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「耕作離れ」の米価格  

2014年09月19日 | 農業
9月に入って26年産米の価格がどのように推移するのか、東北各県の動向をWeb新聞で注視してきた。9月9日河北新報は宮城県米「ひとめぼれ」の概算価格は8400円と報道した。その後岩手、秋田が前年対比大幅安を報道し、9月14日全国紙朝日新聞がトップ記事として以下の報道した。全国紙で農業関係、米価格の動向についてトップ記事になることは異例なことだ。


朝日新聞 2014.9.14

「新米 安値」 新米、今年は安い 収穫上々・余る13年産・ご飯離れ…

各地のスーパーに並び始めた2014年産米(新米)が、昨秋より安い。今のところは全国では平年並み以上の収穫になるとみられ、農協が農家から買い取る新米の価格は、昨年より1割以上も下がった。高齢化と人口減でコメを食べる量も人も減っていく時代、13年産米が多く余っていることも響く。
、、、、、。

新米の作柄は日本全体では「平年並み以上」との見方が多く、店頭の安値に反映されている。大半が遅場地帯の西日本では今夏、長雨と日照不足で作柄が悪くなる恐れがあり、九州・中国地方ではカビによる病害のいもち病の発生が確認された。品質への影響も懸念されるが、東日本では8月15日現在、「良」や「やや良」が多い。以下略 朝日新聞 2014.9.14 

他の全国紙が無視する中で、唯一朝日新聞はトップ記事で報道したが状況報告で、視点はどこにあるのかと?がつく。見方を変えれば、消費税増税のドアホノミクスの状況下では米離れ加速推進報道にもなる。

農業情報研究所は2014年9月13日 以下の記事を掲載した。
米価暴落「農家がつぶれる」政府も農協もなす術しらず何が所得倍増だ
米価暴落で東北米農民が存亡の危機に立たされている。

JA全農山形が決めた2014年産米の概算金は、日本一のブランド米をめざす「つや姫」が前年を1200円下回る1万2500円、「はえぬき」が同2600円安の8500円、他の主要銘柄も8000円台だ。県内稲作農家からは、「このままでは農家をやめざるを得ない」、「政府は環太平洋連携協定(TPP)交渉妥結を目指し、米国や豪州に対抗できる大規模化を進めようとしているが、これでは大農家ほど経営が厳しくなる」などの声が聞こえる。以下略

岩手県全農県本部が決めた主力の「ひとめぼれ」の概算金も1万円を割る過去最低となった。概算金の大幅下落は農家の資金繰りに大きく影響する。生産者からは「これでは赤字になる」、「農家がつぶれる」の声が上がる。農家悲痛「対策急がなければ」 県産米の概算金下落 岩手日報 14.9.11

一関地方良質米生産確立生産者大会は、「「米価が3割も低下して生産費を大きく割り込み、生産者の生活と地域農業は瀕死(ひんし)の状態。大型経営体や集落営農組織ほど打撃は大きく、稲作は崩壊の危機だ。国の責任として主食のコメを守り、地域農業発展を目指す施策を強く要請する」との大会決議を採択」した。同県選出国会議員らに提出するという。「平泉米」拡大へ団結 一関地方生産者大会 農業強化策求め決議 岩手日日 14.9.13

しかし、今の安倍政府には、そんな声は届かないだろう。規模拡大と飼料用米拡大、自力による販路拡大で乗り切れと突き放すに決まっている。そして、悲しいことに、全能のはずの全農もこの事態を前に、なす術を知らない。外食産業との連携も、価格維持に関しては頼りにならないだろう。

何が「所得倍層」だ。政府・与党も、この錦の御旗を降ろすべきときだ。もはや、新たな産消連携の構築と拡充以外、この苦境を乗り切る道はなさそうだ。
 以上 農業情報研究所記事 引用

「あきたこまち」誕生30周年の式典を終えたばかりの秋田県知事は、9月17日の朝日新聞秋田版で「農家の自助努力で危機脱出せよ」?とコメ生産県知事とは思えない発言した。この記事「揺れる東北農業」9月16日の県議会で、「考え方が普通の商売人と同じようにならない限り農業の展望はないと思う」と述べ、さらに「商工業の方は、全体的に支援がなくとも頑張っている。これから農業も競争社会になる。食料は基幹的なもので日本の生命線だが、あぐらをかいてはダメ。できるだけ自分で努力せよ」。「食品加工分野をさらに強化する必要がある」とも付け加えた。

この方の発言で多くの農家は奮起するだろうか。米つくり県の知事にして、ほとんど生産の現場がわかっていない。農家訪問と称して、田んぼでコンバインや田植機に耕作者と並んで乗ったりしたぐらいの感覚しか持ち合わせていない。支援なしに頑張っているという商工業者も商圏のほとんどが農業関係の中で、農業の衰退と偽物の景気回復策でどのような方向に向かうだろうか。どこに「あぐらをかいている農家」がいるのか伺いたい。所詮お殿様感覚の現状認識、ピントはずれで農業県の再建などできるはずがない。かつて秋田県には「農工商一体」を掲げ県政を推進した知事がいた。

山形新聞9月13日に、吉村美栄子知事は「つや姫」が前年を1200円下回ったことについて、県農協中央会の長沢豊会長らに対し「つや姫の販売は堅調に推移している。売れるのだから、概算金を下げずにやれないのか」と詰め寄ったそうである。会長は消費低迷によるコメ余り、概算金全体の下落傾向を踏まえたことを説明したが知事は納得せず、「諸般の事情はあるだろうが、つや姫は農業を救う奇跡のコメ。この金額では生産者の落胆が目に浮かぶ」と畳み掛け、「売れるのになぜ下げるの…」と繰り返した。との報道があった。

米生産県の知事の意識の差は大きい。

「あきたこまち」の価格は昭和45、6年産とほぼ同じの価格だ。「あきたこまち」以外の価格はそれよりも低く、昭和42年産価格60K当たり7677円前後。人事院の資料によれば、当時の大卒初任給は31,306円、高卒27,300円。米60K換算で大卒4俵、高卒で3.5俵等になった。平成25年度は大卒203,600円、高卒140,100円となっている。この初任給は平成26年産米60K換算で大卒24俵、高卒で16.5俵に値する。地方では小泉、竹中、安部内閣不況で、4年生女子大卒の初任給は高卒初任給以下、派遣、臨職扱いが全国で60万人もいるとの報道がある。

平成26年産概算価格、農家が手にする60K8500円の代金は、農水省調査の再生産価格の物財費も下回る。誰が見てもこの価格では新規就農者が多くなるはずがない。40数年間の対大卒初任給比較で60k50,000円位、せめて30,000円だと給与所得とのバランスはとれる。ドアホノミクスのなれの果て、円安政策と消費税増はとてつもないくらい米生産の物財費増に直面している。その現実を直視せず、ドアホノミクスと同じ感覚のトップは「自助努力せよ」という。

収穫期に入って、出穂後の日照不足、台風11号の置き土産「褐変色」のモミは予想以上の被害になりそうだ。青米、未熟米が多く収量は昨年より悪いとの報が多い。作況予想「やや良」とは米価引き下げの操作に等しい。2011.3.11の東日本大震災で、取引材料になったコメの価格の反動は大きい。その意味では東日本大震災の直撃価格。その余震はまだまだ続く。
(青字 筆者)

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1 コメント

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やってられないよねぇ (菅野芳秀)
2014-09-25 10:02:00
やってられないよねぇ!
稲刈後に飲みにいきます。
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