特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

マイケルソン・モーレーの楕円(MMの楕円)

2022-11-14 01:48:53 | 日記

さてここまで議論してきた事を一枚の絵に描きますと、驚く事にそこには一つの楕円が現れます。(注1)

そうしてローレンツ変換と言うのはこの楕円を円に写像する変換である事が分かるのです。


まずは楕円のお勉強を少々。

楕円には2つの焦点があり一方の焦点からでた光はもう一つの焦点に集まる、と。

左側の焦点をAとして右側をBとすれば、Aを中心として同心円状に出た光はBに集まる事になります。

その状況は 日本大百科全書(ニッポニカ)「楕円」の解説 : https://archive.ph/fT1HG :の 図A : https://archive.ph/ISkKJ :をクリックしていただけると分かります。

光源Aから出た光は楕円の円周に到達し、その場所の接線におかれた鏡で反射され、もう一つの焦点Bに到達します。

そうしてここで「鏡」とはもちろんMM干渉計の二つの腕の先に付けられた鏡の事になります。

それでこの事が今回の話のポイントになります。


楕円のもう一つの性質は焦点AとBを糸でむすんで糸がたるまないようにして鉛筆で引っ張りながら2つの焦点のまわりを回すと相応する楕円が描ける、と言うものになります。

その状況は ういき 楕円 : https://archive.ph/ZJBf0 :の 作図法 にアニメーションがありますので、それを参照願います。


さてこの事は焦点Aから出た光が楕円の内面で反射され焦点Bまで到達するのに必要な時間は全て同じ、という事を表しています。

なぜならば「どの光も走る光路長が同じであるから」ですね。

その結果、焦点Aから同心円状に出た光は同タイムで焦点Bに集まるのです。


さてそれで、基準座標系にXY座標を置きます。

MM干渉計の原点が光を出す時にいた場所をX軸上の点Aとします。

それでMM干渉計が点Aを左から右へ速度Vで横切る時にMM干渉計の原点から光を出します。

そうするとこの光は点Aを中心として球面波として等方的に広がっていきます。

基準慣性系に立つ観測者はそのようにこれを観測します。


他方で速度Vで移動するMM干渉計の原点に立つ観測者もまた自分のまわりに球状に広がる光を観測する、というのがローレンツ変換の結果です。

その状況を指して「ローレンツ変換は、マクスウェル方程式を不変な形で変換する。」と言うのでした。(「その5・ 光速がいつもCとして観測されるカラクリ・相対論」: http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?post_id=28232 :参照)


さて次の事は自明であります。

MM干渉計が基準慣性系に対して静止している時は、MM干渉計の原点に立つ観測者も、基準慣性系に立つ観測者も「MM干渉計の原点から出た光がその周りに球状に広がる事」を観測します。

この時にMM干渉計の原点を中心として半径Rの円を考えます。

原点から出た光は時間T1=R/C秒後にその円の円周に到達します。

円の内面が鏡面であったとすると、光はそこで反射されT1秒後に再び原点に戻ってきます。


さて今度はMM干渉計が速度Vで点Aを左から右へプラスX方向に横切る場合を考えます。

この時にも光は点Aのまわりに球状に広がっていきます。

但し今度はMM干渉計の原点を中心とした半径Rの円がMM干渉計と一緒に速度Vで移動していく事にします。

そうしますと点Aから球状に出た光のうち、X軸上を左側に出た光が最初に右側に移動する円の内面にぶつかり、そこで反射されます。(注2)

次に反射される光はX軸からY方向に少し上と下にずれた場所に飛んだ光で、この光もまたその場所に到達した円の内面で反射されます。

それで最後にこの円に反射される光はプラスX方向に出た光となります。

この光も円の内面で反射され左側に戻っていきます。

こうして光は順次、移動する円の内面で反射されながら速度Vで移動するMM干渉計の原点を目指す事になります。


そうやって反射された光はふたたびMM干渉計の原点に集まってくるのですが、その光は全て同じタイミングで集まる必要があります。

何となれば、速度Vで移動するMM干渉計の原点に立つ観測者からは「全ての光はT1秒でMM干渉計の原点を中心とした半径Rの円に到達し、そこで反射され、またT1秒後に全て原点に戻ってきた」と報告されるからです。

