特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

2-10・ドップラーシフトの一般式の導出の4

2023-09-12 02:00:31 | 日記

ここでは ◎斜め方向に動く場合のドップラー効果: https://archive.md/ZBxEr :から前のページで示した一般式を導出してみます。

「(1) 音源が動く場合」から最終的には

f1=f0*C/(C-Vs*cos(Θ2)) ・・・(1)式

ここでf0は発信源の振動数、f1は観測された振動数、Cは波のつたわる速度、Vsは発信源の動く速度です。

角度Θ2の取り方はページの図にて確認願います。

図から分かりますように「音源が右に動いて観測者は静止」しています。

この状況で観測者が聞く音の周波数がf1である、と(1)式は言っています。

 

さて次に「(2) 観測者が動く場合」をみます。

最終式は

f1=f0*(C-Vr*cos(Θ1))/C ・・・(2)式

Vrは発信源の動く速度ですが、ここで注意が必要です。

図からVr>0の時は観測者は音源から遠ざかる方向に動きます。

それで、前ページに合わせる為にはVr>0で観測者は音源に近づく方向に動いてほしいのです。

そうであればここで図示されている角度Θを使ってVrの符号を逆転させます。

つまり

Θ1=πーΘ

とします。

この変換によって(2)式でVr>0で観測者は音源に近づく方向に動く事になります。

 

さてそれで(1)式は観測者に届く音波の周波数が音源の動きによって変化する事を示しています。

しかしながら、観測者にとっては「音源が動いたから周波数が変化した」のか「音源は止まっていて、その静止している音源の周波数が観測された周波数だった」のか、そのような事には関心がありません。

つまりは「観測者は聞こえてきた音を聞くだけ」であって、「音源がどのように動いていたか、あるいは止まっていたか」には関心がないのです。

それはつまり「観測者は音源を見る必要はない」=「音源の移動速度を知る必要はない」のです。

そうであれば「実際は音源の移動によって音の周波数が変化している」のですが観測者はその事を含めて「それを改めて音源であるとしてよい」という事になります。(注1)

 

さてそうであれば(2)式のf0に(1)式を代入すれば、それが音のドップラー効果の一般解となる訳です。

従って

(2)式より

f1=f0*(C-Vr*cos(Θ1))/C 

=(f0*C/(C-Vs*cos(Θ2)))*(C-Vr*cos(Θ1))/C 

=f0*(C-Vr*cos(Θ1))/(C-Vs*cos(Θ2)) ・・・(3)式

となります。(注2)

 

これを例によって光の非相対論的なドップラー効果の式と見ます。

そうしてまたCを光速とし速度はC=1で規格化をして新たにそれをVrおよびVsとします。

そうすると(3)式は

f1=f0*(1-Vr*cos(Θ1))/(1-Vs*cos(Θ2)) ・・・(4)式

となります。

 

さてそれで、これに相対論的な項、それは時間遅れを表すのですがそれを掛ければ光のドップラーシフトの一般解となります。

光源の時間が遅れれば赤方偏移し、観測者の時間が遅れれば青方偏移するのですからその相対論的な追加項は

sqrt(1-Vs^2)/sqrt(1-Vr^2)

となります。

以上より光のドップラーシフトの一般解は

f1=f0*(1-Vr*cos(Θ1))/(1-Vs*cos(Θ2))*sqrt(1-Vs^2)/sqrt(1-Vr^2) ・・・(5)式

となる事になります。

はい、以上でできあがりです。(注3)

 

注1:ここでのポイントは「音源は受信側に関係なく、受信側とは独立に発信する音の周波数を決めることが出来る」という所にあります。

それはつまり「音は空間にでてしまえば、もはや発信側との関係はなくなる」という事です。

そうしてまた同様に「受信側も発信側の状況とは無関係に受信側の状況を決めることが出来る」のです。

それは「受信側は空間を伝わってくる音を検出するだけ」ですので「その時に発信側がどうであったか」などという事は一切、関係がなくなり「空間を伝わってきた音=信号を検出するだけ」なのです。

さてその考え方でいきますと「2-8」で求めた2つの式からも一般式が直接求まる事になります。

「2-8」で求めた式は次のよなものでした。

光源が動く場合のドップラーシフトは

f1=f0*sqrt(1-Vs^2)/(1-Vs*cos(Θ2))

