牧師の読書日記 

読んだ本の感想を中心に書いています。

1月31日(金) 「リバイバルの条件」 A・W・トウザー  いのちのことば社

2014-01-31 09:11:06 | 日記

 トウザーは霊的に優れた人物で良い著作を残しているのだが、本書は少なくても私にとってはそれほどでもなかった。あまり心に響いてこなかった。「リバイバル」の主題は私が非常に関心を持っている分野で定期的に読んでいる。D・M・ロイドジョンズが書いた『リバイバル』は素晴らしかった。これに懲りずに続けて「リバイバル」の主題の研究と勉強をしていきたい。

 研究といえば、小保方(おぼかた)さんという30歳の若い研究者が万能細胞(STAP細胞)の作製に成功した。あきらめないで研究し続けた結果であるということだ。もちろん彼女の生まれ持った才能もあるだろうが、大きな勇気を日本の研究者たちに与えたことであろう。

1月30日(木) 「ジーキル博士とハイド氏」 スティーヴンスン  光文社古典新訳文庫

2014-01-30 06:22:34 | 日記

 再読だけど楽しく読めた。本書は2重人格を扱った古典といえる。人格の善悪を分離させる薬を発明して自らが実験台となって飲むことによってジェントルマン(紳士)のジーキル博士が極悪人ハイド氏に変わってしまう。また薬を飲むと今度はハイド氏からジーキル博士に戻る。この二つの人格は姿形が全く違う。でもこれが同一人物であるという事実が恐い。

 人間は誰でも2重人格といわないまでも、内側に善悪という2重性を秘めていると思う。使徒パウロはこのように書いている。「私は、自分でしたいと思う善を行なわないで、かえって、したくない悪を行なっています。、、、、そういうわけで、私は、善をしたいと願っているのですが、その私に悪が宿っているという原理を見いだすのです。」(ローマ人への手紙8章19節、21節)

 人間は、社会的な建前や犯罪を罰する法律があるため、自分を抑制して悪を隠して生きている。でもそのようなものをすべて解き放ったら人間はどうなるか、どうするのか。たいていは悪に走ってしまうのだ。それが人間の罪の性質である。ジーキル博士は悪へ走ることに快感を覚える。この本を読んで自分は善人なのでハイド氏は自分とは全く関係がないと感じる人、このハイド事件は現代の殺人事件と似ていると論じ始める人は、本書の深みを理解できていないだろう。

  非常に優れた文学作品だと感じる。人間の闇の部分に光を当て、人間の内面にある真の姿を探っている。これが文学だ。いわゆる小説は文学と同じといえば同じなのかもしれないが(面白くて良いのだが)、私の中では小説は人間が様々な環境に左右されることを書いているように思う。要するに内面ではなく外面や社会を描いているのではないだろうか。しかし文学は人間そのものを描く。文学は芸術性の高い小説ともいえると思うし、作家の血肉が入っている作品といえるだろう。そのような意味でも本書は中篇だが(長編ではないが)傑作だと思う。

1月29日(水) 「ロスジェネの逆襲」 池井戸潤著  ダイヤモンド社

2014-01-29 06:41:47 | 日記

 本書は「オレたちバブル入行組」「オレたち花のバブル組」に続く「半沢直樹」シリーズ第3弾である。テレビドラマ「半沢直樹」もDVDで観たが、とてもスカッとして面白かった。

 「ロスジェネ」はロストジェネレーション(失われた世代)の略である。バブル崩壊後の不景気の10年間、1994年から2004年の就職氷河期に世の中に出た若者たちのことを指す。本書は物語の設定が2004年なので、その時点では22歳~32歳を指している。現在2014年でいえば、32歳~42歳だろう。自分もこの世代である。一方バブル世代は好景気によって大量採用された世代である。

 半沢直樹シリーズ1,2弾は半沢たちバブル世代の視点でその上の世代(団塊世代)との確執が描かれていたが、この3弾ではそれに加えてロスジェネが加わり、ロスジェネの視点で描かれている。ロスジェネの世代が本書を読むとより心に響いてくるだろう。

