“ヌー”一族。

だらしない人はとことんだらしないんだなぁの典型がいた。
多分DNAからしてだらしないのだと思う。

朝の武蔵野線。
降り続く雨の影響で車内は余計な混雑だ。
始発駅から乗った僕はそんな中でも無事に座る事が出来た。
車両奥の3人掛けシート。
mixiの方の日記ブログを書き書き電車は進む。

西国分寺着。
より一層混みだしてきた。
そんな中を扉から人混みかき分けぐんぐんと奥へ奥へ入り込んで来る“群れ”を見た。
“ファットなヌーの群れ”だ。

リーダーの巨体な“母さんヌー”が叫ぶ。
「こっちよ！早く！1個席あいてたヌー！」
そのおたけびを合図に1体2体3体4体と
どいつもこいつもこれまた巨体な“ヌー達”が
ノシノシゾロゾロ満員パンパンの人々を押し退け
僕の座っている車内奥シート目掛けて突進してきた。

「ちょっと失礼！退いた退いた！」
巨体母さんヌーはそう叫びながら満員の中を突き進み“獣道”をこしらえる。
そこへ巨体父さんヌー、巨体姉娘ヌー、巨体妹娘ヌー、巨体爺さんヌーらが
何食わぬ顔で連なって後に続く。
“ファットなヌーの群れ”とはつまり
“デブな非常識家族”
の事だ。

「座れ座れ！」
予め先に入り込みカバンを置いて関取…
いやいや席取りしておいたシートに娘が座る。
“巨体ヌー家族”はこれまた巨大な声でディズニー話に盛り上がる。
ランドかシーに行くのだろう。
しかしうるせー！
獣うるせー！

5人が5人揃って格好もだらしない。
シャツもパンツもテロテロのシワシワだ。
ランドかシーに行ったらば
この格好のこの巨体でミッキーやらミニーやらの帽子やカチューシャ被るんだろか。
う～む凄そうだ。

で、電車は各駅に停車し
じきに乗客は下車したり乗車してきたり。
僕の隣座席があいた。
3人掛けシートの真ん中だ。
即座に母さんヌーがカバンを置いた。
「あなたほら座ってヌー」
旦那に促す。
旦那答える。
「いいよ。狭いしヌー」
その通り！
こんな隙間、父さんヌーの巨体じゃ無理無理！
無理っちゅうか迷惑！
1人で3人分シートが必要な感じだもの！
そこらへん父さんヌーはわきまえている様子だ。
えらいヌー！

すると母さんヌー
次は爺さんヌーに促す。
5体の中でも比較的小柄な爺さんヌーが遠慮はご無用とばかりに着席。
まぁ巨体は巨体でも爺さんだからね。
爺さんっつってもまだ若いのだが。
着席した爺さんヌーは早々に缶コーヒーのプルタブを開けた。

“パカッヌー”

えぇ！？コーヒー飲むの！？
「ゴクリゴクリ、ヌーヌー」
飲んだ！
乗る前もしくは降りてから飲め！
缶コーヒーを片手に持ち変えてクロスワードパズルをやりだす爺さんヌー。
縦横斜めに数字を書きこんでいる。
爺さんヌーが数字を記入する度に肘が当たりうざったい。

ある駅を通過した辺りで爺さんヌーが携帯で電話しだした。
「あ、もしもし私だけれども、おはようございますぅ。
あのさぁ今日急で悪いんだけど会社休みたいんだわ。
え？いや風邪じゃなくて孫のあれだから。
え？うるせぇな！育児休暇だよ育児休暇！
そう言っとけ！」
電話を切る。
車内で携帯かけてんじゃねー！
うるせーし！
しかも爺さんあんたディズニーランド行くんだろが！
こんなブクブク育った孫のどこに育児休暇が必要だ！？
どう見ても小中学生じゃねぇか！
なんて思った瞬間
爺さんヌーは携帯をリュックにしまう事に気を取られ
「うわぁっ！」

“びちゃーヌーッ！”

缶コーヒーをそこらにぶちまき溢しやがった！
コーヒー飛び散り少し僕にもかかる！
満員電車だもん当然周囲の方々にもかかったろう。
爺さんヌーは謝りもせずひとこと。
「コーヒー溢しちゃったぁ」
だって。
それ見て巨体ヌー家族は大爆笑。
何だこいつら揃いも揃って！
呆れた。

お前らが本物のヌーなら肉体も精神も肥えてっから
崖も登れなければ降りれまい。
河だって渡れず濁流にプカプカ飲まれるだろう。
これは別にデブだからっちゅう話ではない。
太ってたってちゃんとした人間はわんさといる。
逆に痩せてようが腐った奴だってうじゃうじゃいる。
しかしこいつらは明らかに何もかもが腐った獣だ。
自己管理も出来てなけりゃ家族の教育も出来てないから3代続いてこのザマだ。
ため息ひとつを車内に残し
僕は南越谷で電車を降りた。

ファットなヌー家族よ。
どうか夢色に輝いたディズニーの世界を
渋いコーヒー色に染めないでおくれ。
そう祈りながら東武線に電車を乗り換え
僕は一路太田市そして足利市へと向かったのだった。

武蔵野線のジャングル内では
ファットなヌー家族のだらしなさは非常に迷惑。
ヒドイんだヌー！

めけめけ～。

写真。足利市駅ホームより。
『ニューミヤコホテル』
『ヌーミヤコホテル』じゃなくて良かった！
なんつってなー。