「パステルショートストーリー」のVioletは、森川成美さま。
キミョウな人(?)、っていうタイトルだけでそそられる。
あなたのとなりにいるのは、
あなたが思ったとおりの、人?
もしかして、もしかして……
冒頭のこの言葉が、やっぱりいい(ラストの5行もいいし)。
1「中の人などいない」
「ゆるゆるキャラクターコンテスト会場」にやってきたのは、球体モフモフの「ゆるゆるさん」。
「このままでは飢え死にだ」とコンテストに参加。
ゆるゆるさんが真面目に答えるほど笑いと取れるのがすばらしく、
哀愁も感じられてすてき。
2「ぼくがしたかったこと」
ゲーム実況動画がヒットして、十二歳で長者番付にのったぼく。
お金を使うために宇宙旅行に行ったら、えっ、ぼくの星って……。
科学的根拠もしっかりしているから、背中がぞくぞくっとして。
3「単身赴任」
地球の裏側より遠いところにいるサチのお父さん。
毎晩お母さんとビデオ通話しているんだけど、お父さんは常識を知らなさすぎ。
いったいお父さんはどこにいる人……。
4「おかしなふたり」
とつぜんふたりの会話がはじまって、彼らは妖怪で、
崖から飛びこもうとする人間を助けようとして……。
「人間はさー、たった百年くらいしか生きられないのにサー
なんでさー、自分で死にたがるんだろう」って真実だな。
5「家庭の事情」
見たくないけれど友だちが行くので評判の映画「魔女の結婚」を仕方なく見に行く魔衣。
お母さんは「しょせん、うそばっかりだろうけどね」と言う。
だって魔女は結婚しないってことは魔衣の家を見れば……。
うふふと笑えて、いいなこれ。
6「どこかで……」
最近おかしい。失業中なのに行くつもりのないところに行ったり、
買うつもりのないものを買ったり、買ったのにお金が増えていたり。
だれかわからない人の言うとおりに体が動いてしまうのだ。
自由にならないで、やらされている感じ。
抵抗してみたら……。 おお、クール。
あいかわらずの森川さまの、なめらかな文体。
さっと読めるけれど、そのあと、いろいろ考えてしまう。
頭の中身をゆさぶるこんなショートストーリーを紡がれるのはさすが。
森川さま、ますますのご活躍を!
「不思議」に惹かれる自分は、この本にガツンとやられた。
いいなあ、こういう本、書いてみたいな。
今日もびよよよ〜〜ん (*^ __ ^*)