特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

その2・ タキオン反電話

2022-05-05 04:53:39 | 日記

ういきの「タキオン反電話」 : https://en.wikipedia.org/wiki/Tachyonic_antitelephone :に紹介されている「双方向通信の数値例」の計算手順に準拠して、但し「双子のパラドックス」で示した設定でどうなるのかを確認してみましょう。

・アリスとボブは宇宙船に乗って0.8Cの相対速度で慣性移動している。

但し今度はお互いに離れる、のではなく、近づく状況での計算となります。

時刻合わせの方法は「双子のパラドックス」を参照願います。

左側から近づくのがアリスで右からはボブです。

時計をリスタートさせるのはお互いの相対距離が480光日になった時です。

0.8Cで近づきますから、300日経過でその相対距離は240光日まで接近します。

その時にアリスはボブ宛に「元気ですか?」と通常無線で問いかけます。

無線ですから、光速Cでボブに音声波が飛びます。

アリスからみればボブが0.8Cで近づいてきます。それに向かってアリスの信号が光速Cで向かいます。その時の両機の間隔は240光日です。

解きますと133.3日でボブに信号が届きます。

これをアリスからみますと433.3日経過で信号がボブに届いた事になります。

アリスからみますと「動いているのはボブ」でボブは0.8Cで右側から近づいてきます。ですからこの時のボブの時計は0.6X433.3日=259.98日であるとアリスは報告します。(アリスの時計よりもボブの時計は遅れます。係数0.6は前回計算した数値です。)

さて、信号がボブに届きましたから、ここで観察者はアリスからボブに変わります。

ボブは信号が届きましたから即座に「元気だぜ!」と返事を出します。

ボブの機体からアリス向けに返信が光速Cで向かいます。

さらにボブから見ますとアリスがこちらに0.8Cで向かって来ます。(ボブにとっては動いているのはアリスです。)そうしてこの時の両機の距離は133.3光日です。

ボブ発の信号とアリスがぶつかる時間を解きますと、133.3光日 割る 1.8C=74.04日となります。

それでボブはボブタイムで259.98+74.04=334.02日に信号がアリスに届いたと報告します。

勿論「動いているのはアリス」ですからボブよりも時計が遅れます。

ですからアリスの時計は0.6X334.02日=200.41日であるとボブは報告します。

あるいは「タキオン反電話」はそのように主張している事になります。



こうしてアリスが300日目に出した返信がアリスに200日目に返ってきました。

しかも「タキオン通信」ではなく「通常の無線通信をつかった」にもかかわらず、「過去に情報を送る事に成功した模様」です。

以上が「タキオン反電話」が主張している計算手順による結果です。



しかしながら「通常の無線通信が情報を過去に送った」という例はないでしょう。

通常の通信は因果律に従い、因果律を壊しません。

そうなりますと「ここで間違っている」のは「タキオン反電話が主張している計算手順」という事になりそうです。

追伸
上記と同じような計算を「その1・タキオン通信・相対論」で行いました。

但しその時は相対速度が0.5Cでした。

そうしてこの時は過去には情報が送れませんでした。

しかしながら相対速度が0.8Cまで上がると「過去に情報を送れるようになる」とこの計算手順は主張している事になりますね。

追伸その2
タキオン反電話の設定条件(=互いに離れる2つの宇宙船)でタキオンが必要になるのは、光速に近いスピードで離れていく二人の間の連絡の為であり、「過去に時間をさかのぼる」という事については「ローレンツ変換において相手が運動していると見た時に相手の時計が遅れて見える」という部分が主に効いているのであって「タキオンが時間をさかのぼる、ということの効果ではない」という事になります。

したがって「2つの機体が近づくように飛ぶ場合にはタキオンは必ずしも必要とはならない」という事になるのです。(=2つの機体の相対速度がほぼ光速であるならば、タキオン通信機は不要である。)

追伸の3
せっかくですから300日にアリスが出した送信がアリスに300日に戻ってくる「概算の条件」を調べておきましょう。

ただし前提条件として「2隻の宇宙船の相対速度が0.8Cである」を計算のスタート条件としています。

そうしますと上記より433.3日で信号がボブに届きました。これにローレンツ変換で「時間が遅れる割合R」を掛けます。

そうしてそれにボブがすぐさまアリス宛に返事を出した、そのシグナルがアリスに届く時間を上記から持ってきますと、74.04日となります。

これでボブタイムトータルでの時間が433.3・R+74.04と決まりました。

これをまたアリスタイムに変換するために係数Rを掛けます。そうしてそれが300日であればOKでした。

(433.3R+74.04)R=300 これを解けばいいのですね。それではウルフラム君に解いてもらいましょう。

「(433.3R+74.04)R=300の根」<--「 」内をウルフラムに入れてポチります。

https://ja.wolframalpha.com/input/?i=%28433.3R%EF%BC%8B74.04%29R%3D300%E3%81%AE%E6%A0%B9

・・・ウルフラム君にはもう少し「こちらの気持ちを理解して対応していただける様に」なってほしいと思います。

まあそれはさておき、「数直線」右側の青丸にカーソルを合わせると「0.75102」と読み取れます。よかったですね。ここでエクセルなど引っ張り出したら「ウルフラム君の負け」でありました。

さてR=0.75102と求まりました。

それで次は相対論電卓の出番です。

物体の時間 T0 に0.75102をいれ、相対速度 v に197980を入れてポチります。
https://keisan.casio.jp/exec/system/1161228694

答えは1.00013、光の速度の66.0390%だと電卓が教えてくれています。(もっとちゃんと1.00000にしたい方はご自由にどーぞ。)

相対速度が0.8C条件で始めた結果が0.66Cとなりました。これで一回目の計算は終了です。

二回目の計算は相対速度を0.66Cとして上記計算を繰り返し、前提条件と結果が同じになったらそれが厳密解となりますが、当方の気力は一回計算を回しただけで切れました。(注:上記計算、とは、いやな事に「このページの最初から」という意味です。)

まあしかしながら0.5Cでは遅すぎ、0.8Cでは過去にさかのぼるのですから、0.66Cあたりに答えがあるなあ、という読みは「当たらずとも遠からずであろう」と個人的にはそう思っております。(簡単に求められる、と思って始めたのに一回の計算では求められず収束計算が必要である事に途中で気が付いてしまったので、負け惜しみを言ってます。)

PS:相対論の事など 記事一覧


https://archive.fo/G5rZH