観測者が動く場合のドップラーシフトの式は

f1=f0*(1-Vr*cos(Θ1))/sqrt(1-Vr^2)

上記の例にならって「光源が動く場合のドップラーシフトの値f1」を改めて「観測者が動く場合のドップラーシフトの式のf0に代入」します。

そうすると

f1=f0*(1-Vr*cos(Θ1))/sqrt(1-Vr^2)

=(f0*sqrt(1-Vs^2)/(1-Vs*cos(Θ2)))*(1-Vr*cos(Θ1))/sqrt(1-Vr^2)

=f0*(1-Vr*cos(Θ1))/(1-Vs*cos(Θ2))*sqrt(1-Vs^2)/sqrt(1-Vr^2)

となり式の形は(5)式「光のドップラーシフトの一般解」と同じになります。

注2:これは音のドップラーシフトの一般式になっています。

但しこの時に音源は左側に、観測者は右側にいます。

それでこの式は音源と観測者が近づく方向に動く時にVr>0、Vs>0とし、そうしてその時には角度についてはΘ1=π、Θ2=0となっています。

そうすると(3)式は

f1=f0*(C-Vr*cos(Θ1))/(C-Vs*cos(Θ2))

=f0*(C+Vr)/(C-Vs) 

となります。

それで古典的なドップラーシフトの式を: https://archive.md/MNLxG :で確認します。

『観測者も音源も同一直線上を動き、音源S (Source) から観測者O (Observer) に向かう向きを正とすると、観測者に聞こえる音波の振動数は、
f'=f* (V-vo)/( V-vs)
となる。ここで、
f : 音源の出す音波の振動数、
V : 音速、
vo : 観測者の動く速度、
vs : 音源の動く速度』となっています。

ここで音源は左側に、観測者は右側にいますので両者が近づく方向に動きますと

vo<0、vs>0

となります。

それで(3)式の条件にあわせてvo>0の時に両者が近づく方向に動く、としますとういきの式は

f'=f* (V+vo)/( V-vs)

となり、本文の音の一般式から求めた縦ドップラーの式とおなじになります。

つまりは(3)式は音のドップラーシフトの一般式になっているのです。

注3:Vr、Vs、Θ1、Θ2については前のページと同じになります。

以下、前ページからの引用です。

『ここでVrは静止系に対する観測者の相対速度(=固有速度)、Vsは静止系に対する光源の相対速度(=固有速度)を示します。

但しVr、Vsの方向はお互いが近づく方向をプラスに取ります。

f1は観測される周波数、f0は光源の周波数です。

角度についてはこれまでと同様の取り方になります。

Θ1=π、Θ2=0がお互いが近づく方向、Θ1=0、Θ2=πがお互いが離れる方向です。

但しこの時 Θ2=abs(Θ1-π) の関係が成立しています。』

こうしてみると「音と光については、相対論的な追加項を除けば同じに扱える」という事が分かるのでした。

あるいはもっと一般的に言うならば「空間を伝わる信号についてはこの一般式=(5)式が成立する」といってもよさそうです。

もちろん(5)式を音に適用する場合は

Vr<<<C(光速),Vs<<<C

であるために

sqrt(1-Vs^2)/sqrt(1-Vr^2)≒1

となり、そうであれば(5)式は音のドップラーシフトの一般式である(3)式と同じ内容を持つことになるのです。

 

PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/cTxo5

 

 


2-9・ドップラーシフトの一般式の導出の3

2023-09-09 05:35:20 | 日記

さてそういう訳で結局世の中には3つのグループが存在している事になります。

1、最初のグループはアインシュタインのドップラー効果の式を最初から無視している人たち。

この人たちは「横ドップラーでは観測者はいつも静止していて、光源が常に動くものである」とどういうわけか信じこんでいます。

そうしてその認識にしたがってドップラー効果の式を導出し、また「横ドップラー効果を検出した」という実験内容を理解しています。

そうであればそういう方々にとっては「横ドップラー効果の観測では赤方偏移を検出する」となっているのです。(注1

 

2、二番目のグループは「横ドップラーシフトでは観測者が動く場合がある」という事を認識しています。

しかしながらその場合でも観測者が観察する光の波長は伸びる、つまりは「横ドップラー効果の観測では赤方偏移を検出する」となっています。

その理由として、当方の知る限りでは以下の様になります。

彼らは「アインシュタインの式は知ってはいるが、観測者が動く場合は観測者には光行差が生じるので、観測者からみた時に90度上からの光を観測する事が横ドップラー効果の観測になる」と主張します。

