kirekoの末路

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くしゃみが超出る10月29日

2008年11月01日 20時01分49秒 | 小説の感想と批評
一足先に自由になった兵士のために。@kirekoです。

>今日の感想と批評

さて、今日から通常営業に戻ります。
当日投稿順五作品(紹介するのに不適切な物は弾く可能性あり)を紹介します。
飛ばした期間中に紹介したい面白い作品などありましたら、教えてください。
短編、長編関わらず、読んでみます。

■企画の意図は、こちら
http://blog.goo.ne.jp/kireko1564213/e/7e03a0212eb392c37028780a1c7f63d9

*感想テンプレ

■(タイトル+小説直リンク) ジャンル(ジャンル) 作:作者名
:あらすじ(小説家になろう投稿時に書いてあるあらすじ)
:読める判定(kireko個人が読めるか読めないか)
:好き嫌い判定(kireko個人が好きか嫌いか)
:感想(kirekoの感想)

*感想テンプレ終わり



============はい開始==============

あの夏の菖蒲─あやめ─ ジャンル 恋愛 作:笑夜

:あらすじ
ある日偶然街で再開した二人。男と女。二人には同窓生としての過去の思い出があった。蘇るあの時の感情を胸に、街角に二人、出逢ってしまった。

:感想
「俺」と「私」が街中で十年ぶりに遭遇するという話。やはり一人称物で、区切り、何らかの節を置かず、何の前触れもなしに視点が切り替わる手法というのは読みにくく、内容を理解するには時間がかかる話だった。一応、主観の変わる節目には目安として多めに改行をしているようだが、それまでの通常の改行具合が他の小説に比べて多いので、わかりにくく、やはり区切りの判断材料にはならない。さて、感想に入っていこう。前述の通り、とても読みにくいものの、十年間の合間に汚れた二人の視線が重なるというのは浪漫があって好きだ。ちょっと視点の切り替わりが激しすぎる気もするが、ラストの持って行き方は、時間の経過が殆どないのに比べて、〆の切れ味がなかなか鋭いので、悪くないと思う。ただ、それまでのダラダラした過去の逸話は、個人的に早めに切り上げて欲しかった。二人の思い入れを描きたかったのはわかるが、それでも必要以上に盛り込み過ぎだと感じた。もっと端的に纏めてくれると、読者としてはありがたいところなのではないだろうか。

:読める判定 読みにくい :好き嫌い判定 〆方は好き



居酒屋修二郎 ジャンル その他 作:マル丸円

:あらすじ
座席が10席しかない居酒屋修二郎ここは親父のような爺さんのような店長と温かいぬくもりがあります

:感想
「粋」なオヤジが経営する、場末の居酒屋の話。描写や場面の説明はとても簡単で、台詞中心の話だが、大人に近づけばなんとなくわかる、ちょっと寂れた居酒屋の雰囲気は、想像して良いなと思った。個人的には、台詞後の長文を改行しない方法が気になるものの、登場人物の台詞回しや、立ち位置、それによって伝わる表情、少なからず誰でも理解できる問題と、その解決法など、とても想像できる小説に出来上がっていると思う。主人公視点で語られるメニューの描写も、面白いが、とにかく店のオヤジが「粋」なのが良い。愚痴をこぼす客に的確な対処法を施し、グダグダと無駄に長引かせない解決法は、キャラクターの味が出て、読んでいて良い気分にさせてくれた。少々主人公のサラリーマンが、でしゃばりな台詞一つ吐いているが、それでもこの居酒屋の雰囲気を想像するに、言っても場違いでは無いと納得する一面もあるから不思議だ。とにかく「粋」なオヤジと、大衆的で想像しやすい話作りは、とても好感が持てた。

:読める判定 気になるところはあるが、読める :好き嫌い判定 粋だねえ



シンデレラの掟 ジャンル 文学 作:志内 炎

:あらすじ
「私たちは偽者のシンデレラだから、男性を社会的に傷つけてはいけない」――先輩ホステスにそう教わった「私」は時を経て、「本物の王子様」に出会う。揺れ動く「私」の心情は――

:感想
身分不相応なある客を好きになったクラブホステスの話。最初の数十行は、読んでいて「何の話をしてるんだ?」と疑問符も浮かんだが、中盤から後半にかけて、その理由が上手く纏められており、もしわからなくても二度読めば疑問も解決するだろう。というわけで、感想に入っていこう。表面的な風俗描写が細かく、とても現代的というか、夜の世界に居る割には、非常に現実的な思考、リアルな捉え方をしている主人公の思いの描き方は、個人的に面白いと思った。一番好きだったのは、彼女が働くクラブのナンバーワンが言った台詞。「偽りのシンデレラ」から続く、原文中の
「本物のシンデレラなんかじゃない。なのに、夜毎舞踏会へ行くものだから感覚が狂ってくるのよね。『本当は本物のシンデレラで、いつか王子様に出会えるんじゃないか』なんて」
という台詞や、
「でも私たちは偽者なのよ。ガラスの靴を差し出されても、『私のではありません』といわなくちゃいけないときもあるの……お客様でもカレシでも、男の人を社会的に傷つけてはだめだからね」
などと言った、夜を生きる人たちの掟を説く台詞は、こういったサービス業界の商売として考えても、おかしい所はなく、非常に説得力があると思った。この一言、二言が、現在の主人公の思考を確立させ、物語の本筋を強調する格好の良い台詞として、とても印象的だったのは間違いないだろう。格好が良い、というと言葉が変な風にとらえられてしまいそうだが、その後の主人公の思いの描写に関しても少なからず影響が出ていて、以前(文中には描かれていないが)より成長を窺わせる感じが、個人的には良いなと感じた。ただ、思いや表現が先行してしまったのか、一般読者から見ると、少しクドイと思われる部分も存在し、恋愛の思考に対して軽い表現を好む読者からすれば、嫌な部分もあるのかもしれない。kirekoとしては、そういった部分が理屈として納得できるから、好きなのだが……。

