今日は天皇誕生日ですね。
ということで(どういうことだ?)、以前から断片的に触れていた皇室典範の改正なんぞについても考えてみたいと思います。
まあ、
悪の教典 楽天市場店からしばしばTBなどもいただいておりますので、とりあえず放置したままだと何かな~というのもありますので。
私の場合、別に女系天皇に移行するのならしてもいいですし、あくまで伝統にこだわるなら、それはそれで勝手にすればいいじゃないかという立場です。だから当初からずっと「不毛な議論だなぁ」と思っているのは変わらないんですね。
が、どっちでもいいということはつまり容認ということでそれはそれで理由を示すべきなのでしょう。とりあえず、現時点では男系ということになっているわけですし、それを覆すにはそれ相応の正当性がないといけない。
まあ、この点につきましては現在女の子しかいないでしょ、というのと男系だけ認めるのは男女差別なんじゃないの、ということで軽くさくりと。その上で別に維持にこだわらなければならないというものでもないということを主張すればいいわけで。
ただね、そうした議論は議論として中々面白いのですが、現実的に見て男系維持はどうなの、という部分もあるので、まずはそれから書いてみようかなと思います。
まず、男系天皇を維持する場合、旧宮家の復活や養子制度の導入などが考えられるそうですが、ここで根本的な疑問が発生します。
つまり、誰(若しくはどこの家)を次の天皇候補にするのかをどういう基準で決めるのかということです。
まあ、おそらく下のどちらかにはなるのでしょうけれど。
①.現行皇室から親等的に近いところから優先していく。
②.皇室会議などで決定する。
どちらにも難点があります。
①は分かりやすいというメリットがある反面、一度普通の人間になり、普通の社会で暮らしてきた人達が果たして現行天皇としての資質を備えているのか、ということですね。より分かり易く言えば、将来皇室の一員になるべきものとして皇居の中で育てられたわけでもない者をいきなり皇族として大丈夫なのかということ。旧宮家の人間は大勢いるそうですし、解体したのはGHQだから復籍しても何の問題もないそうですが、さりとて、彼らが本当に信用の置ける人間であるかは分からないわけです。
それは思想や話し方にしてもそうですし、まあ、もっとぶっちゃけた話を言うと、破産してたり犯罪とかしていたりするかもしれません。そういう人間が天皇になっていいのかということ。もちろん良くはないでしょうから、そうするとそういう事態を想定して皇室典範などに天皇欠格事由を定める必要があります。で、私は個人的には『以下のものはこの法律(皇室典範)の二条の規定にかかわらず、天皇になることができない』なんていう条文があるのは嫌です。
でも、そこまで突っ込んだ議論をしているところはないですね。復籍を説かれる皆様は旧宮家だから絶対大丈夫だろうという強い性善説に立っておられます(笑)。
②はその点で、資質のない者を排除できるメリットがありますが、次の皇位の座を巡って揉めることは火を見るより明らかです。21世紀にもなって「自分の方が天皇になるべきだったのに」なんて言い出す人物が現れて南北朝再びなんて事態が起こったら笑い話にもなりません。
また、両方にあてはまることとしまして、天皇になるかもしれないものの私生活なんかが簡単に明るみに出たりするという可能性があるわけですね。天皇の元カノなんかが顔モザイク、変声で「あの人はすぐキレる人だった…」なんてやられるとシャレにもなりませんね。
まあ、男系維持者の本音が「皇室をもっと開かれたものにしようじゃないか。英国みたいにゴシップなどもバンバン出してもらって、みんなに親しまれる皇室にしよう」と思われているのでしたら、私はてんで見当違いのことを言っていることになり、ごめんなさい、ということになりますけど。
また、外から招くとなると、詐称するような人間が出てくる当然出てくるわけで…。「自分は伏見宮家のAさんの愛人の男の子で、非嫡出子だけど天皇に一番近いのは自分だ」みたいな感じで。となると、天皇になれるかどうかを遺伝子鑑定とかして調査しなければならないわけで何とも楽しい話になります。
注:たまたま伏見宮を出したのはそういう名前の家があったかなと記憶にあるだけで、別にここが皇室に一番近いというわけではありません。はっきり言いますが、ここは適当です。旧宮家の調査に熱心な方から「一番近いのはここだ」というご指摘があれば正しく訂正します。
当然ながら、唐突に「自分、伏見宮の愛人の子なんで、皇位継承に入れてね」なんてのが認められて、ポンと入ってしまったりすると、伝統を絶対視していない人は絶対に違和感を感じます。
これではかえって権威が低下しそうな気がするのですが…
他、男系論の根拠を適当に考えてみましょう。
a.神武天皇以来続くy型遺伝子が重要なのである。
とりあえずそのまま続いているという前提に立つとしまして、それが皇位とどう関係があるのかが疑問です。女性天皇は遺伝子的にxxなわけですから、神武天皇のy遺伝子を持つことが皇位の前提条件ということでもないようですからね。y遺伝子を持たない女性天皇が許される以上、神武y遺伝子を持たない男性天皇がいても特に不思議と思わないのですが、何か別な理由でもあるのでしょうか?