そのように解釈するならば「観測者が動く場合でも横ドップラーシフトの観測結果は赤方偏移している」と主張するのです。

この人たちの信条は「受信側に立っている観測者のみが世界を正しく認識できる」と主張している事になります。

それゆえにこの人たちは「横ドップラー効果は赤方偏移でなくてはならない」と主張する為にアインシュタインの式をないがしろにしている様に見えます。

そうしてその主張は「光源の横に立っている観測者の世界認識は否定する」というものであって、それは「相対論主義者にあるまじき誤りを犯している」と批判されなくてはならないものなのです。(注2

ちなみにこのグループには「アインシュタインの特殊相対性理論(1905年):http://fnorio.com/: https://archive.md/Gl1Hd#3-2-2 :をまとめて説明しているfnorio氏も入る事になる。

そうしてまたそれ以外の「アインシュタインが導出した式を理解している者達」も入っている様です。

それらの方々にとってはやはり「横ドップラー効果を検出したら赤方偏移していた」という実験結果の存在が大きいのではないか、と推測している次第です。

 

3、さて3番目のグループの人たちは「横ドップラー効果では観測者が動く場合がある」という事を認識しているし、「その場合には観測者は青方偏移を検出する」という事を知っているのです。

そこに属する人たちはアインシュタインを筆頭に、英語版ういき「相対論的ドップラー効果」: https://en.wikipedia.org/wiki/Relativistic_Doppler_effect :の編集者たち、そうしてまたその認識に基づいて「一般的に成立する相対論的ドップラー効果の式を発表した人たち」がはいります。

そうしてまた当方もこのグループに属する一人ですが、何分ともこのグループの構成員は少ない様です。

 

4、「一般的に成立する相対論的ドップラー効果の式」

さてこうしてようやく「一般的に成立する相対論的ドップラー効果の式」の説明に入る事になるのです。

その式は上記で示した英語版ういき「相対論的ドップラー効果」: https://en.wikipedia.org/wiki/Relativistic_Doppler_effect :の「音と光の相対論的ドップラー効果」で示されています。

そうしてそのういきの説明と式の形は数学者には分かりやすいのでしょうが、一般受けする形にはなってはいません。

式の形そのものはEq.10として示されています。

そうしてその式もまた

『相対論的なドップラーシフトですが、それは古典的なドップラーシフトの項と相対論が予測する時間遅れ因子sqrt(1-V^2)の積で表される。』

と言う主張に基づいている事が説明されています。

さてそれで、その式をこのシリーズで扱ってきた表現方法に変換してみると次のようになります。

f1=f0*(1-Vr*cos(Θ1))/(1-Vs*cos(Θ2))*sqrt(1-Vs^2)/sqrt(1-Vr^2) ・・・(1)式

ここでVrは静止系に対する観測者の相対速度(=固有速度)、Vsは静止系に対する光源の相対速度(=固有速度)を示します。

但しVr、Vsの方向はお互いが近づく方向をプラスに取ります。

f1は観測される周波数、f0は光源の周波数です。

角度についてはこれまでと同様の取り方になります。

Θ1=π、Θ2=0がお互いが近づく方向、Θ1=0、Θ2=πがお互いが離れる方向です。

但しこの時 Θ2=abs(Θ1-π) の関係が成立しています。それで

(1-Vr*cos(Θ1))/(1-Vs*cos(Θ2)) の項が古典的なドップラー効果を表す部分で

sqrt(1-Vs^2)/sqrt(1-Vr^2) の項が相対論的な効果(=時間遅れの効果)を表します。

さてこの式をみますれば

Vr=0、Vs≠0で通説の式(=光源が相対速度Vsで動く場合の式)

ν’=ν*sqrt(1-V^2)/(1-V*Cos(Θ1)) 

に、そうしてまた 

Vr≠0、Vs=0でアインシュタインの式(=観測者が相対速度Vrで動く場合の式)

ν’=ν*(1-V*Cos(Θ2))/sqrt(1-V^2) 

になる事は明白です。(注3

 

注1:前に代表例をあげたが、参考までに再掲示しておきます。

日本語のういき「ドップラー効果」を始めとしてその他の横ドップラーシフトの説明、あるいは式の導出では全て「動くのは光源で観測者は静止している」という条件になっています。

