鍋をつつくと気がめいる@kirekoです。
>第四弾描写まとめ
今回の鍋ネタ、kireko自身思ってもいなかった
予想のななめ上をいくハプニングがありましたが
今回は、鍋奉行的な思考で各作品にレスしていこうかと思います。
今夜の鍋はこれできまり!
■葛城炯さん
コタツの上にホットプレートを置く。
鍋にもなるというヤツだ。
ブレーカーが落ちるのがいやなので、コタツの電源はオフ。仕方ないが足元は寒くなる。
まぁ、その分鍋は熱くなる。
次第に湯気が上がり、入れていたネギとタマネギの香りが部屋を充していく。
温度設定を下げて沸騰しないように。
「こんな贅沢もたまには良いだろ。独りになったんだし」
安売りしていたすき焼き用の肉。
それを箸で掬って湯の中へ。
揺らすだけで色が変わる。
ポン酢に漬けてから口の中へと……
「んまいよなぁ」
次の一枚をと湯の中へ入れ挙げようとした途端に箸から逃げた。
「おっと。っち」
慌てた箸が鍋の底を突いてお湯が跳ねた。
うむうむ、わしが今回の鍋ネタを取り仕切る鍋奉行であるぞ。
鍋に関してはかなりうるさい事を言うが、我慢してたもれ。
というわけで、葛城氏がつくったのは、ネギとたまねぎと肉の鍋じゃな。
いつもぶっ飛んだテイストで攻めてくる葛城氏にしては珍しい普通の鍋描写で、奉行は驚いたぞ!
たしかにこのシリーズは描写メインではあり、そのままストレートに来るとは天晴れな心意気じゃが、普段の葛城氏を見ている奉行からすると、やや味の薄いポン酢で春菊を食している気分じゃった。
いつもの葛城氏なら、もっと面白い鍋が来ると思っていただけに残念じゃ。
ブレーカーがおちないように、コタツの電源をきるところは良かったんじゃがのう……次回に期待じゃな!
■名無しさん
今日は鍋だ。
クッキングヒーターで温められている鍋は、その蓋に空いた穴から蒸気を噴きだしている。
「もう良いかな?」
ここには鍋奉行も待ち奉行もいない。だから、あまりに待ちきれない俺はつい出しゃばってしまった。
「そうだね、あけてみよ」
特に気にとめず彼女がそう言ったので、俺は鍋の蓋を開けようとした。
「あっつっ!」
あまりの待ちきれ無さについつい素手で掴んでしまった鍋の蓋は、とても熱かった。
「大丈夫?」
心配そうに彼女は俺の顔をのぞき込む。
「大丈夫」
そう言い俺は、気を取り直してタオル越しに蓋を掴み、取り上げた。
鍋からは蓋の穴ではとうてい排出できないような大量の蒸気が、一度にもわっと飛び出してきた。鍋をのぞき込むと、その蒸気が顔を湿らせる。
「いいんじゃないかな」
彼女がそう言うのを聞いてか聞かずか、俺は颯爽と箸を手にして、鍋をつつき始める。
とりあえず橋を延ばした先にある豆腐を掴む。が、箸で掴む力によって豆腐は無惨にも二つに分かれてしまった。
「……豆腐やらかい」
「木綿の方が良かったかな? 何ならお玉使う?」
「……いや、悔しいからいい」
俺はめげずに分かれた豆腐の片割れを上手く掴み、ポン酢の入った取り皿に取った。そしてそのままその豆腐を口へ運ぶ。
「あっふっ!」
豆腐もまた、熱かった。
「ひょ、あふい、くほっ」
息を荒げながら、俺は言葉になりきってない声をあげる。
「もう、そんなに急がなくても良いのに」
そう言って同じく豆腐を口にした彼女もまた、「あつっ」という言葉を口にした。
鍋奉行ならここにおるぞ!
ええい、絹ごしを取るのに箸を使うとは!
箸でとりたいという気概は認めるが、鍋の汁に豆腐の残骸が浮くから、
これからは存分に豆腐すくいを使いなされ!
しかし、豆腐しか食べておらんのに、なんておいしそうな描写じゃ!
男女仲良く一つの鍋をつつくとは、色んな意味でよだれがとまらんのう!
