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原発は「壊れても仕方ない施設」か?

2011年03月31日 | 鬼笑が語る
 誤解を恐れずにあえていえば、世に「壊れても仕方ない施設」と、「絶対に壊れてはいけない施設」というのがある。

 今回と同規模の地震が直下で起こっても壊れない橋。
 現代の技術をもってすれば、造ろうと思えば造れる。
 けれども、そうした地震が起こるリスクとかかる費用を考慮して、ふつうはそんなに頑丈な橋は造らない。
 これは、はっきり言えば、橋は「壊れても仕方ない施設」だと考えられているということだ。

 たまたま橋を渡っているときに大地震が起こって橋が落ちたとしたら、それは「不運」ということになる。
 (土木工学の専門家から、「橋は走って渡れ」という言葉をきいたことがある。)

 これが、ダムになるとそういう訳にはいかない。
 膨大な量の水を貯めたダムが万が一にも倒壊すれば、下流(たいていは都市部)では、とんでもない大惨事が起こることになる。
 だから、ダムは、絶対に壊れないように造られている(ことになっている)。


 今回の東京電力福島第一原子力発電所の事故。
 東電関係者の言葉として、「どこまで想定しなければいけないのか、キリがないというところもある」「隕石の落下まで想定しなければいけないのか」といった発言が報じられている。

 結論的にいえば、そこまで想定しなければ、いけない。

 原発反対論者の一部が、「ジャンボジェット機が墜落したら」「隕石が突入したら」といったことを言う。
 それに対して、電力会社はじめ原発推進者は、「そんなことはあり得ない」「そこまで言い出したら何も造れない」と反論する。(「何も」ではなくて「原発を」なのだけれど。)

 1985年の御巣高山の事故以来、日本ではジャンボジェット機の墜落事故は起こっていない。「もう四半世紀も墜落していない」という人もいるかもしれないが、逆に言えば、就航15年程度でこのせまい日本列島の陸地に墜落しているのだ。

 ここで、最初の、「壊れても仕方ない施設」とそうでない施設の話にもどる。

 極端にいえば、ダムにジャンボ機が激突したり隕石が直撃したりして決壊したら、下流ではたいへんなことになる。
 数千人、場合によっては数万人規模で死者が出るかもしれない。

 しかし、これは、場所を選んだり、設計をどうこうしたりして人間が防げる事故ではない。
 下流域で大惨事が起こっても、生き延びた人たちは、筆舌に尽くしがたい苦労をともないつつも、また町を再建し、生活を再建することができる。

 原発の場合、これも場所や設計の問題ではないが、原発とその周辺(おそらくは非常に広い地域)は、ひとが住むどころか近づくことさえできない場所になってしまう。

 「地震や津波では絶対に壊れない原発」を造ることができたとしても(実はそれ自体、ほとんど無理なのだが)、「誰の責任にも帰すことのできない理由で原発が壊れる」ということはあり得るのだ。

 原発推進論者にいわせれば、隕石やジャンボ機の直撃を想定しろというのはほとんど言いがかりのようなもので、「そんなことまで言い出したら、原発は造れない」のである。

 しかし、「そんなこといったら原発は造れない」というのは、「原発を造る」ということを前提とした思考だ。


 結論の第一。
 需要それ自体の抑制や、再生可能エネルギーの開発など、原発にかわる方向性を真剣に考えなければいけない。
 端的にいえば、24時間休みなくフル回転で活動する社会でいいのか、ということだ。

 第二。
 それらを推進してもなお、原発抜きの供給を需要が上回るのであれば、我々の社会は、エネルギー供給の絶対的限界に突き当たっていると考えなければならない。

 つまり、社会のあり方そのものが、もう「やってはならないことをやっている」状態になっているということだ。

 今回の大事故は、日本社会がこうした絶対的限界を越えてしまっていることをしめしている。

 これは、相対的限界ではない。絶対的限界なのだ。
 

 


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1 コメント

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具体的ではないですが・・・ (俊平太)
2011-04-04 19:20:18
鬼さんの結論の1、2に通じることを簡単ですが、メールなりで送信しました。

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3月13日にはMの同級生にこんなメールをしました。

藤田先生の言葉「労働価値論の本質は、人は自分が生きているために必要以上の価値を生み出す」を思い出します。この法則を用いれば、無論立ち直れるさ。

ただ、今まで以上に良い社会を作るために経済学(マル系を中心に)、地域経済・財政学を学んだ☆本・☆山門下である若い(え?)我々の(オイラは除いてほしいが、わけいかないよね)役割はホント大きいですよね。

とにかく、冷静にできることを見極めながら、まいりましょう。

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mxixにはこんなこと書きました

Innovation Japanと命名して
2011年03月16日12:01  

脱原子力・脱石油燃料の省エネ社会。(代替エネルギーの開発や更なる省エネ商品の開発)戦後のキャッチアップ型の経済ではなく、人類に新たに問う新しい経済システムをつくって行こうじゃないか。

 政治家が人気目当てでイノベーション担当大臣なんか、前の政権でおいていたけど、本当の、人類に貢献できるイノベーションを実現しよう。

 本物のシュンペーター(親日家)もそれを楽しみにしているだろう。


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19日には高校(大阪)時代の友人にこんなメールをしました。

☆☆学級の皆様。

東が大変なことになりましたね。

西が今まで以上に頑張らないと、変化に対応することが必然的に求められると思います。この間の同窓会の縁を大事に、この難局を若い(え?)我々が乗り越えていきましょう。

個人的には、不動産や金融は一極集中の弊害による反作用が関西に直撃してプチバブルになるのかな?と思ってます。しかし、ただ儲かればいいというだけでなく、子供たちに誇れる新しいモデルを構築していきましょう。


そして、ニコニコしながらみんなで呑みましょうね(これが言いたいwww)

では。

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こんな時期だからこそ、戦後の負の失敗を改めて見直すべきだと思います。
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