「その2-7」において『相対論的な縦ドップラーシフトですが、それは古典的なドップラーシフトの項と相対論が予測する時間遅れ因子sqrt(1-V^2)の積で表されます。』と表明しました。
ここではその解釈を広めて『相対論的なドップラーシフトですが、それは古典的なドップラーシフトの項と相対論が予測する時間遅れ因子sqrt(1-V^2)の積で表されます。』と出来るかどうか検討します。
それはつまり「縦ドップラーから横ドップラーまで含める事ができるかどうか」という事です。
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それで前例に倣ってまずは光源が動く場合の古典的なドップラーの式を参照します。
わかりやすいのは「斜めのドップラー効果」: https://archive.md/uMFEI :
あるいは「◎斜め方向に動く場合のドップラー効果 : https://archive.md/ZBxEr :
式の導出についてはそれぞれのページに譲ります。
そうしてここで最終的に導出される式はいずれも
f1=f0*C/(C-V*cos(Θ)) の形になっています。
ここでf0は発信源の振動数、f1は観測された振動数、Cは波のつたわる速度、Vは発信源の動く速度です。
角度Θの取り方はそれぞれのページの図にて確認願います。
さてそれでこの式を光の場合に展開し、かつC=1の単位系にします。
f1=f0*C/(C-V*cos(Θ))
=f0*1/(1-V/C*cos(Θ))
ここでC=1として単位系を変更ー>V/Cを改めてVと置きます。
f1=f0*1/(1-V*cos(Θ))
そうして動いているのが光源ですから、光源の時間が遅れる=その分、発信元の周波数がsqrt(1-V^2)でおちる
従って最終的に観測者が観測する周波数f1は
f1=(f0*sqrt(1-V^2))*1/(1-V*cos(Θ))
=f0*sqrt(1-V^2)/(1-V*cos(Θ))
となります。
さてそれで、ここで日本語版ういき「ドップラー効果」: https://archive.md/MNLxG :に戻ると
光源が動く場合のドップラーシフトは
ν’=ν*sqrt(1-V^2)/(1-V*Cos(Θ))
ここで、ν’:観測者が観測する振動数、ν : 光源の出す光の振動数、V: 観測者から見た光源の速さ、 : 光速が1の単位系、Θ : 観測者から見た光源の動く方向(Θ =0 :観測者に向かってくる場合)
となっています。
こうして上記の光源が動く場合のドップラーシフトの式の導出方法が正しかった事が分かるのです。
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次に今度は観測者が動く場合のドップラーシフトの式を導出します。
「◎斜め方向に動く場合のドップラー効果 : https://archive.md/ZBxEr :
このページの下段が観測者が動く場合のドップラーシフトの式の導出になっています。
そうしてここで最終的に導出される式は
f1=f0*(C-V*cos(Θ))/C の形になっています。
これを上記にならって光の場合に展開します。
f1=f0*(1-V*cos(Θ))
今度は観測者が動きますので観測者の時間がsqrt(1-V^2)で遅れます。
遅れた時計で周波数をカウントしますので、その分周波数は上がります。
従って最終的には
f1=f0*(1-V*cos(Θ))/sqrt(1-V^2)
となります。
さてそれでこの式をアインシュタインが出した「観測者が動く場合の式」と比べなくてはなりません。
「アインシュタインの特殊相対性理論(1905年):http://fnorio.com/: https://archive.md/Gl1Hd#3-2-2 :
fnorio氏のまとめによれば「2.ドップラー効果」の章にてアインシュタインのドップラー効果についての説明を以下の様に引用されています。
『ω’の式から次の事がでてくる:・・・
ν’=ν*(1-V*Cos(φ))/sqrt(1-V^2) ・・・(1)式
これは任意の速度に対するDopplerの原理である。』
こうしてまたここでも上記の導出方法で出した式とアインシュタインが出した式が同じである事が確認できました。
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さてそうなりますとどうやら
『相対論的なドップラーシフトですが、それは古典的なドップラーシフトの項と相対論が予測する時間遅れ因子sqrt(1-V^2)の積で表されます。』
と言う主張は縦ドップラーから横ドップラーまで含めて成立している事が確認できた事になります。
そうして「その様にして光のドップラー効果の式が導出できる」という事はドップラー効果からみれば(つまりは移動する光源から発せられる光を外部から観察するならば)「光は音速が光速Cとなった音の伝わり方と同じに見える」という事を示しています。
