特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

時間の遅れを測定するのは難しい

2023-04-15 04:24:14 | 日記

1、時間の遅れを測定するのは難しい

「いや、そんなことは無いだろう。

時計を2つ見比べれば、どちらの時計が遅れていたか、すぐにわかる。」

そう言う声が聞こえます。

確かに日常生活のレベルではその通りですね。

ただしこの場合比較できているのは2つの時計の正確さ(=時計が刻むテンポの速さ=秒針が進む速さ)であって、時間の遅れではない事に注意が必要です。



それに対して特殊相対論の世界では「全ての時計は常に正確に時を刻む(=秒針が進む速さは常に同じ)」のですから、「一度時刻合わせが済めば、2つの時計は何時も同じ時刻を指している」のです。

ただし、時刻合わせが済んだ状態でその2つの時計は別々に移動する事は許されませんが、、、。

そうであればいつまでたっても2つの時計は同じ時刻を示します。

さてそれで「同一慣性系内であればどれだけ距離が離れていても2つの時計の時刻合わせが光を使ってできる」とアインシュタインは言いました。(注1)

こうして同期させた2つの時計も別々に移動させる事がなければいつも同じ時刻を示します。

そうやって同一の慣性系内で時刻合わせが済んだ2つの時計を「時間の遅れの測定」では使います。



次に検討すべきは「2つの慣性系でどちらが時間が遅れているのか」という事でした。

このシリーズの初めからここまで、ずうっとその事について検討してきた訳です。

まあそれで、少しはこの事について語れるようになった、という次第です。

はい、横道にそれましたね。



「2つの慣性系でどちらが時間が遅れているのか」を知る為には、観測する為には時計を使うしか方法がありません。(注2)

それで「慣性系αにある時計と慣性系βにある時計を両方、同じ場所に持ってきて同時に見比べればそれで済み」と言う主張は、まことにごもっともなのですが、「2つの慣性系」と言ったとたんに「この2つの慣性系は相対速度を持つ」と言ったのと同じ事になります。

つまりは「動いている2つの慣性系の間でどちらの時間が遅れているのか」を測定しないといけないのです。

そうして「動いている2つの慣性系の間で時刻合わせが出来るのは一回だけ」という制約が存在します。



具体的には左から右に向かう慣性系αにある時計Aと右から左に向かう慣性系βにある時計Bがすれ違う時にその2つの時計は時刻合わせが可能になります。

しかしこの時刻合わせが済んだ2つの時計はもう2度と出会う事はない、という所にこの問題の深刻さが現れています。(注3)

そうであれば「もう一度同じ場所で同時に2つの時計の時刻を見比べる事はできない」のです。

つまりは「時刻合わせが終わった2つの時計を使うだけでは慣性系αとβの間の時間の遅れは観測できない」という事になります。



2、時間の遅れを観測できるように工夫する事。

さてそれで「観測できないですぅ」で終わったのでは「子供の使い」になってしまいますので物理学者は考えます。

それでランダウ、リフシッツ は言うのです。

「もう一つ、時計を増やせばいいだろう」と。(注4)

そうしてその具体的な計算を「その2・ 固有時パラドックス」: http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?post_id=29825 :~:「時計Aからみた時のミンコフスキー図」: http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?post_id=29864 :で行い、その結果図1を得ました。

図1の詳細内容は上記ページを参照していただくとして、時計Bは固有時3秒となり、時計Aは5秒、時計Cは0秒の観測値を得るのでした。

その時のそれぞれの時計の時刻読み取りは以下のようになります。時計

TB@イベント①=0秒

TC@イベント①=0秒

TB@イベント②=3秒

TA@イベント②=5秒

但しイベント①にて時計Cと時計Bをリセットしたものとする。



こうして時計Aの立場に立てば「静止している時計Aに対して移動して来るのは時計Bであり、従って時計Bの時刻が時計Aよりも遅れて観測される。

そうであれば慣性系βの方が慣性系αよりも時間の進み方が遅い。」と結論を出す事になります。

以上のやり方、ロジックがこれもまたこの業界ではよく知られたものであり、こうして慣性系αと慣性系βで「どちらの時間が遅れているのか分かる」と主張されています。


そうしてこのやり方、考え方については疑いをもつ事なく「その通りである」としてきていたのですが、実は、、、という話がこの後続く事になります。


注1:アインシュタイン同期を参照願います。

ういき(英語版)アインシュタイン同期: https://en-m-wikipedia-org.translate.goog/wiki/Einstein_synchronisation?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=sc :

もう少しくだけた説明:アインシュタインによる時間の定義: https://archive.ph/hw5yv :

注2:ちなみにミュー粒子の崩壊、と言う現象も「一つの時計」であります。

従って「ミュー粒子の崩壊という時計」を使う事で「時間の遅れが測定できた」と多くの方が語っておられ、それがこの業界の常識となっており、特殊相対論が言う所の「運動しているものは時間が遅れる、と言う事の実例である」とされています。

注3:宇宙のトポロジーで曲率がプラスであれば2つの時計はまた出会う事ができます。

その場合は「どちらの時計が遅れていたか」がはっきりして、つまりは「慣性系αとβでの時間の進み方の違いが明らかになる」のですが、今の所の観測事実では「宇宙の曲率はフラット」であり、時刻合わせが済んだ2つの時計は2度と出会うことは無いのです。

但しこの時に一方の時計、もしくは両方の時計が途中で進行方向を反転すれば状況は変わり、再びこの2つの時計は出会う事が可能になります。

しかしその場合は反転している時に加速度運動が入りますので状況の計算による追跡は難しくなります。

そうしてまたそのようにした場合は慣性系αとβでの時間の遅れの比較ではなくなり、2回目のすれ違いで確認できるのは

経過時間Tα=慣性系α+反転運動中のα+慣性系α’(=反転運動終了後のα)

経過時間Tβ=慣性系β+反転運動中のβ+慣性系β’(=反転運動終了後のβ)

として計算された経過時間Tαと経過時間Tβの比較になってしまいます。

そうでありますから「初回のすれ違いで時刻合わせが済んだ2つの時計AとBを使った、2回目のこの2つの時計の現物合わせによる経過時間の比較による、慣性系αとβでの時間の遅れの比較」という方法は当面はあきらめた方がよさそうです。

ちなみにこの「両方の時計をすれ違い時刻合わせの後で反転させる」という方法は、真ん中に地球を存在させると「深刻なパラドックスが発生する事になる」という指摘については、

『その2・「時間の遅れはお互い様」を主張するネット記事一覧』: http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?post_id=30072 :の追伸にて示した通りであります。

注4:この件、内容詳細については「ランダウ、リフシッツ パラドックス」: http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?post_id=29541 :を参照願います。


PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/gcpOt

https://archive.md/FU3dm