kirekoの末路

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異変の11月4日

2008年11月07日 15時19分16秒 | 小説の感想と批評
未知なる意志を触発したのは何か。@kirekoです。

>今日の感想と批評

お気づきの方もいるだろうが、
最近感想に地味に改行を適宜行っているkireko。
どちらかというと、キチキチに字詰めしたほうが個人的には好きで
文字制限もあるんで、あんまり改行とか行頭一字あけとかしたくないんだけど
ふうらい屋さんとこなんか見てると、感想の見易さ(感想そのものの書き方も関係していると思われるが)に唖然とすることもあり、一応自分とこでもやってみようと思う。

それが、どう見えるかは、あなた次第。


■企画の意図は、こちら
http://blog.goo.ne.jp/kireko1564213/e/7e03a0212eb392c37028780a1c7f63d9

*感想テンプレ

■(タイトル+小説直リンク) ジャンル(ジャンル) 作:作者名
:あらすじ(小説家になろう投稿時に書いてあるあらすじ)
:読める判定(kireko個人が読めるか読めないか)
:好き嫌い判定(kireko個人が好きか嫌いか)
:感想(kirekoの感想)

*感想テンプレ終わり



============はい開始==============

やさぐれるほど、私らはヤワじゃない ジャンル 学園 作:風神

:あらすじ
香蓮高校で、教師リンチ事件が起きた。そして何故か、校長は私達を犯人だと疑っている。世の中理不尽なことは沢山あるけれど、こんな事、あっていい訳がない。

:感想
 卒業を前にして学校祭の準備に全力をかける仲良しの女子高生四人が巻き込まれた教師リンチ事件、やってもいないことに疑いをかけられた四人は、「一体誰がそんなことをしたのか」という犯人探しを学校祭の準備と供にし始める……という話。
 総文字総数約3万3千文字。
 このサイトに平素から投稿される短編としては長大であり、長い文章を読むのが辛い人には、その文字数で圧倒されてしまうのではないだろうか。
 しかし、内容はジャンル:学園の名前にそぐう容易さ、入りやすさであり、筆者の描く一人称は、感情が入っているからといってその他周囲の描写に不足があるわけではなく、読者を読み飽きさせない配慮、丁寧な描写、登場人物の一人としての目線が十分に行き届いている。
 そういった点を加味して特筆したいのは、全文を纏め上げる構成力が素晴らしいので、長い文章も読むのに苦労はしないということ。
 学校祭準備という隙間を縫って、平行して事件を暴く、まさに「犯人は一体誰なのか?」なんて読者も考えられる推理要素もあって、とにかく内容が濃いのが良い。
 だからこそオチはもう少しその後の学校祭について描写して欲しかったと思うが、それは筆者が想像の余韻を読者に託すという形なのだろう。
 読み手にもよるが、こういう短編は実に短編らしいと感じた。
 さて、というわけで感想に入っていこう。
 やはりこの作品の旨味は、登場人物のキャラクターが良く立っていることだろう。
 特に、快活でキレやすくまどろっこしい事が嫌いでハキハキした『夏海』、やたらと主人公の童顔コンプレックスの対象になってしまう美人の『奈々』、やや弱々しく描かれているがやってる事はとんでもない『りこ』、音源マニアで童顔で全員のストッパー役の主人公『加奈子』を含む主要四名は、どれも理解しやすい性格であり、それぞれ違う容姿、それぞれの役割分担が確立しているから、読んでいて場面場面で混乱する事が少ない。
 序盤~中盤でそういった登場人物の説明を済ませているため、後半はスピード感重視の台詞描写が目立ち、実際多いものの、少し端折っても誰が喋っているのか、どんな顔で言っているのか、頭の中で想像が出来てしまうのが魅力的であり、作者の凄味でもあると思う。
 「何よりも仲間を大事にする」といった、現代には無い、やや古めかしい部分も感じるが、その全てが等身大の女子高生を感じさせ、主人公の思いを交えて非常に設定が読者に伝わりやすい書き方をしているのが、とても気に入った。
 同年齢の女子が気になる化粧の癖や行動の癖、鞄につけたストラップまで細かく描写し、序盤出てくる酒や煙草などといったアイテムも、キャラクターにしっかりとした影をつけるための潤滑油であり、彼女等がどう生きているのか、その姿が良く描写されていると思う。
 他の登場人物においても、生徒に嫌われる嫌な先生たちや、理解者であるウェイトレス、エアガンマニアで射的のために電動ブローバックのエアガンもってきたり、とんでもなく武闘派の梨花など、ささやかではあるが、読者への印象付けが上手いので、推理をするときも出てきて「誰こいつ?」みたいな疑問が沸かないのは凄い。
 話しの本筋とすると学校祭がメインのように感じられるが、後半に行くにつれて、学校祭よりも犯人探しがメインになってしまった感はあり、それについて地の文で幾つか非常にお説教臭いものもあり、推理物によくある「実は意外にもこいつが犯人」なんてものも無いので、少々刺激に欠ける部分はあったが、非常に上手く全ての理屈が整えられており、またそれこそが「そこにある普通」を描けていることの裏づけなのではないだろうか。
 だがkirekoが、この作品本編で一番評価したいのは、話の本筋がブレず、その軸が歪まない事である。
 普通、このように長い文章になると、どうしてもキャラクターなり、文脈なり、構成、展開なりで軸がブレたりする。
 しかし、この話はそういう事がない。
 話の顛末、最期の最期まで、どの人たちもブレず、最期は推理物ではなく学校祭に繋げているところが、上手いところだろう。読者を飽きさせない展開と、理解しやすい描写力、それをここまで書き上げた文章力、構成力を評価したい。
 ただ、それだけの物を書けるだけに残念なのは、若干の誤字、脱字があったこと。
 本作品の嫌な教師の名前が前半は平倭→後半は平輪となっていたり、「いや、それよりもこっちの五百円のにしよう。矢五本ついてるし、三百円のよりもでかいし。それに学校祭の予算で買うんだから、なるべく沢山使ってやろう←ここに閉じカギカッコが入ってなかったりするのは、作品内容以外の部分で完成度の一面の脆さを感じさせ、読んでいて残念だった。

