水瓶

ファンタジーや日々のこと

バラードとレム

2016-08-22 20:47:24 | 雑記
近所の川を見に行きたくて、うずうずする気持ちを抑えて台風が通り過ぎるのを待つ午後。
土曜日の夜には鶴見川の花火大会を見て、オリンピックも閉会式。夏も終わりですね。というかもう終わってくれい。

Amazonのおすすめで、ほーと思って読んだJ・G・バラード「ハイ・ライズ」
冒頭の一行で「・・・え?は???」となってぐんぐん読み進めたぐらい、アクセルの効いた謎めいた出だし。くっそう。
スピルパーグの映画「太陽の帝国」の原作者のイギリス人です。日本軍の捕虜になってたことがあるんですね。
バラードは短編集一冊読んだぐらいで、もっと読みづらい文章の人のイメージがあったけれど、これはスラスラ読みやすかった。
結末は大体予想できるけど読みたいと思う小説(大体ハッピーエンド)と、
結末がまったく読めなくて気になって読んでしまう小説(ハッピーエンドなのかそうじゃないのか判別しがたいことが多い)があるけれど、
「ハイ・ライズ」はまさに後者。
いったいこれは笑うべきなのか?冗談じゃなく真剣に受け取るべきなのか?などと迷いながら読み進めている内に、
ぐんぐん引き込まれてしまいました。こういうのをストーリーテラーというんでしょうか。しかし一筋縄じゃいかないよ!
感情移入しないで読める、というか登場人物誰にも感情移入できない感じで、こういう小説がむしょうに読みたくなる時があります。
しかし、たとえば感情移入を促されやすい小説で感情移入してしまう人物って、別に自分に似てるわけじゃなくて、
むしろよくよく考えると正反対の性格をしていたり、逆に感情移入できない、したくないような、
ろくでもない人物が本当は自分と似てたりするのかも知れないとバラード読んでて思いました。いやですにゃー。



もう一冊、SFづいて続けて読んだのは、スタニスワフ・レム「泰平ヨンの未来学会議」。「惑星ソラリス」で有名な人です。
ソラリスはリメイク版の方の映画と小説とを読んだことがあって、シリアスでなんとも哀しい話だったけれど、
泰平ヨンはまるっきり違う印象なのでおどろいた。こんなハチャメチャなのも書く人だったのか。。。
これもやっぱり感情移入ほとんどせず(ということはつまり気楽に、野次馬根性で)読めました。
そうか、でも、文章のスタイルは全然違うけど、アイデア自体はソラリスと通じるものがあるかも。
レムはポーランドの人で、東欧の小説で私が読んだのはわずかにすぎないけれど、
SFが面白くて、怪奇小説はあんまり怖くないイメージが東欧にはあるんですよね。
たしかロボットのアイデアを発明したチャペックもチェコの人だったか。
たぶん、怪談とか幽霊のようなものを怖がれるのは、ある程度恵まれた環境にあるんだろうなと。
かつての東欧は、怪奇小説よりもSFに優れたものが出るような、そんな状況にあったんじゃないかと思います。今はどうだろう。



上の二作品に共通するのは、どっちも最近になって映画化されたことで、バラードはKindleで出てるのは今のところ「ハイ・ライズ」だけ。
レムはけっこういっぱい書いてるみたいだけれど、日本で出てるのは「ソラリス」と「泰平ヨンの未来学会議」の二つだけ。
多分上に上げた二作品は、映画化されなければ日本では出なかったんじゃないかな。
どちらも書かれたのは1970年代。なんで今映画化されたんだろうと考えると、「ハイ・ライズ」は時流的になんかわかる気がするし、
「泰平ヨンの未来学会議」は、うーん、、、これはけっこう普遍的な不安かも知れないです。

写真は、みなとみらいのランドマークプラザとクイーンズスクエアの間にある、青空映えのする巨大オブジェで、
調べたら正式名称は『モクモク・ワクワク・ヨコハマ・ヨーヨー』というんだそうです。SFっぽいなと思って。
ジェットコースターみたいと思ってたけど、なるほど、ヨーヨーかあ。