そうしてこのMM干渉計の原点に立つ観測者による光速の測定結果からは「MM干渉計が基準慣性系に対して運動しているのか、静止しているのか判別できない」という事は前のページで示しました。

そうであればMM干渉計の原点に立つ観測者はどのような速度でMM干渉計が移動しようとも、「常に光はT1秒で円の内面に到達し、またT1秒で原点に戻って来る」と報告する事になります。


この状況を今度は基準慣性系から見ますと「MM干渉計の原点が点Aの位置にある時に光を球面波として出した、そうして光はMM干渉計に同期して動く円の内面で反射され、再びMM干渉計の原点に戻った」と見ます。

それでその時に光が走った基準慣性系に残された光のパスの長さを考えますと、その長さは全て同じであった、という事になります。

なんとなれば「全ての光は同時にMM干渉計の原点に戻ってきたから」であります。


それでMM干渉計の原点に再び光が全て戻ってきた時のMM干渉計の原点のX軸上の位置を点Bとします。

そうしますとすべての光は点Aから出て点Bまで届いた、その時に光が走った距離は全て同じであった、という事になります。

さてこれは「MM干渉計と同期して移動する半径Rの円周上で光が反射されたその点(の基準慣性系で)の座標を結ぶとそこには楕円が現れる」という事を示しています。

何故ならばこの状況は楕円の定義そのものであり、「点Aと点Bを結んで一定の長さの糸をたるまないようにして点Aと点Bのまわりを一周させると、そこに現れるのは楕円であるから」です。

そうであれば点Aと点Bはこの楕円の焦点Aと焦点Bである、という事が出来ます。


加えてMM干渉計の原点が焦点Aにある時にそこに立つ観測者にとっては「原点から出た光がT1秒後に到達する位置はこの楕円の円周上であると認識する」という事を表しています。

つまり「速度Vで右方向に移動する観測者が焦点Aを通過するときには、この楕円が円に見える」という事になります。

そうしてそれを実現しているカラクリがローレンツ変換である、と言えます。(Q.E.D. )


注1:この楕円の事を「マイケルソン・モーレーの楕円(MMの楕円)」と言います。

えっ、聞いたことがない?

まあ仕方ありませんね。今命名したばかりですから、、、。

注2:MM干渉計が動いていない時は確かに半径Rの円として基準慣性系に立つ観測者はこれを見ます。

しかしMM干渉計が速度Vで動き出しますとこの円は進行方向にローレンツ短縮を起こし楕円になる様に基準慣性系の観測者には見えます。

加えて、驚くべきことにこの楕円がMMの楕円と相似形になるのでした。

以上の事についての詳細は次のページで述べます。


追伸:半径Rの円とは腕の長さがRのMM干渉計の事になります。

MM干渉計はいろいろな方向に回転させることが出来ますので、そうやって回転させながら原点から出た光を腕の先に付けられた鏡で反射させ観測する。

その状況と言うのはまさに「半径Rの円で光を反射させて観測する」という事と同じであります。

追伸の2
こうしてMM干渉計の原点からでた光はその位置を中心として基準慣性系の中を球面波として伝わっていきます。

そうであれば基準慣性系に立つ観測者がそれを見て「球面波だ」と言うのは自明でありましょう。

他方で速度Vで移動するMM干渉計の原点に立つ観測者もまたその光を「MM干渉計の原点から広がる球面波だ」と観測します。

そうして「その様な、常識的に考えるとありえない事を成し遂げているトリックがMMの楕円である」という事になります。


ちなみに、上記の説明では2次元空間で行っていますが、現実は3次元ですから、「MMの楕円」は現実にはX軸周りに360度回転させた形状となります。

したがってそれは「MMの回転楕円体=楕円球」という事になります。


そうであればローレンツ変換とはこの回転楕円体を球体に変換する写像である、と言えます。

そうして球体の原点から出た光が球体の内面で反射され再び原点に戻る様に、回転楕円体の焦点Aから等方的に出た光は回転楕円体の内面で反射され焦点Bに戻るのでした。

基準慣性系に立つ観測者は回転楕円体と光の反射状況をそのように認識します。

 