二の舞を踏む彼女の可愛さは、奉行にも良くわかるぞーう!
■kanameさん
「今日は寒いから、お鍋にしようと思ったの。どう?」
愛くるしい笑みを零して二面相(以下ニメ)が問う。
しかしその声音は愛らしいながら、問うというより「是」以外の答えを求めているとは思えないほどの強さだった。
――本当は、鍋より温まる方法があるのだが。
そう言いたいのを、下唇を根こそぎ噛んで、口内に充満する鉄の味で理性にしがみつきつつぐっと堪えるツバメだった。
「……いいですね」
下唇の真ん中から鮮血を滴らせながらそう答えるツバメに、ニメはまるで心配する気配もなく
「でしょ、てへ★」
と小悪魔の笑みを返しながら、既に出来ている鍋を卓上コンロの上にことりと置いた。
(これはこれで、まあいいか)
煩悩まみれのツバメにそう思わせるほど、ニメの鍋は美味そうだった。
何が、と問われれば答えねばなるまい。
誰も訊いてはいないのに、ツバメは独り脳内会話を独擅場(どくせんじょう)で繰り広げた。
まずは、この鍋の適度な大きさ。
二人分というのは実に難しい。
ニメは過不足ない大きさの鍋を、ツバメの為にわざわざ遥か遠くM18星雲から持参し、人数分プラス1の大きさで、若干のゆとりを持ったサイズに適度な量の具材を投入している。
続いて、この具材の一つ一つがまた素晴らしいのだ。
噂によると、ニメの微乳仲間・Kanameの居住地は、牛肉の産地らしい。ニメはツバメの為に、微な乳をKanameに更に譲って貧にしてまで、霜降り和牛を手に入れてくれた。
ひとしゃぶで熱がほどよく通りそうな薄さなのに、しっかり赤みと脂肪の絶妙なコントラストがよく解る、上質な肉。それだけでも充分な美味さなのに、それをニメは自らの箸でひとしゃぶすると、
「はい、あーん」
などと言ってツバメの口許まで運んでくれるのだ。これが美味くない筈がない。
まだ熱を通していない新鮮な生肉と張り合うほどの色に顔を朱に染めながら、ツバメはゆっくりと口をあけ、愛情たっぷりの一口を満喫し――ようとした。
「なーんて、シュバッ!」
「あづっ! あぢぢぢぢぃぃぃぃっっっ!!」
小悪魔・ニメ。その通り名の通り、今一歩のところで華麗に愛の空間から巧みにギャグへと空気を見事に切り替える。
儚く舞い上がる、極上の、肉。虚しく散ってゆくらびゅーな空気。焼けつく眼球と裏腹に、ツバメの心に寒風が吹きすさぶ。
「ツバちゃん、ごめんねぇ。目に当たっちゃったねぇ。ゆるしてちょっ!><」
く……っ。会話文に顔文字など邪道だ! と言いたいのに、相手がニメだと思うと言うに言えない。
すかさず差し出された冷たいおしぼりにも、頭ではサービスと解っているのに愛を探してしまう。
ツバメの頭上へ、忘れた頃に肉が舞い降りて来る。
「ああ、もったいない。髪の毛についちゃったから、食べられないね」
ニメはそう言って、鍋から出た灰汁を入れる専用ボールに、その肉をぽちょりと浮かせた。
ツバメは、冷え切り灰汁まみれになった肉の中に、自分を見た。
その後、ツバメが牛しゃぶ鍋を嫌いになったのは言うまでもない(ついでにKanameも)。
何と!
独壇場(どくだんじょう)は、実は独擅場(どくせんじょう)の誤読から生まれた読み方であるということを知っておるものがおったとは、うむうむ、実に天晴れであるぞ!
うむ、そして霜降り肉の牛しゃぶとは、豪勢じゃ。
少し身内ネタに近いものじゃから、説明不足な感じが否めないが、M18星雲から鍋もってきたとか、そういう設定がぶっ飛んでいて面白いぞい。
肉のために微を貧にするとは(捧げたんじゃろうか?)、なかなか出来た女房ではないか!