つまり「横ドップラーシフト=赤方偏移」と主張しているのです。

以下そのように主張している代表例を示します。

・光のドップラー効果 (横方向): https://archive.md/cbVVE :

・第 11 回 相対論における諸現象(波動・光)
https://www2.yukawa.kyoto-u.ac.jp/~norihiro.tanahashi/pdf/SR/note_SR-11.pdf

・特殊相対論入門
https://opac.ll.chiba-u.jp/da/curator/900121237/rel.pdf

・2 相対論的ドップラー効果
https://www.astr.tohoku.ac.jp/~chinone/Compton/Compton-node2.html

ちなみに「通説の式が唯一のドップラー効果を表す式である」かのように主張する日本語版ういきの立場は「正解のうちの半分しか語っていない」のですから、試験で言うならば「50点」つまり「不合格」なのです。

注2:アインシュタインは「全ての慣性系は平等である」と宣言しました。

そうであれば「光源の横に立つ観測者がどのように世界を見ているのか」ということも「受信側に立つ観測者が見えている世界認識のありよう」と平等に評価されなくてはなりません。

そうであればこそ「観測者間の公平性を担保する為にもW横ドップラーの測定が必要となる」のです。

あるいは「観測者が見る世界は光行差が生じる」のでより客観的に「幾何学的な位置関係で90度という条件(=光の進行方向と運動方向が直交する条件)をきめる」というやり方のほうが公平なのです。

ちなみに「光行差を使ってアインシュタインのドップラー効果の式の導出を否定する方々」は「アインシュタインの式を曲解している輩である」という事になります。

なんとなればそれは結局は「アインシュタインの式は不要で、通説の式があればそれでよい」と主張している事になるからです。

注3:しかしながらこの式を発表したBrown, Kevin S. "The Doppler Effect". Mathpages. Retrieved 12 October 2018.の両名が「静止系は客観的に存在する」という主張をそれほど前面には出してはいない様です。

それはたとえば「ローレンツの様に何かとても大事なものを数式として導き出せた」としても「それが持つ物理的な内容を正しく把握できているとは限らない」という様な状況と同じように見えます。

相対性理論についての考察: https://archive.md/UGhQM : https://www.mathpages.com/rr/rrtoc.htm :

4.1  不動の時空: https://archive.md/anZ4r :

それに対して彼らの主張のメインは「音のドップラーシフトを表す式と光のドップラーシフトを表す式は一つにまとめる事ができる」というものです。

なお(1)式の導出については「2.4 音と光のドップラーシフト」: https://archive.md/X7yH :に詳しくまとめられています。ご参考までに。

 

追記:(1)式は観測者が測定することになる光の周波数(=光速/波長)が精度よく測定できればVrとVsの値がわかる、という事を示しています。

もっとも角度Θを精度よく決める事はなかなか難しい事ですが。

ちなみに光源と観測者の間の相対速度VはVrとVsの相対論的な加算式から計算される事になります。

つまり「未知数は2つ、VrとVs」で「光源と観測者の間の相対速度V、角度Θ、それから観測者が観察した周波数f1、および光源の周波数f0が既知数」となります。

おっと式は(1)式とVrとVsの相対論的な加算式の2つです。

 

PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/zco9x

 


その2-8・ドップラーシフトの一般式の導出の2

2023-09-06 03:26:03 | 日記

「その2-7」において『相対論的な縦ドップラーシフトですが、それは古典的なドップラーシフトの項と相対論が予測する時間遅れ因子sqrt(1-V^2)の積で表されます。』と表明しました。

ここではその解釈を広めて『相対論的なドップラーシフトですが、それは古典的なドップラーシフトの項と相対論が予測する時間遅れ因子sqrt(1-V^2)の積で表されます。』と出来るかどうか検討します。

それはつまり「縦ドップラーから横ドップラーまで含める事ができるかどうか」という事です。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

それで前例に倣ってまずは光源が動く場合の古典的なドップラーの式を参照します。

わかりやすいのは「斜めのドップラー効果」: https://archive.md/uMFEI :

あるいは「◎斜め方向に動く場合のドップラー効果 : https://archive.md/ZBxEr :

