kirekoの末路

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予感の11月3日

2008年11月06日 21時24分22秒 | 小説の感想と批評
忌まわしくも懐かしい、あの臭い、あの音が蘇る。@kirekoです。

>今日の感想と批評

こっからは血みどろの大人のおとぎ話だ。
次は止める気はねえ。(剣を振り下ろす)

■企画の意図は、こちら
http://blog.goo.ne.jp/kireko1564213/e/7e03a0212eb392c37028780a1c7f63d9

*感想テンプレ

■(タイトル+小説直リンク) ジャンル(ジャンル) 作:作者名
:あらすじ(小説家になろう投稿時に書いてあるあらすじ)
:読める判定(kireko個人が読めるか読めないか)
:好き嫌い判定(kireko個人が好きか嫌いか)
:感想(kirekoの感想)

*感想テンプレ終わり



============はい開始==============

Blue Rose ジャンル 恋愛 作:Seimei

:あらすじ
一度も結婚記念日を祝ったのことのない「私」。気分はいつも片想い。今年は結婚10年目、世にいう「Sweet10」の日だけれど……。――結婚記念日だったので、何となく勢いで書いた短編。

:感想
ある夫婦の記念日を描いた作品。
あらすじを読まなかったのと、そういう知識に疎かったので、最初「SWEET10」が何を意味しているのかわからず、思わず調べた。そしたらダイヤモンドとケーキとピザが出てきて、更に混乱しそうだったのでやめた。
ようは結婚十周年の話だ。
よく小説やドラマで、様々な恋愛模様を描く作品というのはあるが、それは付き合うまでの過程であったり、また付き合ってからの互いの愛情のもつれや、寝取り寝取られのドロドロを描いていたりして、非常に刺激に満ち溢れたものが多いと思う。
だが、この作品は、そういった刺激物の含まれる恋愛作品とは、基本的に軸が違う。非常に日常的で平和な恋愛なのだ。
だからちょっと、刺激に満ち溢れる作品を好む人は、退屈かもしれない。
さて、というわけで感想に入っていこう。
まず、やりたいシーン、やりたい事がはっきりしていて、無駄が無く纏まり、全体的に短いので読みやすい。
大人の女の寂しさを描いたところも、過不足無く書かれており、描写不足であるとか、表現がおかしいとか、そういった文章的な問題はないと思う。
本文で特に気に入ったシーンは、夫が帰ってきてからとった、その行動だ。
記念日の夜に彼の帰りを待つ妻の寂しさを例えば想像していたとしても、職人気質な頭領(庭師?)の癖に、随分ロマンチックな贈り物するものだと感心した。洗顔する妻の後頭部に、何気なく青い薔薇の花束を押すあたりが、なんともロマンチック。
それ以後、キザな台詞と薀蓄を吐くあたりは、ややご都合的にも感じたが、相手の気持ちがわかって、それとなくフォローをする夫の格好良さは十分に伝わる。彼の吐いた最期の二言は、十分に妻の寂しさを癒せたのではないだろうか、と思う。
ただ、全体的にロマンチックだと感じるからこそ、設定的な違和感は否めない。
「仏頂面で口下手である」と言う割には、帰ってきてからの前半はまだ良いとして、後半の彼の口からは、台詞まで用意していたのかもしれないが、やけに戸惑うことなくスラスラと言葉が出てきてしまっている気がするし、その後の行動も何故か大胆だ。
もう少し、口下手な描写をして、妻と読者を焦らしても良かったんじゃないだろうか。
あと、「とと様」「かか様」という呼び方に関しては、kirekoの読み方が悪いのか、現代調なのに古めかしい印象を受けてしまった。
時代設定など、特に拘る理由も無いなら、「ママ、パパ」とか「とうさん、かあさん」とかで良いんじゃないかなと思った。

:読める判定 気軽に読める :好き嫌い判定 ロマンチック



登場人物は僕一人 ジャンル ホラー 作:夜月猫

:あらすじ
これは僕が中学生の時の話し。物語と言うものは登場人物が二人以上で初めて成立するものだと思う。これに出てくるのは僕と彼女とあと友達二人。僕の昔からの親友さ。あ、でもこれだけは覚えておいてほしいな。登場人物は僕以外誰も出てこないから。

:感想
親友が消えてしまった理由。
開始7行目までは凄く面白そうな話のフリなんだけど、内容を見て愕然。
読めば読むほど、頭が混乱する話だった。
最初に言っておきたい事だが、まず一読しただけでは整理がつかない。
一応の見解としては、人が記憶から消えるというタイミングで場面がループする事から、自分のやってしまった事をフラッシュバックさせる夢(?)のようなものでは無いかと思われる。
しかし、それはkirekoの勝手な推測の結果であり、文章から読み取れる物ではない。
個人的には、非常に感想が言い難く、本文が読み取れるレベルに達していないと思う。……それは何故か。
おそらく人間に名前(固有名詞)が置かれておらず、本文中で特に印象的な要因を持たずに紹介されているため、そんなのが三人四人もでた日には、誰が誰なのか非常に混乱してしまうからだろう。
あと、オチの理由に関する答えが明確に触れられていないのと、「何が起こっているか」の描写について欠落している部分があったりして、言い回しなど理解に苦しむところが多い。
本文で言う彼を名前で呼ばないので他の友達も呼ばなくなってしまい大抵、僕が呼ぶと周りに居る全員が振り向くと面倒な事が起きる。や、少年は僕は彼、君、あいつと呼んでいる。などは、脱字や誤字も含まれる文章で、特に読み詰まった。
きっと作者の癖なのだろうが、基本的に読点の少なさの割に、文章が纏まっていない印象を受ける。
もしかしたらそれが「登場人物は一人」と言う作者の狙いなのかもしれないが。