  2弾のラストで半沢は出向を命じられた。3弾で半沢は、銀行の系列子会社の証券会社で働いている。そこでIT会社の買収や粉飾の話などが出てくる。これはライブドア事件がモデルになっているらしい。

 あいかわらず著者は銀行の実体を厳しく書き、銀行の腐敗を暴いている。主人公にこのように言わせている。「組織に屈した人間に、決して組織は変えられない。」正しいことを正しいと言え、間違っていることを間違っていると言えること。これが組織にいるとできなくなってしまう。自分たちの利益だけを守ろうとするようになってしまう。そのような会社(組織)で半沢は今回も戦う。ただ今回はロスジェネの部下と一緒に戦う。半沢のような人間がいればいるほど会社と社会は良くなるだろう。ただ実際はどうだろうか。このようにすると会社組織をクビにされ追い出されるのだろう。家族を養わなければならないから不正と戦うのが難しい。それが現実であろうと思う。だからこそこのような正義が勝つ物語が好まれ、昨年日本でヒットしたのだろう。

 でも願わくは、勇気を持って戦う人たちが起こされ、社会が良くなりますように。

1月28日(火) 「キリスト教神学入門③」 アリスター・マクグラス著

2014-01-28 11:51:20 | 日記

 著者は2章で「神学の資料と方法」について述べている。神学の資料として、当然ながらまず聖書が挙げられる。そして理性、伝統、経験である。

 神学の構成は、聖書学、組織神学、歴史神学、実践神学などがある。すべてが大切である。例えば説教を考えた時、説教の行為は実践神学の中の説教学に属する。その説教は歴史神学的に言えば説教の歴史の中に位置づけられる。説教する内容は聖書なので聖書学、すなわち聖書を正しく解釈することが大切である。ただ聖書学だけだと部分的になりやすいので、組織神学によって説教を主題によって統合させ統一してことが重要である。このように自分がする行為(伝道牧会)を基準にして考え、すなわち実践を重視し、その上で神学を構築いくことができれば良いと私は考えている。要するに学びのための学びではなく、実践のための学びにしたい。実践とは教会の実践のことである。

 神学の方法として自然科学や哲学との関係が中心に論じられている。文学も大事になってくるであろう。神学と教養の両方が教会の実践には必要だと思う。

1月27日(月) 「月と六ペンス」 サマセット・モーム  岩波文庫

2014-01-27 09:10:41 | 日記

 本書はイギリスの作家サマセット・モームの代表作で、画家のゴーギャンをモデルにした小説である。

 モームはよほど牧師という人種が嫌いとみえる。本の最後でも牧師を批判的に描いている。それはさておき、この本は傑作だと思う。ストーリー展開が見事である。とても楽しく読むことができた。人間の暗い面をよく描いている。また芸術家の情熱をおそろしいほどに迫るように書いている。

 40歳になった主人公は、「どうしても絵を描かなければならない」と証券会社の安定した仕事をやめ、また妻子も捨て、国を出て、皆から才能がないと思われていた絵画に没頭するのである。描くことにいのちをかけた。彼は孤独だった。自分の目標へまっしぐらに進み、自分を犠牲にするだけでなく、他人をも犠牲にしていった。でも最後には自分でも納得できるような大作を完成させる。その彼の生き方を友人(知人)の「僕」という小説家が描いているという設定である。

 題名の「月」は「幻想や情熱」を「六ペンス」は「現実や因襲」をあらわしているようだ。本書は、安定した人生、世俗のしがらみ、先が見えている生き方に対するチャレンジに満ちている。人生にリスクをとるように、と。冒険することをすすめているのではないか。その先に待っているのは未知の世界だ。想像ができない世界だ。その結果、リスクをとる人はリスクをとらない人よりも創造的な仕事ができるのだと思う。特に芸術家と呼ばれる人はそうなのだろう。