さてではそれは実際はどのように見えるのか確認してみましょう。
英語版ういき「ドップラー効果」: https://archive.md/VeIOL :を参照します。
ページの上段を少し下がった所に4つのアニメーションが提示されています。
左上のものは音源が静止している時、その右側は音源が0.7Cで右に移動している様子をしめしています。
そうしてういきではこのCは音速を示しているのですが、これを「文字通りに光速Cとして理解してよい」というのがここまでの結論となります。(注1)
さてその様子からみれば光源が進行する方向には波の波面が圧縮され、逆方向には波面の密度が落ちている事がよく分かります。
そうしてこの状態を検出するのが「光の縦ドップラー」という事になるのです。
もっとも光の場合はこれまで見てきたように、このアニメーションに加えて「移動するものは時間が遅れる」効果が加味され、その結果が最終的に観測者が観測する光の周波数となるのです。
ちなみにこの移動する光と一緒に移動している観測者には光が広がっていく状況がどのように見えているのか、といいますればまさに最初に見たアニメーションが示している様に「光源を中心としてそこから光速Cで同心円状に広がる光を見る」事になります。(注2)
そうして、「何故そんな事が可能になっているのか」と問うならば「それがローレンツ変換のメインジョブである」が答えとなります。(注3)
ちなみに光源が光速で動くとどうなるか、そうして又光速を超えて動く光源が出す光はどうなっているのか、はその下の2つのアニメーションが示しています。ご参考までに。
注1:この認識には抵抗があるかと思われます。
じじつ、当方も「光の広がり方と音の広がり方が同じ?そんなばかな!」と思っていた方ですから。
しかしながら「計算してみるとそうなっている」様なのです。
注2:これがMMの干渉計でエーテルの挙動が確認できなかった理由です。
MMは「光は右のアニメーションの様に伝わるはずだ」と考えてMMの干渉計でのテストを行いました。
それはつまり「エーテルの中を進行する地球の運動を光を使って検出する」という試みでした。
そうして宇宙がガリレイ変換でできていたらその試みは成功したかもしれません。
しかしながらMMには残念なことに「宇宙はローレンツ変換を採用していた」のです。
従ってMMの干渉計は「光源と伴に移動する観測者の視点」ですから「MMの干渉計が見る光の広がり方」は「光源を中心として同心円状に広がる光を見る」事になるのです。
したがってそこにはMMが期待した様な「干渉縞は現れなかった」という事になったのでした。
この辺りの話は前野氏の「相対論講義録2007年度」: http://www.phys.u-ryukyu.ac.jp/~maeno/rel2007/tokushu.pdf :
P32~34「3.7 マイケルソン・モーレーの実験」に詳しく説明があります。
そうして無風状態、つまりは光の場合はエーテルが止まっている場合、音の場合は空気が止まっている場合には、両者を「波の挙動として見た時のドップラーシフトでは、その式の導出は同じになる」のです。
これは「発信者側をソースとして受信者側をレシーバーとして記述した場合(=古典的ドップラーシフトの記述)、異なって現れる相違は波の伝わる速さだけになる」という事を表しています。
そうして光について言えば「静止系に対して移動するものは、ソースであれ、レシーバーであれその時間は遅れる」という特殊相対論の効果が付け加わる事になります。
・・・という事を本文の検証結果は表しています。
注3:ローレンツ変換は光速Cがメインパラメータになっています。
従って光速C>>>>音速である事の理由によって、音源と伴に動く観測者には「音源が進行する方向には波の波面が圧縮され、逆方向には波面の密度が落ちている」という状況を見る事になります。
そうしてその様になる理由は単に光速C>>>>音速である事によっています。
従って我々の世界でも光速C=音速であるならば、音源とともに動く観測者は「音源を中心としてそこから音速Cで同心円状に広がる音を見る」事になるのです。
追記:さてもちろん当方はエーテル論者ではなくて「静止系は客観的存在だ」論者です。
そうであれば「古典的なドップラーシフトの式の導出が音と同じように光でも行える」ので「音の伝達を空気が行う」様に「光の伝達をエーテルが行う」などと主張するものではありません。
そこのところ、お間違いのなきようにお願いします。
さて「それでは何が波としての光を伝えているのか?」という質問に対しては「その他の静止質量がゼロのボゾンと呼ばれる素粒子と同じ機構で光は伝わっている」と答える事になります。
あるいは「光は光子として伝わる」といい替えましょうか?
そうして観察者が「波としての光の特性を計る」ならば「そこでは光は波としてふるまう」という「量子力学的な解釈の方」が答えとしては良いのかもしれませんね。