:読める判定 文字数よりも内容の上手さに着目すべき :好き嫌い判定 好きだな



犬語 ジャンル コメディー 作:後藤詩門

:あらすじ
動物研究所に勤める田沼博士が逮捕された。容疑は動物虐待。いったい彼の身に何が起きたのか?

:感想
 動物研究所に勤める博士が、犬を虐待して留置所に入れられるという話。
 この作者の作品をあげることも、もう手の指じゃ数えられなくなっていると思うが、やはり何処か遠くに目線を置く三人称の書き方、難解な話題も表現も用いずに短く簡素に書き上げる読者への最大の配慮「読みやすさ」は、一般読者の目を惹く短編作品には不可欠なのではないだろうかと感じさせる書き方だった。
 昨日紹介した落語のような記憶屋と似た形式で、同じ留置所にいる罪人から話しかけられても何の反応もしない博士が、意外にもある言葉で噛み付くような激情さを見せる、その理由は実はこうで……という、コメディーというより、オチのジョークを味わう話なのだが、ちょっと変な目で見れば文章の短さと相まって、一発ギャグのような印象を受けるものだ。
 昨日も話たが、おそらくその一発ギャグが読者に通ずるかどうかが、読者にとって旨味と感じるところであり、作者にとって肝を冷やす一面であるわけだ。
 一発ギャグが通ずるかどうか。
 そういう意味で今回kirekoが感じたのは、この作者にしては、やけにスンナリ落としてしまったなという感じ。
 いつもなら、それこそ度肝を抜くような二重三重のオチがあるはずと期待しているだけに、最期の一言は、良くも悪くも一発ギャグ止まり。言い換えれば、読んで一瞬ニヤリとはするが、それ以上に笑えないということだ。
 不完全燃焼、まだまだ物足りない、言葉で言えばこのぐらいが妥当な線である。
 読みやすさ、その書き方は良いと感じるものの、内容がそれに追いついていないと感じるのは、常読する読者の期待値というのが、やはり作品全体にかかわってしまっている事なんだと、つくづく感じさせた作品だった。

:読める判定 気軽に読める :好き嫌い判定 一発ギャグで停滞



Homework. ジャンル コメディー 作:Work.

