kirekoの末路

すこし気をぬくと、すぐ更新をおこたるブロガーたちにおくる

短編:『初夜権』のあとがき、とか今後の更新とか

2008年07月18日 20時30分54秒 | 短編
こつこつ書き手としてのリハビリをしてるんです@kirekoです。


>短編、初夜権を読んだ方へ
申し遅れましたが、これは歴史的観点に基づいたフィクションであり、実話ではありません。
この話の中では『あった』と断定していますが、初夜権というシステムが、歴史的に存在していたかどうかは、未だあやふやな部分もあります。が、当時の世相を考えると、これに近いものがあったのではないかと、個人的に想像をめぐらせて書いています。
お目汚し失礼致しました。


>ちなみに
批評と感想は、日曜復帰にしようかと思ってます。
毎日更新しないかと楽しみにしている方は、はっきり言って
少ないだろうと思いますが、もし楽しみにしている方がいたら
日曜までお待ちください。


>またまたちなみに
久々に超能力の長編のほうの更新も出来そうなので、
やれるだけやってみようと思います。
独りよがりーな自己満足歴史ものも、久々に書いてます。
まあ、どうせダメでも、やるなら真面目にやらなきゃ仕方ないというか、
クソ真面目で堅苦しい文章を読める方は、非常に少ないと思いますが、
一応頑張ってます。

あ、自分で自分の作品を批評するという企画はどうだろう。
真のマゾ向けの企画としか思えないが…これは!\(^o^)/

短編:『初夜権』-3

2008年07月18日 20時18分59秒 | 短編

「御領主様。私は、バイラッドの街でパン屋を営む両親を手伝う針子の女、名前をイザベラと言います」
「そうか。私は領主ロアン=ブリティッシュ子爵だ」
「御領主様、申し訳ありません。私は二つの罪を犯しました。一つは、領主様を殺害しようとした事。一つは、結婚する相手も居ないのに、この初夜権の儀式に名乗り出た事です。その二つの無礼、どうか、お許しを」
「罪の許しなど、別に乞わなくとも良い。私は、お前のような者に殺されて当然の男だ。それで、イザベラよ。君の言いたい事はわかるが、実際にどうすればいい。私は確かに戦は上手いほうだが、強大な権力を持つ教会と、戦争を始めるほど愚かな領主ではない」
「御領主様が賢明なお方であることは、領民誰もが知っていることですわ。でも、私達女は、権力の中で余りにも無力です。初夜権などという、邪な権威を作り出す教会に、抗うことも出来ないほど非力な生き物です」
「そう自分達を卑下するな。少なくとも、私より心が強いではないか。それに賢明な領主とて、実行できなければただの傀儡だ。教会の操り人形になっているに過ぎない。」
「いいえ、ロアン様は頭の回転が速いお方。それに他の領主では話しになりません。私たちがすがれるのも、貴方だけなのです。どうにか、娘達の悲鳴を毎夜聞くのを避ける方法はありませんか」
「ううむ…」

 ロアンは、すきま風に揺れる蝋燭の照明の中で、見え隠れする赤毛のイザベラの必死の表情を覗きながら、どうにか良い方法は無いかと、二人で熟考に熟考を重ねた。

 その内に夜は白み、唯一ある窓の外からは小鳥のさえずりが聞こえ始めた。
 直面したその余りに難しい問題に、二人は眼の下にクマをつくるほど悩み、考えあぐねる時間を過ごす。が、賢明たる領主ロアンと、強い意思を持つ娘イザベラの二人の頭脳を用いても、結局良い答えは浮かばなかった。

 そして、二人は気付いていなかった。
 教会の命を受けた者が、処女との一晩を過ごした領主を起こすために、部屋の戸に近づいているのを。

ドンドンッ!

「御領主ロアン様! 朝でございます!起きていらっしゃるでしょうか!」

 大きく戸を叩く、教会の者とは思えないほど低く乱暴な声。
 ロアンは、イザベラと供にその音に驚いた。そう、まだ領主の裏の仕事である、目の前のイザベラの処女を奪っていないのだ。どうする…とロアンが狼狽するうちに、乱暴な声は、戸を再び強く叩く。

ドンドンドンッ!

「そろそろ昼間の政務のお時間です! 一晩の慰み物にご執心する気持ちもわかりますが! 領主様は妻も子もある身です。起きなければ中に入って起こしますぞ!」

 あまりに不躾な乱暴者の言葉に、苛立ったイザベラが衝動的に刃物を強く握る。
 ロアンはイザベラの苛立ちを抑え、刃物を見つからないようにベッドの床の隙間へ投げると、スッとその場を立ち、扉の前へと進む。

ガチャッ…

「わかっている。すぐに政務に戻るつもりだ」
「ロアン様、起きていられてましたか。これはこれは…」

 扉の前で出迎えたロアンの事など気にせず、いやらしい目で室内を覗こうとする、教会に組する醜く腹の出た男。あわよくば、前夜の領主の相手、イザベラの痴態でも拝もうという魂胆だったのか、その習性に反吐が出るほどの嫌悪感を催したのは、イザベラだけではなく、ロアンもだった。苦虫を噛み潰すような顔で、眼を瞑り、眉をひそめながら、ただ男が室内を覗き終えるまで堪える二人。

 しかし、もちろん男が想像する情事など無かったので、男は「ちぇっ」とつまらなそうな顔で室内を覗くのを止めた。

 ロアンは、男の嫌な顔を見てホッと胸をなでおろす。
 イザベラの処女を奪ってない事を密告されれば、教会の権力者達が黙っては居ない。あれよあれよと言う間に、領主の座を蹴落とされてしまうだろう。そうなれば、これから権力者の毒牙にかかってしまう生娘たちを救うことも叶わない。それだけは何としても避けなければならなかった。

 だが、ホッとしたのも束の間。
 室内を覗いていた男は、一つの疑問をロアンに投げかける。

「はて、ロアン様。昨晩の御政務は激しいものだったのですかな? あのようにベッドのシーツがめくられ、床の所々に傷が見え…はて、守衛の話では、昨晩のロアン様の部屋は、一度大きな物音が聞こえた以外、静かなものだったと聞きましたが」

 ロアンは男の観察力に焦り、下唇を噛んだ。
 が、そこは領地を統べる器。なんとか話を取り繕おうと、訝しげにロアンを見る男に対して合わせるように考え付いた言葉を投げかける。

「は、はっはっは。守衛に聞き耳を立てさせるとは、貴方も悪い人だ。実はあの娘、気が粗暴な奴でな。見た目からしても乱暴そうであろう? じゃじゃ馬の手慣らしをさせるのは一筋縄ではいかなくて、少し激しい遊びを興じてみたのだ」
「ほう、どのような遊びを。グフフ…私も興味がありましてな」

 ちょこんと床に座るイザベラを見ながら、いやらしい笑みを浮かべる男。
 ロアンとイザベラは、そんな男に殺意を抱かせるほどの嫌悪感を募らせたが、ロアンが目でイザベラに堪えて聴くように合図させると、男に合わせて話を続けた。

「まずは娘の口を腰紐で縛って、抵抗する体力が無くなるまで一晩中追いたててな。逃げられずに疲れた所で、あの小ぶりの体を、嫌だと思う心が、欲しいと思うまで執拗に攻め続けてな。生娘とは言え、欲深き女だ。十分に女の快楽を知ってしまえば、大人しくなる。そこで、ベッドのシーツを床に敷き…というわけだ。」
「ほ、ほほう。グフフ…それはそれはロアン様、グフフ…羨ましい話ですな」
「それからは守衛の耳にも聞こえないほど、さぞ静かであったろう。床に傷がつくほど暴れる生娘の口を塞いで、処女を奪ってやったのだからな。貴方にも聞かせてやりたかった。あの痛みと喜びを同時に感じながらも、それを堪える生娘の声。あれが私は、何よりも好きだからな」
「グッフッフ…領主様の政務は、実に熱心でございますな。しかしまあ妻子の居る身で、なんと女に傷を付ける事が上手いこと」
「そう言うな。妻にはやれない事も、見ず知らずの生娘には出来る。それに、私も傷を付けられた。この手の傷を見てくれ。余りに暴れるんで、私が怪我するほどのじゃじゃ馬だったのだ」
「グフフフフ…本当に羨ましい話でございますなぁ」

 口から口へ連続して良くも出る、ロアンの創作した情事を聞きながら、男のいやらしい視線は、イザベラを捉えて離さなかった。
 あの細腕でありながら領主を傷付けるほどの暴れぶり、そして今でもキッと汚らわしいものでも見るようなキツイ目で睨む赤毛の娘が、この領主ロアンの嗜好のもとに、良いようにやられ、一晩で望まぬ女の喜びを与えられたと想像するだけで、男は無意識に垂れる涎に、舌なめずりを繰り返し、その興奮をあらわにした。

 が、興奮する男にも、その洞察の中で、腑に落ちない点があった。
 それは、イザベラの服も髪も体も顔も、領主ロアンの話す情事の中身ほど乱れていない事だった。ロアンの手の傷が、爪や歯で傷付けられたような雰囲気ではない不自然さも、手篭めにされたはずのイザベラが、自分に向ける憎しみに満ちた睨みも、情事の想像の結果にあるものとしては、理解できない疑問がわく。

 そして男は、核心である疑問を口にする。

「失礼ですが、御領主ロアン様は本当に、あの娘の処女を奪ったのですか?」
「ははは、何を言う。このロアン=ブリティッシュが嘘をついているとでも?」
「グヒヒ、あなたは昼も夜も熱心な官僚だ。だから、嘘をついているとは思わない。が、少し不自然な感じがしましてねぇ。何か証拠はありませんか?」
「証拠。証拠か…」

 男の疑問は、確かなものであった。
 辻褄あわせのように考え、並べられた創作の情事の結果にあるイザベラの姿を、迂闊にもロアンは忘れていたのだ。ロアンは焦った。自分の言葉の隙を突き、迫る男の洞察力の凄みに。その男が投げる疑問の目に。

 ロアンは誤魔化し笑いを浮かべながら、一度イザベラのほうを見る。
 イザベラが、不安そうな顔でロアンを見る。何とかしなければ。何か、この男に対して言い訳できる物は無いか。と、室内を探した。

「どうしたんですか、別に今から私があの娘の取調べをしてもいいんですよ」

 イザベラの姿が気に入ったのか、その内なる欲望の牙をむき出しにし始めた男は、部屋の扉を塞ぐように立つ、ロアンの体を離そうと、必死に催促をする。
 このままではまずい。と、思うロアンの心の中は、焦りの色で塗りたくられていた。

 しかし、部屋の中を見回しても、そこには何一つ、イザベラの処女を奪った証拠たるものが無かった。せっかく機転を利かせて喋った事が、逆に疑問を呼ぶ結果に気が動転していることもあり、ロアンの慌てぶりは、イザベラの目にも明らかだった。

「ふふふ、ないようですね。では私が自ら取調べをしてあげましょう」

 じゅるり、と音を立てるような舌なめずりを一度すると、ついに男が、己の中に滾った興奮に我慢できなくなったのか、焦燥感に揺れるロアンを扉にたたきつけるようにして押しのけると、床に座ったままのイザベラに足早に近づいていった。
 男の鼻息は荒く、獲物を狙うように一直線にイザベラへと近づき、欲望がギラついた目でイザベラを見つめ、その肩を力任せに掴むと、その場に押し倒そうとのしかかる。

 イザベラは、思わず悲鳴をあげた。

「い、いやーーーー!」

 些細な抵抗はしたものの、肩口を抑えつける男の力は強く、なるがままに押し倒されたイザベラは、男の欲望に歪んだ表情に拒絶に近い嫌悪感よりも、純粋な恐怖を心に抱いた。
 見ず知らずの醜い男が、体を奪おうと乱暴にのしかかってくるのだ。いくら気丈な彼女とて、心はまだ男を知らない少女のままなのだから、錯乱気味にならないはずはない。短く纏められた赤毛を振り乱し、顔を背けながら、襲い掛かる醜い男のアゴを、自分の右手をつっかえ棒にして押しのけつつ、もう一方の手は男を殺すための武器を掴もうとして必死になる。

