特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

マイケルソン・モーレーの実験とローレンツ短縮

2022-10-11 01:38:20 | 日記

マイケルソン・モーレーの実験についてはこちら。

ういき 長さの収縮 : https://archive.fo/iuLEO

『有名な実験の否定的な結果であり、長さの収縮を導入する必要が出たマイケルソン・モーリーの実験(後にKennedy–Thorndike実験)。

特殊相対性理論においては次のような説明になる。
その静止系において干渉計は相対性原理にしたがい静止しているとみなすことができるため、光の伝播時間は全方向で同じである。

干渉計が動いている系では横方向のビームは動かない系に対してより長い対角線の経路を通らなくてはならず、移動時間は長くなるが、縦方向のビームは順方向と逆方向でそれぞれ時間L/(c-v)とL/(c+v)をとるため、遅延する要因はさらに長くなる。

それにより縦方向では否定的な実験結果に従い、両方の移動時間を等しくするために干渉計を収縮させることになる。

こうすることで2つの経路での光速は一定となり、干渉計の垂直なアームに沿った往復伝播時間はその運動と向きに依存しない。』

コトバでの説明は以上であって、これは英文のういきからの引用である模様です。

まあそれはそれでいいのですが、マイケルソン・モーリーの実験は地球がエーテルの海の中を移動している状況を光を用いて検出しようとしたものでした。(注1

それでエーテルの流れが検出できない理由をローレンツさんが「縦方向の干渉計の腕が短縮したせいだ」と「とってつけた説明:アドホックな説明」をしたのでした。(注2

それで今回、マイケルソン・モーリーの否定的な実験結果からどうやってローレンツ短縮が有効に働くのか、あるいはローレンツさんがローレンツ短縮仮説を提言できたのか調べようとしました。


しかしながらネット検索で出てくるローレンツ短縮の説明はローレンツ変換を前提としたものばかりであって、それでは話が逆、ローレンツ変換からローレンツ短縮が出てくるのは当然であるように見えます。

そうではなくて、マイケルソン・モーリーの否定的な実験結果から取ってつけた説明にせよローレンツ短縮が出てくる、それを計算で追いかけたかったのです。

しかしながら、その様な資料を見つける事はできませんでした。

それで自分で計算を始めたのですが、これがうまく行きません。

上記のういきの記事では「横方向に飛んだ光の帰ってくるまでの時間は縦方向(進行方向)に飛んだ光の帰ってくるまでの時間より短くなるはずだ」という事までは言及されていますが、計算詳細は不明です。

そうしてまた(注1)で示した川を横切る、あるいは流れの方向に移動するボートの例では横方向の計算方法が十分ではなく、概算になっています。

まあそういう訳で図を書いて計算するのですが、これがうまく行かないのでした。

どうしてうまく行かないのか、そうしてどうやればうまくいくのか、これはパズルレベルの問題なのですが、ひとつ皆さんもローレンツさんになったつもりで考えてみていただきたいと思います。



注1:マイケルソン・モーリーの実験 : https://archive.fo/ENUqB

でてくる計算は川の流れとボートの例です。

『この風向きの変化は、干渉縞の移動として検出されるはずである。

これは、川を行く船の例で考えることができよう。船はスクリューにより時速50 kmの速さを得ることができ、川は時速5 kmで流れているとする。

このとき、川を横切るように10 kmの距離を往復するならば、少し下流に流されることを気にしなければ、0.4時間で帰ってくることができる。

しかし、上流から下流10 kmの地点までを往復するならば、行きは0.182時間、帰りは0.222時間要するので、合計で0.404時間かかる。

同様に考えて、エーテルの風に対し垂直に進む光線に比べ、平行に進む光線は、往復に僅かばかり長い時間を要する。

すなわち、エーテルの風向きによって干渉縞が移動するのである。

実験は、エーテルの流れが太陽から見て止まっていると仮定し、地球の運動により引き起こされる干渉縞の移動の測定を目的として行われた。』

・・・と説明されていますが、この計算例では光に適用できません。

注2:アドホックな説明は時に本質を射抜いていますので有効な場合があります。

たとえばプランクさんによるプランク定数の導入など。

ちなみにローレンツ短縮は正式には「ローレンツ・フィッツジェラルド収縮仮説」となる様です。

 