式の導出についてはそれぞれのページに譲ります。

そうしてここで最終的に導出される式はいずれも

f1=f0*C/(C-V*cos(Θ)) の形になっています。

ここでf0は発信源の振動数、f1は観測された振動数、Cは波のつたわる速度、Vは発信源の動く速度です。

角度Θの取り方はそれぞれのページの図にて確認願います。

さてそれでこの式を光の場合に展開し、かつC=1の単位系にします。

f1=f0*C/(C-V*cos(Θ))

=f0*1/(1-V/C*cos(Θ))

ここでC=1として単位系を変更ー>V/Cを改めてVと置きます。

f1=f0*1/(1-V*cos(Θ))

そうして動いているのが光源ですから、光源の時間が遅れる=その分、発信元の周波数がsqrt(1-V^2)でおちる

従って最終的に観測者が観測する周波数f1は

f1=(f0*sqrt(1-V^2))*1/(1-V*cos(Θ))

=f0*sqrt(1-V^2)/(1-V*cos(Θ))

となります。

さてそれで、ここで日本語版ういき「ドップラー効果」: https://archive.md/MNLxG :に戻ると

光源が動く場合のドップラーシフトは

ν’=ν*sqrt(1-V^2)/(1-V*Cos(Θ))

ここで、ν’:観測者が観測する振動数、ν  : 光源の出す光の振動数、V: 観測者から見た光源の速さ、 : 光速が1の単位系、Θ  : 観測者から見た光源の動く方向(Θ  =0 :観測者に向かってくる場合)

となっています。

こうして上記の光源が動く場合のドップラーシフトの式の導出方法が正しかった事が分かるのです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

次に今度は観測者が動く場合のドップラーシフトの式を導出します。

「◎斜め方向に動く場合のドップラー効果 : https://archive.md/ZBxEr :

このページの下段が観測者が動く場合のドップラーシフトの式の導出になっています。

そうしてここで最終的に導出される式は

f1=f0*(C-V*cos(Θ))/C の形になっています。

これを上記にならって光の場合に展開します。

f1=f0*(1-V*cos(Θ))

今度は観測者が動きますので観測者の時間がsqrt(1-V^2)で遅れます。

遅れた時計で周波数をカウントしますので、その分周波数は上がります。

従って最終的には

f1=f0*(1-V*cos(Θ))/sqrt(1-V^2)

となります。

さてそれでこの式をアインシュタインが出した「観測者が動く場合の式」と比べなくてはなりません。

「アインシュタインの特殊相対性理論(1905年):http://fnorio.com/: https://archive.md/Gl1Hd#3-2-2 :

fnorio氏のまとめによれば「2.ドップラー効果」の章にてアインシュタインのドップラー効果についての説明を以下の様に引用されています。

『ω’の式から次の事がでてくる:・・・

ν’=ν*(1-V*Cos(φ))/sqrt(1-V^2) ・・・(1)式

これは任意の速度に対するDopplerの原理である。』

こうしてまたここでも上記の導出方法で出した式とアインシュタインが出した式が同じである事が確認できました。

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さてそうなりますとどうやら

『相対論的なドップラーシフトですが、それは古典的なドップラーシフトの項と相対論が予測する時間遅れ因子sqrt(1-V^2)の積で表されます。』

と言う主張は縦ドップラーから横ドップラーまで含めて成立している事が確認できた事になります。

 

そうして「その様にして光のドップラー効果の式が導出できる」という事はドップラー効果からみれば(つまりは移動する光源から発せられる光を外部から観察するならば)「光は音速が光速Cとなった音の伝わり方と同じに見える」という事を示しています。

さてではそれは実際はどのように見えるのか確認してみましょう。

英語版ういき「ドップラー効果」: https://archive.md/VeIOL :を参照します。

ページの上段を少し下がった所に4つのアニメーションが提示されています。

左上のものは音源が静止している時、その右側は音源が0.7Cで右に移動している様子をしめしています。

そうしてういきではこのCは音速を示しているのですが、これを「文字通りに光速Cとして理解してよい」というのがここまでの結論となります。(注1)

 

さてその様子からみれば光源が進行する方向には波の波面が圧縮され、逆方向には波面の密度が落ちている事がよく分かります。

そうしてこの状態を検出するのが「光の縦ドップラー」という事になるのです。

もっとも光の場合はこれまで見てきたように、このアニメーションに加えて「移動するものは時間が遅れる」効果が加味され、その結果が最終的に観測者が観測する光の周波数となるのです。

 