しかし、どちらかというと鍋より違う物に視点が行き過ぎている気もするのう。
肉の美味い不味いはもとより、鍋描写に関してはオマケみたいじゃ。
これでは鍋好きの奉行も匙を投げてしまうぞ!
うーん、奉行は確かにコメディーも好きじゃが、
出来るなら、せめてツバメに一口食べさせて味を噛み締めさせてくれても良かったんじゃないかのう。
あと、最期の冷え切って灰汁まみれの肉を見て、自分と重ね合わせたツバメの心情も、もうちょっと書いて欲しいのう。
■kanameさん&二面相君のリレーで行われた続編
「あ、大変、ほっぺたにシラタキがついてるよ?」
ニメはツバメを見上げた。狙い澄ました上目遣い。
「あ、ほんとだ」
「とって──って、いってくれないの?」
誘うような目に、甘い言葉。ツバメは瞬きをした。三回。どう答えるのが正解なのか……「とって☆」というべきか?
「じ、じゃあ、とってください」
いまいち敬語が抜けない。けれど、そんなところがニメのある部分に火をつけているとは知らず、ツバメはどもりつつリクエストに応える。
ニメは微笑んだ。いたずらっぽく目を細め、唇を小さく突き出す。
「じゃ、ね。ちゅうでとっても、いい?」
ツバメは激震した。
ちゅうで。
ちゅうで、とる──!
「い、いけなくはないけど」
意訳、「全力でお願いします」。
ニメは両手を振り上げた。
「出でよ、ちゅうちゅうマウス──!」
するとどうしたことだろう! 空間が輝きだし、鍋の上からかの有名なアメリカンなネズミさんとクリソツ(意訳:高確率でパクった感じ)なネズミが飛び出した。
「ちゅうちゅう、ちゅうちゅうー!」
ネズミは吠えた。繰り出す魂の鉄拳がツバメの頬をクリーンヒットする。
「ぐぁあああっ」
「よかった、シラタキとれたね☆ ちゅうでとっちゃいました、なあんちゃって」
確かに、シラタキはとれた。ついでに歯も二、三本。
下唇に自らの歯型。口内からは、抜歯(?)後の歯茎からの鮮血。
しかし、ツバメはそれでも微笑む。ニメの愛らしい笑顔を曇らせぬ為に。
「……ツバちゃん、怖い」
あっさりと、笑顔はツバメの面から消えた。
何処へ行った、ラブワールド。
ツバメに僅かに残された煩悩が、序盤に散りばめられた愛を探し求めて視線を彷徨わせる。
目の前に、鍋。まだ、しらたきと肉しか消え去っていない、ぐらぐらと煮えたぎる、我が煩悩の如き熱い鍋。中では、有機栽培と銘打ち、3倍もの値段で売られていた、水菜と大根と人参が残っている。
早く、早く召し上がらねば、水菜など特に、とろとろになってしまう!
とろとろにしたいのはニメのハートなのだ、水菜はシャキシャキの方がよい。
「ニメさん」
「ニメって呼んでくれない――の?」
何だ、その間は?!
「呼んでくれない」
という狂おしい批難のメッセージと受け取ってよいのだろうか。
ツバメのありそうでなさそうで、でもやっぱりあった、微量の理性が水菜トロトロ危機を知らせていたのに。「間」という小悪魔の媚薬が、再びツバメに次の試練を与えるのだった。
「に、ニメ」
ツバメは頑張った。もうすぐ今年も終わるが、二〇〇八年もっとも頑張ったで賞を授与したいぐらいに頑張った。
しかし、ニメは眉根を寄せ、頬を膨らませる。
「ニニメじゃないですー、ニメですー」
「ニメ」
今度こそ、ツバメはその名を呼んだ。真剣に、優しく。
ニメが顔を上げる。ぶつかる目線。ときめきの導火線がお互いの身体中を走り抜けた。
これは、イケるかもしれない──ツバメは息を飲んだ。そう、足りなかったのは強引さとさり気ない優しさ。
優しさで攻められたらついていくしかないかもねニャーオな展開が、すぐ目の前に──!