PS:相対論の事など 記事一覧

https://archive.fo/lMwpC

 


その2・「時間遅れの合成則」が語っている事

2022-10-08 08:02:07 | 日記

さて前述したように具体的に数字をあげて「時間遅れの合成則」が語っている事を見ていきましょう。

このとき基本になるのは「速度の合成則」です。

そうして「速度の合成則」は認めるが「時間遅れの合成則」は認めない、というスタンスは取る事ができず、この2つの合成則はコインの裏表であって、切り離す事はできません。

さてそれで、ここでは慣性系①~③と3つの慣性系が登場します。

元になるのは慣性系①であり、ここから慣性系②を見た時の相対速度をV1とします。

次に慣性系②から慣性系③を見た時の相対速度をV2とします。

それでこのような舞台設定の時に慣性系①から慣性系③を見た時の相対速度をVとした時に、Vはいくつになるのか、に答えるのが「速度の合成則」となるのでした。

それでその式は

V=(V1+V2)/(1+V1*V2)・・・④式

但し相対速度は光速Cで規格化していますから0<V,V1,V2<1となります。

今V1=V2=0.8とします。

その時に慣性系①から慣性系②を見た時の時間の遅れは

Td(①->②)=sqrt(1-0.8^2)=0.6 ・・・計算①

です。

そうしてまた慣性系②から慣性系③を見た時の時間の遅れは

Td(②->③)=sqrt(1-0.8^2)=0.6 ・・・計算②

となっています。

そのようであれば当然、慣性系①から慣性系③を見た時の時間の遅れは

Td(①->③)=Td(①->②)*Td(②->③)

=0.6*0.6=0.36 ・・・計算③

と計算するのが常識であり論理的であります。


それで次は慣性系①から直接、慣性系③を見た時の時間の遅れを求めます。

まずは相対速度Vを計算します。

V=(0.8+0.8)/(1+0.8*0.8)

=0.97560・・・(循環小数)=40/41 です。・・・計算④

従って時間の遅れは「時間の遅れ則」に従って

Td(①->③)=sqrt(1-(40/41)^2)

=0.21951・・・(循環小数)=9/41 ・・・計算⑤

となります。


それで見て分かりますように、ここで深刻な矛盾に出会う事になります。

慣性系③の時間の遅れについて

①->②->③のパスで計算しますと0.36

しかしながら

①->③のパスですと0.21951・・・(循環小数)=9/41

この状況は困ったものであり、実際の場面でこのような状況が起こる、という事はありえません。


それで時間のおくれが計算できましたので具体的な時刻を出してみますと、

慣性系①で1秒経過した時、慣性系②では0.6秒の経過です。

そうして慣性系②で0.6秒経過した時、慣性系②では0.36秒の経過です。

しかしながらこの時に慣性系①から慣性系③を見ますと0.21951・・・秒の経過となっています。


さて慣性系②と慣性系①は同じ慣性系③を同時に見ているにもかかわらず、このままでは異なった時間の遅れを観測する事になります。

それでこれは明らかな矛盾であり、実際の現場ではこのような事、同じ時計を同じタイミングで見た時に異なる時刻を報告する、と言う様な事は起こりえません。

なぜなら慣性系③の時計の針は同時に二か所を指す事はないからであります。(この状況は「慣性系③の時計はデジタル表示である」とすれば、もっと明白になりますか。)


さてそうなりますと上記の議論の中でどこかに間違いが入り込んでいる事になります。

1番目の可能性は「慣性系①から慣性系②をみて0.6秒、それから慣性系②から慣性系③を見た時に0.36秒の経過であるとする計算は間違っている」、というものです。

2番目の可能性は「慣性系①から慣性系③を見た時に0.21951・・・秒の経過であるとする計算は間違っている」というものです。


それに対する特殊相対論の答えは「時間遅れの合成則が成立している」というものになります。

つまり「慣性系①から慣性系③を見た時に0.21951・・・秒の経過である」と言うのが正しい、と言うのが特殊相対論の主張です。(注1)


このときに「あくまで全ての慣性系は同等である」という立場にこだわるならば、このパラドックスからの出口はありません。

事実、それぞれの慣性系から相手の慣性系を見た時の相対速度V1,V2,Vに対しては疑問の余地がないからです。

そうしてまた「時間遅れ則」を認めるならば

時間の遅れ=sqrt(1-相対速度^2)

