3、さてそれで、ここまでのページではドップラー効果を表す一般式の縦ドップラーと横ドップラーを検証しました。
再確認になりますが、その一般式は次の形をしています。
f1=f0*(1-Vr*cos(Θ1))/(1-Vs*cos(Θ2))*sqrt(1-Vs^2)/sqrt(1-Vr^2) ・・・(1)式
ここでVrは静止系に対する観測者の相対速度(=固有速度)、Vsは静止系に対する光源の相対速度(=固有速度)を示します。
但しVr、Vsの方向はお互いが近づく方向をプラスに取ります。
f1は観測される周波数、f0は光源の周波数です。
角度についてはこれまでと同様の取り方になります。
Θ1=π、Θ2=0がお互いが近づく方向、Θ1=0、Θ2=πがお互いが離れる方向です。
但しこの時 Θ2=abs(Θ1-π) の関係が成立しています。それで
(1-Vr*cos(Θ1))/(1-Vs*cos(Θ2)) の項が古典的なドップラー効果を表す部分で
sqrt(1-Vs^2)/sqrt(1-Vr^2) の項が相対論的な効果(=時間遅れの効果)を表します。
それでこのページでは相対速度V=0.5Cに限定しますが、その時の一般式が示すドップラー係数の状況を3Dプロットして確認しておきます。(注1)
それで(1)式は
f1=f0*(1-Vr*cos(Θ1))/(1-Vs*cos(Θ2))*sqrt(1-Vs^2)/sqrt(1-Vr^2)
となっていますが、ここで
Θ2=π-Θ1
の関係があり、Θ2をxにおきかえてそれでcos(Θ1)を表しますと
cos(Θ1)=-cos(x)
となります。
従って(1)式は
f1=f0*(1+a*cos(x))/(1-b*cos(x))*sqrt(1-b^2)/sqrt(1-a^2) ・・・(2)式
となります。ここで
b=(0.5-a)/(1-0.5*a) ですからこれをbに代入します。(注2)
そうすると(2)式は
f1=f0*(1+a*cos(x))/(1-((0.5-a)/(1-0.5*a))*cos(x))*sqrt(1-((0.5-a)/(1-0.5*a))^2)/sqrt(1-a^2) ・・・(3)式
となります。したがってこの(3)式のドップラー係数の部分は
(1+a*cos(x))/(1-((0.5-a)/(1-0.5*a))*cos(x))*sqrt(1-((0.5-a)/(1-0.5*a))^2)/sqrt(1-a^2)
となります。ここで3Dプロットの為にaをyに置き換えます。そうすると
(1+y*cos(x))/(1-((0.5-y)/(1-0.5*y))*cos(x))*sqrt(1-((0.5-y)/(1-0.5*y))^2)/sqrt(1-y^2)
となります。
以上で3Dプロットの準備はできました。
ウルフラムを呼んで
(1+y*cos(x))/(1-((0.5-y)/(1-0.5*y))*cos(x))*sqrt(1-((0.5-y)/(1-0.5*y))^2)/sqrt(1-y^2) プロット 0<x<pi,0<y<0.5
実行アドレス
角度xは横軸Xで範囲が0<x<pi
固有速度y(=観測者側の固有速度)が縦軸Yで範囲が0<y<0.5
高さ方向Z軸がドップラー係数の値になっています。
それでy=0のXZ断面に現れているカーブが通説の式が表すカーブで、それに対してy=0.5のXZ断面に現れているのがアインシュタインの式が表すカーブです。
このドップラー係数の値は角度xがゼロの時は光源と観測者が近づく場合の縦ドップラー状態を表していてその時のドップラー係数の値は1.732です。
つまり青方偏移しているのです。
それでその時には固有速度y(=観測者側の固有速度)の値が0<y<0.5の範囲内でどこにあってもドップラー係数の値は1.732のままで一定に保たれている事が目視確認できます。(注3)
同様にして
角度xがπの時は光源と観測者が離れる場合の縦ドップラー状態を表していてその時のドップラー係数の値は0.577です。