ちなみにこの移動する光と一緒に移動している観測者には光が広がっていく状況がどのように見えているのか、といいますればまさに最初に見たアニメーションが示している様に「光源を中心としてそこから光速Cで同心円状に広がる光を見る」事になります。(注2)

そうして、「何故そんな事が可能になっているのか」と問うならば「それがローレンツ変換のメインジョブである」が答えとなります。(注3)

 

ちなみに光源が光速で動くとどうなるか、そうして又光速を超えて動く光源が出す光はどうなっているのか、はその下の2つのアニメーションが示しています。ご参考までに。

 

注1:この認識には抵抗があるかと思われます。

じじつ、当方も「光の広がり方と音の広がり方が同じ?そんなばかな!」と思っていた方ですから。

しかしながら「計算してみるとそうなっている」様なのです。

注2:これがMMの干渉計でエーテルの挙動が確認できなかった理由です。

MMは「光は右のアニメーションの様に伝わるはずだ」と考えてMMの干渉計でのテストを行いました。

それはつまり「エーテルの中を進行する地球の運動を光を使って検出する」という試みでした。

そうして宇宙がガリレイ変換でできていたらその試みは成功したかもしれません。

しかしながらMMには残念なことに「宇宙はローレンツ変換を採用していた」のです。

従ってMMの干渉計は「光源と伴に移動する観測者の視点」ですから「MMの干渉計が見る光の広がり方」は「光源を中心として同心円状に広がる光を見る」事になるのです。

したがってそこにはMMが期待した様な「干渉縞は現れなかった」という事になったのでした。

この辺りの話は前野氏の「相対論講義録2007年度」: http://www.phys.u-ryukyu.ac.jp/~maeno/rel2007/tokushu.pdf :
 P32~34「3.7 マイケルソン・モーレーの実験」に詳しく説明があります。

そうして無風状態、つまりは光の場合はエーテルが止まっている場合、音の場合は空気が止まっている場合には、両者を「波の挙動として見た時のドップラーシフトでは、その式の導出は同じになる」のです。

これは「発信者側をソースとして受信者側をレシーバーとして記述した場合(=古典的ドップラーシフトの記述)、異なって現れる相違は波の伝わる速さだけになる」という事を表しています。

そうして光について言えば「静止系に対して移動するものは、ソースであれ、レシーバーであれその時間は遅れる」という特殊相対論の効果が付け加わる事になります。

・・・という事を本文の検証結果は表しています。

注3:ローレンツ変換は光速Cがメインパラメータになっています。

従って光速C>>>>音速である事の理由によって、音源と伴に動く観測者には「音源が進行する方向には波の波面が圧縮され、逆方向には波面の密度が落ちている」という状況を見る事になります。

そうしてその様になる理由は単に光速C>>>>音速である事によっています。

従って我々の世界でも光速C=音速であるならば、音源とともに動く観測者は「音源を中心としてそこから音速Cで同心円状に広がる音を見る」事になるのです。

 

追記:さてもちろん当方はエーテル論者ではなくて「静止系は客観的存在だ」論者です。

そうであれば「古典的なドップラーシフトの式の導出が音と同じように光でも行える」ので「音の伝達を空気が行う」様に「光の伝達をエーテルが行う」などと主張するものではありません。

そこのところ、お間違いのなきようにお願いします。

さて「それでは何が波としての光を伝えているのか?」という質問に対しては「その他の静止質量がゼロのボゾンと呼ばれる素粒子と同じ機構で光は伝わっている」と答える事になります。

あるいは「光は光子として伝わる」といい替えましょうか?

そうして観察者が「波としての光の特性を計る」ならば「そこでは光は波としてふるまう」という「量子力学的な解釈の方」が答えとしては良いのかもしれませんね。

 

PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/jJH1V

 


その2-7・ドップラーシフトの一般式の導出の1

2023-09-03 02:05:23 | 日記

相対論的な縦ドップラーシフトの式を導出してみましょう。

相対論的な縦ドップラーシフトですが、それは古典的なドップラーシフトの項と相対論が予測する時間遅れ因子sqrt(1-V^2)の積で表されます。(注1)

 

まずは古典的なドップラーシフトの式を: https://archive.md/MNLxG :で確認します。

『観測者も音源も同一直線上を動き、音源S (Source) から観測者O (Observer) に向かう向きを正とすると、観測者に聞こえる音波の振動数は、
f'=f* (V-vo)/( V-vs)
となる。ここで、
f : 音源の出す音波の振動数、
V : 音速、
vo : 観測者の動く速度、
vs : 音源の動く速度』となっています。