 しかし、ロアンを襲ったときの刃物はベッドの下に投げ込まれてしまったし、室内に男を払うことの出来そうな武器になるような物は無かった。

 一方ロアンは、扉近くの柱に叩きつけられ、軽い脳震盪にかかっていた。
 意識が朦朧となりながらも、態勢を直し立ち上がり、目の前で襲われているイザベラを救おうと、男の背中を追った。だが、その脳裏には一つの葛藤の種があった。男をつまみ出そうにも理由が見当たらない。しかし、イザベラは助けなければならない。ロアンの葛藤とそれに繋がる思考は、朦朧とする意識と相まって、彼の足取りを重くさせた。

 どうすればいい…どうすれば…と、ロアンが思ったその先に見えた物は、彼の答えに相応するものだった。そして、彼は、イザベラの唇に迫ろうとする男を前にして、大きく足を振り上げた。

「この獣め! やめないか!」

 悩みの晴れた様なロアンの一喝と供に、イザベラの耳にはドゴッと鈍い音が聞こえ、一瞬開いた目には、のしかかる男の苦悶の表情が見えた。
 同時に、イザベラを押し倒した男の体は浮き上がり、ガタガタッと勢い良く横へ二、三回転がりながら吹っ飛ぶと、ガンッと大きな音を立てて部屋の壁に強く叩きつけられる。そう、領主ロアンの思い切りの良い蹴りが、男の横っ腹に命中したのだ。

 恐怖と憤りの隠せないイザベラは、体を起こすと、ロアンによってベッドの下に投げ込まれた刃物を探した。彼女を襲った醜い男のトドメを刺そうと、殺意が活発に動き出したのだ。

スッ…

 だが、そんな彼女の肩を掴む手が…殺害を止めさせる手が一つあった。
 良く見ればそれは、傷口が生々しく残るロアンの手だった。

「どうして!? 私があんな獣に犯されてもいいと言うの!?」
「イザベラ。お前のおかげで領民の娘達が救われるのだ。何もその綺麗な手を、わざわざ汚す事はあるまい」
「えっ」

 イザベラは驚いた。
 殺害の意思が止められたからではない。領民の娘達が救われる、と言い切ったロアンの顔が、それまでの惰弱な領主の物では無かったからだ。

 そして、しばらくすると、ロアンに蹴り上げられ、壁にぶつかった男が、憎憎しい口調で語気を荒げ、ロアンに詰め寄る。

「うう…な、何をなさいます! いくら御領主ロアン様とて、審問中である聖職者の私に、理由も無しに傷をつければ! ただでは済みませんぞ!」
「勘違いをするな。証拠があるから、止めたまでの事。これが、私が彼女の処女を奪ったという証拠だ」

バサッ…

 ロアンの手に掴まれ、男に向かって思い切り良く投げられた一枚の薄布。
 それは、血のついたベットシーツであった。

「こ、これは…」
「それこそまさしく処女の血のついたシーツ。著しい証拠ではないか」
「馬鹿馬鹿しい! こんなものが証拠になるとお思いですか!」
「はっはっはっ、貴方のような敬虔な信者が、なんと血迷った発言をするのだ」
「ち、血迷う? 何のことです!」
「国王の決めた教会への査問委員会の条例に一つ、共通の取り決めがあるのをお忘れか」
「取り決め…?」
「初夜権の儀式を行使した次の日以降に、教会の者が娘を審問する際。領主に認められた『処女でないという証拠』が一つでもあれば、聖職者たる教会の者はどんな理由があるにしろ、その娘を姦淫してはならないという取り決めだ!」
「な、なに…なんだと…ぐぐ…た、たしかにそれは…そうだが!」

 くぐもった声で、反抗の意思を見せる男。だが、男はロアンの論法に一言も言い返せなかった。
 国と教会との、その取り決めは確かにあり、領主ロアンの言っていることは至極正論だった。教会が流布した初夜権というシステムは、災いをもたらす悪の象徴たる処女を、聖職者が姦淫することで清める儀式だからこそ成立するのであり、戒律で『みだりに姦淫してはならぬ』と決められた者が、非処女…つまり、生娘で無い者を姦淫すれば、それは戒律に背く事となり、教会から破門されることもある重大な罪であった。

「し、しかしロアン様。その女はまだ非処女と決まったわけじゃ…」

 なんとかイザベラを抱きたいと思う欲望が先に出て、意地汚くロアンにすがる男。
 イザベラに指を指し、惨めに処女であることを口ずさむ男は、すでに聖職者というより性欲の虜。食う時に食い、貪る時に貪る、獣そのものだった。

「女々しいぞ! 早くこの部屋から出て行け! 貴方を領主暴行の罪に問わないだけ、ありがたく思うのだな!」

 聖職者としての体裁さえ失い、醜い欲望を露にする男に、ロアンは今まで溜まっていた憤りを言葉で表した。手を振り上げ、汚物を見るような冷たい目で、男を蔑んだ。
 しかし、男はまだ食い下がる。

「ひぃ、そ、そんな。じ、自分だけ楽しもうなんて、御領主様は横暴だ」
「黙れ! 権力を傘に着て、生娘を辱め、己の欲望を満たすことにしか興味の無い獣め! 私は領民を守る義務があり、娘には愛する者を愛する権利がある!」
「そ、そんな格好の良いことを言って、ろ、ロアン様だって、生娘を毎晩抱いていたではないですか。へへっ、だから、今さらそんな事言わないで。グヒヒ…私にもあの娘の味見をさせてくださいよ」
「腐れ聖職者が…少し頭を冷やせ!」

 ロアンは、しつこく食い下がる男に業を煮やし、傷ついた手で男の頬を叩いた。
 その一撃に身構える男だったが、ロアンはもう片方の手で彼の胸元を掴み、肉を引き裂かんばかりの力で、ジリジリとその巨体を引きずった。そして、開き戸のついた窓を、蹴りで豪快に開け放つと、片手に掴んだ男を軽々と外へと放り投げた。
 男は良く整地された庭へ、ゴロゴロとまるで玉のように転がりながら、勢い良く教会の花壇へと突っ伏し、頭を数度打ったこともあり、その場でだらしなく気絶してしまった。

「御領主様!」

 一連のロアンの言動を見ていたイザベラは、思わず声をあげた。
 男に襲われていたという恐怖の解放からか、生娘がはしたないと思う気持ちも振り払い、ロアンの背に抱きついた。

「ありがとうございます…ありがとうございます…」
「イザベラ。私は、お前に感謝をされることなど一生無い男だ。結局、あの男が言ったように、私はあの男と同じ穴の狢だった」
「いえ、御領主様は違います…御領主様は、私の…いえ、領民の事を考えています…」
「そうだな。もう、お前達に悲しい思いはさせたくない。私は惰弱な領主から生まれ変わるつもりだ」
「ロアン様なら…必ずやってくれると信じています」
「うむ。すぐに領主として新たな触れを出す。イザベラ、お前もこんな息苦しい場に、いつまでも居たくないだろう。早くご両親の居る街へ帰りなさい。そして、本当に愛せるものを見つけて、幸せになってくれ」
「いえ…私は…」

 ロアンは、背に抱きつくイザベラの手を優しく解き放つと、その場を振り返って、イザベラの顔を見、その強い意思をもった生娘の顔を覗き込んだ。
 窓から差し込む日差しの影が、赤毛のイザベラの顔を隠す。
 ロアンは気付かなかったが、イザベラの目には、薄らと涙が溜まっていた。悲しみや喜びの混じったイザベラの目元に溜まる涙が何を意味していたのか、その時の誰にもわからなかった。


 少し後。
 どこか悲しげに手を振る生娘イザベラと別れたロアンは、自分の血のついたベッドシーツを持ち、自分の構想した初夜権の改革を胸に秘め、政務を行うために、領主の屋敷へと歩を進めた。

 ロアンがその日に打ち出した改革は、教会からの初夜権の買い上げだった。
 ロアン自らが王から賜った金銀財宝、その私財を投げ打ち、すべての権利を買い上げた。教会の者の中には、性欲を満たす材料を失い、不平不満を言い、妻子を持っていながら毎晩、初夜権の儀式に生娘を呼ぶロアンに向けて『好色領主』などと陰口を叩くものもいた。だが、ロアンは領内の生娘達に指一本触れなかった。その代わり、生娘達に一つの物を持たせて帰らせた。

 そう、生娘たちの手の甲に小さな傷をつけ、血のついたベッドシーツを『非処女の証』として持ち帰らせたのだ。

 そして、一つの報を領内に触れ回った。
 聖職につく者が、処女でない者を姦淫した場合、即刻極刑(死刑)に処す、と。

 この報は、教会という権力に虐げられていた市民、特にまだ相手を持たない生娘達を喜ばせた。
 今まで凝り固まっていた風潮を、逆手に取るようなこの改革は、少なからず教会という当時の絶対権力に対して、強い姿勢で取り組む領主ロアンの姿を、領民達の鮮やかに印象付けた。報せはロアンの治める領地を越え、教会に虐げられていた他領の人々も、ロアンの噂を聞き、進んでロアンの領国へ移り住むようになった。

 初夜権というシステムがあるからと、愛するものが居るのに結婚出来ず、心に夢を留めていた娘達は、この領主ロアンの話をすでに体験した他の者から聞き、続々と結婚する事を公表し、その喜びを領主ロアンに伝えた。

 そして、十年後。
 教会に睨まれ、妻子達に疎ましく思われながらも、領地の繁栄と発展と、領民の幸福を成功させたロアンは、自らは貧しくなるばかりだったが、非常に充足する毎日を送っていた。

 夕暮れに染まった城下で、楽しげに生娘達が話し合う姿。
 生娘達の幸せな振る舞いを、屋敷の窓から遠くで見ていたロアンは、ふと、あのイザベラとの一晩の記憶を思い出していた。

 「イザベラ、お前は今もどこかで、幸せに暮らしているだろうか」

 そう言いながら、窓の外から吹きぬける風に、どこか懐かしみを感じるロアン。
 毎日を忙しい政務に追われ、領地の教会との睨みあいを続け、領民達の幸せを考えながら、領主という重い肩の荷を背負い、遠くを見つめるロアン=ブリティッシュに、かつての惰弱な領主の影は無かった。


 しかし、彼の思い出の人物、イザベラは、もうこの世に居なかった。
 元々体は丈夫なほうで無かったので、たちの悪い流行り病にかかり、幸せとは正反対の苦痛を味わいながら、その短い生涯を閉じたのだ。
 彼女は生前、「愛している人がいる」と良く知る周りの者に話したことがあった。
 だが、相手が居るのにも関わらず、彼女は結婚をしようとはしなかった。
 きっと強い心を持つ彼女の事だ、未だに初夜権を恐れてのことだろう、と周りの人は実しやかな噂を立てたが、結局イザベラの愛した相手が誰なのかは、彼女の生涯の終わりと同時に、永遠の謎に包まれた。
 彼女を弔った葬儀屋が言うには、彼女は死ぬまで生娘のままであったという話だ。
 

【了】

短編:『初夜権』-2

2008年07月18日 20時16分10秒 | 短編

ガチャ…

 重苦しい木の扉を潜り、今日も渋々、教会の人間に準備された部屋にロアンが入る。
 教会に組する誰かが片付けたのか、良く整理された室内の様子がロアンの目に飛び込んでくる。使い古されてすす惚けた暖炉、綺麗に並べられた蝋燭台、陰鬱な影を映し出す灯火、三人の天使の描かれた宗教画が光によって浮かび上がり、壁にかけられた十字架が、今夜も悪魔の呪物のように歪にギラつく。二階と通じる天井からは、木目の隙間から落ちる砂ぼこりと、ギシギシと何かが激しく揺れる音。そして、男の喜びと、女の哀しみがロアンの耳には聞こえていた。

「この世に存在する悪魔というものが本当に居るのなら、きっとそれは我らの事を言うのであろうな」

 蝋燭に照らされたロアンの顔が、一瞬、陰る。
 体よりも心がむせ返るような異様な暑さは、ここが邪教の巣たる所以か。地方を治める領主だからこそ、正義正論をもって市民を貪る悪魔に抗わなければならないのに…率先して教会と信仰という物にすがる悪魔の手伝いをしている。なんと情け無い事だろう。そう思いながら、室内の奥へ重い一歩を進むロアン。
 昼は『賢明な領主』を装っていても、夜は所詮『悪魔の小間使い』だ。
 教会という巨大な権力に逆らえない、惰弱なロアンの心が、無造作に置かれた木製のシングルベッドへ、なくなく足を運ばせてしまう。

「生臭坊主! 死ねぇぇ!」

 と、その時だった。
 物陰からギラりと光る何かを伸ばし、飛び込んでくる一つの影。ロアンが、しまったと顔を引きつらせた時には、もう遅かった。

スパッ!