:読める判定 読み取れない :好き嫌い判定 伝えたい事は明瞭簡潔に



故郷 ジャンル ファンタジー 作:絢斗

:あらすじ
3本の腕を持つ少年・千寿(せんじゅ)は、同じように“化け物”と蔑まれ、太陽の下で暮らせなくなった人々と暮らしていた。そこには万里(ばんり)という誰からも慕われる男がいたが……。

:感想
人でなしの者が逃げ込み集う『蟻の巣』を舞台にしたファンタジー作品。
不老長寿の男、背中に三本目の腕を持つ(想像してみたが、仰向けで寝れないとか辛すぎる)世話役など、設定自体は面白いと思うのだが、如何せん終盤唐突に始まる物語の内容が、読者を混乱させてしまうのではないかと思った。
読み手が作者の描く世界観に余り興味が無く、熱心に設定を飲み込めていないのもあるが、それでも何が起きているのかわからないのは、書き手の描写不足が原因だろうと思う。
登場人物の容姿に関しては一応描かれているのだが、互いの関係や、その思惑なんてのも、唐突な展開の理由付けとして十分な描写が書いてあるとは思えないのが残念だ。
作者が世界観に余韻を持たせたいがためにやった事なのかもしれないが、「誰がこうだったからどうなった。その理由はこれこれで、その時の気持ちは~」というのが、一読しただけでわからないのは、書き手として小説として、とても無精だなと感じる。
最期の唐突な展開を飲み込めるのかどうかは、確かに読み手の好き嫌いの裁量かもしれないが、書き手の描写への譲歩も時には必要なのではないだろうか。
特にファンタジー作品に関してだけではないのだが、書き手の描く独創的な世界観というのを他人に理解させ、認知させるためには、事細かな情報や設定を噛み砕いて説明する事が必要だと常々思う。
この作品は、その設定が眼を惹くだけに、惜しいなと思った。

:読める判定 唐突な展開を飲めるかどうか :好き嫌い判定 面白そうな匂いはするが、行動に及んだ理由が見えてこない



別れ ジャンル 恋愛 作:ghost567

:あらすじ
人を愛するって難しい。いくら僕が彼女の事を愛していても……彼女が僕の事を愛していても。伝わらなければ、意味はないんだ。それに気が付くのに、僕達は遅すぎたのかもしれない。

:感想
愛する事を知らない二人の話。
特に目立った表現や描写などはなく、小説というよりも形式は詩と同じ部類に入るだろう。
だから、読者にとって旨味と感じる部分は、「そうかな?」「そうだよ」という共感からくるものが全てだと思う。個人的には、「で、別れたその後二人はどうなったの?」っていうオチを期待したが、そういうものは最期まで無かった。
うーん、恋愛詩というのは一人称の感情ばかりが目立ってしまうので、感想に苦しむ。
例えば共感するポイントや、特筆に値する表現などがあれば別なのだが、口悪く言ってしまえば「狐と狸の化かしあい」的な捉え方は、とても凡庸だったと思うし、眼を惹く一文もないと感じた。

:読める判定 はてな? :好き嫌い判定 はてな?



記憶屋 ジャンル その他 作:機島雨彦

:あらすじ
その店は路地の奥にあった。看板には『記憶買います、売ります』の文字……。興味を引かれ、俺は店に入ってみた。

:感想
他人の記憶を売買する不思議な店の話。
奇抜な商売、いわゆる○○屋というのは、不思議な事に考えやすく、比較的やりやすいものとして有名だが、最期のオチが最大の旨味であり、書き手からすれば人が納得するオチを書くのは物凄いプレッシャーだと思う。
そういう意味で、この作品は、全編通して落語のような少し不思議で滑稽な一定のテンポで描かれながらも、オチは納得できるスマートさで終わっているのが個人的には好きだ。
徹底的な「読みやすさ」に比重を置くショートショートの難点である描写不足なども軽くクリアし、短編の中でこれだけ簡潔に纏められている文章は、書き手のレベルの高さを窺わせる。
お手軽で、面白い。
まさに「早い安い美味い」ショートショートだった。

:読める判定 気軽に読める :好き嫌い判定 落語のような雰囲気


===========終了==============

>思う事

短い文章で、気軽に読ませるのって短編として大事なことだと思う。
でも、長編を纏められることもまた文章として大事なことだと思う。
気に入らないのは、読者への配慮を明らかに欠いた作品。
「読者の興味がないからしょうがない」じゃなくて、
「読者に興味を抱かせる文章」を書き手が頑張って書く事が、
本当に重要なことなんだと思う。

たとえ創る世界が独りよがりでも、読者が面白いと感じる部分が一つでもあれば
それが書き手の努力のしるしだ、と思う。






ただそういうのがわかるかわかんねーかは、読む人のセンス次第だがな!
まさに外道!

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