特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

その3・ 宇宙船通信パラドックス

2022-05-15 01:38:27 | 日記

訂正:(2024/2/20):以下、本文の計算条件の初期設定に一部間違いが見つかりました。
それを修正すると
1、アリス座標系固定     566.6日        580.00日   

2、ボブ座標系固定      566.6日        580.00日 

となり両者の差がなくなりました。

つまり「静止系がどこにあってもこの方法では検出できない」がここでの結論となります。

この件について何をどのように修正したのか、内容詳細についてはまた後日、ページを改めての報告となります。

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まえのページではアリス、あるいはボブが基準慣性系になっていました。つまり「基準慣性系に対して静止していた」という事になります。

それで今度はアリスとボブが両方とも「基準慣性系に対して運動している」という条件で考えてみましょう。話を簡単にするために「両者の間の相対速度は従来通り0.8C」とし、但し両方ともに基準慣性系に対して同等の相対速度をもって運動している、という事にします。

物体Aの速度 v1 ,V2にそれぞれ毎秒150070kmをセットしポチります。

https://keisan.casio.jp/exec/system/1161228695

答えは毎秒240,000.64km。ボブとアリスの相対速度0.8Cの分解としてはこんな所でしょう。



それでボブとアリスの船の基準慣性系に対する相対速度が求まりました。もちろんアリスは左側から、ボブは右側から接近してきており、2つの船の距離が480光日になった所で2隻の船の時計をリスタートさせます。

次にアリスは自分の時計で300日経過した所でボブに向かって信号を通常の無線で出します。

その無線を受け取ったボブはすぐさまアリスに対して返信を出します。アリスもボブからの信号を受けたらそれを記録します。以上の手順についてはいままでと何も変わりません。



さて毎秒150070kmで運動するとどれほど時計が遅れるのか知る必要があります。

物体の時間 T0 に300をセットし、相対速度に毎秒150070kmをセットしポチります。

https://keisan.casio.jp/exec/system/1161228694

答えは346.54。

アリスの時計で300日目に信号を出すのですが、それは基準慣性系では346.54日となります。

基準慣性系で346.54日間、0.5002C(=150070/300000)で進んだので173.35光日進んだ事になります。

ボブも右から同じ距離を進んできていますので、2隻の船の間の距離は480-(2*173.35)=133.3(光日)です。

ここでアリスがボブに信号を出します。信号は光速でボブに向かいます。

そうしてボブは右から0.5002Cでこちらに向かってきていますから133.3÷(1+0.5002)=88.855(日)で信号はボブに基準慣性系の時計では届く事になります。

ここまで基準慣性系の時計では88.855+346.54=435.395(日)の経過になります。

これをボブタイムに換算すると435.395*300/346.54=376.922(日)となります。

ボブもアリスの信号を受信したら即座にアリスに向かって返信を出します。

この時にボブとアリスの間の距離は480-(435.395*0.5002*2)=44.431(光日)になります。

ボブの信号は光速でアリス号に向かい、アリス号は左から0.5002Cでこちらに向かってきます。

従って44.431/(1+0.5002)=29.617(日)で信号はアリスに戻ります。

それで基準慣性系での合計の経過時間は435.395+29.617=465.012(日)

これをアリスタイムに換算しますから465.012*300/346.54=402.561(日)になります。



これまでの計算結果( http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?post_id=26571 )と合わせて以上をまとめますと、アリスが300日目に信号を出した、その信号を再び受け取るのは

  観測者  アリスが受信した日(アリスタイムで)  ボブが信号を受け、返信した日(ボブタイムにて)

1、アリス座標系固定     566.6日        259.98日   

2、ボブ座標系固定      353.33日       580.00日   

3、基準慣性系(今回条件) 402.56日       376.92日

となります。

ちなみにアリスとボブの間の相対速度が0.8Cであっても、それぞれの船が基準慣性系に対する相対速度をもつ値の組み合わせは無限にありますから、この計算結果も無限にある、と言う事になります。

この事を逆に言いますと「距離480光日で時計をリスタートさせた相対速度0.8Cで接近するボブ号とアリス号の間の通信記録を確認する事で、その場所での基準慣性系に対するそれぞれの船の相対速度が分かる」=「基準慣性系が分かる」という事になります。

そうしてその基準慣性系はCMBパターンに対するドップラーシフトを観察して得られたものではなくて「特殊相対論の計算がじかに教えてくれたもの」=「特殊相対性理論そのものから導かれた結果」となります。


それでもちろん当方の主張は「CMBパターンから求まる基準慣性系と上記の逆計算から求まる基準慣性系は一致するであろう」と言うものになります。


追記
膨張宇宙を表すフリードマン方程式を解くと、「我々の住む膨張宇宙の空間の膨張の仕方」が分かります。(注1)

それで「その膨張の仕方」というのは「ある場所の基準慣性系に立つ観察者から宇宙を見た時に、その観察者からある程度離れた場所の基準慣性系が今後、どのようにその観察者から離れていくのかが分かるもの」と言う事が出来そうであります。

そうしてそのことの結果としてビッグバンの結果誕生したこの宇宙では「空間が持つ基準慣性系については、観測可能な宇宙のどの場所でも同じように働く」という事が言えそうです。

コトバをかえますと「この宇宙は一般および特殊相対論に整合的に出来上がっている」となりますか。

ただしフリードマン方程式は以上のような事は教えてくれますが、「空間が持つ基準慣性系の正体」については「何も語ってはくれない」のです。

そうして我々はただ「時空と言うものはそういう風にできている」と認める事しかできない現状であります。

注1:「フリードマン方程式」については : 第4講 宇宙の幾何学 : http://osksn2.hep.sci.osaka-u.ac.jp/~naga/kogi/konan-class06/ch5-friedman-eq.pdf :を参照願います。


おまけ
「タキオン反電話」が勘違いした事
宇宙開闢の時以来、宇宙の時刻(=宇宙年齢)を刻んでいるのは空間の各点に定められた基準慣性系にある時計である。

そうしてこの時計は宇宙のどこの位置にある基準慣性系の時計とも同等であって、同じ時刻を正確に刻む。

その基準慣性系の間を飛び回る宇宙船の内部時間がどれほど遅れようとも、それはその宇宙船の中に限られた事であって、その外側に広がる宇宙空間には何の影響も及ぼさない。

つまり「宇宙空間をどれほどはやく移動しても、それが光速の1000倍であっても過去には移動できない」のである。

その事を理解していないために「タキオン反電話」は間違った計算手順を「正当なものである」と誤解してしまったという訳である。

ついでながら「ワープ航法が実現して、ゼロタイム移動が可能」になっても、出発地点と到着地点の宇宙時刻(それぞれの場所の基準慣性系が刻む時刻=宇宙年齢)が同じである、というだけである。


ちなみに「基準慣性系に対して運動している慣性系の時刻は基準慣性系からローレンツ変換によって求められる。」

つまり「ベースは基準慣性系」であってそれに対して相対運動している慣性系は「その場所の基準慣性系に従う」のである。