時遊人~La liberte de l'esprit~

優游涵泳 不羈奔放 by椋柊

ゆれる

2008-11-09 | 映画
シーン1:母の一周忌

写真家として活躍する早川猛は
母の一周忌のために帰郷する

仕事に追われ母の葬儀にも立ち会わず
頑固な父り勇くいさむ)とも折り合いの悪い猛だが
温厚な兄の稔は
何かと猛を気遣ってくれていた

実家では
父と稔がガソリンスタンドを経営しており
幼なじみの川端智恵子もそこで働いていた

法事を終えて稔と一緒にスタンドに寄った猛は
食事がてら智恵子を送るといいながら
彼女のアパートに上がりこむ

猛が夜中になって案家に戻ると
稔がひとり洗濯物をたたみながら
猛のことを待っていた



シーン2:昂り橋

翌朝
兄弟と智恵子は
蓮美渓谷に向かう

子供のようにはしゃいで川に入っていく稔
河原では
東京に行って
猛と新しい人生を始めたいと匂わす智恵子の言葉を
猛ははぐらかす

ひとり山道を登り
吊り橋を渡る猛

やがて智恵子が吊り橋に着くと
背後から稔にしがみつかれる
稔は
高い位置でゆれる吊り橋が怖いのだ

河原の草花に夢申でカメラを向けていた猛が
ふと顔を上げると
吊り橋の上で
稔と智恵子がもめているのが見えた

猛の表情が凍りついた次の瞬間
吊り橋の上には
膝をついた稔がひとり
激しく流れる渓流を
おろおろと見下ろしていた



シーン3:拘置所

それは事故だったと決着がついたが
ある目
言いがかりをつけてきた客に逆上した稔は
警察の取り調べを受け
そこで
自分が智恵子を突き落としたとロ走ってしまう

猛は
東京で弁護士をしている父の兄・早川修に弁護を依頼する

お前の人生は素晴らしいよ
自分にしか出来ない仕事して
いろんな人に会って
いい金稼いで…
俺見ろよ
仕事は単調
女にはモテない
家に帰れば炊事洗濯に親父の講釈

そのうえ人殺しちゃったって
何だよそれ…

なんでこんな事になっちゃったんだろう…
俺わかんないよ
何で俺とお前はこんなに違うの?

                    「CINEMA TOPICS ONLINE」より引用



仲の良い兄弟の間でチグハグに‘ゆれる思い出’
智恵子に対する‘男としてのゆれる感情’
会話の端々に見え隠れする‘言葉のゆれ’

のっけから
色んな意味を含んで
‘ゆれ’まくる作品です



東京でそれなりに成功し
写真家として
忙しいなりに気ままに生活している猛

地元で実家の家業を継ぎ
父親と二人暮らしの稔

兄妹や姉弟でも
家では立場の違いがあるわけで
それが
兄弟とか姉妹だと尚更
微妙なのです

それに一度気づいてしまうと
結構シンドイもんなんです

オダジョーそして香川照之扮する
この御兄弟
残念ながら気づいてしまったみたいです

ついでに
猛や稔の父・勇と
その兄であり弁護士でもある修との間の‘ゆれ’
兄弟の確執も見え隠れ~



「何で兄ちゃん…あの吊橋渡ったの?」
「だから…お前が渡の見て 智恵ちゃんどうしても行きたいって言って…」

「だってさぁ~お前は俺の無実を事実と思ってる? 違うでしょ?」

「どう言う事?何言ってんの?」

「自分が人殺しの弟になるのが嫌なだけだよ」

「何で俺が自分の兄貴のこと疑わなきゃいけないんだよ
 冗談じゃね~よやってられるかよ
 なんでお前は俺を疑ったりしないって言ってくれね~んだよ」

「始めから人の事を疑って最後まで一度も信じたりしない
 そういうのが俺の知っているお前だよ…猛」

「ふざけんなよ!」

そして
猛は証言台に立った…



7年後…

猛は
幼い頃母が撮影した8ミリカメラを回した
そこに
蓮美渓谷の川原で遊ぶ父と自分達の姿を見る

鮮明に甦る記憶
あの日
稔と智恵子に何が起きたのか

8ミリカメラは回り続ける

怖がる稔の右手を引いて吊橋を渡る
猛の姿が映し出されていた



「誰の目にも明らかだ 最後まで僕が奪い 兄が奪われた
 けれど総てが頼りなく 儚く流れる中でただひとつ
 危うくも確かに架かっていたか細い架け橋の板を
 踏み外してしまったのは僕だったんだ
 
 今 僕の目には明らかな風景だ
 腐った板が甦り 朽ちた欄干がもちこたえる事があるだろうか
 あの橋はまだ架かっているだろうか」

いやぁ~
オダジョーそして香川照之
魅せてくれます

結末ですか?





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