
「希望の国」 園子温監督 ××
暴力とハダカの鬼才園監督が原発事故後の家族を描いています。福島の事故後、同じような地震から長島県の原発も爆発します。それまで息子夫婦とともに認知症の妻智恵子(大谷直子)を世話しながら畜産業をしていた小野一家ですが、チェルノブイリ事故をきっかけに原発について勉強していた父親泰彦(夏八木勲)は息子夫婦に避難を勧めます。庭の中に20キロ圏の杭が撃たれ、杭の向こう側の隣人は有無を言わさず避難させられてしまいます。息子の洋一(村上淳)は残ろうとしますが説得され妻(神楽坂恵)とともに避難します。妊娠していることがわかると妻は防護服を着ておなかの子を守ろうとしますが周囲の目は冷たく、夫は避難した先で就職した工務店の仲間からからかいの対象になったりもするのでした。
福島事故後、実際に起きたいくつかのできごとをひとつにまとめた展開になっています。「希望の国」というよりは「希望のない国」の姿です。それでも人は何かに希望を見つけて生きなければいけないのではないのでしょうか。それが「愛」であるならば泰彦と智恵子のラストは納得できません。飼っていた牛たちを引き連れ夫婦で「希望の国」をめざしてほしかったです。
ただ、今までの園監督の作品の中では最も評価できる作品です。
それだけに村役場の職員の喫煙(×)と工務店の職人たちの喫煙が(×)残念です。タバコにもポロニウムという放射性物質が入っていて常習喫煙者はタバコだけでもかなり内部被ばくしています。演出上どうしてもタバコが必要と言う場面でもなかっただけにとても残念です。