であって、そうやって計算する手順については計算①、②、および⑤は全く同じ計算をしています。

したがって「あくまで全ての慣性系は同等である」という立場では袋小路に入り込み、このパラドックスから抜け出す事はできません。

しかしながら現実には慣性系③の時計はただ一つの時刻を示している事でしょう。

それで、その時刻が0.36秒とするか0.21951・・・秒とするのか、という話になります。

どちらの肩を持つのですか、という訳ですね。


それでこの時に「時間遅れの合成則は成立していない」=「0.21951・・・秒とはならない」という立場に立ったとします。

つまりそれは「慣性系①から慣性系③を観測した時の時間の遅れは相対速度Vから計算される値にはなっていない」と主張する事になります。

しかしながらこの立場は「慣性系①から慣性系②を観測した時の時間の遅れは相対速度V1から計算される値になってる」と主張しなくてはなりません。

なぜなら「慣性系②から慣性系③を観測した時には時計の針は0.36秒である」と主張する為には、その前提として「慣性系①から慣性系②を観測した時の時間の遅れは0.6である」としなくてはならないからです。

それはつまり「慣性系③については相対速度Vから時間の遅れは計算できない」が「慣性系②については相対速度V1から時間の遅れは計算できる」という主張となります。

そうなりますと「何故、慣性系③については相対速度から時間の遅れが計算できないのですか?」=「慣性系③と慣性系②の違いはなんですか?」という質問に答える必要が出てきます。

そうして、その質問に対する答えはありません。


他方で「時間遅れの合成則は成立している」=「0.21951・・・秒である」という立場に立ったとします。

この場合は慣性系①から慣性系②、および③に対してはその相対速度V1,およびVに応じた時間の遅れが「時間の遅れ則」に従って観測される、という事になります。

ただし慣性系②から慣性系③を観測した時は時間の遅れは相対速度V2から計算される値にはならい、という事になります。(注2)

それはつまり「慣性系②は慣性系①と平等ではなく、慣性系①の方が優先される」という事です。


さてまとめましょう。

以上みてきましたように、慣性系②から慣性系③を見た時の相対速度V2に基づく時間の遅れの計算はそのままでは成立しない、と言うのが特殊相対論の答えになっています。

しかしながらこの場合、慣性系①から見た時の相対速度VおよびV1に基ずく時間の遅れの計算は成立している、

つまり

「慣性系①は慣性系②より優先されると特殊相対論は主張している」と理解される事になります。


注1:ここでは「時間遅れの合成則」が明示されていません。

それで上記の場合「時間遅れの合成則」では

Td(①->③)

=(Td(①->②)*Td(②->③))/(1+V1*V2)

=(0.6*0.6)/(1+0.8*0.8)

=0.21951・・・(循環小数)=9/41 

となっていて、上記の計算と同じ結果を与えます。


注2:それではTd(②->③)はいくつになるのか、といえば

Td(②->③)

=sqrt(1-V2^2)/(1+V1*V2)

=(0.6)/(1+0.8*0.8)

=0.36585365・・・

と計算できます。

これを使えば従来の我々の常識である

Td(①->③)=Td(①->②)*Td(②->③)

が成立します。

ちなみにV1,V2<<1の場合は

1/(1+V1*V2)≒1 と

近似することが出来、これは我々が暮らす速度の範囲ではTd(②->③)に修正係数を掛けることなく

Td(①->③)=Td(①->②)*Td(②->③)

が成立している事を示しています。

追伸
以上の議論の具体的な例として地球が慣性系①なのかそれとも②であるのかを具体的に検討したものが

円運動を使った基準慣性系の判定・相対論 : http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?topic_id=3953#post_id27821

となります。

追伸の2
以上のようにして「速度の合成則を使う時」には意識するとしないとにかかわらず、「時間の遅れについては慣性系①が慣性系②に対して優越している=慣性系①が優先慣性系である、という事を認めている」と、そういう事になります。

あるいはもう少し言うならば「速度の合成則を認める=特殊相対論を認める」ならば 、「時間の遅れについては慣性系①が優先慣性系である=全ての慣性系が平等という事ではなく、優先する慣性系が存在する、という事を認めている」と言えるかと思われます。


