まずは前のページからの引用です。
『さてそれで、それではこの時に光②はどこにいるか、といえばもちろん基準慣性系に設置された目盛りで1.66666・・・Cに到達している、つまり光①と同じ位置にいます。
しかしMM干渉計の原点にいる観測者にはその事は知り得ません。
MM干渉計の原点にいる観測者はX端にある鏡に光が到達し、そこで反射されて帰ってきた光を確認してようやくにして原点から距離Cに設置された鏡にいつ光が到着したのか、つまり「MM干渉計の原点から出た光②の速度が計算できる」のです。』
・・・と言うような話に続いてX端に取り付けられた鏡に届いた光が反射して戻ってくるまでの時間を計算すると2秒となる。
「MM干渉計の原点から鏡までの距離は1Cなので従って光速はCである」とMM干渉計の原点に立つ観測者はそう結論を出す、ということでした。
しかしながら実際には光はMM干渉計の原点に設置された時計で計って、光が発射された時から1秒後には基準慣性系に設置された目盛りで1.66666・・・Cに到達しているだけです。
そうしてこの時にMM干渉計のX端に据えられた鏡の位置は、と言えば、基準慣性系に設置された目盛りで
1.666・・・(秒)*0.8C(MM干渉計のX方向移動速度)+1C(MM干渉計の原点からX端の鏡までの距離)*0.6(ローレンツ短縮係数)
=1.3333・・・+1C*0.6=1.9333・・・C ・・・①式
従って1.6666・・・Cにいる光②は鏡には届いてはいないのです。
さてそれで、それでは一体いつ光②はX端にある鏡に到着するのでしょうか?
MM干渉計のX軸方向の移動速度が0.8Cでした。
そうしてX端の鏡までの距離は1Cですがローレンツ短縮がかかりますので0.6Cの距離となります。
それで光②は1Cで進みますから基準慣性系時間で光②が鏡に到達する時間T1は
T1=0.6C÷(1C-0.8C)=3秒後 となります。
①式に3秒を入れてこの結果を確かめます。
3(秒)*0.8C(MM干渉計のX方向移動速度)+1C(MM干渉計の原点からX端の鏡までの距離)*0.6(ローレンツ短縮係数)
=3C
はい、確かに鏡も3Cの位置にいました。
こうして基準慣性系時間ではMM干渉計の原点から出た光②がX端にある鏡に到着する時間は原点発射3秒後である事が分かりました。
これをMM干渉計の時間T2に直しますと
T2=3(秒)*0.6(時間遅れ係数)=1.8秒後 となります。
さあ大変です。
話が合いません。
光は1秒で原点からX端の鏡まで到達しているはずでした。
しかし計算しますとX端まで1.8秒かかっています。
・・・とまあ、これが「同時であるとはどういう事か」という相対論の問いであり、また答えでもあります。(注1)
相対論の答えは「X端の時計はMM干渉計の原点にある時計に対して過去にあり、そのずれ分は0.8秒である」という事になります。
「過去にあるX端の時計」は基準慣性系から見ればその事実は確かめられますが、MM干渉計の上にたつ観測者からは、観測者が原点にいる場合はもちろん、それ以外のどの場所に立っていても、それがX端に立つ場合であってもその事実は認識できません。
もちろん観測者はMM干渉計の原点でそこにある時計に自分の持っている時計を合わせます。
そうしてX軸方向にX端に向かってMM干渉計の上を歩いていくのですが、「自分の持っている時計が原点にある時計に対して過去にずれていく事実を認識できない」のです。(注2)
そうしてX端に着いた観測者はMM干渉計の原点から出た光が1.8秒かかってX端に着いたにも関わらず「うん、確かに原点からここまでは1秒で光は飛んできた」と結論を出すことになります。(注3)
注1:この件説明は
特殊相対性原理と光速不変の原理 : https://archive.ph/eKx49
の
1.5 同時性の問題(絶対時間の概念の破棄から相対的な時間へ)
にあります。
あるいは 相対論講義録2007年度 : http://www.phys.u-ryukyu.ac.jp/~maeno/rel2007/tokushu.pdf :の「4.1 同時の相対性」39~41Pにもあります。
注2:この辺りの状況はMM干渉計のX軸方向に伸ばした腕がローレンツ収縮を起こして短くなっている事実をMM干渉計の上に立つ観測者は認識する事ができない、という状況と相似的であります。
注3:また逆にこのようにして距離1Cだけ離れた2つの時計の間で時刻合わせが可能となり、このような状態が成立した時に「2つの時計は時刻合わせが出来ている」と我々は認識する事になります。
しかしながら実際には光がX端に到達した時にはX端の時計の針は1秒を示しますが、原点にある時計の針はその時には1.8秒を示しているのです。
追伸:原点とX端にタキオン通信機を設置しておくことで、たとえば光はX端に届くのに1.8秒かかるのですが、タキオンを使って0.1秒で情報を原点からX端に送れた、とします。
そうするとX端にいる観測者に対して原点にいる観測者は「1.7秒前の過去に情報を送れた」とそういう事になります。
しかしながら折り返しでX端から原点に情報を返しても0.1秒必要ですから、原点では情報を出してから0.2秒後にしか返事を受け取れません。
つまりこのような場合でも「タキオンを使っても原点にいる観測者の過去には情報は送れない=自分自身の過去には情報は送れない=因果律は破れない」という事になるのです。
ちなみに「タキオン通信機が過去の自分に情報を送れる」という主張については以下のページの議論を参照願います。
↓
その1・ タキオン反電話・相対論
http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?post_id=26518
その2・ タキオン反電話・相対論
http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?post_id=26541