「やっぱり、ニメさんでいいや」
ニメは、ぷいと目を逸らした。
「な、なんで」
ツバメにしてみれば拍子抜けだ。呼んで欲しいという意思表示だと思ったのは、間違っていたのだろうか。
「だってね……笑わない?」
「もちろん」
「ほんとかな」
ニメは恥ずかしそうに笑った。頬と耳とが、真っ赤に染まっている。
「あのね、すごく嬉しかったけど……そんなふうに呼ばれたら、わたし、どうにかなっちゃうもん。だから、ニメさんでいいの」
ツバメの脳がぐらぐらと煮え立った。水菜などメじゃないぐらいに何かがこれでもかと煮溶けた。
これは、これは、これは──
──誘っているとしか!
「ニニニニメさ……──」
繰り出した両腕が、空中を抱きしめる。
まさにちょうどのタイミングで、インターホンが鳴ったのだ。
「はあい」
ぱたぱたと走り去っていくニメ。ツバメの涙が乾燥した室内に潤いをプラスする。
「や、遅れてゴメン、ハニー」
「きゃあんっ、お姉様☆」
ニメの弾んだ声が、否応なくツバメの耳に届いた。ツバメには、訪れたのが誰なのか、すぐにわかってしまった。
「か、カーナメーノさん……」
「ぐぬぬぬ、鍋奉行である、わしを愚弄するつもりか!」
奉行は、あまりの鍋の関係なさに、怒って出て行ってしまった。
そして、後に残ったkirekoはこう呟いた。
「お前たち、色々話したい事があるから後で職員室にきなさい。」
>その他レス
鍋といえば豆腐ですねー。白菜もいいですが。
個人的には最初は白菜だし、あと何かの具を取り合うシーンも欲しかったんですが、うまく書けなかったです、反省。
というわけで、おすすめは「豆腐」「白菜」。あと「鳥団子」ですね。
あー鍋したいなー。
具を取り合うネタは、確かに面白そうですな。
コメディータッチにも、シリアスタッチにも、なりうる自由自在な展開だと思います。
で、やっぱり、お酒が入るとなると、やはり豆腐は欠かせぬでござるな。
しかし鳥団子に白菜とは、くううっ、流石わかっていらっしゃるっ!!
kirekoも、煮えきった白菜と、旨味の詰まった鳥団子を鍋に入れるのは好きでござるよ!!
一時期白菜と鳥団子を使った鍋料理に、大ハマりにハマって、一日三食鍋ということもザラでござった!!
よし、今度拙者と鍋でも突きながら、語らおうではないか!
妄想作文のご紹介をありがとうございます。m(_ _)m
> 第三者が見た、他の人たちっていうのは、
とkirekoさんことツバちゃんが仰って半時間後、
ビックリドッキリ
『第三者が見た』
モノではなくなっておりました。
これにはKanameもビックリです。(゜Д゜)マジカヨ ニメチャン…
コメント欄も、是非お楽しみ下さい。m(_ _)m by お知らせかなめん
こんなに嬉しい思いをしたのは初めてでござった。
そして、前にも言ったことだが、
なぜもう少し甘く書かなかった。なぜ……!(涙目)
確かにリアルな感じだったけどさ……
せめて話の中だけでもイチャイチャさせてくれたっていいじゃない!
まったく怒ってないけど、なぜか悔しい思いをしたkirekoでした。
>総括
皆さん、参加ありがとうございました。
闇鍋は、白菜と鳥団子と豆腐とたまねぎとネギとポン酢と白滝と涙の味が含まれるぽいです。
今回、kirekoの言い方も悪かったと思うんですが
話というより描写に集中する参加者が大半でしたね。
あえてkirekoが例題を普通にする事で、
参加者達の亜流「鍋を突く」を見たかったんですが、
大本命の葛城さんが変わり玉使ってこなかったのは本当に驚きの一言でした。
その代わり、kanameさんと二面相君のネタが、違う意味でぶっ飛んでましたが……。
ただ、この二人の書いた、実在する人物をネタにするというのは、
個人的に面白いと感じたので、後で色んな人をモチーフにした話でも
復讐がてら書こうかなと思ってます。
それでは、次回の企画までさらば!
