ここでは ◎斜め方向に動く場合のドップラー効果: https://archive.md/ZBxEr :から前のページで示した一般式を導出してみます。
「(1) 音源が動く場合」から最終的には
f1=f0*C/(C-Vs*cos(Θ2)) ・・・(1)式
ここでf0は発信源の振動数、f1は観測された振動数、Cは波のつたわる速度、Vsは発信源の動く速度です。
角度Θ2の取り方はページの図にて確認願います。
図から分かりますように「音源が右に動いて観測者は静止」しています。
この状況で観測者が聞く音の周波数がf1である、と(1)式は言っています。
さて次に「(2) 観測者が動く場合」をみます。
最終式は
f1=f0*(C-Vr*cos(Θ1))/C ・・・(2)式
Vrは発信源の動く速度ですが、ここで注意が必要です。
図からVr>0の時は観測者は音源から遠ざかる方向に動きます。
それで、前ページに合わせる為にはVr>0で観測者は音源に近づく方向に動いてほしいのです。
そうであればここで図示されている角度Θを使ってVrの符号を逆転させます。
つまり
Θ1=πーΘ
とします。
この変換によって(2)式でVr>0で観測者は音源に近づく方向に動く事になります。
さてそれで(1)式は観測者に届く音波の周波数が音源の動きによって変化する事を示しています。
しかしながら、観測者にとっては「音源が動いたから周波数が変化した」のか「音源は止まっていて、その静止している音源の周波数が観測された周波数だった」のか、そのような事には関心がありません。
つまりは「観測者は聞こえてきた音を聞くだけ」であって、「音源がどのように動いていたか、あるいは止まっていたか」には関心がないのです。
それはつまり「観測者は音源を見る必要はない」=「音源の移動速度を知る必要はない」のです。
そうであれば「実際は音源の移動によって音の周波数が変化している」のですが観測者はその事を含めて「それを改めて音源であるとしてよい」という事になります。(注1)
さてそうであれば(2)式のf0に(1)式を代入すれば、それが音のドップラー効果の一般解となる訳です。
従って
(2)式より
f1=f0*(C-Vr*cos(Θ1))/C
=(f0*C/(C-Vs*cos(Θ2)))*(C-Vr*cos(Θ1))/C
=f0*(C-Vr*cos(Θ1))/(C-Vs*cos(Θ2)) ・・・(3)式
となります。(注2)
これを例によって光の非相対論的なドップラー効果の式と見ます。
そうしてまたCを光速とし速度はC=1で規格化をして新たにそれをVrおよびVsとします。
そうすると(3)式は
f1=f0*(1-Vr*cos(Θ1))/(1-Vs*cos(Θ2)) ・・・(4)式
となります。
さてそれで、これに相対論的な項、それは時間遅れを表すのですがそれを掛ければ光のドップラーシフトの一般解となります。
光源の時間が遅れれば赤方偏移し、観測者の時間が遅れれば青方偏移するのですからその相対論的な追加項は
sqrt(1-Vs^2)/sqrt(1-Vr^2)
となります。
以上より光のドップラーシフトの一般解は
f1=f0*(1-Vr*cos(Θ1))/(1-Vs*cos(Θ2))*sqrt(1-Vs^2)/sqrt(1-Vr^2) ・・・(5)式
となる事になります。
はい、以上でできあがりです。(注3)
注1:ここでのポイントは「音源は受信側に関係なく、受信側とは独立に発信する音の周波数を決めることが出来る」という所にあります。
それはつまり「音は空間にでてしまえば、もはや発信側との関係はなくなる」という事です。
そうしてまた同様に「受信側も発信側の状況とは無関係に受信側の状況を決めることが出来る」のです。
それは「受信側は空間を伝わってくる音を検出するだけ」ですので「その時に発信側がどうであったか」などという事は一切、関係がなくなり「空間を伝わってきた音=信号を検出するだけ」なのです。
さてその考え方でいきますと「2-8」で求めた2つの式からも一般式が直接求まる事になります。
「2-8」で求めた式は次のよなものでした。
光源が動く場合のドップラーシフトは
f1=f0*sqrt(1-Vs^2)/(1-Vs*cos(Θ2))
観測者が動く場合のドップラーシフトの式は
f1=f0*(1-Vr*cos(Θ1))/sqrt(1-Vr^2)
上記の例にならって「光源が動く場合のドップラーシフトの値f1」を改めて「観測者が動く場合のドップラーシフトの式のf0に代入」します。
そうすると
f1=f0*(1-Vr*cos(Θ1))/sqrt(1-Vr^2)
=(f0*sqrt(1-Vs^2)/(1-Vs*cos(Θ2)))*(1-Vr*cos(Θ1))/sqrt(1-Vr^2)
=f0*(1-Vr*cos(Θ1))/(1-Vs*cos(Θ2))*sqrt(1-Vs^2)/sqrt(1-Vr^2)
となり式の形は(5)式「光のドップラーシフトの一般解」と同じになります。
注2:これは音のドップラーシフトの一般式になっています。
但しこの時に音源は左側に、観測者は右側にいます。
それでこの式は音源と観測者が近づく方向に動く時にVr>0、Vs>0とし、そうしてその時には角度についてはΘ1=π、Θ2=0となっています。
そうすると(3)式は
f1=f0*(C-Vr*cos(Θ1))/(C-Vs*cos(Θ2))
=f0*(C+Vr)/(C-Vs)
となります。
それで古典的なドップラーシフトの式を: https://archive.md/MNLxG :で確認します。
『観測者も音源も同一直線上を動き、音源S (Source) から観測者O (Observer) に向かう向きを正とすると、観測者に聞こえる音波の振動数は、
f'=f* (V-vo)/( V-vs)
となる。ここで、
f : 音源の出す音波の振動数、
V : 音速、
vo : 観測者の動く速度、
vs : 音源の動く速度』となっています。
ここで音源は左側に、観測者は右側にいますので両者が近づく方向に動きますと
vo<0、vs>0
となります。
それで(3)式の条件にあわせてvo>0の時に両者が近づく方向に動く、としますとういきの式は
f'=f* (V+vo)/( V-vs)
となり、本文の音の一般式から求めた縦ドップラーの式とおなじになります。
つまりは(3)式は音のドップラーシフトの一般式になっているのです。
注3:Vr、Vs、Θ1、Θ2については前のページと同じになります。
以下、前ページからの引用です。
『ここでVrは静止系に対する観測者の相対速度(=固有速度)、Vsは静止系に対する光源の相対速度(=固有速度)を示します。
但しVr、Vsの方向はお互いが近づく方向をプラスに取ります。
f1は観測される周波数、f0は光源の周波数です。
角度についてはこれまでと同様の取り方になります。
Θ1=π、Θ2=0がお互いが近づく方向、Θ1=0、Θ2=πがお互いが離れる方向です。
但しこの時 Θ2=abs(Θ1-π) の関係が成立しています。』
こうしてみると「音と光については、相対論的な追加項を除けば同じに扱える」という事が分かるのでした。
あるいはもっと一般的に言うならば「空間を伝わる信号についてはこの一般式=(5)式が成立する」といってもよさそうです。
もちろん(5)式を音に適用する場合は
Vr<<<C(光速),Vs<<<C
であるために
sqrt(1-Vs^2)/sqrt(1-Vr^2)≒1
となり、そうであれば(5)式は音のドップラーシフトの一般式である(3)式と同じ内容を持つことになるのです。