:あらすじ
両親は一昨年事故で亡くなった。妹はずっと泣いてた。去年の妹の誕生日は一緒に祝ってやれなかった。今年こそは……。

:感想
 兄が妹の誕生日のために奔走する話。
 残念ながら、非常に内容が薄い。
 ゲームの日常パートの一部、まるで作者のプロットでも見ているような、小説としての旨味の薄さ、想像しても普通としか感じれない部分は、描写を大事にするkirekoの気分を良くも悪くも冷静にさせてくれた。
 まず残念なのは、拘る部分というのが見えてこないこと。
 思いつくだけでも拘れる部分は幾らでもあると思う。
 兄の奔走具合をもっと綿密に書くとか、彼らの置かれている状況(あらすじを読んで両親が亡くなっている事をやっと察せた)や、それまでの誕生日はどうだったのか、それについての妹の思い、兄の思い、そんなところにスポットを当てて書いていけば、それなりに作者の書きたい兄妹間の情や関係は裏づけされていくのだが、それすらも書かないで「良い兄妹でしょ?」と理解しろってのが、逆に理解に苦しむ。
 描写をおざなりにせず、物語をちゃんと書くことこそが、理屈を完成させる最高の近道であると思う。
 文字表現は基本的に『急がば回れ』の精神でいて欲しい。
 そういうことがわからないと、人に何かを伝えるのは難しい。

:読める判定 普通 :好き嫌い判定 そうか、そうか。



だから私はパンツをのぞく ジャンル 恋愛 作:鮎坂カズヤ

:あらすじ
親友のサヤカは私の日課のことを変だと言う。何が変なのか、私にはさっぱりわからないけど。でも、いいんだ。この日課さえこなせるなら、たとえ親友に理解されなくても。だから今日も、私はパンツをのぞくんだ。

:感想
 パンツフェチの彼女の日記のようなものを綴った話。
 基本的に日記帳なので、小説としてどうかという話ではないが、なんでこうまで変な事を、さも普通のように書けるのか、そういう人物面での興味は沸いた作品だった。
 そんなちょっと変で面白げな物語の合間には、思春期を迎えたばかりの少年少女である事を非常に感じさせる描写が幾つか垣間見える。
 それが一応、本文の旨味の一部分を担っているのだが、どうしても少女の趣味である彼氏のパンツを用いた比喩ばかり出てくるので、そこら辺は真面目に読むのが馬鹿らしくなると思うが、本文後半にもある「大人と子どもの境目」という表現をパンツで行うというのは、実に意欲的で、面白いなと思った。
 ただ、やっぱり言っちゃうとおかしな趣味というか、ずばり変態だ。
 気軽に読める部分がまた、変なキャラクターの、変な性癖を、実に変に感じさせてくれるので、大真面目に思春期の等身大の少年少女として読む人もいれば、なにこの小説?死ぬの?みたいな感想で終わる人も居るだろう。

:読める判定 意外と読める :好き嫌い判定 理由の無いパンツフェチは恐ろしい



パーフェクト・イレヴン ジャンル ファンタジー 作:yasu

:あらすじ
大人気サッカーシミュレーションゲーム、パーフェクト・イレヴンを買った俺だったが…

:感想
 現実とゲームがいつの間にかごっちゃになるという話。
 ゲーム内、または主人公の周囲の描写に関しては殆どかいつまんで程度にしか書かれておらず、決して褒められた表現力や描写力ではないし、内容も殆ど台詞に占められており、小説というより空想日記の1ネタとして感じてしまったのは否めない。
 が、そんな中、面白いなと感じたのは、ネタとタイトル。
 ゲームと密接した現実の影響は、終始とてもストレートな進行で、大した面白味も無いのだが、なぜか「パーフェクトイレヴン」というタイトルと、最後の二行のオチを見て、サッカーゲームとして完璧だったんだなと思い、ちょっとクスリとなった。
 基本的には面白くないんだけど、こういう些細なところで笑えちゃう人は得だと感じる作品だった。ただしもちろんそれが小説として面白いわけではない。

:読める判定 石油王=プレイヤー :好き嫌い判定 \(^o^)/



==========終了==============

>思う事

どうしても連続して読んでしまうので、
前の作品と今の作品を比べてしまう事がある。
ジャンルも話の目的も違うのに、比較にする事自体おかしい、
でも、いけないことだなと思いつつも、ついやってしまう。
最初に読んだもののレベルによって、その日の感想の具合が変わるというのは
あるのかもしれないと思った15の夜。


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