PS:相対論の事など 記事一覧

https://archive.ph/H6hvj

 

 


その5・ 光速がいつもCとして観測されるカラクリ

2022-11-11 04:49:18 | 日記

さて前のページではXプラス方向に伸びたMM干渉計の腕の先にある鏡に向かって原点から光が飛ぶ場合をまとめました。

それでMM干渉計は回転させることができ、ぐるっと180度回します。

そうすると今度は速度0.8CでXプラス方向にMM干渉計は移動するのですが、原点から出た光はMM干渉計とは反対方向に走ることになります。

そうしてこの場合にXマイナス方向に伸びた腕の先にある時計は原点に対して未来方向に0.8秒ずれる事になります。

それで今度はこの状況で前ページで行った議論を、順序を入れ替えて行うだけです。

そうするとやはり光は往復測定でも、片道測定でもその速度はCとして観測される事がわかります。

以上でX軸方向についての議論は終了です。


次にY軸方向の検討に入ります。

基準慣性系から見た時にY軸方向に飛んだ光についてはすでに 「その3・ マイケルソン・モーレーの実験とローレンツ短縮・相対論」 : https://archive.md/eOvGW :http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?post_id=27975 :で扱っており、往復で3.3333・・・秒かかる事が分かっています。

そうしてこの時間は基準慣性系での時間ですから、例によって0.6を掛ける事でMM干渉計の時間に換算しなくてはなりません。

それで 3.3333・・・秒*0.6=2秒 となり、X軸方向に飛んだ光と同タイムで原点に戻ってくることが分かります。

そうしてまたY軸方向に飛んだ光のパスは行きと帰りの長さが同じですので、行きに1秒、帰りに1秒かかった事は自明でありましょう。

ちなみにY軸方向にはローレンツ短縮は起りませんし、同時にまたY端の時計が原点の時計に対して未来や過去にずれ込むこともありません。基準慣性系から見てもY端の時計は何時も原点の時計と同じ時刻を表示しています。


さてそうなりますとMM干渉計の原点に立つ観測者は「MM干渉計が静止していようが運動していようが、原点から出た光はX軸方向、Y軸方向ともに光速Cで伝わっていく」と判断するのは当然の事となります。

まあ基準慣性系に対してMM干渉計が静止している場合は「原点から出た光はX軸方向、Y軸方向ともに光速Cで伝わっていく」となるのは自明の事の様に思われます。

この状態ではMM干渉計が基準慣性系にあるのですから、原点から出た光は原点を中心として球面波として広がるのを観測します。


それで問題はMM干渉計が速度0.8CでプラスX方向に運動している場合です。

この場合もMM干渉計の原点に立つ観測者は「原点から出た光はX軸方向、Y軸方向ともに光速Cで伝わっていく」=「原点を中心とした球面波で伝わると観測する事」はいままでの議論で示してきた通りです。


さてこの時に基準慣性系からこれを見ますとどのように見えるのか、という事になるのです。

その状況がわかるアニメーションがあります。

ドップラー効果の原理 : https://archive.ph/R0Nku

同ページの上から7番目のアニメーションがそれを示しています。

最初はMM干渉計が基準慣性系に対して静止している状況を示します。

その時は原点から出た光は原点を中心とした同心円で周囲に広がっていきます。

しばらく見ていると光源が(ここでは音叉ですが、、、)右に移動し始めます。

そうすると光は進行方向に詰まった形で右に進むことが分かります。

この時に光源を原点としてX軸、Y軸をそこに重ねますと、光の速度が一番遅くなるのが+Xの進行方向、次にY軸方向、そうして一番速く(光速Cを超えて)観測されるのが光源の進行方向と逆方向のーX方向です。