さてそれでこの状況について少々コメントするならば「特殊相対論は我々よりもこの宇宙についてはより深く理解している」とでもなりますか。

 

PS:相対論の事など 記事一覧

https://archive.fo/a7Sw5


「時間遅れの合成則」が語っている事

2022-10-03 02:12:46 | 日記

特殊相対論のよって立つ2つの仮定、あるいは前提、あるいは原理は次の2つの様です。(注1

1、全ての慣性系は平等である。  あるいは

どの慣性系をとっても物理法則は同じ形で書ける。

2、光速度はCでどのような計り方をしても一定不変である。

それでこの2つから最終的にローレンツ変換が導かれ、そこから

1、時間遅れ則・・・運動している慣性系は時間が遅れる   と

2、速度の合成則・・・速度を足し合わせても光速をこえない  が出てきます。

それでその次の 3、時間遅れの合成則 は1、時間遅れ則 に2、速度の合成則 を代入すると出てきます。(注2

3、時間遅れの合成則・・・時間遅れの計算では慣性系の間に優劣がつく。(優先される慣性系が存在する=そこに登場する3つの慣性系は平等ではなくなり、一つの優先される慣性系が現れる。)

そうしてこの「時間遅れの合成則」については何故かみなさん語りません。

しかしながらこの「時間遅れの合成則」は特殊相対論のロジックの中に存在しています。

つまり「全ての慣性系は平等である」という前提から出発した特殊相対論ではありますが、その結論の中に「全ての慣性系は平等ではなく、優先される慣性系がある」と言うものが含まれている事になります。

・・・と言う様な事について具体的な話をしようと思います。

まあそれで「だからなんだ」と言われますと、たとえば「特殊相対論は時間の遅れについては優先慣性系の存在を認めている」がその答えになるかと思われます。

そうしてそれは「特殊相対論は基準慣性系の存在を否定してはいない、という事に結び付いている」と個人的にはそうとらえております。(注3



注1:多くの方がいろいろと述べられております。以下、その事についての記事になりますが、ご参考までに。

・特 殊 相 対 論 : 4P目 番外編 : https://sci-tech.ksc.kwansei.ac.jp/~okamura/anonymous/lecture/relativity/report/rel-19rep1.pdf

・特殊相対性理論入門 : 3.2 特殊相対性理論の基本原理 : http://www2.yukawa.kyoto-u.ac.jp/~tatekawa.takayuki/Note/SRelativity-v1.pdf

・Part1 特殊相対性理論 : 1.4 特殊相対性原理と光速不変の原理 : http://www.jsimplicity.com/ja_Report_Relativity_html/ja_Chapter1_PrincipleOfSpecialRelativityAndPrincipleOfConstancyOfLightVelocity.html#Section1_4

・相対論講義録2007年度 : 1.1 「相対論的」考え方 : http://www.phys.u-ryukyu.ac.jp/~maeno/rel2007/tokushu.pdf

まあしかしながら、上記の内容については「なるほど、みなさん同じことを言っておられる」程度の認識でよろしいかと思います。

そうして「どの説明が自分にとって分かりやすいのか」で参照する資料を選ばれる事をお薦めします。

注2:この件、内容詳細につきましては :「時間の遅れ」合成則・相対論 : http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?post_id=27124 : を参照願います。

注3:基準慣性系の存在は特殊相対論と整合的であり、特殊相対論に違反している訳ではない、という主張になります。

それはまた「基準慣性系の存在を認めても特殊相対論は困らない」という事でもあります。

ちなみに「時間の遅れ」について基準慣性系を認めずにあくまで「全ての慣性系は平等である」と言う立場に立つがゆえに、「双子のパラドックス(加速度運動なし)」で見られるような「お互いが相手の時計が遅れている」と主張する事になり、またそのようなおかしな主張を「正当なものである」と認めることになってしまうのです。

加えてそのような「全ての慣性系は平等である主義」によって「タキオン反電話」に見られるような「光速を超える事ができれば、過去に情報が送れる」などという、当方の観点からすれば「まことにおかしな結論に到達してしまっている」、そうしてそのような結論を「これでいいのだ」と主張する事になっていると見えるのでありました。



PS:相対論の事など 記事一覧

https://archive.fo/D2bm5