:読める判定 人を選ぶが読める :好き嫌い判定 割と好き



無能 ジャンル 文学 作:山川公大

:あらすじ
砂漠を走る軍のトラック。父に命じられるまま戦地へやってきたウェインがその中にいた。この戦争の意味とは…戦地に赴いた瞬間から彼の運命は変わっていった・・・

:感想
ちょっと架空な戦争物。簡素な説明、描写、台詞などで一応の雰囲気は理解できるものの、兵器や銃器、世界観や状況といった事細かな説明がまずされていないので、設定や描写を重んじ、背景を想像しながら読む人には、納得し辛いと思う部分もしばしば出てくるだろう。そういった、書き手の説明が明確でないからかもしれないが、とても設定的な問題点が多い小説だと個人的に感じた。襲撃のシーン、原文を引用すればロケット弾の類でなければ穴が開くことは無い特殊な金属で出来たトラックが、武装した特殊部隊にどうやって襲われたのか。例えば正面きってロケット弾で攻撃されたら、主人公たちはどう考えても爆発に巻き込まれているし、運転席だけを別の方法で狙ったのなら、その理由を書くべきだと思う。また、何故同乗した兵士達が異変を感じたのに何ら抵抗もせず、なくなくやられていったのか。考えれば考えるほど、説明が欲しい。少なくとも戦闘に身を置いている一兵士が適当な理由も無くやられるのは、個人的に不満だった。特殊部隊の奇襲の方法や、戦闘シーンが書かれていない(書かれてはいるが淡白過ぎる)事も疑問だった。こういった小説の旨味が何処にあるのか、読者が思い抱く一般的なものはわからないが、少なくとも戦闘シーンというのは、娯楽性を表すのに一番重要だと思うし、闘争がメインの戦争には欠かせない調味料だと思う。理屈の通った説明や、激しい戦闘中に出る描写、その他台詞とあわせれば、登場人物の説明も省け、読者を釘付けにすることも可能なのに、あえてやらない理由は何なんだろう。書き手が最期のオチを急いでやりたかったとしても、戦争小説としての「間」が造りこまれていないのは、とても損をしていることだと思う。話の面白味を何処に置くかというのは、やはり人それぞれのものがあるが、この小説のオチである無常の最期を演出するのにも、悲惨な戦闘を描き、無常感を出したほうが、演出としてよかったのではないかと思う。

:読める判定 設定説明、状況説明、演出に難あり :好き嫌い判定 苦々しい



星は瞬く ジャンル ファンタジー 作:神内 恵

:あらすじ
学校での星の観察、それをとても楽しみにしていた俊。しかしその日の空は分厚い雲に覆われ、とても星が見えるような天気ではなった。しかしそこに謎の少年があらわれ・・・

:感想
ほしをみるひと、ならぬ学校の行事で星を見る少年の話。ジャンル:ファンタジーとなっているが、残念ながら本文中の何かで、ファンタジー成分を得ることは出来なかった。「見たいんだろ」というのは一体誰だったのか、何故ベランダから帰ってきた少年が笑顔だったのか、それらについて納得できる理屈が欲しいところだったが、最期までそれについて大した描写がないので、不思議な体験談手前で終わってしまっているから残念だ。ファンタジーなのだから、もっと幻想的な表現や、見てわかる不思議な場景を表す語句があっても良いはずだ。きっと、作者の脳内では、それらが綺麗で、まるで一枚の飾られた絵のように描かれているのだろうが、読者であるkirekoからすれば、そういった点はまったく感じられなかった。むしろ言ってしまえば、幻聴と思い込みで片付けられてしまいそうな話だった。読者は、ファンタジーに何を求めているかは、正直kirekoにもわからないが、何か特筆する幻想的な表現や、その展開、語り口や演出で旨味が出せないなら、せめて理屈で出して欲しいと思うばかりだった。

:読める判定 あれもう終わり? :好き嫌い判定 好き嫌い以前に、味がない



===========終わり==============


>ファンタジーについて思うこと

ジャンルにもよると思うんだけど
味気ないファンタジーって、読んでても何も感じないよね。
たとえそれが幻想過ぎるとか、普遍的とか、そういった問題点があったにしろ
作者の描く物に、何か一つ面白い描写とか、どこか気にかかる表現とかあると
読者としては、それだけでワクワクするもんなんだが、
そういうのが欠落しているファンタジーというのは、
はたしてファンタジーと呼べるのだろうか?

何をもってファンタジーと明言するのか、その理屈はまだ解けないものの
何かしら文章に旨味の無い小説というのは、どうしても感想が
辛口になってしまうと思った。