その様にMM干渉計の原点に立つ観測者は観察するはずだ、と主張するのが「ガリレイ変換の立場」となります。

一方で「基準慣性系からみればアニメーションが示している通りの状況が観測されるが、MM干渉計の原点に立つ観測者は原点から同心円状に広がる光を観測する」と主張するのが「ローレンツ変換の立場」=「特殊相対論の立場」という事になります。


さて以上の内容が

『ローレンツはこの変換がマクスウェル方程式を不変な形で変換することを、1900年に発見した。・・・ローレンツ変換は1904年に初めて発表されたが、当時これらの方程式は不完全であった。フランスの数学者アンリ・ポアンカレが、ローレンツの方程式を、今日知られている整合性の取れた 4 つの方程式に修正した。・・・

ガリレイ変換は、等速運動をする慣性系間の座標変換であり、ニュートンの運動方程式は不変な形で変化するが、マクスウェルの方程式では満足されない古典的な座標変換である。

ローレンツ変換は、マクスウェル方程式を不変な形で変換する。』

という事の具体的な内容であります。(注1)

注1:ローレンツ変換 : https://archive.ph/3LWS5 :を参照願います。


追記:あるいは上記で示した内容は

1.4 特殊相対性原理と光速不変の原理 : https://archive.ph/zyT2J

に書かれてある

《・・・電磁気学の基本法則は4式のMaxwell方程式ですが,特殊相対性原理より全ての慣性系で同じ形式の方程式になると結論付けられます.

よって,Maxwell方程式から導出される波動方程式も,全ての慣性系で同じ形式の方程式になります.実際に,変換後の慣性系での波動方程式を書き留めておくと,『変換後の慣性系での波動方程式<--上記アドレス参照の事』です.

ダッシュが付いているのは,変換後の座標における量であることを示しています.ここで,波動方程式には光速 C が含まれていて,同形の波動方程式から計算されるので,全ての慣性系において光速は同じ値になることが理解されます.この結論は常識とは相容れませんが,Einsteinは原理として採用しました.》

ということの具体的な内容でもあります。


追伸の1
以上の事より「地球上でいくら光速の測定をしても地球が基準慣性系であるのかどうか、光速の測定結果だけでは判断できない」という事が分かります。

何となれば「地球が基準慣性系であってもなくても、光速の測定結果は常にCとなるから」であります。

そうしてこの事はまた

地球上で言う「光速度一定の原理」というのは

「光は基準慣性系を光速Cで伝わる+ローレンツ変換が成立する」

という事と同等である事を示しています。

ちなみにこの主張が特殊相対論の主張とどこが違うのか、といいますと、特殊相対論は

「すべての慣性系は平等である」とするのですが、それに対して上記の主張は

「すべての慣性系に優先する基準慣性系が存在する」と表明しているのです。



PS:相対論の事など 記事一覧

https://archive.ph/qgD49




その4・ 光速がいつもCとして観測されるカラクリ

2022-11-08 01:32:08 | 日記

さて 「その2・ 光速がいつもCとして観測されるカラクリ・相対論」 : https://archive.md/JxyIk : http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?post_id=28131 :では原点からX端に向けて発射された光がX端の鏡に着くまでに1.8秒かかる事がわかりました。

しかしX端にある時計は0.8秒過去にずれている為に、X端にいる観測者は「原点からここまで光は1秒で来た」と判断します。

それでその時にはもちろん原点の時計は1.8秒を指しています。

さあそうなると光は今度はX端から原点まで0.2秒で戻らないといけません。

そうやって戻ってようやく原点にいる観測者は「1Cの腕の先まで行って帰って2秒だな」と判断し、「光速はCだ」と結論を出すことが出来るのです。

加えてX端にいる観測者も1秒を指している時刻で光が原点方向に戻っていき、それが原点に着いた時に原点の時計が2秒になっている事を確認し、「光はX端から原点に1秒で戻った」と結論を出すことが出来るのです。

さてそうであれば光は本当に0.2秒でX端から原点に戻れるのでしょうか?