b.男系は2600年続いた天皇家の特別な伝統である。
特別なというのは嘘でしょう。
そもそも日本自体が男系社会だったわけであり、天皇家だけが殊更男系維持に励んでいたわけではありません。男系自体が日本の伝統なのであり(何親等も離れた天皇即位を例に出す場合がありますが、天皇以外でも徳川吉宗などの例もあるわけです)、男系天皇が伝統といえるのかは正直疑問です。その代表とはいえるでしょうけれど。
現代社会において、少なくとも第二次大戦後において男系にこだわる家がほとんどない(全然ないとは言いません)以上、あえて皇室がそこにこだわる必要があるのかなという結論にいきつきます。第二次大戦後の変化を全て否定するというのなら別ですけど、そこまで復古主義的なのもどうかと…
ついでに言いますと、天皇の伝統というものは要は、宗教的・祭祀的意義をもっていたということに由来するものです。遥か昔は天皇は日本を完全に統治していたのであり、武家政権の発足移行も政教分離の内の「政」の分野は武家に握られたものの、「教」の部分は依然として天皇が把握し、宗教的色彩を帯びて存続し続けてきたことが天皇にまつわる伝統なのだと思います。
そうした伝統があるからこそ、明治憲法は天皇を頂点に頂き、政の分野を新たに握らせ、かつ教の部分も国家神道という形で存続させてきたわけです。
現代は政も教もなくなった象徴ということですから、要は日本人の代表みたいなものです。となると、教の部分がない現行皇室制度が古来からの伝統にこだわる必要はありません。日本人の一般感覚と到底かけ離れた概念(側室にしてもそう、男系維持のための近親婚もそう)を無理に押し付けるのはむしろ象徴制に反していると言えそう。また現代日本人の一般的な男系・女系関係なしという部分を許容しても問題はないはずです。
もちろん、依然として天皇家は日本の「教」の部分を担っているのだということまでひっくるめて絶対的な男系維持を説くのなら一貫しています。が、そういうことを主張している人はいないようです。それでは片手落ちという印象は拭えません。
c.男系を2600年維持し続けてきたから、天皇家は尊敬を受けている。
要は、「天皇は男系維持を続けてきたからこそ尊敬を受けている、男系を廃したら天皇ではなく単なる王に成り下がり権威が失墜する、結果日本人の心が失われることになるから男系維持を続けるべき」ということのようです。
ただ、この意見何かそもそも前提が違うような気がします。
個人的には別に天皇が男系維持のみによって尊敬を受けてきたとも思いませんが、まあ、ここは彼らの言うとおりだとしましょう。
つまり、天皇は男系維持のみで尊敬を受けてきたのであり、それ以外に彼らの特別性など何もなく、仮に愛子さまの子供が天皇になったら他国の人に「天皇家はもう男系を廃したのだし、彼らの歴史はたった一日しかないものなのだ。以前は英国王室に匹敵するものだったが、それは昨日の段階で終わった。今はスペインやノルウェーと同格みたいなものだろう」と思われるとしましょう。
ただ、ならばどうして日本人の心が失われるのか。日本人の心が天皇に対する他国からの賞賛、それについての自負心のみで成り立っているということでしょうか?