光の場合も相対論を考慮しない場合は上の「音源」を「光源」にすればそれでOKです。(注2)

従って光の場合は

『観測者も光源も同一直線上を動き、光源S (Source) から観測者O (Observer) に向かう向きを正とすると、観測者が観測する光の振動数f1は、
f1=f0* (C-vo)/(C-vs) ・・・(1)式
となる。ここで、
f0 : 光源の出す光の振動数、
C :光速、
vo : 観測者の動く速度、
vs : 光源の動く速度』となります。

それで上の注釈にある様に速度の符号については光源を左において観測者を右におけば通常のX軸の符号になります。

つまりは光源と観測者の相対距離が近づく方向に動く場合(vs>vo)は周波数は上昇し(=青方偏移を示す)、離れる方向の場合(vs<vo)は周波数はさがる(=赤方偏移を示す)のです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

さてそれでまずは観測者を静止系に置きます。

そうして光源を観測者の方向に動かします。

そうすると(1)式は

f1=f0* (C-vo)/(C-vs)

=f0* (C)/(C-vs)

=f0* 1/(1-vs/C)

このシリーズのいつのもやり方、「速度はCで規格化する」のですからvs/Cを改めてvsとします。

従って

f1=f0*1/(1-vs) 

さて光源が速度vsで動いていますので時間がsqrt(1-vs^2)で遅れます。

つまりは「その分観測される周波数がおちる」のです。

さてそうであれば「相対論的なドップラーシフトの式」は

f1=f0*1/(1-vs) *sqrt(1-vs^2)

=f0*sqrt(1-vs^2)/(1-vs) 

で、いつもの簡約をしますと

f1=f0*sqrt(1+vs)/sqrt(1-vs) 

となります。

 

さてこの式が正しいかどうか、確認しましょう。

上記で参照したういき「ドップラーシフト」: https://archive.md/MNLxG :の「光のドップラーシフト」を見ます。

『ν’=ν*sqrt(1-V^2)/(1-V*Cos(Θ))

ここで、ν’:観測者が観測する振動数、ν  : 光源の出す光の振動数、V: 観測者から見た光源の速さ、但しここでは 光速を1とする単位系を採用、Θ  : 観測者から見た光源の動く方向(Θ  =0 :観測者に向かってくる場合)』

この式は「観測者が静止していて光源が動いている場合」を示しています。

それで縦ドップラーシフトですので、しかも「光源が観測者に向かってくる場合」ですからΘ  =0です。

従ってCos(Θ)=1ですから

ν’=ν*sqrt(1-V^2)/(1-V*Cos(Θ))

=ν*sqrt(1-V^2)/(1-V)

=ν*sqrt(1+V)/sqrt(1-V) 

はい、上記で導出した式と同じになりました。

 

さてそれで今度は光源を静止系に置いて、観測者をそれに向かって近づける場合ですね。

そうすると(1)式は

f1=f0* (C-vo)/(C-vs)

=f0* (C-vo)/(C)

ここで注意が必要なのはvo<0となっている事です。

そうして通常はvo>0の扱いで式を立てますので式の形はvoの前の符号が変わります。したがって

f1=f0* (C+vo)/(C)

=f0* (1+vo/C)

速度を上記同様にC=1の単位系に変換して

f1=f0* (1+vo)

そうして今度は観測者が動いていますから、観測者の時間がsqrt(1-vo^2)で遅れます。

そうであれば観測される周波数は上昇しますので「相対論的なドップラーシフトの式」は

f1=f0* (1+vo)/sqrt(1-vo^2)

=f0*sqrt (1+vo)/sqrt(1-vo)

となります。

そうしてこの式の形は上記で導出した2つの式と同じ形をしています。

さらには光源と観測者との間の相対速度Vで最初の式と3番目の式を書くならば全く同じになります。

 

ちなみに「光源を静止系に置いて、観測者をそれに向かって近づける場合」はアインシュタインの式で計算可能です。

ν’=ν*(1-V*Cos(Θ))/sqrt(1-V^2) でΘをπにすればOKです。

Θ=πではCos(Θ)=-1

従って

ν’=ν*(1+V)/sqrt(1-V^2)