■ふっふっふ、勝手に名前使われたくない奴は、今の内に名乗りをあげるんだよ!WEB拍手(何か一言あったらドウゾ)
web拍手を送る
>第四弾描写まとめ
今回の鍋ネタ、kireko自身思ってもいなかった
予想のななめ上をいくハプニングがありましたが
今回は、鍋奉行的な思考で各作品にレスしていこうかと思います。
今夜の鍋はこれできまり!
■葛城炯さん
コタツの上にホットプレートを置く。
鍋にもなるというヤツだ。
ブレーカーが落ちるのがいやなので、コタツの電源はオフ。仕方ないが足元は寒くなる。
まぁ、その分鍋は熱くなる。
次第に湯気が上がり、入れていたネギとタマネギの香りが部屋を充していく。
温度設定を下げて沸騰しないように。
「こんな贅沢もたまには良いだろ。独りになったんだし」
安売りしていたすき焼き用の肉。
それを箸で掬って湯の中へ。
揺らすだけで色が変わる。
ポン酢に漬けてから口の中へと……
「んまいよなぁ」
次の一枚をと湯の中へ入れ挙げようとした途端に箸から逃げた。
「おっと。っち」
慌てた箸が鍋の底を突いてお湯が跳ねた。
うむうむ、わしが今回の鍋ネタを取り仕切る鍋奉行であるぞ。
鍋に関してはかなりうるさい事を言うが、我慢してたもれ。
というわけで、葛城氏がつくったのは、ネギとたまねぎと肉の鍋じゃな。
いつもぶっ飛んだテイストで攻めてくる葛城氏にしては珍しい普通の鍋描写で、奉行は驚いたぞ!
たしかにこのシリーズは描写メインではあり、そのままストレートに来るとは天晴れな心意気じゃが、普段の葛城氏を見ている奉行からすると、やや味の薄いポン酢で春菊を食している気分じゃった。
いつもの葛城氏なら、もっと面白い鍋が来ると思っていただけに残念じゃ。
ブレーカーがおちないように、コタツの電源をきるところは良かったんじゃがのう……次回に期待じゃな!
■名無しさん
今日は鍋だ。
クッキングヒーターで温められている鍋は、その蓋に空いた穴から蒸気を噴きだしている。
「もう良いかな?」
ここには鍋奉行も待ち奉行もいない。だから、あまりに待ちきれない俺はつい出しゃばってしまった。
「そうだね、あけてみよ」
特に気にとめず彼女がそう言ったので、俺は鍋の蓋を開けようとした。
「あっつっ!」
あまりの待ちきれ無さについつい素手で掴んでしまった鍋の蓋は、とても熱かった。
「大丈夫?」
心配そうに彼女は俺の顔をのぞき込む。
「大丈夫」
そう言い俺は、気を取り直してタオル越しに蓋を掴み、取り上げた。
鍋からは蓋の穴ではとうてい排出できないような大量の蒸気が、一度にもわっと飛び出してきた。鍋をのぞき込むと、その蒸気が顔を湿らせる。
「いいんじゃないかな」
彼女がそう言うのを聞いてか聞かずか、俺は颯爽と箸を手にして、鍋をつつき始める。
とりあえず橋を延ばした先にある豆腐を掴む。が、箸で掴む力によって豆腐は無惨にも二つに分かれてしまった。
「……豆腐やらかい」
「木綿の方が良かったかな? 何ならお玉使う?」
「……いや、悔しいからいい」
俺はめげずに分かれた豆腐の片割れを上手く掴み、ポン酢の入った取り皿に取った。そしてそのままその豆腐を口へ運ぶ。
「あっふっ!」
豆腐もまた、熱かった。
「ひょ、あふい、くほっ」
息を荒げながら、俺は言葉になりきってない声をあげる。
「もう、そんなに急がなくても良いのに」
そう言って同じく豆腐を口にした彼女もまた、「あつっ」という言葉を口にした。
鍋奉行ならここにおるぞ!
ええい、絹ごしを取るのに箸を使うとは!
箸でとりたいという気概は認めるが、鍋の汁に豆腐の残骸が浮くから、
これからは存分に豆腐すくいを使いなされ!
しかし、豆腐しか食べておらんのに、なんておいしそうな描写じゃ!
男女仲良く一つの鍋をつつくとは、色んな意味でよだれがとまらんのう!