 気よりも先に体が動いたロアンは、危機を回避するために体を捻れるだけ捻り姿勢を変え、手を影へとバタつかせ、辛くも急所はのがれた。が、ロアンの手の甲には一筋の切り傷がつき、そこから天井へと赤い鮮血が飛んでゆく。

 飛び込む影がロアンの体をすり抜けるように家具棚に突っ込んだのを確認すると、ロアンは見に迫る危険を察知し、影に対して正面に身構えながら流血の止まらない手の甲を他の手で抑え、再び動き出す陰を目で追いながら、ジリジリと逃げるようにシングルベッドの近くまで寄った。

ドッ!

 そしてまた影が勢いをつけてロアンへ飛び込む。
 しかし、不意打ちならまだしも、今度はロアンも身構えている。丸腰とはいえ、ロアンは領主となる前は、荒くれの兵隊達を統率する武人であった。油断の無い一対一の勝負となれば、戦慣れしたロアンに勝てる男など、そうざらには居なかった。

 ベッドに敷かれたきめの細かい綿のシーツを止血をしている手の指で掴むと、まるで奇術師のテーブルクロス引きのようにスッと抜き取り、飛び込んでくる影に向けて、勢い良く飛ばした。

バッ…

 人間と言うのは、今まで見ていた視界が閉ざされると、一気に平衡感覚を失うものである。飛び込んでくる影も、ロアン目掛けて飛び込んできたのなら、また同じことであった。視界の閉鎖に混乱した影は、手に持った刃物を上下に振り乱しながら、ロアンの姿を探す。だが、ロアンはすでに、シーツにくるまれた影の背中を捉えていた。

ガバッ

 一瞬の捕り物だった。
 ロアンは、手馴れた具合に白いシーツの中で踊る影の手首を掴むと、影が慌てて振り回すもう片方の手に握られた刃物がロアンの体に触れる前に、影の足を払い転ばす。

バタンッ!

 その拍子に、影が刃物を落とす音を確認したロアンは、固い板場の床に受身もとれず、思い切り転倒した影の背、腰から尻にかけての部位に馬乗りになり、暴れる影の腕を掴み、骨と神経が痛むように天井へと伸ばす。ほぼ羽交い絞めにされるような形で、その影は痛みに堪えられず動きを止めざるをえなくなる。

「誰だか知らないが私の身分を知っての狼藉か! 私は、この地方の領主、ロアン=ブリティッシュ子爵だ!」

 ロアンの声が室内に響く。
 手首からは、しとしとと落ちてゆく少量の血液の飛沫が、影を包み込んだシングルベッドのシーツへと朱の色を広げてゆく。

「私に触るな! その汚らわしい手で、何人もの生娘を垂らしこんだ卑怯者め!」

 威嚇する獣の雄たけび様な、常軌を逸した金きり声にロアンは耳を疑った。
 まさか、と思ったロアンは、腕の拘束を解かないまま、影を包んだシーツをめくる。それに続いて、ジリジリと影の姿が、徐々に室内の蝋燭の明かりに照らし出され、ロアンの目に飛び込んでくる。

「お、お前、女か!」
「離せ、獣! 善良な領主の面をしながら、裏では生娘を手篭めにする、アンタのような卑怯者を、日の光の届くところに生かしておけるか!」

 赤毛にやや短く整えられた髪。綺麗な曲線を描くうなじ。意外なほど細い、腕と体。
 そう、ロアンを襲った影の正体は、意外にも女だったのだ。

 目の前の娘に獣(けだもの)と罵られたロアンだったが、ロアンもまた、目の前の娘の行動を見て、獣と思っていた。
 一般的な市民階級の着る衣服、いわゆる何処にでも居る、気優しい街娘の格好をしてはいるが、蝋燭の光が一度、娘の顔を照らせば、濃い赤毛は獅子のように逆立っており、体は罠にかかった野生動物のようにロアンの拘束を解き放とうと必死に動いて、目は落ちた刃物を追いながら殺意に満ちている。

 ロアンは、とりあえず娘を落ち着かせようと言葉を投げかけた。

「娘よ! 私の言葉を聞いて落ち着け! いいか、私は生娘の貞操など興味がない! それどころか、この行事自体も、悪しき体裁だと思っている!」
「ぬけぬけと嘘をつけ! ここから帰ってきた娘たちは、皆泣いていた! 皆、領主と僧侶に辱められたと口々に言っていた!」
「娘達を辱めたのは、不甲斐ない話だが、本当のことだ。だが娘よ、僧侶や私を殺したところで、何が変わるというのだ! 教会という巨大な権力の前では、何も変わらないぞ!」
「変わっていくさ! いや、変えていくのさ!」
「なに! それはどういう…」
「僧侶も、領主も、身に危険が迫って居る事を知れば変わる! 変わらざるをえなくなる! だから殺すのさ! アンタみたいな腰抜け領主が権力に屈し、教会に反抗できないと言うなら、私達がするしかない! 権力に屈しないことが、権力に犠牲になった私達の復讐なのさ!」
「なんと…」
「だから私の…いいえ、私達の貞操は、愛すべき人以外には誰にも渡さない! 意地汚い教会の僧侶にも! それに従うだけの領主にも!」

 激昂する娘の言葉と行動は強く、まさに正論に値するものだった。
 ロアンは言葉の数々を聞きながら己の心の弱さに、打ちひしがれた。

 すると、ロアンの肩から力が抜けた。手の拘束を解き、馬乗りになっていた娘の体を離れると、ロアンは蝋燭のかけられた柱に背を置き、膨らむ多大な罪悪感と、領主たる者として少々の絶望に心を潰した。

 その間に、サッと身を翻した娘は、落とした刃物を手に取り、うな垂れる領主ロアンの前へと、鈍い銀色を放つ刃物をちらつかせ近づく。まったく無防備な態勢のロアンだったが、万が一を考えた娘は、動けないようにガッとロアンの腕を片方の腕で掴むと、刃物を彼の急所に突きたてようと力を入れる。

 一方ロアンは、視界に飛び込んでくる獣のような娘と、その手に握られた銀色の刃物を、まるで世捨て人のように、落ち着き払ってぼんやりと見る。明らかな殺意を前に恐れる感情など一切無い、捨て身の姿勢。娘は、自らの殺意に満ちた目と手でロアンを捉えながら、その奇妙な行動と姿勢に少々の動揺を隠し切れなかった。

 そうしている内にロアンが口を開いた。

「どうした。さあ、殺せ。一思いにこの胸の下あたりを刺せ。苦悶の顔を見たくなければ重なるように飛び込んでこい。私は、苦痛の声も出ないで絶命するだろう」
「い、言われなくても殺すさ!」
「それでいい。お前のような心の強い娘に罪を負わせるのは不本意だが、私も罪悪を感じる毎日に疲れた。残した妻子達には悪いが、ここで私が死ぬほうが領民のためになる」
「余計なお喋りはやめろ! そんな気持ち初めから無いくせに!」

 死を前にして出たロアンの本音…いや、娘にとっては愚痴でしかない言葉。
 だが、その優しげな口調から出る言葉が、娘の殺意を鈍らせる。この娘も、領民のために汗を流す領主ロアンの昼間の賢明さは知っていたのだ。

 一方ロアンは、目の前の気丈な娘を何処か尊敬の眼差しで見つめながら、自らの胸を刺されるまでの空白の余生を、心の吐露、領主の愚痴で埋めてゆこうと思っていた。

「私が惰弱な領主でなく、お前のように心強い人であれば良かった。そうすればお前も、犠牲になった生娘達も、傷つくこともなく幸せを掴めていただろう」
「黙れ! 結果だけを後悔し、懺悔しても、行ってきた非道の贖罪にはならない!」
「お前の言う通り、私は罪深い人間だ。表では、お前達領民に慕われようと奔走する善人の顔をしながら、裏では生娘を喰らう聖職者と同じ、ただの獣だったのだからな」
「あ、哀れみを誘って、私の心を懐柔するつもりか! とんだ二枚舌だな!」
「すまん。お前の憎しみを満たすには、少々無粋だったな。さあ、心強きお前の手で私を殺せ。殺せば私の心も救われる…」

 そう言うとロアンは顔をあげ、眼を瞑った。
 やや傷口付近に固まり始めた血痕の隙間を縫うように、未だ血が少量流れ続ける手を大きく広げると、刃物をもった娘の前で無防備になった。

「悪く思うなよ領主。全て、アンタが悪いんだ!」

 強気に言葉を吐く娘は、ギリギリと音の出るほど刃物を握る手に力を入れる。
 しかし、強気な言葉とは裏腹に、刃はロアンの体を突こうとする動きを見せなかった。操を、勝手に決め付けられた処女権という制度で教会に奪われ、悲しみと憎しみに凝り固まっていたはずの娘の意志は、ロアンという領主を前にぐらついていた。願望であった権力の殺害、その一際の瞬間を前に感無量になるどころか、「ここでこの領主を殺して何になる」「この領主を殺しても、次の領主が生娘の処女を貪るだけではないか」と、思考という名の葛藤に襲われていたのだ。

 そして、蝋燭の蝋が半分ほど溶け尽きた頃。
 娘は一つの決断をした。

「腰抜け領主! 命が惜しければ、私の言う事を聞け!」
「な、なにっ?」

 娘の突然の命乞いの催促に、ロアンは驚きを隠せなかった。
 力強く刃物を向けたまま、娘の言葉は続く。

「一度捨て鉢になった領主とて、自分の命は惜しいだろう!」
「娘よ、何を考えているのだ。今さら命など惜しくは無い」
「命を惜しめ! 惜しむと言え! アンタが私の言う事を聞けば、私は助けてやると言っているんだ!」
「しかし、お前の憎しみと、私の贖罪の心を満たすことが出来る方法が、私を殺すこと以外にあるのか」
「あるから言っているんだ! さあ、命乞いをしろ!」

 命令口調で続く娘の言葉の節々に、ロアンは少々の疑問を感じた。
 この娘は、領主である私に何をさせようと考えている? と、素早く回り始めた頭の中で思考を繰り返す内に理解できた答え。それをロアンは口に出した。

「娘よ。この惰弱で、ちっぽけな私に、お前のような生娘達を権力から守れというのか」

コトン…

 ロアンの言葉を聞いた娘は、思わず手の持った刃物を落とした。
 同時に、娘はフワッと裾長のスカートをなびかせると、力なく膝をつき、領主ロアンの前に跪いた。そして、無防備に広げていたロアンの手が、すかさず優しく娘の肩に沿えられる。領主の前で俯く娘の顔からは、すでに、さっきまでの獣の怒りは消えていた。


短編:『初夜権』-1

2008年07月18日 20時14分37秒 | 短編
『初夜権』


「ふうむ…」

 王国の領地を預かる領主の一人、その時の人ロアン=ブリティッシュは悩んでいた。
 毎日、見ず知らずの女と一晩を供にしなければならない生活に、嫌気がさしていたのだ。それもただの女ではない。夜伽を強制されるのは、およそ世の穢(けが)れを知らない処女ばかりだ。