=ν*sqrt(1+V)/sqrt(1-V)

となります。

以上、こうして上記4つの式はいずれも同じ結果を返すことが確認できました。

 

さてそれで「何を言いたいのか」といいますれば「観測者を静止させて光源を相対速度Vで観測者に近づけた場合」と、それとは真逆の「光源を静止させて観測者を相対速度Vで光源に近づけた場合」のいずれの場合でも「観測者の観測する周波数は同じになる」ということです。

つまりは「縦ドップラーの観測値からは静止系がどちらにあったのか」という情報は消えているのです。(注3)

しかしながら「動くものは時間が遅れる」という情報は保存されています。

そうして「Ives と Stilwellが行った実験」ではその「動くものは時間が遅れるという部分の情報を抜き出す事に成功した」のです。

 

注1:「古典的なドップラーと時間遅れの項で構成できる」という内容は、形式的には成立している模様です。

そうして何故それが成立するのか、についてはもう少し検討してみる余地があります。

しかしながらここでは「ある程度知られている知見=古典的なドップラーシフトの項と時間遅れの項の積で構成できる」を前提として話を進めます。

そうして申し訳ないのですが、ここではそれ以上のこの関係についての疑問には立ち入らない事にします。

注2:『相対論的な縦ドップラーシフトですが、それは古典的なドップラーシフトの項と相対論が予測する時間遅れ因子sqrt(1-V^2)の積で表されます。』という主張を認めるならば、「相対論を考慮しなくてもよい状況=光源と観測者の相対速度が光速Cに対して無視可能なほどに小さい場合」は光の縦ドップラーの式は音の縦ドップラーの式と同じになります。

注3:非相対論的なドップラーの計算式では「光源を観測者に近づける場合」も「観測者を光源に近づける場合」も両方ともに「観測される周波数は上昇」します。

しかしながら「その上昇する程度が両者では違う」のです。

そうであれば「非相対論的なドップラーの場合=音の場合」は「音源と観測者の相対速度、および観測された周波数」から「音源と観測者の音を伝える媒体に対するそれぞれの相対速度を逆算する事が可能」なのです。

しかしながら光の場合は「縦ドップラーの観測」では「静止系に対する光源と観測者のそれぞれの相対速度を検出する事は不可能」です。

それに対して「横ドップラー状態」であれば「静止系に対する光源と観測者のそれぞれの相対速度を検出する事は可能」となります。

 

追記:上記例では光源と観測者が近づく場合の縦ドップラーについて論じました。

それでは離れる場合はどうなのか、という事については「検討する手順は示しました」ので、これ以上の事は読者にお任せする事に致します。

ちなみに「通説でのドップラーシフトの式とアインシュタインが提示したドップラーシフトの式」についてはすでに「その2-5」においてグラフ表示をしています。

「通説でのドップラーシフトの式」は観測者が静止していて光源が動く場合で

「アインシュタインが提示したドップラーシフトの式」は光源が静止していて観測者が動く場合をそれぞれ表しています。

そうしてそのグラフにおいてX=0とX=πの位置がそれぞれ「縦ドップラーシフトで近づく場合と離れる場合の状況を示している」事になります。

それを見ると分かるのですが、「縦ドップラーでは通説の式とアインシュタインの式は同じ結果を与える事」が目視確認できます。

以下グラフを再掲示しておきます。

V=0.5Cで計算します。

y=sqrt(1-0.5^2)/(1-0.5*cos(x)),y=(1+0.5*cos(x))/sqrt(1-0.5^2),y=1 プロット  0<x

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=y%3Dsqrt%281-0.5%5E2%29%2F%281-0.5*cos%28x%29%29%2Cy%3D%281%2B0.5*cos%28x%29%29%2Fsqrt%281-0.5%5E2%29%2Cy%3D1%E3%80%80%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88++0%3Cx%3Cpi+

表示はΘが0からπまで、上のカーブがアインシュタインの式、下のカーブが通説の式になっています。

横線はいわゆるドップラー係数が1、つまり周波数が変化しない位置をしめしており、それより上は青方偏移を下は赤方偏移する事を示しています。

(注意):ブログの表示機能の不具合の為、ウルフラムへの入力文に一部、欠落が生じています。そうであれば入力文については実行アドレスでウルフラムを参照されそちらで確認するようにお願いします。

 

PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/vRQTj