二の舞を踏む彼女の可愛さは、奉行にも良くわかるぞーう!
■kanameさん
「今日は寒いから、お鍋にしようと思ったの。どう?」
愛くるしい笑みを零して二面相(以下ニメ)が問う。
しかしその声音は愛らしいながら、問うというより「是」以外の答えを求めているとは思えないほどの強さだった。
――本当は、鍋より温まる方法があるのだが。
そう言いたいのを、下唇を根こそぎ噛んで、口内に充満する鉄の味で理性にしがみつきつつぐっと堪えるツバメだった。
「……いいですね」
下唇の真ん中から鮮血を滴らせながらそう答えるツバメに、ニメはまるで心配する気配もなく
「でしょ、てへ★」
と小悪魔の笑みを返しながら、既に出来ている鍋を卓上コンロの上にことりと置いた。
(これはこれで、まあいいか)
煩悩まみれのツバメにそう思わせるほど、ニメの鍋は美味そうだった。
何が、と問われれば答えねばなるまい。
誰も訊いてはいないのに、ツバメは独り脳内会話を独擅場(どくせんじょう)で繰り広げた。
まずは、この鍋の適度な大きさ。
二人分というのは実に難しい。
ニメは過不足ない大きさの鍋を、ツバメの為にわざわざ遥か遠くM18星雲から持参し、人数分プラス1の大きさで、若干のゆとりを持ったサイズに適度な量の具材を投入している。
続いて、この具材の一つ一つがまた素晴らしいのだ。
噂によると、ニメの微乳仲間・Kanameの居住地は、牛肉の産地らしい。ニメはツバメの為に、微な乳をKanameに更に譲って貧にしてまで、霜降り和牛を手に入れてくれた。
ひとしゃぶで熱がほどよく通りそうな薄さなのに、しっかり赤みと脂肪の絶妙なコントラストがよく解る、上質な肉。それだけでも充分な美味さなのに、それをニメは自らの箸でひとしゃぶすると、
「はい、あーん」
などと言ってツバメの口許まで運んでくれるのだ。これが美味くない筈がない。
まだ熱を通していない新鮮な生肉と張り合うほどの色に顔を朱に染めながら、ツバメはゆっくりと口をあけ、愛情たっぷりの一口を満喫し――ようとした。
「なーんて、シュバッ!」
「あづっ! あぢぢぢぢぃぃぃぃっっっ!!」
小悪魔・ニメ。その通り名の通り、今一歩のところで華麗に愛の空間から巧みにギャグへと空気を見事に切り替える。
儚く舞い上がる、極上の、肉。虚しく散ってゆくらびゅーな空気。焼けつく眼球と裏腹に、ツバメの心に寒風が吹きすさぶ。
「ツバちゃん、ごめんねぇ。目に当たっちゃったねぇ。ゆるしてちょっ!><」
く……っ。会話文に顔文字など邪道だ! と言いたいのに、相手がニメだと思うと言うに言えない。
すかさず差し出された冷たいおしぼりにも、頭ではサービスと解っているのに愛を探してしまう。
ツバメの頭上へ、忘れた頃に肉が舞い降りて来る。
「ああ、もったいない。髪の毛についちゃったから、食べられないね」
ニメはそう言って、鍋から出た灰汁を入れる専用ボールに、その肉をぽちょりと浮かせた。
ツバメは、冷え切り灰汁まみれになった肉の中に、自分を見た。
その後、ツバメが牛しゃぶ鍋を嫌いになったのは言うまでもない(ついでにKanameも)。
何と!
独壇場(どくだんじょう)は、実は独擅場(どくせんじょう)の誤読から生まれた読み方であるということを知っておるものがおったとは、うむうむ、実に天晴れであるぞ!
うむ、そして霜降り肉の牛しゃぶとは、豪勢じゃ。
少し身内ネタに近いものじゃから、説明不足な感じが否めないが、M18星雲から鍋もってきたとか、そういう設定がぶっ飛んでいて面白いぞい。
肉のために微を貧にするとは(捧げたんじゃろうか?)、なかなか出来た女房ではないか!