X軸方向に延びるMM干渉計の腕の長さは基準慣性系から見るとローレンツ短縮で0.6Cになっています。

そうしてMM干渉計の原点は右方向に0.8Cで進んでいます。

それで、X端の鏡に反射されて戻る光は左方向に1Cで走ります。

さてそうなりますと原典まで戻るのに必要な時間をT3としますとその時間は

T3=0.6C/(1C+0.8C) 

=0.33333・・・秒と計算できます。

0.6Cの間隔を右から原点が0.8Cで攻め、左から光が1.0Cで攻めてきますからこういう計算になります。

さてこの時間は基準慣性系の時計で計った時間ですから、これに0.6を掛ける事でMM干渉計の時間に換算しなくてはなりません。

換算後の時間をT4としますと

T4=T3*0.6=0.2秒

これで「光は0.2秒でX端から原点に戻れた事」が確認できました。 


以上 見てきましたように

1、「X端まで行って帰ってきた往復時間で測定すると、光速はC」は 「光速がいつもCとして観測されるカラクリ・相対論」 : https://archive.md/Axn7j : http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?post_id=28089 で確認しました。

2、「原点からX端まで行きの片道で測定すると、光速はC」は 「その2・ 光速がいつもCとして観測されるカラクリ・相対論」 : https://archive.md/JxyIk : http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?post_id=28131 で確認しました。

3、「X端から原点まで帰りの片道で測定すると、光速はC」は 上記で確認しました。

こうして「基準慣性系に対して速度Vで移動しているMM干渉計の原点からX軸方向に出た光の速度測定はMM干渉計の上に立つ観測者がどのように測定しても常にCとなる事」が確認できた事になります。


そうしてまた「光は速度Vで移動しているMM干渉計の原点からでている」のですが、移動する原点からでた光は原点の移動速度に無関係に基準慣性系に対して速度Cで走っているだけなのです。

しかしその光をMM干渉計の上から観測しますとその光の速度は常にCとなる様に観測される、それはローレンツ変換がその様にMM干渉計の時間=時計 と 腕の長さ=物差しの長さ を調整してしまうから、という事になります。


それでこの状況というものは、なにやら地球上で行っている光速の測定結果を説明している様に見えませんか?

そうしてその測定結果から「光速は常に一定でCである」と結論を出している様に見えます。


追伸
アインシュタインは「神は老獪だが悪意はない」と言ったとか。

当方に言わせるならば「自然は巧妙だが意地悪ではない」とでもなりますか。

 

PS:相対論の事など 記事一覧


https://archive.ph/O1BQk

 

 


その3・ 光速がいつもCとして観測されるカラクリ

2022-11-05 01:10:20 | 日記

さて前のページでは長さ1Cの腕の原点とX端の時刻が0.8秒ずれている、X端が0.8秒過去にある事を見ました。

そうしてこの0.8という数字はMM干渉計がX軸方向に進んでいる速度0.8Cでも出てくる数字です。

さてこれは偶然でしょうか?

ういき(英語版)によれば長さがLで移動速度がVである場合、棒の先端の時計の時刻のずれは以下の様に計算できる、とされています。(注1)

ずれ時間差ΔT=L*V/C^2

例題ではV=0.8C、L=Cでしたから

ずれ時間差ΔT=C*0.8C/C^2=0.8 となり、0.8秒ずれる事がここでも確認できます。


さてこの時にX軸方向に伸びた腕の長さはローレンツ短縮で本来の長さの60%に短くなるのでした。

それでこの時の状況をX軸を腕の長さ、Y軸をずれ時間差ΔTとしてプロットしますとその座標点は(0.6,0.8)となります。

但し腕の長さはC=1の単位系でY軸単位は秒です。

そうしますと

0.6^2+0.8^2=1

何のことはない、半径1の円周上にこの点はある事が分かります。

そうして1と言うのはX軸方向に伸びたMM干渉計の腕の長さでもあります。

つまり長さ1の棒が速度0.8Cで移動するとその長さは60%に短縮したように見えますが、実は時間軸方向に棒の先端が53.13度 原点を中心として回転しているのであって、腕の長さは本来の1のままなのです。(注2)

