牧師の読書日記 

読んだ本の感想を中心に書いています。

5月18日(土) 「三国志 (五) 」  吉川英治著  新潮文庫

2013-05-18 17:10:55 | 日記

 本書のタイトルは「孔明の巻」。本巻は面白かった。「三国志」後半の主人公である孔明が登場し、物語が盛り上がってきたからであろう。本書の前半では劉備に対する関羽の忠義が描かれ、後半では孔明が紹介される。劉備玄徳が諸葛亮孔明を三たび訪問するのである。「三顧の礼」として有名である。

 解説者が、吉川「三国志」が孔明を高く評価している点に関してこのように書いている。「諸葛亮(孔明)は歴代にわたって高い評価を受け続けた。その高い理由は、諸葛亮が復興を夢見た「漢」の規範としての重要性にある。漢は、ローマ帝国とよく比較される。ほぼ同時期に存在した同規模の古代帝国であるためだけではない。「すべての道はローマに通ず」という言葉があるように、ヨーロッパの文化はすべてローマを源流とする。同様に、中国文化の元基もまた、漢で定まった。漢とローマは、それぞれ中国とヨーロッパの「古典」古代なのである。したがって、漢の復興にすべてを賭けた諸葛亮は、中国の「古典」を守ろうとした者と位置づけられた。規範としての「漢」の重要性の故に、漢の復興を目指した諸葛亮が評価されるのである。」