しかし、どちらかというと鍋より違う物に視点が行き過ぎている気もするのう。
肉の美味い不味いはもとより、鍋描写に関してはオマケみたいじゃ。
これでは鍋好きの奉行も匙を投げてしまうぞ!
うーん、奉行は確かにコメディーも好きじゃが、
出来るなら、せめてツバメに一口食べさせて味を噛み締めさせてくれても良かったんじゃないかのう。
あと、最期の冷え切って灰汁まみれの肉を見て、自分と重ね合わせたツバメの心情も、もうちょっと書いて欲しいのう。
■kanameさん&二面相君のリレーで行われた続編
「あ、大変、ほっぺたにシラタキがついてるよ?」
ニメはツバメを見上げた。狙い澄ました上目遣い。
「あ、ほんとだ」
「とって──って、いってくれないの?」
誘うような目に、甘い言葉。ツバメは瞬きをした。三回。どう答えるのが正解なのか……「とって☆」というべきか?
「じ、じゃあ、とってください」
いまいち敬語が抜けない。けれど、そんなところがニメのある部分に火をつけているとは知らず、ツバメはどもりつつリクエストに応える。
ニメは微笑んだ。いたずらっぽく目を細め、唇を小さく突き出す。
「じゃ、ね。ちゅうでとっても、いい?」
ツバメは激震した。
ちゅうで。
ちゅうで、とる──!
「い、いけなくはないけど」
意訳、「全力でお願いします」。
ニメは両手を振り上げた。
「出でよ、ちゅうちゅうマウス──!」
するとどうしたことだろう! 空間が輝きだし、鍋の上からかの有名なアメリカンなネズミさんとクリソツ(意訳:高確率でパクった感じ)なネズミが飛び出した。
「ちゅうちゅう、ちゅうちゅうー!」
ネズミは吠えた。繰り出す魂の鉄拳がツバメの頬をクリーンヒットする。
「ぐぁあああっ」
「よかった、シラタキとれたね☆ ちゅうでとっちゃいました、なあんちゃって」
確かに、シラタキはとれた。ついでに歯も二、三本。
下唇に自らの歯型。口内からは、抜歯(?)後の歯茎からの鮮血。
しかし、ツバメはそれでも微笑む。ニメの愛らしい笑顔を曇らせぬ為に。
「……ツバちゃん、怖い」
あっさりと、笑顔はツバメの面から消えた。
何処へ行った、ラブワールド。
ツバメに僅かに残された煩悩が、序盤に散りばめられた愛を探し求めて視線を彷徨わせる。
目の前に、鍋。まだ、しらたきと肉しか消え去っていない、ぐらぐらと煮えたぎる、我が煩悩の如き熱い鍋。中では、有機栽培と銘打ち、3倍もの値段で売られていた、水菜と大根と人参が残っている。
早く、早く召し上がらねば、水菜など特に、とろとろになってしまう!
とろとろにしたいのはニメのハートなのだ、水菜はシャキシャキの方がよい。
「ニメさん」
「ニメって呼んでくれない――の?」
何だ、その間は?!
「呼んでくれない」
という狂おしい批難のメッセージと受け取ってよいのだろうか。
ツバメのありそうでなさそうで、でもやっぱりあった、微量の理性が水菜トロトロ危機を知らせていたのに。「間」という小悪魔の媚薬が、再びツバメに次の試練を与えるのだった。
「に、ニメ」
ツバメは頑張った。もうすぐ今年も終わるが、二〇〇八年もっとも頑張ったで賞を授与したいぐらいに頑張った。
しかし、ニメは眉根を寄せ、頬を膨らませる。
「ニニメじゃないですー、ニメですー」
「ニメ」
今度こそ、ツバメはその名を呼んだ。真剣に、優しく。
ニメが顔を上げる。ぶつかる目線。ときめきの導火線がお互いの身体中を走り抜けた。
これは、イケるかもしれない──ツバメは息を飲んだ。そう、足りなかったのは強引さとさり気ない優しさ。
優しさで攻められたらついていくしかないかもねニャーオな展開が、すぐ目の前に──!
