こんにちは。塾長の鴨志田栄子です。今年最初のブログです。接客について考えてみたいと思います。
先日、マスコミでも取り上げられる有名な老舗飲食店で家族と食事をしたときのことです。帰り際に、仲居さんから言われた「言ってくだされば」の一言が、せっかく、思い出を作ろうと食事に行った私たちの印象を損ねてしまった事例を紹介します。
※お店に対する批判ではなく、反面教師として受け止めていただき、接客で大切なことについて考えていただきたいという気持ちから、以下の内容を読んでいただけたら幸いです。
玄関で靴を脱ぎ、2階の8~10卓が並んでいる大きな畳の間に通されました。他にはお客様はいらっしゃらず、私たちが一番目でしたが、出入口に一番近くの卓に案内されました。
食事を済ませて、洗面所に立ったとき、他の部屋は、大部屋も個室もすべて洋風のテーブルと椅子席であることを初めて知りました。情けない話ですが、私は昨年夏に膝のはく離骨折をしてしまい、それ以来、まだ正座ができないので、できれば、椅子席がよかったのです。しかし、予約をしていなかったことや、和食なので、すべてが畳の部屋なんだ・・・と、疑問を感じずに過ごしていたのです。
帰り際に玄関で接客をしている仲居さんに、「椅子席は予約のみですか?」と尋ねたところ、「いいえ、そんなことはないですよ」とあっさりと言われました。
「私は正座ができないので、椅子席があったらならそちらで食事をしたかったです。」と答えたら、「言ってくだされば」の一言がかえってきたのです。
食事は美味しくいただきました。さすが有名老舗飲食店です。しかし、この一言がきっかけで、それまでは、さほど気にもしていなかった他の仲居さんたちのすべての接客がほとんど落第点に感じてしまったのです。
1.一番先に入ったのに、出入口の側の座卓に案内されたこと。あとから見えたお客様が奥の席だった。
→この対応では、先に入ったお客様は、大事にされていないという印象を与えかねません。お席への案内は、そのお店の第一印象となるのです。
2.お茶のお代わりが欲しくても、声をかけなければならない。しかし、仲居さんは、部屋には姿が見えず、呼び鈴もない。お部屋に入ってこられるタイミングで声をかけるしかなかった。
→仲居さんは部屋にいる必要はありませんが、お客様の様子をうかがえるポジション、そのタイミングを掴む接客が望まれます。
3.洗面所に行こうと廊下にでて、立ち止まりどこにあるのだろうとキョロキョロしたが、仲居さんは、誰も声をかけてくれなかった。自分から洗面所はどこですか?と尋ねた。
→立ち止まったお客様には、声がけをするというのは、接客の基本です。
4.カードで支払いをしたが、カードを預けてから長く待たされ、コートを着て廊下にでて催促をし、階下に降りたら、その時に、初めて精算を始めたことが分かった。カードを機械に通している場面に出くわしてしまった。時間がかかることはあると私も理解できるが、その間、お茶がでてくるわけでもないし、仲居さん同士の連携ができていないことを実感した。
→仲居さんの役割分担が明確なのは好ましいですが、コートを着始めた様子から「お待たせしております」とか、お茶を注ぐなど、連携してフォローし合う体制が見られないことは、仲居さんへの教育が弱いことが露呈してしまいます。
5.最後は、「言っていただければ・・・(対応したのに)」という、玄関で、畳の間と椅子席の選択について尋ねた冒頭に記した一言である。
→本来は、お席に案内する前に、畳の間と椅子席とどちらがよろしいですか? と尋ねるべきできないかと思います。接客は察することです。つまり、気づけるかいなかです。「言ってくだされば」というセリフは、自分たちを正当化する言葉ではないでしょうか?
私自身、CSセミナーで、顧客の印象を左右する7つの要因として、時々紹介しているのが、以下の項目です。(出所:佐藤知恭著「顧客満足を超えるマーケティング」)
(1) 環境的要因(立地、清潔さなど物理的環境)
(2) 美的要因(五感に訴える要因)
(3) 人間関係的要因(接客)
(4) 手続き的要因(お料理のオーダー、精算など、食事をするために必要な手続き)
(5) 情報要因(食事の内容、お席の選択肢などお客様が快適に過ごすために必要な情報)
(6) 提供物的要因(食事の質、量、盛り付けなど)
(7) 金銭的要因(お支払する総額)
(1)から(6)の総和を(7)の支払った金額で割った値、すなわち、コストパフォーマンスがお客様のそのお店の総合評価につながります。
上記の飲食店は、決して安いとは言えない価格帯です。さらに、サービス料として総額の10%も請求されます。それを考えると、(3)と(4)と(5)の改善が望まれるのではと、ついコンサルタント目線で見てしまいました。
そして、以前に映画「県庁の星」で、主人公の県庁職員を演じる織田裕二さんと、ベテランパート店員演じる柴咲コウさんが歩きながら「接客とは察すること」と会話をしていたことを思い出しました。言われてから行うサービスは、おもてなしではないと思います。お店の価値を高めるのも人、下げるのも人。接客の重みを感じた出来事でした。