特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

その2・μ粒子が動いているのか、地球が動いているのか?

2023-04-30 03:46:25 | 日記

前のページで設定した条件を再確認しておきます。

時計Aは地上に置かれる(海抜0m=海面上)。

時計Bはμ粒子に付ける。

時計Cは地上6kmの上空に設置。この場所でμ粒子は生成される。そこがイベント①

イベント①にて時計Bと時計Cはリセットされる。

イベント②はμ粒子が6km走って海面に到達しそこで寿命が終わる場所。そうしてそこは又時計Aが置かれている所であり、その場所に時計Bが到達する時にμ粒子は崩壊するのである。

ちなみに時計Aと時計Cは地上から見て同期がとれている。したがって地上からは時計Cがリセットした時刻で時計Aをリセットできる。

そうしてμ粒子と地球の相対速度Vは約0.995Cである。



以上の条件で

イ、地球が静止している、とした場合のMN図

ロ、μ粒子が静止している、とした場合のMN図

を描けばよい、それが回答を与える事になります。



5、さてそれで、この条件でMN図を2枚描く事になります。

図1・地球が静止している、とした場合のMN図

y=0,x=0,y=-(20/6)x+20,x=6,y=20  プロット  -10<x<10, -2<y<22

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=y%3D0%2Cx%3D0%2Cy%3D-%2820%2F6%29x%2B20%2Cx%3D6%2Cy%3D20%E3%80%80+%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88%E3%80%80%E3%80%80-10%3Cx%3C10%2C%E3%80%80-2%3Cy%3C22

横軸の単位はkm。

横軸上6kmの所がイベント①にあたります。

この場所で時計Bと時計Cはリセットされ、リスタートします。

そうしてこの場所でμ粒子は誕生し6km下の海面に向かって進みます。

そのμ粒子の運動の軌跡が黄色の右下から左上に向かう直線で表されています。

このμ粒子が海面に到達した場所がイベント②となります。

そうしてこの場所には時計Cと時刻合わせが済んでいる時計Aが置かれています。

この時計Aは時計Cがリスタートしたのと同時にリスタートしていますから、時計Aの表示が時計Bが(=μ粒子が)そこに到達するまでに時計Aの時間で何秒かかったかを表す事になります。

但しここで注意しなくてはならない事は「時計Cと同時にリスタートしている」と時計Aは主張しますが、それはあくまで地球座標系からみた場合の話である、という事です。

おっとそれでこのMN図の縦軸の目盛りはマイクロ秒であり、μ粒子が地球の上空6kmで生成され海面まで到着するのに時計A時間で約20マイクロ秒かかった事を示しています。

μ粒子は速度約0.995Cで走りますので、その寿命は地上から見ると10倍に伸びて20マイクロ秒となり、海面に到達した所で崩壊します。

そうしてもちろんμ粒子の固有時としての寿命は約2マイクロ秒ですから

TB@イベント②ーTB@イベント①=2マイクロ秒

となっています。

以上をまとめますと

表1

TB@イベント①=0秒

TC@イベント①=0秒

TB@イベント②=2マイクロ秒

TA@イベント②=20マイクロ秒

となります。



次にμ粒子が静止している、とした場合のMN図を描かねばなりません。

それは図1で示されたイベント①とイベント②の時空座標を速度がー0.995Cでローレンツ変換する事で(=速度が0.995Cで逆ローレンツ変換する事で)実行する事が出来ます。

その様にしますとμ粒子を静止させることになり、逆に地球をμ粒子に向かって走らせることになります。

その結果得られる事になるMN図が図2となります。

図2・μ粒子が静止している、とした場合のMN図

y=0,x=0,y=(200/60)x,x=60,y=200,y=198  プロット  -100<x<100, -20<y<220

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=y%3D0%2Cx%3D0%2Cy%3D%28200%2F60%29x%2Cx%3D60%2Cy%3D200%2Cy%3D198%E3%80%80+%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88%E3%80%80%E3%80%80-100%3Cx%3C100%2C%E3%80%80-20%3Cy%3C220

横軸と縦軸の単位系は図1と同じです。

横軸60kmの所から垂直に立ち上がっている線がμ粒子の軌跡を表しています。

それに対して地球の軌跡は左下から右上に原点を通って走る直線で示されます。

イベント①はどこか、と言いますとμ粒子の軌跡を表す直線とY=198で表される直線の交点になります。

イベント②は地球の移動直線とμ粒子の軌跡を表す直線との交点でありY=200がその場所の縦軸の値となっています。



さてこのままではイベント①と②の状況がよく分かりませんので、そこを拡大表示します。

図3・図2の拡大表示

y=0,x=0,y=(200/60)x,x=60,y=200,y=198  プロット  58<x<62, 197<y<201

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=y%3D0%2Cx%3D0%2Cy%3D%28200%2F60%29x%2Cx%3D60%2Cy%3D200%2Cy%3D198%E3%80%80+%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88%E3%80%80%E3%80%8058%3Cx%3C62%2C%E3%80%80197%3Cy%3C201

