5、時計Bの説明をMN図をつかって確かめておきます。
それで時計Aが静止系であった場合のMN図は図1でした。(注1)
図1のプロット
y=x,y=-x,y=0,x=0,y=-1.25x+5,x=4,y=5 プロット -10<x<10, -10<y<10
図1の実行アドレス
https://ja.wolframalpha.com/input?i=y%3Dx%2Cy%3D-x%2Cy%3D0%2Cx%3D0%2Cy%3D-1.25x%2B5%2Cx%3D4%2Cy%3D5%E3%80%80+%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88%E3%80%80%E3%80%80-10%3Cx%3C10%2C%E3%80%80-10%3Cy%3C10
この図1で示した以下のイベントの座標を速度V=-0.8Cでローレンツ変換(=速度0.8Cで逆ローレンツ変換)すると図1では速度0.8Cでマイナス方向に運動していた時計Bを止める事(=時計Bの慣性系からみたらどうみえるか)ができます。
イベント①座標(0、4)
イベント②座標(5,0)
イベントではありませんが、時計Aのリセットポイントとしての原点
原点座標(0,0) (注2)
この計算についてはすでに
『ローレンツ変換は「時間の遅れはお互い様」を支持しない件』: http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?post_id=29929 :で行っており、その結果は図3として表してあります。
図3のプロット
y=0,x=0,y=1.25x,x=6+2/3,y=8+1/3,y=5+1/3 プロット -10<x<10, -10<y<10
図3の実行アドレス
https://ja.wolframalpha.com/input?i=y%3D0%2Cx%3D0%2Cy%3D1.25x%2Cx%3D6%2B2%2F3%2Cy%3D8%2B1%2F3%2Cy%3D5%2B1%2F3%E3%80%80%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88%E3%80%80%E3%80%80-10%3Cx%3C10%2C%E3%80%80-10%3Cy%3C10
計算内容そのものは上記記事を参照願います。
それでこのMN図が時計Bが「自分こそは静止系で動いてくるのが時計Aだ」と主張する時に時計Bが見る事になるもの、あるいはそのように主張する事になる根拠となるものです。
さてそれで時計Bの座標系ではイベント①の時刻(=座標時)は
Y=16/3=5.3333・・・となっています。
そうしてこのY軸の値が16/3でX軸に平行に引かれた線が時計Bでの時刻0の同時刻平面を表します。
そうであれば、時計Bからみれば時計Aは時計Bの時間で計って16/3秒前にすでにリセットされた、そうしてイベント①の時点(=時計Cと時計Bがすれ違うタイミング=時計Bが時刻をリセットするタイミング)ではすでに時計Aは16/3秒間、時計Bに向かって移動してきている、と時計Bは見ます。
しかしながらこの16/3秒は時計Bの時刻読み(=今ここでは時計Bは静止系の扱い)ですので、これを「時計Aは速度0.8Cで移動してきている」と主張している時計Bの言い分を認めて「移動するもの(=時計A)は時間が遅れる」を適用します。
そうすると時計Bでの時刻読み16/3秒は時計Aでは
16/3*sqrt(1-0.8^2)=3.2
つまり時計Aは時計Cが時計Bとすれ違う時にすでに3.2秒を指していた、と言う様に時計Bには映るのです。
これが前の記事では「長さ4Cの速度0.8Cで移動する棒の後ろ側は未来方向に4*0.8=3.2秒ずれてしまう」という事のローレンツ変換による説明になります。
そうして時計Bが時計Cとすれ違う時に見る長さ4Cの棒の長さが2.4Cに短縮してみえる(=ローレンツ収縮)は時計Bをリセットした時(=座標時で16/3秒)の時計Bから時計Aまでの距離に現れています。
時計Bの座標系では時計Aが時刻をリセットした場所は時計Bから距離で20/3(C)離れていました。
それがイベント②の位置を頂点とする大きい方の三角形の底辺になります。
この三角形の高さは25/3(秒)になっています。
次に小さい方の三角形、これは頂点はイベント②で同じですが底辺の位置がイベント①になりますから高さが3(秒)です。
さてこの小さい方の三角形の底辺の長さが今、問題にしている「時計Bをリセットした時の時計Bから時計Aまでの距離」となります。
そうであればその距離は次のように計算できます。
20/3*3/(25/3)=2.4
そうしてこれは長さ4Cの棒が2.4Cにローレンツ短縮する、ということのローレンツ変換による説明になっています。