「やっぱり、ニメさんでいいや」
ニメは、ぷいと目を逸らした。
「な、なんで」
ツバメにしてみれば拍子抜けだ。呼んで欲しいという意思表示だと思ったのは、間違っていたのだろうか。
「だってね……笑わない?」
「もちろん」
「ほんとかな」
ニメは恥ずかしそうに笑った。頬と耳とが、真っ赤に染まっている。
「あのね、すごく嬉しかったけど……そんなふうに呼ばれたら、わたし、どうにかなっちゃうもん。だから、ニメさんでいいの」
ツバメの脳がぐらぐらと煮え立った。水菜などメじゃないぐらいに何かがこれでもかと煮溶けた。
これは、これは、これは──
──誘っているとしか!
「ニニニニメさ……──」
繰り出した両腕が、空中を抱きしめる。
まさにちょうどのタイミングで、インターホンが鳴ったのだ。
「はあい」
ぱたぱたと走り去っていくニメ。ツバメの涙が乾燥した室内に潤いをプラスする。
「や、遅れてゴメン、ハニー」
「きゃあんっ、お姉様☆」
ニメの弾んだ声が、否応なくツバメの耳に届いた。ツバメには、訪れたのが誰なのか、すぐにわかってしまった。
「か、カーナメーノさん……」
「ぐぬぬぬ、鍋奉行である、わしを愚弄するつもりか!」
奉行は、あまりの鍋の関係なさに、怒って出て行ってしまった。
そして、後に残ったkirekoはこう呟いた。
「お前たち、色々話したい事があるから後で職員室にきなさい。」
>その他レス
鍋といえば豆腐ですねー。白菜もいいですが。
個人的には最初は白菜だし、あと何かの具を取り合うシーンも欲しかったんですが、うまく書けなかったです、反省。
というわけで、おすすめは「豆腐」「白菜」。あと「鳥団子」ですね。
あー鍋したいなー。
具を取り合うネタは、確かに面白そうですな。
コメディータッチにも、シリアスタッチにも、なりうる自由自在な展開だと思います。
で、やっぱり、お酒が入るとなると、やはり豆腐は欠かせぬでござるな。
しかし鳥団子に白菜とは、くううっ、流石わかっていらっしゃるっ!!
kirekoも、煮えきった白菜と、旨味の詰まった鳥団子を鍋に入れるのは好きでござるよ!!
一時期白菜と鳥団子を使った鍋料理に、大ハマりにハマって、一日三食鍋ということもザラでござった!!
よし、今度拙者と鍋でも突きながら、語らおうではないか!
妄想作文のご紹介をありがとうございます。m(_ _)m
> 第三者が見た、他の人たちっていうのは、
とkirekoさんことツバちゃんが仰って半時間後、
ビックリドッキリ
『第三者が見た』
モノではなくなっておりました。
これにはKanameもビックリです。(゜Д゜)マジカヨ ニメチャン…
コメント欄も、是非お楽しみ下さい。m(_ _)m by お知らせかなめん
こんなに嬉しい思いをしたのは初めてでござった。
そして、前にも言ったことだが、
なぜもう少し甘く書かなかった。なぜ……!(涙目)
確かにリアルな感じだったけどさ……
せめて話の中だけでもイチャイチャさせてくれたっていいじゃない!
まったく怒ってないけど、なぜか悔しい思いをしたkirekoでした。
>総括
皆さん、参加ありがとうございました。
闇鍋は、白菜と鳥団子と豆腐とたまねぎとネギとポン酢と白滝と涙の味が含まれるぽいです。
今回、kirekoの言い方も悪かったと思うんですが
話というより描写に集中する参加者が大半でしたね。
あえてkirekoが例題を普通にする事で、
参加者達の亜流「鍋を突く」を見たかったんですが、
大本命の葛城さんが変わり玉使ってこなかったのは本当に驚きの一言でした。
その代わり、kanameさんと二面相君のネタが、違う意味でぶっ飛んでましたが……。
ただ、この二人の書いた、実在する人物をネタにするというのは、
個人的に面白いと感じたので、後で色んな人をモチーフにした話でも
復讐がてら書こうかなと思ってます。
それでは、次回の企画までさらば!
■ふっふっふ、勝手に名前使われたくない奴は、今の内に名乗りをあげるんだよ!WEB拍手(何か一言あったらドウゾ)
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