イベント①と②の場所が確認できます。

この図ではμ粒子は図1と同様にイベント①で生成されイベント②で崩壊します。

その間の時間は時計Bで計って2マイクロ秒です。

それでイベント①での時計Cのある場所はμ粒子の軌跡を表す直線とY=198で表される直線の交点の場所になります。

その場所に時計Cが来た時に、では時計Aはどこにあるのか、と言いますと地球の移動直線とY=198で表される直線の交点の場所になります。

そうしてその時に時計Aと時計Cとの距離は0.6km=600m程になっている事が図から読み取れます。

さてこれがμ粒子から見た時の状況であり、地球座標では6kmあった時計Aと時計Cとの距離は600mになってしまっています。

それでこの時に、時計Cがリスタートした時に、μ粒子が誕生した時に時計Aの時刻は何秒であったのか、という事になります。



図1で見たように相対速度0.995Cで走ると6kmは20マイクロ秒で到達します。

そうして図3にあります様に地球はμ粒子に到達するまでには、μ粒子から見ますと60km、走らなくてはならないのです。

と言いますのも時計Aがリスタートした地点は図1でも図2でもMN図の原点であり、その場所で時計Aはリスタートした事になっています。

それでこの状況をμ粒子からみますと「60km離れた場所で時計Aはリスタートした。それから地球は相対速度0.995Cで距離をつめて600mになった時に時計Cがリスタートし、同時にその場所でμ粒子が誕生した。」

「その後600m離れた場所にあった時計Aは相対速度0.995Cで距離をつめて時計B時間で2マイクロ秒後にμ粒子の位置に到達した。」と見ます。

さて時計Aはリスタートしてからイベント②、そこでμ粒子に出会うのですが、そこまでは20マイクロ秒必要となります。

これは図1において時計Aの固有時が20マイクロ秒である、と決定されているからです。

さてそうなりますと600mを0.995Cで走るには時計B時間で2マイクロ秒でよいのですから、時計Cがリスタートした時には時計Aの時刻は19.8マイクロ秒であった、と言う様にμ粒子は観測します。(注1)



この事はいままで検討してきた事と同様にして「移動する棒の先と後では、後ろ側が未来方向に時間がシフトしてしまう」という事を表しています。

そうしてこのμ粒子の例ではそれが19.8マイクロ秒である、と言う事です。(注2)

つまりは地球座標では時計Aと時計Cは同時にリスタートした事になっていますが、μ粒子座標では時計Aは時計Cよりも19.8マイクロ秒、早くスタートしている、と認識されるのです。

つまりはμ粒子にしてみれば「時計Aはフライングスタートしている」と言う事になります。(注3)



さてこれがローレンツ変換の与える答えでありますから、μ粒子からみれば「当方が2マイクロ秒経過している間に地球にある時計Aは0.2マイクロ秒経過した」となります。

つまり「相対速度0.995Cで走ってこちらに向かってくる地球の時間は遅れている」とμ粒子は観測する事になるのです。



そうしてその結果μ粒子観測系でも

表1

TB@イベント①=0秒

TC@イベント①=0秒

TB@イベント②=2マイクロ秒

TA@イベント②=20マイクロ秒

を再現する事になります。

但しμ粒子の結論は「遅れているのは地球の時間だ」となります。

さて、こうしてみますと今まで行ってきた時計A、B、Cについての議論がそのまま地球に降り注ぐμ粒子の時間の遅れ観測にそのままあてはまる事が分かるのです。

さて質問です。

μ粒子が動いているのですか、それとも地球が動いているのですか?

あるいは

遅れているのはどちらの時間ですか?



注1:時計Bで計って2マイクロ秒は相対速度0.995Cで走っている時計Aの時間では0.2マイクロ秒となります。

そうして0.2マイクロ秒後に時計Aは時計Bに到達し、その時の時計Aの時間は20マイクロ秒を指しています。

従って時計Cがリスタートした時点での時計Aの表示時刻は19.8マイクロ秒となります。

注2:棒の長さL*相対速度Vが時間のシフト量を表すのでした。

そうしてこの場合相対速度Vは3/10sqrt(11)≒0.995Cでした。

棒の長さは6kmですのでシフト量は

6/C*3/10sqrt(11)=19.8マイクロ秒となります。

但しここの所でのCの値は100*sqrt(11)/11=301151km/s に設定されています。

このCの値の設定が通常のCの値と異なっている理由は、ここでの議論の大筋を理解しやすくするために計算の初期条件設定で切りの良い数字を使った事によります。

注3:時計Aはフライングスタートしているのか?

μ粒子はそう主張し、地上に立つ我々は「いやそんな事は無い」と言います。

さてどちらが正しいのでしょうか?

もちろん「フライングスタートしている」のと同時に「フライングスタートしていない」という状況は通常の感覚では不可能な事であります。

しかしながら「フライングスタートしている」と主張しているのはμ粒子の立場に立った特殊相対論そのもの(=ローレンツ変換の結果)でありますから、これを否定する、と言う事は特殊相対論を否定する、と言う事になります。

そうしてこのような「同時であるという事は同一の慣性系内でしか成立しない」と言ったのはアインシュタインでした。

 

追記:2023/7:「時間の遅れはお互い様には矛盾がない、特殊相対論の結論はそうなっている」と主張される多くの方々がおられます。

そうしてまたその方々は時間が遅れる例としてこの「宇宙線由来のミュー粒子の話」をされます。

そうしてこう言います。

「ほら、確かに動いているミュー粒子の時間は遅れる」と。

さて、しかしながらその時同時に「その時にミュー粒子から見ると地球の時間が遅れて観測される」という説明をしません。

そのような説明をしている例を見ないのです。

これは本当におかしなことです。

「時間の遅れはお互い様」であるならば「ほら、ミュー粒子からみると、地球の時間はおくれている」と説明しなくてはなりません。

そう説明してこそ「時間の遅れはお互い様なのだ」と主張できるというものであります。



PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/8O6pW

https://archive.md/9QZ9n

https://archive.md/zBGpA