この回転した棒のX軸への射影が0.6であり、現在時刻でしか棒を観察できない我々の目には「棒の長さが60%に短縮したように見える」という次第であります。


こうして実はローレンツ短縮割合ΔLと棒の先端の時刻のずれ分ΔTが結びついている事が分かるのでありました。(注3)


注1:Special relativity : https://en-m-wikipedia-org.translate.goog/wiki/Special_relativity?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=sc

Thomas rotation から以下一部訳出

『図4-2bでは、同じロッドが速度vで右に移動するロケットのフレームから観察されています。ロッドのフレーム内で同期しているロッドの左端と右端にある2つの時計を想像すると、同時性の相対性により、ロケットフレームの観測者はロッドの右端の時計を観測します(見えません)。時間的にLv/c ^ 2だけ前進し、それに応じてロッドが傾いているように観察されます。』

注2:X=0.6、Y=0.8 従ってATN(0.8/0.6)を求めればよく、ウルフラムによれば答えは53.13度となります。

実行アドレス : https://ja.wolframalpha.com/input?i=atn%280.8%2F0.6%29

注3:腕の長さをCとしてC=1の単位系を使えばローレンツ短縮割合ΔLと棒の先端の時刻のずれ分ΔT(秒)については

ΔL^2+ΔT^2=1 が常に成立している事になります。

ちなみにこの腕の長さの場合では移動速度を光速Cで割った値がそのまま棒の先端の過去方向への時刻のずれ分ΔT(秒)となります。


PS:相対論の事など 記事一覧


https://archive.ph/rr2P0


その2・ 光速がいつもCとして観測されるカラクリ

2022-11-01 07:18:58 | 日記

まずは前のページからの引用です。

『さてそれで、それではこの時に光②はどこにいるか、といえばもちろん基準慣性系に設置された目盛りで1.66666・・・Cに到達している、つまり光①と同じ位置にいます。

しかしMM干渉計の原点にいる観測者にはその事は知り得ません。

MM干渉計の原点にいる観測者はX端にある鏡に光が到達し、そこで反射されて帰ってきた光を確認してようやくにして原点から距離Cに設置された鏡にいつ光が到着したのか、つまり「MM干渉計の原点から出た光②の速度が計算できる」のです。』

・・・と言うような話に続いてX端に取り付けられた鏡に届いた光が反射して戻ってくるまでの時間を計算すると2秒となる。

「MM干渉計の原点から鏡までの距離は1Cなので従って光速はCである」とMM干渉計の原点に立つ観測者はそう結論を出す、ということでした。

しかしながら実際には光はMM干渉計の原点に設置された時計で計って、光が発射された時から1秒後には基準慣性系に設置された目盛りで1.66666・・・Cに到達しているだけです。

そうしてこの時にMM干渉計のX端に据えられた鏡の位置は、と言えば、基準慣性系に設置された目盛りで

1.666・・・(秒)*0.8C(MM干渉計のX方向移動速度)+1C(MM干渉計の原点からX端の鏡までの距離)*0.6(ローレンツ短縮係数)

=1.3333・・・+1C*0.6=1.9333・・・C  ・・・①式

従って1.6666・・・Cにいる光②は鏡には届いてはいないのです。


さてそれで、それでは一体いつ光②はX端にある鏡に到着するのでしょうか?

