アインシュタインは静止系に対して運動している慣性系の時間軸がBT時間軸になっている事は認識していなかった模様です。
そうしてその状況はそのままミンコフスキーに受け継がれました。
そのミンコフスキーが考案したものが今ではよく使われる事になったMN図です。
そうしてそのMN図でローレンツ変換の有様を示すとこのようになります。: https://archive.md/ND6P3 :
これはMN図のなかにローレンツ変換座標を示したものになっています。
それでこの場合黒座標は静止系で赤座標が運動系。
運動系はほぼ+0.58Cで静止系の+X方向に動いている。
そうしてこの2つの慣性系の座標の原点がちょうど重なり合った時の状況をこのイラストは示しています。
で、黒座標視点で描いてありますから黒座標は直交座標になっていますがそこから見た赤座標は斜め右方向につぶれた斜交座標になって見えています。
そうしてこの斜交座標がそのまま相対速度V≒0.58Cでのローレンツ変換を示しています。
さてそれで点Bを黒座標(10、11.5)に取ります。ただしここでの座標表示順序は(x、ct)です。
その点Bの値を赤座標で読みますと(4,7)です。(きれいに読める点を点Bに選んだのですからそうなります。)
そうしてこれは黒座標(10、11.5)を相対速度V=0.58Cでローレンツ変換した結果と同じになっています。(注1)
それでこの時に注目すべきは赤座標視点で見たときにどのように表示されるのか、表現されるのか、ということです。
運動系である赤座標に立ちますと静止系が左方向に動いている様に観測されます。
そうしてもちろん自分の座標系は斜交座標ではなくて直交座標である、と認識することになります。
つまりは黒座標ベースで描かれたMN図ではx’軸とct’軸が狭角をなす斜交座標として赤座標は描かれていますが、赤座標ベースではその角度が90度になる様に、つまりは赤座標はx’軸とct’軸が直交座標になる様に描かれる事になるのです。
そうしてその時に従来の認識では「赤座標の時間軸は静止系と同じNT時間軸(ニュートンの時間軸)のままで変わりはない」としてきました。
しかしながらこの時に赤座標の時間軸はBT時間軸(棒の時間軸)になっていたのです。(注2)
そうしてこのことについてはアインシュタインもミンコフスキーも認識しておらず、見逃していました。
さてこの見逃しの故に「静止系と運動系という2つの慣性系の間に本質的な違いはない」とされてきたのです。
つまりは「すべての慣性系は同等であって、その間をローレンツ変換が結ぶ」としたのです。
しかしながら事実は「NT時間軸(ニュートンの時間軸)が成立しているのは静止系だけ」であって「静止系に対して運動しているすべての慣性系(=運動系)の時間軸はBT時間軸(棒の時間軸)になっていた」のです。
そうしてBT時間軸(棒の時間軸)はNT時間軸(ニュートンの時間軸)とは違うのです。
あるいは「BT時間軸(棒の時間軸)はNT時間軸(ニュートンの時間軸)にはなれない」のです。
従ってこの時点ですでに「静止系は特別な慣性系である」という事になります。
さてそうであれば「静止系と運動系という2つの慣性系の間に本質的な違いはない」=「すべての慣性系は同等である、という認識は誤りである」という事になります。
そうして「上記の認識はどこから出てきているのか」といいますれば、驚くべきことに「ローレンツ変換そのものから出てきている」のです。
つまりは「ローレンツ変換そのものが静止系は特別な慣性系である」という事を実は示していたのです。
そういう意味では「我々はほぼ120年間にわたってローレンツ変換の主張している内容を聞きそびれていた」=「ローレンツ変換の事はよくわかっているつもりでいた、だがそれは誤解だった」のです。(注3)
さてそれで赤座標がBT時間軸(棒の時間軸)になっている事の端的な例を以下に示します。
再度: https://archive.md/ND6P3 :を参照します。
黒座標で(10,10)の点を取ります。
その点は光が静止系時間で10秒後に到達した位置を示しています。
その点を赤座標で読みますと(5.1558,5.1558)になります。(注4)
さてそれで赤座標は静止系に対して0.58Cで移動しています。
従って赤座標の原点時間は静止系に対してsqrt(1-0.58^2)≒0.81462で遅れます。
そうであれば黒座標で10秒経過は赤座標原点時刻では8.1462秒となります。
10秒*sqrt(1-0.58^2)=8.1462秒
さてそれで赤座標がNT時間軸であったとするならば、光が赤座標のx’軸上のどの位置に到達していてもそこに於かれた時計の時刻は8.1462秒を指していなくてはなりません。
