ケネディクス投資法人は8月27日保有物件の売却をプレスリリースし、同時に業績
の下方修正を行った。下方修正の理由は保有物件の売却損の発生であり、新宿のア
パートメンツ若松河田(鉄筋コンクリート造屋根12階建て、建物面積1858.51m2)を
930百万円で売却、簿価との差額である221百万円の売却損が発生した。これによ
り、営業利益で9.1%、経常利益で14%の下方修正となった。
表 修正の内容
今回の売却によって実際のマーケットでの売却CAPレートを知ることができる。当
法人は6月11日の決算発表後10日してから業績の下方修正をしており、今回はこれで
2回目の下方修正である。いずれも物件売却による売却損の発生によるものであり、
今期は先だって売却したアパートメンツ元麻布(売却損154百万)と合わせ375百万円
の売却損が発生した事になる。(今回の業績修正では元麻布が214百万と表記されて
おり、合計で445百万円となっているが、最初のプレスリリースに従った)。
売却価格から逆算すると新宿の物件の売却キャップレートは6.5%、元麻布は5.7%と
なり、どちらも先日の決算発表で開示された鑑定キャップレートとの乖離が見られ
る。(下図参照) 鑑定評価では新宿、元麻布ともに5.4%で評価された。その前の期
と比較すると新宿で40bp、元麻布で50bp、キャップレートが引き上げられたが、
実際の売却額はさらに50-100bp上回った。不動産の流通環境が正常ならば、恐らく
鑑定評価はそれほど間違ってはいないのだろうが、やはり取引価格を見る限りいま
だ不動産市況は回復には程遠いと見るべきだろう。また、これは今後も物件売却
を継続すると不動産売却損が出ることを示唆しており、LTVに余裕のないREITはま
すます苦境に陥ることが予想される。
要するに今回の売却によりケネディクスの資産の評価損益は57億円の評価損(2.6%
の評価損)となっているが、実際には50-100bpの差がある事を考慮すると評価損は
180-300億円程度ではないかと推測できる。現状のLTV水準であれば特に売却する必
要はないのだが、当法人に関しては、フォワードコミットメントに基づく物件取得
があり、その為のキャッシュ作りであると推測される。物件は名古屋にあるKDX名古
屋栄ビルで取得価格は75.5億円(内建物35.5億円)。売買はすでに7月1日で終了して
いる。気になるのは今後も物件売却が起きるのかということだが、現時点では不明
だ。LTVは若干上昇するが、直近の金融機関からの借り入れ金利水準は特に上昇
している訳でもなく、財務的な負担はかかっていないだろう。
発行している投資法人債は2本あり、第1回が90億円、2012年3月15日償還でまだ結構
時間がある。第2回は30億円で2017年3月15日とかなりあり、資金的な問題を起こす
要因にはならないだろう。また伊藤忠の資本参加により、最悪の場合、買収対象と
なるので破綻リスクは意外と少ないと考えてよいだろう。しかしながら下方修正し
た分配金の年率利回りが5.25%となっており、割高感は拭えない。
の下方修正を行った。下方修正の理由は保有物件の売却損の発生であり、新宿のア
パートメンツ若松河田(鉄筋コンクリート造屋根12階建て、建物面積1858.51m2)を
930百万円で売却、簿価との差額である221百万円の売却損が発生した。これによ
り、営業利益で9.1%、経常利益で14%の下方修正となった。
表 修正の内容
今回の売却によって実際のマーケットでの売却CAPレートを知ることができる。当
法人は6月11日の決算発表後10日してから業績の下方修正をしており、今回はこれで
2回目の下方修正である。いずれも物件売却による売却損の発生によるものであり、
今期は先だって売却したアパートメンツ元麻布(売却損154百万)と合わせ375百万円
の売却損が発生した事になる。(今回の業績修正では元麻布が214百万と表記されて
おり、合計で445百万円となっているが、最初のプレスリリースに従った)。
売却価格から逆算すると新宿の物件の売却キャップレートは6.5%、元麻布は5.7%と
なり、どちらも先日の決算発表で開示された鑑定キャップレートとの乖離が見られ
る。(下図参照) 鑑定評価では新宿、元麻布ともに5.4%で評価された。その前の期
と比較すると新宿で40bp、元麻布で50bp、キャップレートが引き上げられたが、
実際の売却額はさらに50-100bp上回った。不動産の流通環境が正常ならば、恐らく
鑑定評価はそれほど間違ってはいないのだろうが、やはり取引価格を見る限りいま
だ不動産市況は回復には程遠いと見るべきだろう。また、これは今後も物件売却
を継続すると不動産売却損が出ることを示唆しており、LTVに余裕のないREITはま
すます苦境に陥ることが予想される。
要するに今回の売却によりケネディクスの資産の評価損益は57億円の評価損(2.6%
の評価損)となっているが、実際には50-100bpの差がある事を考慮すると評価損は
180-300億円程度ではないかと推測できる。現状のLTV水準であれば特に売却する必
要はないのだが、当法人に関しては、フォワードコミットメントに基づく物件取得
があり、その為のキャッシュ作りであると推測される。物件は名古屋にあるKDX名古
屋栄ビルで取得価格は75.5億円(内建物35.5億円)。売買はすでに7月1日で終了して
いる。気になるのは今後も物件売却が起きるのかということだが、現時点では不明
だ。LTVは若干上昇するが、直近の金融機関からの借り入れ金利水準は特に上昇
している訳でもなく、財務的な負担はかかっていないだろう。
発行している投資法人債は2本あり、第1回が90億円、2012年3月15日償還でまだ結構
時間がある。第2回は30億円で2017年3月15日とかなりあり、資金的な問題を起こす
要因にはならないだろう。また伊藤忠の資本参加により、最悪の場合、買収対象と
なるので破綻リスクは意外と少ないと考えてよいだろう。しかしながら下方修正し
た分配金の年率利回りが5.25%となっており、割高感は拭えない。