本書は時間旅行小説である。主人公が兎の穴を通って、1958年の9月9日午前11時58分に行き、1963年の11月22日に起こるアメリカ大統領ケネディーの暗殺を食い止めようとする。
本書に何度も出てくる言葉は、「過去は強情で、変えられることを望まない」だ。だから主人公は過去を変えるのに悪戦苦闘する。その中でセイディーという女性を愛する。しかし、彼女になかなか本当のことを話すことができない。本名と自分が2011年という未来から来たことを。ついには、彼女に真実を話し、共にケネディー大統領暗殺を食い止めようとするようになる。
ただ個人的な感想を言えば、著者の切り口と下巻の始めまではとても面白かったが、下巻途中から、すなわち本題のセイディーとのロマンスとケネディー大統領暗殺を食い止める段階に入ってからは、物語が失速してしまったと感じた。それはもしかしたら、私が日本人であるからかもしれないし、アメリカの世界に入り込んでいけなかったからかもしれないが。
でもそのプロジェクトが完了した後(主人公の計画通りではなかったが)、物語は勢いを取り戻し、とても面白くなっていく。すなわち結局はケネディー大統領が死んでしまった後の話だ。
主人公は未来の世界(自分が生きていた2011年の世界)へ帰っていく。そこで待ち受けていたのは何か。これが面白いというか、こわい。その一つが大地震によって北海道を含む日本が消えてなくなっていることだ。またもともとは起こるはずではなかった原発事故がアメリカで起こってしまう。過去が変わることによって、未来が大きく変わってしまったのだ。
彼はまた過去へ行くのだろうか?(彼がまた1958年へ行けばすべてリセットされる) セイディーとの関係は結局どうなったのだろうか。さすがにこれを書くのはやめておく。本書を読もうとする人の楽しみを奪ってしまうので。
2013年が終わろうとしている。今年様々な本を読んだ。来年どのような本と出会えるか楽しみだ。