さてこの距離2.4Cを速度0.8Cで右側に移動する時計Aは3秒で時計Bに、時計Bの時間では到達します。
さてそれでこの3秒を時計Aの時間に変換しますと
3*sqrt(1-0.8^2)=1.8
1.8秒となります。
こうして時計Aは時計Cと慣性系αの中の視点では時計Cが時計Bとすれ違う時に同時にリセットされる事になっていますが、その後(慣性系βにある)時計Bとすれ違うまでに
3.2+1.8=5秒(=時計Aの固有時になる)
という時間を経過した、と時計Bは説明したのでした。
そうしてそれが時計Aの固有時になります。
次に時計B自身はまずは時計Cとすれ違う時に時刻をリセットし次に時計Aとすれ違います。
その時までの経過時間はイベント②と①の座標時の差分として簡単に計算出来て
TBイベント②-TBイベント①=25/3-16/3=9/3=3
3秒である、と図3は(=ローレンツ逆変換は)示しているのです。
これが時計Bの固有時になります。
以上より分かります様に、前の記事の説明の仕方はローレンツ変換による変換結果を順を追って分解しながら説明したものになっています。
そうしてローレンツ変換自体はこのような説明をすることなしで変換結果をただ単に示すだけですから、その変換結果を我々人間が理解するには上記の様に順次、プロセスを分解して認識していく必要があるのです。
そうしてここまでの例で申し上げるならば
『時間おくれ実験での時計の観測データ
TB@イベント①=0秒
TC@イベント①=0秒
TB@イベント②=3秒
TA@イベント②=5秒
但しイベント①にて時計Cと時計Bをリセットしたものとする。』
を説明する場合に「時計Aが静止系である、としても、時計Bが静止系である、としても良い、どちらでも整合的にこの観測データを説明できる」という結論にいたりました。
従ってこのような実験で時計Bの読み値が時計Aよりも小さいので時計Bの時間が遅れている(=慣性系βの時間が遅れている)と言うように結論を出す事はできない、と言う事になります。
つまりは「上記の様な観測データからは慣性系αとβでどちらの時間が遅れていたのかは判断できない」という事です。
それはまた「時間遅れ実験結果についての従来の判断の仕方は間違いである」と言う事でもあります。(注3)
そうしてまた「時計Aが静止系である、と同時に、時計Bが静止系である」と言う事は不可能な事です。
そうであれば「どちらか一方が静止系であった、という事が現実に起きていたのである」とするのが妥当な判断かと思われます。
それは又「時間の遅れはお互い様という様な状況は上記の様な解釈を認めた場合でも成立していない」という理解でもあります。
注1:「時計Aからみた時のミンコフスキー図」: http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?post_id=29864 :で行い、その結果図1を得ました。
内容詳細につきましては上記記事にてご確認願います。
注2:原点はローレンツ変換しても原点に写像されます。
つまり「原点はローレンツ不変」であり、不動点となっています。
そうしてまたローレンツ変換(含むローレンツ逆変換)は原点をイベントの一つとして認識する模様です。
それゆえに上記の様な観測結果の解釈においては時計Aも固有時を示す、とローレンツ変換は主張します。
注3:この点につきましてはランダウ・リフシッツも判断を間違っています。
「ランダウ、リフシッツ パラドックス」: http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?post_id=29541 :で引用したランダウ、リフシッツでは
『・・・2つの基準系の時計を比較する為には、一方の基準系では数個の時計、他方の基準系では一個の時計を必要とする事が分かる。
従ってこの操作は両方の系について対称ではない。遅れると判断される時計は常に同一で、それが他の系の異なったいくつかの時計と比べられるのである。・・・』
と言う様に「この方法で2つの基準系のどちらが遅れているのか判断できる」と主張していますが「このランダウ、リフシッツの認識は誤りである」という事になります。
そうしてそれは又「業界で認められている時間遅れ実験の結果についての判断、認識の仕方は誤りである」という事でもあります。
追伸
「ローレンツ変換の存在を認める」という事は「ローレンツ変換がこの宇宙の時空を支配しているという事を認める事」であります。
そうしてその事はそのまま特殊相対論を認める、ということでもあります。
さてそうなると「特殊相対論を認めながら時計Bの主張は認めない」と言う事はできないのであります。
PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