つまり赤方偏移しているのです。
そうしてこのときにも0<y<0.5の範囲内でどこにあってもドップラー係数の値は0.577のままで一定に保たれている事が目視確認できます。
ちなみにこの3DプロットのグラフをXZ平面側(y=0)からY軸プラス方向をみると次のように見えるのでした。
もちろん相対速度VはV=0.5Cで計算しています。
『y=sqrt(1-0.5^2)/(1-0.5*cos(x)),y=(1+0.5*cos(x))/sqrt(1-0.5^2),y=1000000*(x-pi/2),y=1 プロット 0<x
実行アドレス
表示はΘが0からπまで、上のカーブがアインシュタインの式、下のカーブが通説の式になっています。』
さてそれで上記の3Dプロットでは横ドップラーの状況がよく分かりません。
それで角度xの値をπ/2で分けてプロットします。
まずは左半分のプロット。
(1+y*cos(x))/(1-((0.5-y)/(1-0.5*y))*cos(x))*sqrt(1-((0.5-y)/(1-0.5*y))^2)/sqrt(1-y^2) プロット 0<x<pi/2,0<y<0.5
実行アドレス
角度xがπ/2のYZ断面が横ドップラー状態を表しています。
そのYZ断面に現れている、一見直線に見える曲線が前のページで示したグラフの曲線になっています。
奥がアインシュタインの式での計算値でドップラー係数は1.155。
手前が通説の式の値での計算値でドップラー係数は0.866です。
以下、前のページで示した角度xがπ/2のYZ断面に現れるカーブを再掲示しておきます。
『y=1.155,y=sqrt(1-((0.5-x)/(1-0.5*x))^2)/sqrt(1-x^2),y=100000(x-0.5),y=100000(x-0.2679),y=1,y=0.866 プロット 0.8<y<1.2 ,0<x<=0.55
実行アドレス
横軸はaがゼロから0.5Cまで動く事を示しています。』
ちなみに右半分の3Dプロットはこうなっています。
(1+y*cos(x))/(1-((0.5-y)/(1-0.5*y))*cos(x))*sqrt(1-((0.5-y)/(1-0.5*y))^2)/sqrt(1-y^2) プロット pi/2<x<pi,0<y<0.5
実行アドレス
以上の事から分かります様に「通説の式とアインシュタインの式は連続的につながっていてそれがドップラー係数を表す一般式を構成している」のです。
さてそうであれば「どちらか一方が正しい」のではなく「両方とも正しいが、但しそれは3Dで表現される一般式の中のそれぞれの切断面での話でしかない」という事になるのです。(注4)
注1:ドップラー係数は原子力関連で用いられているコトバですが、その呼び方を拝借します。つまりは
観測される周波数=光源の周波数*ドップラー係数(固有速度、角度)
で表現できる事とします。
注2:相対論的な速度の加算則から相対速度V=0.5Cは固有速度a,bを使って
0.5=(a+b)/(1+a*b)
となります。
これを変形すると
b=(0.5-a)/(1-0.5*a) となります。
注3:もちろんa=0の時はb=0.5(通説の計算条件)で、a=0.5の時はb=0(アインシュタインの計算条件)になっています。
そうしてその中間は 0.5=(a+b)/(1+a*b) という相対論的な速度の加算則を満たしています。
注4:それぞれの条件でドップラー係数を具体的に計算出来る式の集合全体がドップラー係数の一般式を作っています。
そうして通説の式もアインシュタインの式も、その全体集合の中の部分集合に過ぎない、という事になるのです。
したがってアインシュタインの式はそれをそのまま素直に認めればよいのであって、多くの方々がやっているような「アインシュタインの式を無理やりに通説の式に変形させる必要などはない」のです。
そのように変形させる事は正しくはない、間違っているのです。