Joe's Labo

城繁幸公式。
というか避難所。移行か?
なんか使いづらいな・・・

アラサーの天国と地獄

2009-12-18 10:50:12 | 世代間問題
今週の東洋経済がなかなか濃い。
中でも渡邉正裕氏の「大企業30代のキャリアの磨き方」が出色だ。

今でも日本企業の社内制度はあまり変わってはいないので、会社任せだと旧式の
“終身雇用型サラリーマン”になってしまうリスクが高い。
これは長時間残業、有給返上、滅私奉公といった特技はあるが、21世紀の現在は
いまいち市場価値が低い。そうなると会社にしがみつき、ずっと足元だけを見て
生きる人生が20年以上続くはめになる。

しかも、成果主義で下がるのは若手の賃金であり、昇給ピークは40代前半に低下する
から、従来の中産階級のような生活水準はとても期待できない。

そうならないための指針としてよく出来ていると思う。
興味を持った人には本書をお奨めしたい。

ついでに言っておくと、00年前後、苦労して正社員内定を手にしたにも関わらず、
第一氷河期世代の離職率が上がったのは、こういった事実に若者自身が気付いた
からだ。リクルートの人間なんかには分からないだろうが、大企業の社内には
バブル世代という飼い殺しの見本みたいな可哀相な人達がいて、あれを生で見ると
結構な衝撃だ。

というわけで、本特集は30前後の正社員で、キャリアを選べるだけの能力のある人
には格好のアドバイスだろう。要するに「がっついた若手ビジネスパーソン」向けの
処方箋である。

ところで、そうでない人はどうすべきだろうか。
同じ号の冒頭、一橋の齊藤誠先生は
「先進国で国民全部を幸せにするような成長余地などない。
だから労働市場などを規制緩和して既得権益を崩し、
効率的な再分配をするしかない」

と説く。
“そうでない人”向けの処方箋がありえるとすれば、これしかない。
それは僕自身のテーマでもある。

ただ、奇しくも掲載されている連合・古賀会長のインタビューを読む限り、彼らが
それを受け入れる余地は今のところ無さそうだ。

というわけで、今週号には、アウトサイダーとして成功するもの、旧秩序のインサイダー
としてもがくもの、そしてそこに入れないまま底辺で苦しむグループがぎゅっと凝縮
されて、なんとも濃い内容になっている。
「僕には今、坂の上の雲が見えますよ」と笑顔で語る人間と、
「生まれた時代が違うだけで、なぜこうも待遇が違うのか」と嘆く人間が同じ特集に
いるわけだ。

もはや総中流なんて幻想だ、という現実を認識したいなら、20代はもちろん、上の
世代も読んで損はない。