「教会の僧侶どもは、今日も知らない女を私に抱かせるのか」

 静かな夜の寝室に一人、一杯の紅茶を片手に深いため息を漏らすロアン。
 現代から遡る事、およそ数百年。時にして15世紀半ば、王から土地を預けられた領主には、政務以外に一つ任された、裏の仕事があった。領内の由緒正しき家柄を持つ男女が結婚する時、そこに立ち会うことである。だが、ただ結婚式に立ち会うだけではない。両人が結婚する前夜に、花嫁の処女を領主自ら奪わねばならない、という掟があったのだ。

 当時の社会の風習は、科学が発達した今と比べれば、異常なほど迷信に縁深かった。
 その迷信の中の一つに、『処女は結婚する男にとって、後々に災いをもたらす』と言われて忌み嫌われ、それ故に『聖職者』と呼ばれる僧侶や領主が『初夜権』と称して、その処女を奪う事を当然としていた。

 もちろん、これには裏がある。
 後の歴史書などでは、暗黒時代と呼ばれるほど社会風紀の乱れた中世ヨーロッパ世界において、聖職者は教会という強大な権力の加護の元に座していた。だがその実態は、聖職者とは名ばかりの色欲に堕落し、物欲に腐敗していた。しかし、『みだりに姦淫してはならぬ』という一応の戒律があるため、その公の行動は一定制限されているのが実情だった。

 が、一概に欲深な聖職者というのは意地汚いものである。
 自らの色欲を満足させるために、処女への姦淫を悪の象徴とし、それを聖職者が奪うことによって、娘の身を清めるという『迷信』を広めたのだ。無償で生娘たちの処女を嗜める事の出来る『初夜権』は、教会権力に守護される僧侶達にとって、非常に都合の良い理屈であった。

 要するに、『初夜権』というのは、聖職者とは名ばかりの性欲旺盛な僧侶や領主達など支配者階層の『娯楽』だったのだ。

 もちろん、自分の花嫁の処女を奪わせまいと迷信を嫌う者も少なからず居た。
 だから、この『初夜権』を欲しいという花婿が居れば、僧侶や領主が花嫁に値をつけて、それに相当する金品を献上する事で解決するという時もあった。判りやすく言い換えれば、『初夜権』は支配階級が設けた臨時の税収。結婚税であったのだ。

 だが、当時の市民は、貧困にあえぐ者も多く、裕福な市民以外は皆、花嫁の処女を泣く泣く諦めるのが実情であった。内心、誰もが迷信など信じていなかった。ただ腐敗を続ける宗教家達に、結婚という身近な物でさえ支配される。領主、僧侶達の公然の横暴は、市民の怨嗟の声の中、当然として繰り返されていたのだ。

 そんな世間の風潮の中。
 市民を愛し、国を愛し、領主の中でも賢明と呼ばれたロアンは、どうにか僧侶達の権力を捻じ伏せられないかと画策した。だが、当時の絶対権力であった信仰教会を傘に着る僧侶達の抵抗は凄まじく、たかだか一地方の領主が、とやかく口を出せるような事ではなかった。

「どうにかできないものか…」

 熱心な愛妻家でもあったロアンは、自ら妻が居る立場でありながら、毎日教会の僧侶達に命ぜられて、代わる代わる見ず知らずの処女を抱かされる事に多大な罪悪感を覚えていた。

 キィー…

 そんな葛藤の日々を送っていたロアンに、軋む悪魔の音色。
 開門すれば、人四人がゆうに潜り抜けられる幅広さを持つ木製の扉が、まるで老婆の招き手のようにゆっくりと開き、同時に生ぬるい風が室内を通り抜ける。

「…ほっほ、ロアン様。今夜の花嫁の準備が整いましたぞ。それでは、ご政務のほう頑張りくだされ」

 苦悩する領主ロアンの部屋の戸から、老いを感じさせるしゃがれた声が聞こえる。
 その声の先には、薄らと灯火の灯ったカンテラを持ちながら、風の通り抜ける扉を通り抜け、下卑た高笑いを浮かべてロアンをジッと見る、骨と皮で出来たシワシワの老僧侶。

 その薄汚い聖職者の皮一枚剥げば、路頭を歩く性欲の獣と同じだ。と、ロアンは激しい苛立ちを老僧侶への視線に含ませ、キッと睨みつける。
 だが、老僧侶は「ヒッヒッ」と欲望に満ちた口で笑うだけで、何も語らず、そそくさと会釈をして扉の影へと消えてゆく。敬虔(けいけん)な聖職者と呼ばれ、太陽の昇る日中は市民から高僧と慕われるこの老僧侶もまた、今は人間的な欲望に支配されていた。

 きっと、今日も手頃な『生娘』を見つけたのだろう。


もちろんさ

2008年07月17日 21時54分59秒 | 末路話
ふぅ@kirekoです。

>心の余裕が出てきました。

感想一日休んだだけで、自分の心がつやつやになる、この不思議さ。
( ゜д゜ )仕事バリバリやりつつ、がんがん書くでえ!
しかし、睡眠時間は3時間少々という罠。

聞かれたくないことを聞かれた時のかわし方

聞かれたことの答えに、一応真実めいたことを言っておいて
その実、本当に言いたくない事は隠しておくというのが
余り仲良くない人に聞かれたときに使う、常用手段。
もちろんお腹の中ではぺロッと舌出す事もできないので
その後、場を盛り上げるために同じような質問で切り返すけどね。

ククク、誰だってそうだ…
一度嫌な事をやられたら…
その分だけやりかえす…!
ごくごく、あたりまえのことだろうが…!
それを…わからない奴はっ…
生涯地を這う…!

貴重な体験をした7月15日

2008年07月15日 17時24分33秒 | 小説の感想と批評
俺が求めていたのは、こういうことなんだよ!@kirekoです。

>今日の感想と批評

夜遅くにあだ名で呼び合うというのは、小学校以来だったので
かなり衝撃的で、また、甘美な響きでした。
しかし、友人の一人のあだ名である『ヨッシー』が
これでもかと、はまったのには正直脱帽だったぜ!

( ゜д゜ )で、関係ないけど、
( ゜д゜ ;)最近、いざ寝るときに限って汗がむちゃくちゃでるんですが
( ゜д゜ ;)アイスノン必須の時機到来かこれは…


■企画の意図は、こちら
http://blog.goo.ne.jp/kireko1564213/e/7e03a0212eb392c37028780a1c7f63d9

*感想テンプレ

■(タイトル+小説直リンク) ジャンル(ジャンル) 作:作者名
:あらすじ(小説家になろう投稿時に書いてあるあらすじ)
:感想(kirekoの感想)

*感想テンプレ終わり



============はい開始==============

バイバイ ジャンル 文学 作:真浦塚真也

:あらすじ
『あなた』に対する私の短いお話

:感想
時間という無機質な概念に、去る思いと出会う思いという人間的な感情を込めた作品。ちょっとクドい部分もあるが、主観の置き方を『誰』と決めなければ読めると思う。やや感情的すぎる部分の共感は、おそらく得られる人と得られない人が居ると感じたが、一応文学というジャンルには適している作品だと思う。文章力としての評価よりも、作者に少なからず見える発想力というのを評価したい。無から有を生み出し、より人間的な思考で伝えたいという考え方は、作家として悪くないと思う。ただ、話として纏まっているかと言うと疑問だ。


蝿狩り【三語即興文】 ジャンル SF 作:和波知淳

:あらすじ
制限時間30分のはずが、やっぱり4時間以上かかってしまった三語即興文です。お題は「脳みそ」「信頼」「跳梁跋扈」。

:感想
面白い事を考えた、でもその面白さを他人に伝える時に、どう伝えたらいいかわからない。そんな文章の羅列が読者をひきつけるに足らない作品。なぜ、このネタで、わざわざ回りくどくなるような一人称を用いたのか理解できない。登場人物も科学的要素に満ちたSFというより妖怪的オカルトに近いし。そういうネタがやりたいのはわかるが、「それがどうした?」「で、その話は面白いの?」と少々問い詰めてやりたくなるというのが、率直な感想だった。室内の雰囲気、背景の描写は簡潔で理解しやすいのに、SFには似つかわない、いちいちスケールの小さい地の文と、それに追随する台詞描写が、読みながら凡庸以下に感じられてしまうのは何故だろうか。演出も構成もなんだか気の抜けた感じだ。そういう面で、非常に気に食わない作品だった。


心の音 ジャンル 恋愛 作:日向葵

:あらすじ
野地のなにげない言葉に、晶子の心が「おと」をたてる―。「失恋」の続きものです。

:感想
続きものらしい。あらすじの固有名詞の誤字に関しては、あとで作者が書き直すと思う。言葉や素振りで優しさを投げかける相手、それに勘違いをしながらも安らぎを得てしまう主人公、相手はそう思っていないのに、そう思ってしまう…と、ネタバレし過ぎた、そんな作品。個人的に三人称視点の部分は、導入から展開まで綺麗に纏められていると思う。オチもやや爽やかに終わっているし、奇妙な台詞改行以外は、読みやすい文章だった。終盤の主人公のモノローグ部分で語られているが、個人的には、抱いた誤解を誤解だと自覚している主人公像というのが、良いなと感じた。


短編「人面疽(じんめんそ)」 ジャンル コメディー 作:鳥海ドゥンガ

:あらすじ
体に人の顔のような形のおできができる奇病、人面疽(じんめんそ)。その奇病にあるサラリーマンの男がかかってしまった!治療方法がなく、次第に病気と闘う気力が失せていく男だったが・・。

:感想
非常に面白かった。まあコメディーと銘打っているのもわかるが、基本的にブラックジョークホラーに近いでしょ、これ。個人的には、かなり好きな作品の類。不治の気味悪い病気にかかり、常人としての憔悴ぶりの果て、治ると飛び込んだ病院で、病気に陶酔したあげく、現実の中へ取り込んでしまう。こういう現実の中で出会う非現実を現実に戻すという手法を難なく読ませてしまうのは、ちょっと『狂ってる』作品が好きな自分としては手放しで褒めたい気分だった。雰囲気を壊さず、理解できる部分も大衆的で良い作品なのではないだろうか。
どうでもいい余談だが、kirekoが敬読する漫画家の一人、諸星大二郎氏の作品の中の『肉色の誕生』という話に雰囲気が似ていて、頭の中で氏のキャラクターの動きを妄想し、創作して読んでいたのも、好きな理由の一つなのかもしれない。


Caution Tag ジャンル SF 作:壇 敬

:あらすじ
恋人アンドロイドが売り出される!売り出す前に恋人アンドロイドをモニタリングした男の様子を見ていた僕。あんな事になるとは!注意書きさえ見ていれば・・・。

:感想
非常に感性を刺激される興味深い作品。扱うネタとしては大衆的な感じで受け入れやすいが、実際はかなり理解しやすく噛み砕かれたSF要素に、作者独自の語り口が加えられて面白いと思った。ロボット…いや、ここではアンドロイドか。その製品として全てが完璧なのではなく、人間感情を理解し過ぎる複雑なプログラムの虚弱性に基づく事件、また感情衝動に対して敏感すぎるエラー要素(これはモニタリングした人物にも問題があるようにも思えるが)などなどの、作者の想像の中で創造が、決して独りよがりではなく、リアルなディティールに拘って書く節が読んでいてとても良かった。その中でも特に良かったのは、嫉妬という傍から見たら複雑な概念のプログラムだけが完璧なアンドロイドが、人間的な行動をとってしまうという部分。原文中の

彼はボソリと呟いた。
「恋人ってこんなに大変なものなのかぁ…」
彼はしばらく考えていたが、やがてキッとして僕を見た。
「俺、怜子と別れるよ」
僕は慌てて、彼に言った。
「え? そ、それはちょっと違うだろ?! 返却じゃないのかぁ?」
もはや、彼には僕の言葉は届かなかった。


このくだり以降の、あくまでもアンドロイド的な無機質さ、その簡潔な情報だけを伝える作者の心意気には、恐れ入った。秀作!