心温まる存在としての皇室は依然として存続しつづけるのであり、それに対する慕情の念や尊敬の念などは抱き続けられるものだと思いますが。
この部分は人によって完全に前提が違っているので、論理的な理由とは言いがたいですね。
あと、どこか忘れましたけど、天皇はローマ法王と英国王と並んで米大統領の最敬礼を受けるのだから偉いという書いているところがありましたが、これは2つの点で疑問。
まず、世界の基準は米国大統領によって決まるものなのかということ。
もう一つは、ローマ法王は空位期間があり選抜方法も時代によって変わっています。英国王もコロコロ家が変わっているので、この二つを取り出しても男系の正統性には何の意味もありません。むしろ内実の如何を問わず、連綿と長い期間そういう制度(ローマ法王、天皇)が存在していることが他国にとっては尊敬の対象となるのであるという点で、女系に移行しても大丈夫だよという意見のようにも見えるのですけれど。
d.有識者を気取る連中がちょっと話し合っただけで決めるのは納得できないし、また女系と女性天皇の区別もつかない世論などアテにならない
前半部分は大半の人の本音でしょう(笑)。要は彼らは知識人が嫌いで、「気に入らない連中が気に入らないことをしているのに、それをむざむざ容認することほど気に入らないことはない」ということです(笑)。
だから今になって唐突に抵抗しているわけです。おかしいおかしいと元々思っていたなら、憲法改正論議の中で「憲法1条の前段は、万世一系の家系による天皇は日本国の象徴であり、日本国民統合の象徴であると改正すべきだ」という意見があっても良さそうなものです。寡聞にして、そういう論議は聞いたことがありません。現在も「まず憲法1条から変えてしっかりとした基盤を作るべきだ」という意見を見受けません。
そうした活動もしていないのに、突然女系と女性の区別もつかない国民はバカで愚かだと言われても、言われた方がムカッとなるだけです。
e.皇室は男系維持を望んでおり、そうした意図に反するのは許せない
本気で望んでいるのなら、側室云々以前に愛人でも持っていると思うんですけど…
もちろん当人達も「できれば自分達で絶やすのは嫌」とは考えているでしょう。が、「そのためにあらゆる手段を使うべきであり、その結果として自分達の孫娘がどうなっても構わない」とは考えていないと思うのですが。
これは至って個人的なことですが、私は現在の皇太子は立派な人だと思います。さっさと結婚しろという内外のプレッシャーにもかかわらず意中の人を待ち続け、またその人が色々なプレッシャーをかけられると、守ろうとして宮内庁などに拒否反応を示した人ですからね。人間として掛け値なしに尊敬できると思っています。
そんな皇太子も維持論者にとっては役立たずの落伍者なんでしょうね。
むしろこういう本音も書いたらどうでしょうか?
「雅子さまと紀子さまは母親として最低限の義務は果たしたけど、それ以上の努力がうかがえないから不満だなぁ。3人全部女の子ってところで運がなさすぎる。
しかし、それ以上に頭にくるのが皇太子さまと秋篠宮さまだよな。自分達が必死に男系維持のために頭を使っているのに、彼らとくれば男子を作るために愛人の一人も囲おうとせずに普通の家庭を作って満足しているんだから。あの二人のどっちかが頑張って男の子を作ってくれれば全てが丸くおさまるんだよ! 自分達が男尊女卑だなんて非難されることもないんだ。
誰かあの二人に皇族の義務を説いてやってくれ、まったく…」
崇高な男系の伝統を説くべき相手は世論ではなく、あのお二方なのでは?
もっとも、じゃあ男系維持は破綻しており、女系移行は必至。それによって全て解決するのかというと実はこちらも疑問です。
要は三人いる皇室の女の子達が普通に結婚して、子供ができるのかということを危惧しているわけです。
男系論者は「皇室に縁もゆかりもない人間が女性天皇の夫となるなど考えられない」と慨嘆しておりますが、むしろ逆で、女性天皇と結婚しようという勇気のある男性なんていないと思います。
天皇にならないことが確定していた紀宮さんにしたって、ようやく、という感じで結婚できたわけですからね。世間の目とかありますし、余程性格が合うなどしないと、ちょっと結婚なんてできないでしょう。
となると、女系に移行したところで結局行き止まりになってしまう可能性は高いといえるのではないでしょうか。
まあ、現実を見据えてしまうと、男系維持も女系拡大も行き着く結論は変わらないのかもしれませんね。
『ヤンキー皇居に行く』なんてことが次の世紀には実現しているのかも(笑)。
最後に、実現の可能性は限りなく低いですが…
女系を容認してそのまま愛子さまを天皇に。そして、イギリス皇太子のウィリアム君とかヘンリー君と結婚するなんてどうでしょう。次の天皇は女系だけれども、英国王室と天皇家の双方の血を受け継いでいる…
少なくとも、旧宮家復帰だどうだこうだと言うよりも遥かに話が壮大であり、また国益に資すると思いますが…