするよう義務付ける方針を表明した。
 ホンダは9月、EVで先行する米ゼネラル・モーターズ(GM)と戦略提携すると発表。北米でエンジンなどをGMに供給する代わりに、EV開発などで協業を急ぐが、どれだけの提携効果を出せるかは未知数だ。電動化シフトを強めるGMが、一定のガソリン車需要が残る市場の過渡期にホンダを利用するだけではとの見方もある。
 八郷社長は2日の会見でF1について「(5度目となる)再参戦は考えていない」と語った。今回ばかりは間違いなさそうだ。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« トランプ大統領 | トップ | 5日から始まるノーベル賞ウ... »
最新の画像もっと見る

Weblog」カテゴリの最新記事