==========終わり=============


>全然関係ないけど
kirekoの末路マニアの人には、もうバレているとは思うが、ふうらい屋さん伝いで密かに藤夜 要さんのブログ(ブックマーク参照)と業務提携をした。自分とは、かなり文章感想の味が違うので、もしkirekoの切れ味の悪いナタ包丁に心を痛めたら、そちらのほうへ行くのも良いことだと思う。



7月14日、読み手と書き手の壁に挟まれて

2008年07月14日 16時29分55秒 | 小説の感想と批評
あああああなんかああああ物凄い厨くさいのおおお書きたくなってきたああああ@kirekoです。

>今日の感想と批評

( ゜д゜ )毎回偉そうに他人の小説を見てああだこうだくっちゃべってますが、
( ゜д゜ )実は小説を酷評する反面、奔放さに羨ましいと思うところも幾つかあり
( ゜д゜ )凝り固まった自分の思想を自虐的に見ることもしばしば
( ゜д゜ )たまには名前も、読ませようと苦心する文章も、凝り固まった偏見も
( ゜д゜ )全てかなぐり捨てて自由に書きたいと思うこともありますが、
( ゜д゜ )それは己のプライドが到底許せないkirekoでした。

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*感想テンプレ

■(タイトル+小説直リンク) ジャンル(ジャンル) 作:作者名
:あらすじ(小説家になろう投稿時に書いてあるあらすじ)
:感想(kirekoの感想)

*感想テンプレ終わり



============はい開始==============

おかあさんへ ジャンル エッセイ 作:から素

:あらすじ
今も誰にも伝えられなかった。いつまでも閉まっていた気持ち…

:感想
13日投稿作品。主人公自らの現状とかつての母親の姿が重なってしまい、母親に愛されなかった、というより愛される振る舞いをしなかった理由を、ふと立ち止まって考える。そしてその考えの結果、今目の前に居る子どもだちを自分達は愛せるのか?そんな現実的な思いを書き連ねた作品。この主人公に共感できるかというと、ちょっと甘い考えもするが、ほのかに匂わせる読ませ方、想像させる文章構成に関しては、特筆すべきものがあると思う。なぜ主人公が愛されているという自覚がなかったのか、また自らが愛すべき子ども達への接し方への不安が何故かき消す事が出来ないのか、その辺を深読みしていくと面白いかもしれない。


うたつ様  ジャンル ホラー 作:剣崎輝

:あらすじ
怖い話が好きな私は、会員制サイト『怖い話ネット』に良くいく。今お気に入りなのがそこの掲示板だ。仲間達の怖い話や都市伝説、体験談などが読め、雑談なんかも出来る。リアルが楽しくない分、ハマってしまうのかもしれない。★『夏ホラー2008~百物語編~』投稿作品です。

:感想
構成と思考、そして展開がまさにウェブ小説という感じ。まず、kirekoはこういう作品で『当たりを引いた』試しがないので、やや文章自体への嫌悪感があり、酷評になってしまう事を読者諸君も念頭に入れてほしい。自分が最初に作者に言いたいのは、背景と文字色がどちらも暗色であるため、本文が読みにくい。「ホラーとして怖がらせよう」「小説として読者に読ませよう」と雰囲気を出したい気持ちはわかるが、そういうのは暗に作者が自分の書く文章に自信がないのでは?と読者に思わせることに繋がるので、やめたほうがいいかもしれない。と、いうわけで本文の感想に入っていこう。えてして、こういうネタは大衆的で良い。主観も織り交ぜられるし、色んな展開の幅も見込める。基本的に精神的なホラーというよりオカルトに近いが、導入で失敗している以外の部分は、読めると思う。が、どうも軟弱なオカルト要素を入れた、作者のホラー作品へのテンプレート…出来上がった文章の体質というのか、えてして全ての小説に関して言う表現演出として必要な『ホラー展開への凄み』を書ききれないところが非常に残念だ。全ての物事が簡単に進み過ぎて、導入の部分のあくの強い鈍重さに対して、後半は軽すぎる印象を受ける。映像、とかくドラマの中なら面白いかもしれないが、小説の世界だと確実にNOだ。他の人はどう思うかわからないが、原文中の
 警官は部屋を飛び出していく。私は士郎の脇を擦り抜け、ドアのところに立った。
 部屋は夥(おびただ)しい赤い液体が飛び散っていた。壁や天井にまで、大量の血飛沫がある。部屋の真ん中で益田の濁った瞳は空を見詰めている。だが、腕は書机のイスにぶら下がり、足はベッドに引っ掛かっている。
 巨体な身体は窓際に転がっていた。


や、それに続く

 益田は赤いワンピースを着ていた。いや、あれは白いワンピースだったろう。着ている人間の血を吸い上げ、見事なまでに深紅のワンピースになっていた。

こういう部分が、いつも気に食わないというか、やるならもう少しこだわりを見せて欲しいと思う。視覚で感じたものだけが全てではなく、血の湿り気具合、その質感、充満する生臭い匂い、室内の音など、オカルト物とは言え、主格が五感で感じた全ての事を生生しく書いたほうが、リアルな怖さが伝わってくるようなホラーらしい描写ができるのではないだろうかと、ついつい書き手の心で考えてしまう。あと、作者が読者に対して『怖がらせよう』と思う心が露骨過ぎると、読者としては読む熱も冷めてしまうのも事実だと思う。


緊急避難的逃走的妄想【三語即興文】 ジャンル その他 作:売国有罪

:あらすじ
三語即興文。『私』『終わり』『夕焼け』ルールは三十分で書く。

:感想
自分の住んでいる世界が終わる終日の時、何をする事もなく自室にいた主人公が…と、導入ネタとしてはやや古い感じの作品。導入部分のその他大勢と主人公の比較がいいね、まあ小説の世界のキャラクターって妙に落ち着いちゃってる人が多いけど、実際そんなもんなのかなとも思う気がする。三十分で書くには、結構きついネタだった割には、うまく纏まっていると思う。ただ、いきなりのクレイジーなキャラが登場する展開と、唐突にクレイジーに終わるオチには、ちょっと感じえるところが無かったなぁ。
ちなみに感想とは別の余計な補足になってしまうのだが、インドのカースト制度でバラモン、クシャトリアに続く身分ヴァイシャ(農民、商人)というものがあるが、これは確かサンスクリット語で『家そのもの』『定住者』を意味するヴィシュが元になっていると聞いたことがある。と、なると、原文中で白ローブの女が主人公に対して、ヴァイシャ(定住者)と名乗ったことは、考えようによっては、なかなか皮肉めいているではないか。


落日【三語即興文】 ジャンル SF 作:木野目理兵衛

:あらすじ
懲りずに三十分で執筆。お題は『私』『終わり』『夕焼け』。

:感想
生き過ぎた物の終わり、その感情を描いた作品。読んでいて謎をほのめかす部分に首をかしげながらも、主観である人物が実は○○であった、という導入展開の部分、その最初は良かったんだが、後半の感情論の振りかざしが、なんとも表現的にグズグズ。やりたい事はわかるが、ふと立ち止まって考えると人間的な勘定すぎるのでは無いだろうか?その辺が好きじゃないところだ。そういうやや嫌悪を感じた面もあり、最期の読者にとってわかりやすいオチというか、他の要素を一切入れないそのまんまの展開が、ちょっと捻りを求めていた読者の一人としては拍子抜けだった。もう少しバッド要素、いわゆるそう思ってる主人公の主観に対してのブラックジョークへの起伏を狙って、現主人が主人公の終わりを迎えた時に、物をぞんざいに扱う台詞や、皮肉めいた演出が、少々欲しかった。


月と二人と ジャンル その他 作:七色 鈴音

:あらすじ
月の下の別荘で小説家とその担当者、そんな二人がする会話

:感想
割と好きな部類。本文中は、ほぼ会話文しか無いのだが、その会話が日常的であり、また小気味良い質感と、互いの距離があって良い。男女にふり分けられた理系と文系の差異のあり方みたいなのが言葉の隙間から読み取れて、十分面白かった。とにかく会話文で読ませてくれる作品だった。ただ、職業的な設定の部分がもう少し出せなかったのかと思うところと、自分の頭の中で描く文系の男性と、理系の女性のイメージが、この作者の描くものと若干違ったので、個人的に腑に落ちなかった点もあった。


追加広告―私の十本の針― ジャンル ノンフィクション 作:六の宮の姫君

:あらすじ
毎回、痛烈なメッセージのみを残して去っていくG氏。今回の(かなり前ですが)メッセージに書かれていたのは…。それに対する私の返答、あるいは私的広告の第二段。

:感想
以前にも、この人の作品を紹介したことがあったが、毎回の宣伝文としては秀逸だ。今回は、いわゆる自分の宣伝というより小説の書き方、そのあり方に関してこの作者の思うところを別のキャラクターを交えて書き連ねている、とそういった作品。ちょっと宗教的な縛り、いわゆる抑圧の中でしか話せない思想に固まってはいるが、広告を読んだ読者とすれば、基本的な物の書き方は悪くないと認めているのだから、早くその狡猾たる思想に満ちた作品を見せろというのが正直なところ。パート分けされた文章も書き手として、読み手として共感するべき部分が多々あるのに、その結果である文章が一つも無いところが、なんとも読者としてやるせない気持ちだ。早く見せろと我々が思うほど、下卑た大衆読者の心が作者の腕を鈍らせるのか、それとも他者へ公開することが憂悶なほど出来の悪い小説なのか。その事実はわからないが、作者の小説は読んでみたいと思う。



=========終わり============

>最近だらしねぇな?
('A`)早い夏バテのようです。
('A`)誰か、何か、精のつくものを送ってください。


しかし自宅に送られてきたのはバイアグラ一年分だった。


( ゜д゜ )そういうことじゃねえーから!

多人数感想デーの7月13日

2008年07月13日 16時42分20秒 | 小説の感想と批評
駆け巡る脳内物質…!バリン!チロシン!イソロイシン!@kirekoです。


>今日の感想と批評

(´゜ー゜` )今日は久々の多人数感想の日。
(´゜ー゜` )期待と不安をこめて、いってみよう。

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*感想テンプレ

■(タイトル+小説直リンク) ジャンル(ジャンル) 作:作者名
:あらすじ(小説家になろう投稿時に書いてあるあらすじ)
:感想(kirekoの感想)

*感想テンプレ終わり



============はい開始==============


アイムロスト ジャンル 文学 作:まなみ。

:あらすじ
アイムロスト。僕はどうやら迷っているらしい。迷っている“僕”の前に、少女が現れ……。

:知人G氏の感想
起承転結、すべてがないような歯がゆい作品だった。詩?