なんとなれば「それがNT時間軸の定義であるから」ですね。
NT時間軸では原点に置かれた時計の示す時刻とx軸上のどの位置に置かれた時計が示す時刻であっても、その間にずれは発生してはいないのです。
さてそうであれば光はx’座標値で8.1462の位置にいなくてはなりません。
何故ならば「光速Cは不変」であり「常にC=1」であるからですね。
従ってこの場合はC=8.1462/8.1462秒=1となっている必要があるのです。
こうして「赤座標の時間軸がNT時間軸とした場合の黒座標時間で10秒経過した光の赤座標読みでの到達位置が計算できる」のです。
しかしながら実際にローレンツ変換した値は(5.1558,5.1558)であって(8.1462、8.1462)ではありません。
そうしてこの事は: https://archive.md/ND6P3 :をみても確認できる事なのであります。
こうして「赤座標の時間軸はNT時間軸ではなくてBT時間軸になっている」という事が確認できるのでした。(注5)
さてそれで「事実は以上の様」ではありますが、なぜMN図を考案したミンコフスキーがBT時間軸を見逃していたのか、という事について考えてみます。
MN図そのものは前にも指摘しましたように「よく見ればBT時間軸を表している」のです。
しかしながらその表現は「一目瞭然の形にはなってはいない」のです。
そうであれば: https://archive.md/ND6P3 :の図を見ただけでは「さすがのミンコフスキーもその事を見逃したのは無理もない事であった」と言えます。
そうしてそれゆえにミンコフスキーも「すべての慣性系は同等である」というアインシュタインの主張に同意し、MN図を使った時間遅れの説明の中で「時間の遅れはお互い様」と宣言するに至ったのであります。(注6)
注1:黒座標(10、11.5)を相対速度V=0.58Cでローレンツ変換する。
x’=(10-0.58*11.5)/sqrt(1-0.58^2)
≒(10-0.58*11.5)/0.81462
=4.0878
t’=(11.5-0.58*10)/sqrt(1-0.58^2)
≒(11.5-0.58*10)/0.81462
=6.9972
従って黒座標(10、11.5)を相対速度V=0.58Cで赤座標にローレンツ変換するとその結果は(4.0878、6.9972)≒(4,7)=MN図での黒座標(10、11.5)の赤座標を使った目視読み値。
注2:BT時間軸(棒の時間軸)とNT時間軸(ニュートンの時間軸)の違いについては以下の記事を参照願います。
注3:「ローレンツ変換は座標変換である」というのはまあ「間違いではない」のでしょう。
しかしながら例えば直交座標を極座標に変換する、そういう意味での座標変換ではありません。
ローレンツ変換というもののそれは「静止系に対して運動している慣性系の座標軸が持っている特徴をそのまま写し取ったものである」という認識の方が良いでしょう。
つまりは「ローレンツ変換によって棒の時間軸(BT時間軸)が生まれる」とそういう事ではなくて、もともとが「静止系に対して運動している慣性系の座標軸の時間軸がBT時間軸になっている」という認識の方が妥当なのであります。
注4:(10,10)を相対速度V=0.58Cでローレンツ変換します。
x’=(10-0.58*10)/sqrt(1-0.58^2)
≒(10-0.58*10)/0.81462
=5.1558
t’=(10-0.58*10)/sqrt(1-0.58^2)
≒5.1558
注5:以下実際にローレンツ変換した値の(5.1558,5.1558)がBT時間軸になっている事を確認しておきます。
x’=5.1558ですからこれが棒の長さとなります。
そうして相対速度が0.58Cでしたから時間のずれ量Δtは
Δt=5.1558*0.58≒2.99036
静止系時間で10秒は赤座標原点時間で8.1462秒です。
さてそうであれば光が到達した場所に置かれた時計が示していた時刻t1は
t1=8.1462秒ー2.99036秒=5.155836
t’=5.1558≒5.155836=t1
こうして確かに赤座標の時間軸はBT時間軸になっている事がわかるのでした。
ちなみにC=5.1558/5.1558秒=1となっています。(当然ですね。)
注6: https://archive.md/ccEpc#selection-2025.0-2025.8 :を参照願います。
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