MM干渉計のX軸方向の移動速度が0.8Cでした。

そうしてX端の鏡までの距離は1Cですがローレンツ短縮がかかりますので0.6Cの距離となります。

それで光②は1Cで進みますから基準慣性系時間で光②が鏡に到達する時間T1は

T1=0.6C÷(1C-0.8C)=3秒後 となります。


①式に3秒を入れてこの結果を確かめます。

3(秒)*0.8C(MM干渉計のX方向移動速度)+1C(MM干渉計の原点からX端の鏡までの距離)*0.6(ローレンツ短縮係数)

=3C

はい、確かに鏡も3Cの位置にいました。

こうして基準慣性系時間ではMM干渉計の原点から出た光②がX端にある鏡に到着する時間は原点発射3秒後である事が分かりました。

これをMM干渉計の時間T2に直しますと

T2=3(秒)*0.6(時間遅れ係数)=1.8秒後 となります。


さあ大変です。

話が合いません。

光は1秒で原点からX端の鏡まで到達しているはずでした。

しかし計算しますとX端まで1.8秒かかっています。

・・・とまあ、これが「同時であるとはどういう事か」という相対論の問いであり、また答えでもあります。(注1)


相対論の答えは「X端の時計はMM干渉計の原点にある時計に対して過去にあり、そのずれ分は0.8秒である」という事になります。

「過去にあるX端の時計」は基準慣性系から見ればその事実は確かめられますが、MM干渉計の上にたつ観測者からは、観測者が原点にいる場合はもちろん、それ以外のどの場所に立っていても、それがX端に立つ場合であってもその事実は認識できません。

もちろん観測者はMM干渉計の原点でそこにある時計に自分の持っている時計を合わせます。

そうしてX軸方向にX端に向かってMM干渉計の上を歩いていくのですが、「自分の持っている時計が原点にある時計に対して過去にずれていく事実を認識できない」のです。(注2)


そうしてX端に着いた観測者はMM干渉計の原点から出た光が1.8秒かかってX端に着いたにも関わらず「うん、確かに原点からここまでは1秒で光は飛んできた」と結論を出すことになります。(注3)



注1:この件説明は
特殊相対性原理と光速不変の原理 : https://archive.ph/eKx49

1.5 同時性の問題(絶対時間の概念の破棄から相対的な時間へ) 
にあります。

あるいは 相対論講義録2007年度 : http://www.phys.u-ryukyu.ac.jp/~maeno/rel2007/tokushu.pdf :の「4.1 同時の相対性」39~41Pにもあります。

注2:この辺りの状況はMM干渉計のX軸方向に伸ばした腕がローレンツ収縮を起こして短くなっている事実をMM干渉計の上に立つ観測者は認識する事ができない、という状況と相似的であります。

注3:また逆にこのようにして距離1Cだけ離れた2つの時計の間で時刻合わせが可能となり、このような状態が成立した時に「2つの時計は時刻合わせが出来ている」と我々は認識する事になります。

しかしながら実際には光がX端に到達した時にはX端の時計の針は1秒を示しますが、原点にある時計の針はその時には1.8秒を示しているのです。



追伸:原点とX端にタキオン通信機を設置しておくことで、たとえば光はX端に届くのに1.8秒かかるのですが、タキオンを使って0.1秒で情報を原点からX端に送れた、とします。

そうするとX端にいる観測者に対して原点にいる観測者は「1.7秒前の過去に情報を送れた」とそういう事になります。

しかしながら折り返しでX端から原点に情報を返しても0.1秒必要ですから、原点では情報を出してから0.2秒後にしか返事を受け取れません。

つまりこのような場合でも「タキオンを使っても原点にいる観測者の過去には情報は送れない=自分自身の過去には情報は送れない=因果律は破れない」という事になるのです。


ちなみに「タキオン通信機が過去の自分に情報を送れる」という主張については以下のページの議論を参照願います。

その1・ タキオン反電話・相対論
http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?post_id=26518

その2・ タキオン反電話・相対論
http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?post_id=26541

 

PS:相対論の事など 記事一覧


https://archive.ph/JxyIk