:知人N氏の感想
話の元はおもしろいが、まさに801(ヤマなし、オチなし、イミなしの略)。

:知人K氏の感想
よくわからん。シチュエーションは興味深いところはあるが、意味不明を補える良さがない。迷ってて、それがどうした?前にも後ろにも 何にも動きもしない 足踏み?少女が先へ進むきっかけにしたいんだろうけど、わからん。とりあえず、 まだあやふやな形を成していない想いだけのお話。糸冬了。

:kirekoの感想
他の人には結構酷評されているが、個人的には好きなタイプの作品。展開と演出はともあれ、少なくとも文章構成は良いと思う。確かに主人公と相手がどういう関係で、どういう設定なのか、それについての描写不足が目立つし、説得力皆無の幻想を盛り込みたい作者の気持ちが出たり引っ込んだり中途半端な感じもし、やや謎めいた展開が読者からすれば鼻に付く。が、それこそがこの作品の旨みではないだろうか。読者が欠けた謎を推理するように仕向けられた文章(決してサボりではなく、想像の余力を残すという意味で)は、深読みしたい人には面白いかもしれない。この主人公が何を失い、何を得たのか。そんなことを読みながら想像する事が意外と大切なことかもしれない。ただ、夜の世界へと沈む夕日を指す言葉に『真っ赤な太陽』という表現は、ちょっといけ好かなかった。何度読んでもここの部分がひっかかる。どうも真っ赤な太陽というと、こげるような真夏の真昼の太陽というイメージがあるので、「真っ赤な夕焼け」など色々工夫できたんじゃないかと思う。まあこれは個人の差だが。


 ジャンル ホラー 作:悲劇のM

:あらすじ
刺殺シーンなどがあります。苦手な方はお引取り下さい。

:知人G氏の感想
なんか目まぐるしいよね。アイディアが生きてない。命の消える音がした、という表現がとてつもなくヌルヌルしてる。

:知人N氏の感想
場面の移動が多すぎる。

:知人K氏の感想
なんか難しい言葉を使いたがる症候群の人だった。甘美な衝動=殺人衝動 が唐突すぎて わらた。ホラー(笑)とりあえず駄作でいいですか?表現へたすぎ。形容詞という言葉の意味をわかっていない、動詞じゃん。ともかく、この作者は本を読んで読んで読みまくって語彙を増やせ。話はそれからだ。

:kirekoの感想
作者がホラーと銘打っている部分が曖昧だが、おそらくkirekoが察するに『主人公の単純な憎悪が引き金になり、他人を害そうと思う猟奇心がいぶりだされる、そんな事が実は平和に暮らす誰にもある危険性なのではないか?』と疑問を投げかけることなのだと思うのだが、ちょっと話の流れに説得力のある文脈がないのと、冷めるようなオチの表現が短絡的過ぎて面白くなかった。よく連鎖的な復讐劇というのがあるが、この話だけで主人公を評するなら、実は相方を殺された復讐心よりも、ただ単純な快楽殺人者の素質があっただけなんじゃないかとも思う。これは、主人公の内面的な設定が書ききれておらず、主人公の印象があやふやなので、何とも理解できなかった部分なのだが、やはり最初に抱いていた憎しみのすり替え部分、その殺人衝動によって得られる快楽を抱く主人公の動機、その決定的で、かつ明快な理由付けがもう二つ三つ欲しかったと思う。


 ジャンル その他 作:林

:あらすじ
あらすじというほどのたいしたものはなんもありません。30分の三語小説です。あとあなうめで何か書かないといけないぽいですねコレ30文字。

:知人G氏の感想
なんだろうな。さっきの二つよりは確実に良いとは思う。ただ難しい。小難しいというべきか。オチにもう少しこだわってほしかった

:知人N氏の感想
わかりづらい単語のせいで、万人受けはしない。

:知人K氏の感想
SF(笑)いや。SFに失礼だ。ごめんなさい 技術は高くても 評価しません。でも 前の二人に比べて 程度だと思うので、評価に値するほどの技術ではないと 自分は評価します(評価できないという 評価)。マンガでいったら ストーリー評価外 作画 2(5段階中)

:kirekoの感想
蝉にされてしまった人間の思考なのか、それとも人間の思考をもった蝉なのか。そこらへんが良くわからなかった。確かに浮ついた設定がちらほら見えるが、構成的に言えば、決して悪い作品じゃないと思う。この作品の文章としての面白みは、唐突すぎるオチと、最期の謎めいた台詞がかもし出す、読者への余韻、そこからくる不思議な雰囲気ではないだろうか。他の人は小難しそうな言葉が出てくると言っているが、意外と読んでみると簡単な話なので、一読して損は無いと思う。ただ、一般読者にわかりやすいように、描いた設定の説明は必ずしなければならないと思う。

明日の足跡【三語即興文】 ジャンル その他 作:売国有罪

:あらすじ
『蝉』『青空』『グラウンド』三語即興文です

:知人G氏の感想
現代多発する事件に対する風刺として、内容は好み、文章としては、ペッ。

:知人N氏の感想
ノーコメント。

:知人K氏の感想
蝉?まあいいや。オチがオチなのか、落ちてないよ。どっかでみたことあるような文体。気分わりい。

:kirekoの感想
即興三十分で作った内容にしては、ずいぶん読ませる感じに仕上がってると思う。事件の部分は、短い割に想像させやすく、普通の読者でも読める雰囲気だ。ただ読ませるだけで、突然の急展開が理解できるかというと疑問だ。細かい部分に眼をやるってのも三十分という枠組みの中では難しいと思うが、やはり見せたい部分に固執してしまって、オチの核心に迫れていない気もする。ただ加速の表現は良かった。ここがやりたかったんだろうなと、勝手に作者の心を想像してしまった。



殺人鬼のルール ジャンル ホラー 作:うりぼん

:あらすじ
とある殺人鬼の永遠に繰り返されるルール

:知人G氏の感想
一行目からしてこれが駄作であることがわかってしまった。

:知人N氏の感想
もう、3スクロールして、読むの断念しそう。あーでも個人的にオチはすきかも。けどいらない部分が多すぎるかな。だだっ長いだけで途中読み飛ばしたくなっちゃった。間をどう縮めて、完結にできるかがこの作品の課題だな。

:知人K氏の感想
なんか 読むの嫌。ヤメテイイデスカ。出だしの数スクロールでオチ読めた。もう嫌。同じようなゲームと現実が重なった物語 ラノベでも読んだけど、そっちのほうが救われる。読んでる俺が、アドバイスしようが無い 駄作。TRPGのリプレイ本やらなんやら 数百万回読んで出直して来い。

:kirekoの感想
これはなんなのか?こいつは一体何者なのか?そんな、謎についていちいち推理してしまう人には良いかもしれない作品。ただ、基本的に行動と動作の表現と描写がワンパターンで、はっきり言って読み飽きてしまう。想像が独りよがりなくせに、妙に端折れてない、そんな無駄の多い文章なのだ。で、文章の質はというと、味も素っ気も無いというのかな、作者の書く描写ひとつに、事細かに拘れる面白さがあれば、まだ読めると思ったが、結局オチのために書いたという感じが否めない。もう少し研究心をもって文字に接して、読者にちゃんと伝わる文章を書いて欲しいと思った。



==========終わり=============



>ありがとうございました&す、すいません
( ゜д゜ )せっかく皆を集めて感想いってもらったのに
( ゜д゜ )みな酷評ばかりの作品で、良い作品を紹介しないですいませんでした
('A`)今度はちゃんとした作品を紹介しますので…なにとぞ皆様感想をお願いします。

毒喰らわば皿まで7月12日

2008年07月12日 22時10分12秒 | 小説の感想と批評
ダレ度半端無い@kirekoです。


>今日の感想と批評

( ゜д゜ )おかしい、なにこの早い夏バテ。
( ゜д゜ )そして文字に体力を奪われ続ける感じは…もしや…


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*感想テンプレ

■(タイトル+小説直リンク) ジャンル(ジャンル) 作:作者名
:あらすじ(小説家になろう投稿時に書いてあるあらすじ)
:感想(kirekoの感想)

*感想テンプレ終わり



============はい開始==============

 ジャンル 文学 作:クルーガー

:あらすじ
神を信じ祈り裏切った。見慣れた暗闇を歩いていく。

:感想
\(^o^)/?よくわからなかった。
おそらく話の謎具合を自分の想像で保管できるタイプの読者じゃないと、理解できないと思う。で、内容はというと、使う言葉の軽々しい事…その浮つき方が尋常じゃない。脳内語りではなく、あくまでも質感のある抑揚の付け方や、骨太の表現を学んで欲しい。題材的には捻りようによって面白そうとも感じたが、基本的に読ませる力が足りないと思う。


商隊護衛任務 ジャンル ファンタジー 作:玲輝

:あらすじ
傭兵のアーサイたちは、高額な報酬の商隊の護衛任務に就く。ただの品物輸送の護衛のはずが、とんでもない事態へと発展していく。

:感想
まず最初のキャラクター設定みたいなのをみて、こういうものにアレルギーを起こす人は読むのを止めといた方がいいだろう。というわけで、感想をば。まず主格を置かない三人称視点であることは、構成として十分評価が出来る。細かな戦闘表現や、キャラクターの動作、あやふやな設定など、その他諸々問題点はあるが、読ませようと思う意図は覗える。が、改行の仕方が独特というか、破天荒というか、通常改行しないようなところで改行してみたり、通常改行すべきところで改行してなかったりと、ちょっと不可解な文章構成が致命的だと感じた。あとは、どうも展開、その際立たせたい場面の演出が非常に薄っぺらい。もう少し味気あるように描写すれば、もっと良くなると思うのだが、そこは作者の世界観なので多くは語るまい。と、割と酷評気味だが、内容の荒削りさと比べると、意外と地の文は読めないこともないので、あとは世界観で読ませられるかどうかが勝負か。作者自身判っていると思うが、前にあげた改行の点と、『煮詰められて無い』設定部分、細かい部分を直してみることがまず必要だと思った。


お袋と親父 ジャンル エッセイ 作:betymogu

:あらすじ
長い闘病生活に苦しんだ挙句に亡くなったお袋と、正反対に呆気無く逝ってしまった親父。

:感想
感情抑え目の箇条書きが非常に読ませる作品。ポケベルなど時代を感じさせる機器類(こんなに便利だっけ?感はあったが)、病院の描写、苛立ち、身に降りかかる些細な事件、主格と家族の立ち回り方が、なかなか想像できて良かったと思う。良く入院すると被害妄想がひどくなるとか、荒っぽくなるとか聞くが、実際それほど病人を見たことがないのでわからなかったが、この作品中の主人公の彼女の想像妊娠のくだりの後、自分の病気に薄々と気付き始めた母親が、ガラッと人格が変わるところが、文章のリアルさ(おそらく実話なんだろうけども)を匂わせる形で興味深かった。ちょっとエッセイという類なので、オチがどうこういうのも無粋だが、個人的に最期の言葉が気に食わなかった。それ以外は、ぶったぎり改行以外すんなり読めたと思う。


短編「根性桜」 ジャンル 恋愛 作:鳥海ドゥンガ

:あらすじ
将来を誓い合った若い男女が、やむを得ぬ事情から離れ離れにならなくてはいけなくなった。男は5年後に桜の木の下で再会しようと旅立つ。そして5年後、桜の木の下で男の帰りを待つ女だったが・・。

:感想
桜が頑張った話。うーん、短いからって言うのもなんだけどさ、全てにおいての理由付けが足らない気がした。ポッと読み始めたと思ったら、いつの間にか何も感じえずに終わっていた。もう少し桜に関しての描写をいれるとか、待つことへの苛立ちやその思いを表現するとか、二人のいきさつを詳しく話すとか、やり方は色々あったのに、一つとしてやっていないという、小説としては旨みの足りない文章。こういう話がありました、と飲み会で話して場が「ふーん」ってなっちゃう雰囲気。起伏が無いのが致命的か。


とある少年の憂鬱 ジャンル 恋愛 作:アザゼル

:あらすじ
とある学校のとある生徒の休み時間に起きたちょっと不思議な恋愛のお話です

:感想


羽毛布団のようなふわふわぶりの内容に堪えかねて、思わず兄貴動画を張ってしまった。知らない人はクリックしないほうがいい。と、お遊びはここまで。ちょっと精神面を二次元的な簡単さに捉えすぎてるんじゃないかな。ここで懇々と衆道がどうだ、三島がどうだって語ってもいいんだけどさ、それは流石に読者にひかれるからやめよう。なんだろう。結局相手が男だろうが女だろうが、恋愛としてちゃんと成立させて書かないと面白くないよね。たかだか恋愛対象が変動したぐらいで、やってる事は普通の脳内妄想と同じじゃ、読者の心が揺れ動くはずないじゃない(お手軽で簡単なのが好きな人はまた別だが)。まずは小説として成り立たせる事が必要なんじゃないだろうか。てか、男が男をかわいいと思う時ってのが、内面の印象じゃなく外面的な印象だというのが、ちょっと理解できない。最初から『その気』があるように話してるキャラクター設定は、興ざめもいいところ。ソフトすぎて面白くないのさ、ははは。


===========終わり=========


>誤解がないようにいっておきますが

( ゜д゜ )…
( ゜д゜ )いっとくが俺はゲイじゃないぞ!

7月11日も、夢のまた夢

2008年07月11日 22時09分00秒 | 小説の感想と批評
タイトルが浮かばなくなってきました@kirekoです。

>今日の感想と批評

投稿数が多いのは、喜んでいいのか悪いのか。
基本的に、その日に投稿された時間が早い順で覗いてるんですけど、昨日は午前1時あたりの作品でノルマ数量が来てしまったし、今の更新ペースでいくと、だいたい10時くらいまでの作品で、感想予定数をオーバーする感じですね。
まあ何が言いたいかというと、
悪貨が良貨を駆逐するとか、そういうのだけは勘弁な!


