kiske3の絵日記

一コマ漫画、トホホな人の習性、

映画批評、恐怖夜話、あらゆる

告知をユルく描いて書いてます。

2009年05月07日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」
昨夜、あるバーで仕事の打ち合わせをしていた。そこのバーには壁全体が
ガラスになっており、常連のお客さんがハコの入り状況をそこの窓から見て
確認してから店に入ってくる。たまに、窓を覗くだけの変わった人もいる。
バーのスタッフ、お客さんの中に好きな人でもいるのだろう。その「窓を
覗く者」はそのバーでは有名な人だった。打ち合わせも終わり、先方も
終電で帰った。私は酒を呑みながら、奥のソファで1人ゆったりとケータイで
仕事のメールのチェックをしていた。カウンターでは明日に母国へ帰る黒人
男性を囲んで名残惜しくも楽しい宴をしていたが、しばらくすると黒人男性
だけになっていた。友達同士の女性のマスターと黒人男性が会話をしだした。

黒人男性は引き締まった身体に白いタンクトップを着ていた。それが反射
して、バーテン後ろにある窓ガラスに写る。光りの加減で、白い顔が浮かび
上がっているように見えた。私はたびたび、それに軽く驚きながら、メール
のチェックをしていた。黒人男性がトイレに立った。私も程よい睡魔が
やってきたので、帰ろうとしたその時、窓ガラスに白い顔が浮かんでいた。
目の辺りや頬は黒い影で見えない。まるで編集でカットしたかのように、
その白い顔は一瞬にして消えていた。私の脳内が「あの窓に顔が見える」
と言う幻想を作り出したのだろう。しかし、黒人男性の白いタンクトップが
映りこんでいると言う思いは違っていた。それにしてもこの奥にあるソファ
であれがハッキリ見えたのだから、真正面にしいる黒人男性は気づいても
良いはず。黒人男性がトイレから帰って来たと同時に私は店を出た。あの
白い顔は「窓を覗く者」であってほしいと言う願いもあって、私はケータイ
を耳にあて、誰かと話していると言う風にして、さりげなく「窓を覗く者」
が店のガラス窓の周囲にいるかどうかを探した。窓の周囲にはいなかった。
しかし、この窓が見える5mくらい先のコンクリートの壁の角に影が入った。
私は急いでそれを追いかけた。角を曲がって見えたものは、走って逃げて
行くあの「窓を覗く者」の背中だった。いつもなら、窓を覗くはずが、遠目の
窓から映る風景は凛々しく男前の黒人男性だけ。私は奥のソファにほぼ、
寝そべっていたので見えなかったのだろう。絶対に勝てる相手ではないと
判断した「窓を覗く者」は特権だった窓を覗くと言う行為じたいをも封印
せざるを得ない腹立ちもあったのかもしれない。女性のマスターの事を想い、
彼の嫉妬が生霊となって、遠くから睨んでいたものの、黒人男性の前の窓
までの情念となって映り込んだのだろうか。それとも、黒人男性にしがみ
ついている女の死霊か生霊なのかもしれない。霊だ、幻想だと断定出来ない
私は、窓からサヨナラを言うマスターに、黙って挨拶するしかなかった。













コワイです。                         ボスヒコ

 押し手ぇ~~~~~~~~~