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*感想テンプレ

■(タイトル+小説直リンク) ジャンル(ジャンル) 作:作者名
:あらすじ(小説家になろう投稿時に書いてあるあらすじ)
:感想(kirekoの感想)

*感想テンプレ終わり



============はい開始==============


ニューヨーク・ラブストーリー/エピソード13:愛の残り火(Like It Or Not) ジャンル 恋愛 作:Jono

:あらすじ
ポールの高校時代の友達、ショーンがマンハッタンにやってきた。ポールと兄弟のようによく似た彼はゲイ。ボーイフレンドに振られて傷心の真っ最中なショーンの気持ち癒そうと、ポールは優しい気遣いをみせる。ローマンもまた「新しいお友達は大歓迎」と言い、ショーンは少しずつ元気を取り戻して行くが、それは思ったほどすんなりいく話ではなく、とうとう揉め事に発展してしまう。渦中の人はやっぱりディーン。ローマンから「おヴァカっ!」と罵倒されるまでの経緯で、誤解を生むのは果たして……?

:感想
ボーイズラブということで、苦手な人は読まないほうがいい。一応続き物らしいので、気になった方はエピソード1から読んでみると良いだろう。というわけで感想を言うとしよう。女性向けと書かれているが、普段変な物を見すぎているせいか、意外と『そういう雰囲気』が気にならない話だった。まあ男同士の恋愛というのが若干気になるが、内容だけなら、さながら80年代のアメリカ恋愛映画でも見てるかのような感覚に陥るよう。ちょっとした台詞回しが小気味良い。事細かにしっかりと、とまではいかないが、脚本としてみれば良くかけていると思う。台詞主体の進行で、出てくるキャラクターも、案外思ったより浮ついた存在ではないので(いや、おそらく道義的に考えると浮ついているようにも見えるのかもしれないが)、ネタ以外は本を読まない人にも読めるほど非常に大衆向けの作品なのではないかと感じた。文中の、やや少ない背景描写の中に、ちょっとした質感を与える説得力と、外観への魅力が入っているのも、どこか映画的脚本演出で、気に入った。ただ、やはり台詞が多いので、小説形態としてそういうのが苦手な人は、読めない作品かもしれない。意外と映像化したら面白い部類になるのでは?と感じてしまった。


半袖 ジャンル 文学 作:植村りさ

:あらすじ
せつない思い出の品は、すぐに処分しますか?元のありかへ還しますか?捨てずに、いい思い出に変わるまで、側に置き続けますか?

:感想
とても短いが、なかなか想像させてくれる作品。ある季節に抱いた思い出の存在が、風化せずに自分の心の中に残っていて、まだ生きていることを実感してしまった主人公に、なんとなく個人的に肩入れをしたくなるような感じがした。過去に「似合うね」と言われた色をずっと好きでいるという設定が、なんとなく気に入った。多かれ少なかれ、やはり感情を引きずる生き物である男性視点を、ほんのりと短く纏め上げた作者の書き方には感心した。ただ、やはり些細な部分の足りなさを保管するために、読者の想像に頼る部分が多いので、読了後の思い、その感じ方は千差万別、人それぞれだと思う。


来訪者 ジャンル ホラー 作:壽メグミ

:あらすじ
蒸し暑い夜に「僕」が体験した、たった一度の恐怖体験。【夏ホラー企画2008~百物語編】参加作品です。

:感想
この手の作品で一番怖いのは、ちょっと読みにくさが前に出て想像できなかったりして、結局場が白けてしまう事だ。なんだろうな、なんとも言いがたいんだけど、これは弁舌家とか、落語家とか、そういう喋りに特化した人間が情感たっぷりに読むと、怖く感じさせることも出来る、そんな作品じゃないかな。まあでも、実際読んでいるのは文字だけなので、なんら怖くないというのが、悲しいけどなんとも白ける。ついてるならついてるなりに、もうちょっと怖さへの臨場感があって欲しいんだが、語り部が感情的に落ち着きすぎているのが、うーん。「感動の映画!」と言われて「よし、感動するぞ」と見てみたら、なんも得るところの無い三文脚本だったような感じ。がっかり。


MooN SkY ジャンル 恋愛 作:スリーピース

:あらすじ
この小説は、本当に考えました!!自分なりにいいできばいだと思います。

:感想
開いた口が塞がらないとは、このことか。
あらすじと前書きは、いわゆる皮肉ってやつか?ふざけるな!挑戦的な文句に誘われて、苦痛に顔歪ませたまま最期まで読んでみたものの、なんもねえじゃねえか!ちくしょう騙された!無意味な反復、致命的に読みにくい箇条書き、うだつのあがらない場景の説明、凡庸以下稚拙な描写、台詞も演出も展開も全てお粗末極まりないし、キャラクターの外面的要素の足りなさ、恋愛の最も旨みたる情感への理由付けも書き足りなさ過ぎる。それに伴って本文中の思考能力の欠落が、目に余るほど酷いというのは、まったく作者の「いいできばい」(出来ばえのことだと察する)という言葉を疑ってしまうほどの酷い出来。考えて書いたというが、その考えを改めない限り、小説としての評価はゼロだ。作者は、もっと他の表現を学ぶべきだと思う。読む価値なし!駄作!以上!


桜散る誕生日 ジャンル 恋愛 作:蝙蝠傘

:あらすじ
初老の男が公園のベンチにすわり、自分の人生を振り返りながら、埋めることができない心のすき間を残り少ない時間のなかで自分で埋めていく物語りです

:感想
伸びる前の成長過程の作品というか、もうひとつ、ふたつ頑張れば面白くなるのではないかと感じた作品。誤表記や、表現や構成、演出はまだまだ足りない部分もあるが、個人的には応援したくなるような作品だった。序盤で気に入った部分は、根津少年が誕生会に「行く」と言ったものの着てゆく服が無く、道中を彷徨っているところ同級生を見かけて電信柱に隠れるというシーン。前部分の二重否定も味があり、やや理由とすれば古臭く、ありきたりと思えてしまう部分もあるが、これはなかなか想像に値する描写だと思った。ただ、基本的にオチまでの展開が弱いので、その収束感をもう少し読者に感じさせないようにというか、場面全体を盛り上げる表現を一つ二つ加えて、もう少し人物像に迫った描き方をすれば、面白い作品になるのではないかと感じた。


=========終わり=========

>眠

更新し終わる頃には眠気がマックスになる。
kirekoの中の人には、よくあること。

パカパカパッション

2008年07月11日 16時41分41秒 | 末路話
懐かしすぎて思わず作業がはかどる!@kirekoです。


>パカパカパッション



とにかくkirekoの中で音ゲーというと、これ。懐かしすぎる。
やった人が居るといいんだが、とにかくプレイしてて耳に残る
良い曲ばっかりだった。
エスケープ頑張ってクリアした時のあの感動が、忘れられないぜ!
当時ゲーセンの入り口には、必ずビーマニとか置いてあって
人も居て流行ってたけど、俺は必ず奥にあるほぼ無人の
パカパカパッションやってたなー。
今は音ゲーもどうなってるかわからないけど、ポップンとこれだけは
なんとなくやってたkirekoであったとさ。(あとストライカーズⅡとガンバード)

ぬう!それにしてもなんという独り言!
話題について来れない奴は置いてくぜ!な話でした。

7月10日に雨は降らない

2008年07月10日 23時20分51秒 | 小説の感想と批評
それとも短絡的な感想の羅列にしようか@kirekoです。


>今日の感想と批評

もう、うだうだ言うのもなんなので、
いい加減感想もクールビズでいこうかと思います。


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*感想テンプレ

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:あらすじ(小説家になろう投稿時に書いてあるあらすじ)
:感想(kirekoの感想)

*感想テンプレ終わり



============はい開始==============


~catch the my freedom of human foolish~ ジャンル その他 作:空海陸

:あらすじ
違う世界で同じことを考える者たち―――彼らは「自由」を求めていたり、「自由」を掴んでいたりする者。そんな、彼らの想いを書いた短編小説―――。

:感想
自由の定義付けが曖昧なので、求めようとする自由の絵が想像できず、やはり台詞が上辺だけで、嘘臭く感じる。言いたい事がわからん。自由は義務を果たすことによって成立しているのであって、義務という観念、いわゆる自由へのプロセスを無くしたら、それは不自由の始まりだと思ってしまうkirekoからすると、疑問だらけの小説だった。キャラクターに作者が抱く安易な思考の組み立てを喋らせるなら、もう少し大雑把な理屈が欲しいところ。快速急行妄想どまり。あと、脳内で出来てる絵は、文字にちゃんと現さないと伝わってこない。ファンタジー臭いプロローグを覗き見て、「それで?」って感じだった。以上、得る物なし。


だからみんな死んでしまえばいいのに ジャンル SF 作:和波知淳

:あらすじ
ある高校を突然席巻した殺戮の狂気。何故、悲劇は起きた……?

:感想
圧倒的に無駄な文字が多い、あと所々句読点不足な場所があり、とても読みにくい。なんだろうな。作者は狂気を描きたいのか、ただの猟奇を描きたいのか、どちらにしても表現が綺麗(簡単)すぎる。血の通ってない冷血な文章と思うほど、描写が書き足りない。生々しい、見てきたかのようにジトジトするような上手い表現がないから、味気ない地の文と供に、描写が中途半端になっちゃってるんだよね。台詞も見所がなく、オチの演出も安直極まりない。もっと肩の力を抜いて、深呼吸して書いてくれ。


平和が訪れた後 ジャンル ファンタジー 作:セテツメ

:あらすじ
平和が訪れたこの世界。誰もが待ち望んだ平和。だけど、君は消えてしまった・・・

:感想
テーマは気になるが、なんともお粗末。全てが抽象的過ぎて、作者が言う「ここは」と思うところが一つも無かった。はぁ、もう少し背景や事象を具体的に書いたほうが、読み手に伝わる情報量も多く出来ていいんじゃないかな。あなたの世界を頭の中で描くのはあなただが、あなたの世界を伝えているのは文字だ。


Early summer rain ジャンル 文学 作:椎野 千洋

:あらすじ
大学四年になった僕は高校最後の年、ケンジと走り、あの日気まぐれな五月雨が降っていた事を思い出す。あの日と同じ、気まぐれな五月雨の降りしきる山林の車道を僕は行く。同じ時間に追いつく為に。(覆面小説家になろう、プレ開催参加作品です。)

:感想
テーマと、落ち着いた文章の書き方が非常に好き。たまに入るミニチュアな哲学も、本文中の少し思考が入り込んだ表現も、嫌味がなくてすんなり読めると思う。ちょっと謎な面(死は内包された比喩なのか、それとも本当の死なのか)もあったが、友情の描写、入りやすいキャラクターの造りこみ、次が気になる展開の面白さなどなど、なかなか良い作品だと思う。日常的な非日常を感覚的に捉えた作品の割には、事象に関して少しも後ろめたさが無いところ、書き方がややさっぱりとしているからこそ、読み手が想像を掻き立てられる作品に仕上がっているのが凄いと思う。こう言ってはなんだが、ケンジの使い方が上手いと思った。


蚊ガール ジャンル コメディー 作:光太朗

:あらすじ
ある日少女が訪れた。しかしその少女は実は──蚊だった。幸太の元に突然現れた少女、蚊。幸太と蚊ガールとの、一夜の甘いひととき。☆★☆交流サイト、小説喫茶企画参加作です☆★☆

:感想
こりゃずるいよ!面白いって言えっていってるようなもんじゃん!
はい、というわけで、いたって面白いです。着眼点というか、ビジュアルのこだわりというか、たぶんライトな読者さんにもわかりやすい作品なんじゃないかな?とにかく、心が澄み切るような綺麗な文章で、改行も適度にあり、なかなか読ませてくれます。なんだか自分の陳腐な感想を言うよりも、皆さん一人一人が読んで感想をシミジミしたほうが良いような気がします。そういう作品です。まあ読んでみてくださいよ。


============終わり============


>急激な眠気が

別段、寝不足じゃないんだけど
なんか眠い気がする今日この頃。

みなさんのおかげです、7月9日

2008年07月09日 16時36分45秒 | 小説の感想と批評
義務感に突き動かされて本筋を見失う@kirekoです。

>今日の感想と批評

( ゜д゜ )たのむー!
( ゜д゜ )この日は良い小説ばっかであってくれー!

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*感想テンプレ終わり



============はい開始==============

車輪の跡、ありがとうが言いたくて ジャンル 恋愛 作:コノエイクノ

:あらすじ
雪が降る寒い早朝。積もった雪を潰しながら、町の最後を、彼女の最後を受け入れに行く。少しだけ冷たくて、少しだけ暖かい物語。(多分……

:感想
ファンじゃないけど、回れ右でいいっすかね?
ちょっとこういう不幸のバーゲンセールっていうんですかね、そういうのに食傷気味なので、普通は「イイハナシダナー」程度の話にもイチャモンつけます。全体的に薄味です。音楽というのは音という情報があるから、拙い文章での感動もありえるのであって、小説は情報が文字でしか伝わらないので印象が180度違います。やっぱり人を文字で感動させるってのは、上手い具合に調味料が必要なんですよ。本当に存在するような写実的なキャラクターや、やや悲劇とも共感できる場面、想像を促す場景、その描写一つ一つに作者の緻密な土台がちゃんと作られてないと、文章そのものの味、作者のやりたいこと、登場するキャラクターの感情の移ろいってのは表現できないと思うんですよ。だから、些細な理屈や説明を怠ったら、だめなんですよ。kirekoのダメな小説への感想が、大体同じ事を言い始めたと思った人は回れ右っ!


親父の顔 ジャンル 文学 作:野火俊弥

:あらすじ
親父に似たいと思わないが、親父に似ている腹違いの兄に固執するのはやはり親父の顔や存在しかない。親の愛を理解出来ない淋しさの虚しさの話。

:感想
語り始め僅か8行、50文字で読み手の想像力をかき立てられる文章には脱帽。目線を変えずに、ここまで煩雑に並べられているのに、雰囲気と本筋のブレがなく書けるのは書き手として非常に羨ましい。練り上げられた独特の雰囲気は、確かに読み手に伝わってくる感じがした。が、小説の演出面、構成面としてはやや不可思議な印象(台詞文を段落わけもせず、いきなり本文中に出してくるなど)もあり、やはり小説としての完成度がたりない。心情の理解と、それに対しての共感はできるが、どこか日誌的(まあどこの小説も同じような事はやるが)な表現がクドい気がして、個人的に好みじゃない部類だった。ただ、普通の人でも読めると思うので、是非悪感情を持たずに、読んで欲しい作品だということは保障する。


天使の言葉 ジャンル その他 作:海南

:あらすじ
変わり者の修道士、ロン=フィンダン。そして僕。変わらない平凡な日々に、いつもロン修道士は僕に語りかける。世界のことや、命のことなど・・・・・・。これは、そんなロン修道士と僕の対話文。

:感想
ちょっと哲学的な話。生きるとは何、死ぬとは何、では死んだように生きるとはと対話の中で哲学を交わすが、結局答えは出ない。じゃあ何でそんな質問したんだバッキャローめ!と言いたくなる、そんな作品。まあ理屈で片付けるように仕向けたらお話にならないからこういう体裁をとったんだろうけど、ちょっと真理に近づくには上辺臭いというか、無意味な問答かなあ。仄めかすんじゃなくて、もっと二人とも明確な真理の答えがあれば、お話はグッと引き立つと思うんだけど、修道士の「生死は表裏ではないと思う」と、論点をはぐらかすようなボヤけた答えが、やや作者のサボりにも感じた。やるならやれよ!と読者が言葉に出してしまいそうな、そんなアンニュイさが、この小説売りか?もう少し作者の観念めいたもの、その奥底のイデオロギーに満ちた哲学的なお話を期待していただけに、ちょっと残念な結果だった。


サヨナラ ジャンル 恋愛 作:那雅汐 緋嘩

:あらすじ
どうしてお互いすれ違ったんだろう。お互い愛し合っていたのに・・・それでも君と僕の時間は止まった。だから・・・

:感想
後書きに中傷的な言葉はよしてくださいと書いてあるので、「中傷」=根拠もなく悪口を言うことはよそう。
ただ個人的に思ったのは、感動するわけでもないし、面白いと興味を惹かれるのでもないし、「これは凄い」「よくあることだな」なんて共感できるわけでもないし、腹抱えて笑えるわけでもない。俺が言いたいのは、脳内語りを載せて批判を恐れるぐらいなら、自前で用意した自由帳にそれを書いて、誰にも見えないように封をしておくこと。そうしないと批判しまいと思っていた人の目にも入ってしまう。えてして、この投稿サイトとは、そういう場所だと思う。
褒めて欲しいなら『それなり』の作品を書け。
書けないなら『心構え』だけはしっかりしろ。以上。


=========終わり============


>どんだけツンギレだよ!
あたかも見れる場所に置いといて、駄作です><とか免罪符巻いといて
「どう?」って顔して、ぬけぬけ感想聞きたいくせに、
素直な感想言ったら、逆ギレされるとか、もうね、
これが世に言うツンギレ思考ですね、わかります。

読んでくださる方が例えば批判的でも、万事受け入れてやるぐらいの度量の広さ示して、あくまでも媚びずにアピールしつつ、「ああ、この作者は真面目に物を作ってるんだな」と言うブラフの姿勢こそが、次の読者、ならびにファンを呼ぶ…そういう計算が出来るのが、物書きってもんだろうが…!


いっておきますけど、僕は違いますよ><
読者ぁ?置いてくぜー!

7月8日は曇りだったか

2008年07月09日 15時31分12秒 | 小説の感想と批評
ボケっとしてんじゃねえよ!@kirekoです。

>今日の感想と批評

('A`)良い小説だけ読みたいってのは確かに贅沢だよ。
('A`)だけど、せっかく読んで感想言うなら内容があったほうがいいじゃん。


■企画の意図は、こちら
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*感想テンプレ

■(タイトル+小説直リンク) ジャンル(ジャンル) 作:作者名
:あらすじ(小説家になろう投稿時に書いてあるあらすじ)
:感想(kirekoの感想)

*感想テンプレ終わり



============はい開始==============


DD Novel れでぃお ジャンル コメディー 作:des14

:あらすじ
暇だからやっちゃいました。後悔?んなもんドブに捨てました。

:感想
よし、脳内ラジオがやりたいのはわかった。充分すぎるほどわかった。わかったから、無意味な記号付けと台本形式をやめよう。不思議な事に、一見して「こりゃだめだな」と思うものに限って意外と面白いんじゃないかって裏を探ってしまうkirekoでも、これはダメだと思った。いや、何処の何がダメとかじゃなくて、ラジオというシチュエーション以外全部。とりあえず、別ウインドウでモダンジャズでも聞きながら読むのが精神的に良いかもね。読む価値無し。駄作!


鎖雨樋(改稿版) ジャンル 文学 作:マグロ頭

:あらすじ
しとしとと降り続ける梅雨の雨。彼女が繰り返すの現実に終わりはあるのだろうか。――今作は『覆面小説家になろう』という企画にて書いた作品を改稿したものです。改稿をお許しくださった企画者へ感謝申し上げます。

:感想
一番最初の導入で失敗してるというか、序盤必要ないんじゃないのこれ?なんでこういう、素人目にも読ませたくない具合に書いてるんだろ。一言で言うと『くどい』んですよ。言いたい事はわかるし、やりたい事もわかる。でも、そう何度も反復咀嚼されたら、読者は嫌になっちゃうよ。くどくどお説教聞いてるんじゃないんだから、もっとシャッキリはっきり、そんでもってニヤりとさせる描写を盛り込んでくれ。題材的にいくらでも面白く出来たのに、勿体無い。この作者さんのファンの人には、とてつもない悪口雑言の類になってしまうのだが、個人的にひどい出来の小説だと思う。ひきつけるために書いたのであろう描写文の書き出しの失敗、物を書く順序がちぐはぐ、必要以上の描写の無駄、登場人物の設定が判りにくい…などなど、なぜこんな風に書いたのか、同じ「クドクド系」の書き手としても理解できなかった。素直に書けば読める話だと思えたのに、なんでこうも気持ちの悪い文にしてしまったのか。うーん、どんなに文章に力があっても、計画性の無い描写と、それについてのアクセントの無い小説は面白みに欠けるものだと感じた。



白の天使 ジャンル その他 作:トキア

:あらすじ
まったり日常。父と娘のほんわかストーリー。

:感想
久々に舞い落ちる雪を花弁なんて表現(雪の結晶の六角形が花のように見えるため)する小説を見た気がする。ほんわかほほえましい感じに書こうとしている努力は見えるし、台詞描写もなんなく入り込める話だと思う。ただ、構成面での欠点、いわゆる改行嫌いな人(自分もだが)には、ちょっと凡庸な台詞が多い分だけ読みにくく感じる気もする。もう少し動作と場景の説明を怠らなければ、十分読める小説なんじゃなかろうか。


君との約束 ジャンル 恋愛 作:くろけん

:あらすじ
この小説は2人が主な登場人物です。1人は黒岐健。もう1人は鷹野みほ。この2人が繰り広げる物語です。

:感想
なぜ台本にした。
一人語りにしては話の内容が面白そうなのに、なんで台詞を全て台本形式にしたんだ。衝撃の擬音まで丁寧に記号がふってあるし…。くそっ、それさえなければ、まだ演出面『だけ』で読めたかもしれないと思ったんだが、いかんせん馬鹿みたいなドラマ要素に流されてしまって、演出面もくだらないというお粗末ぶり。謎の反復や無駄な部分の多さはもとより、ちょいと事情が簡単に進みすぎじゃないかな。小説としての重要な部分を見失っている気がする。やる気があるなら、ちゃんとした改訂をしてくれ。


姫の乗馬 riding horse of princess ジャンル 歴史 作:鐡蔵

:あらすじ
貧窮のどん底に喘ぐ下級武士の一弥が、ひょんなことから藩公のご令嬢梨菜姫の御乗馬の介添え役に選ばれる。梨菜姫から気に入られトントン拍子に出世、やがては姫と夫婦になるという、お目出度い物語です。

:感想
5行目まで読んで今日初めて「救われた!」と思わせる文章だった。良く出来たキャラクター要素、堅い物を書いてる割に、やけに情事的に思えるエロティックな描写、当時の世相や史実に近い南部藩の事情など、なかなか「匂わせる」歴史公証が力のある文章で、秀逸だと思った。特に気に入りだったのは序盤、原文で言う
散々嫌がっていた一弥も、姫君の度重なる命令に背けず、ついに衣服を脱ぎ下帯姿となった。姫が言うように、一弥の体躯は上半身、下半身とも凄まじく発達し、つややかに光っている。
「まあ、素敵。少し触っていい?」
「は、はっ。何処でもご遠慮なくお触りください」
梨菜姫はいとおしいように後ろにお立ちになられ、一弥の背中や首筋、下肢にも手を伸ばし、優しく触る。背に柔らかい暖かな感じがする。姫君が唇をお付けになられたのだ。
「ひ、ひ、姫様。そのようなことを為されますと、お口が汚れます」
「いいの。こうしたかったのよ。小早に乗りたいと言ったのは口実です。一弥。前を向きなさい」

この部分には、流石のkirekoもニヤッとしてしまった。その瞬間を想像してみれば、『真っ裸同然にひん剥いた筋骨隆々の男の体を姫さんが○○しちゃう』なんて、なんかちょっと「変態かよ!」と突っ込んでしまいそうになるのだが、文章が堅いおかげで、そのギャップが面白い。やっぱりこういう作り手の遊び心にかける真剣さ、そのメタフィクションな感じに憧れてしまった。ただちょっと文字の密集率が高くて、読めない人には読めないと思う。それでも人にオススメしたい一作。秀作!


========終わり============

>不作だなー
最期の作品に救われたわい。