本の感想

本の感想など

小説 新坊ちゃん

2023-06-27 15:02:49 | 小説

小説 新坊ちゃん 

まずこのお話は全部フィクションであることを特にお断りしておく。

たとえよく似た人物が居たとしてもそれは偶然である。わたしは拙文を書いている間どういう訳か胸中大変爽快であった。

 

序章 よっちゃんのこと

 私が小学2年の頃二軒隣りの大きな家によっちゃんと呼ばれていた男のヒトが住んでいた。佳三と書くらしいがだれもよしぞうとは呼ばなかった。小さい子供ではない、私の父親と同じくらいの歳で子供はいなかった。いつもぶらぶらしていて仕事はしていなささそうだった。

 ある寒い冬の日の朝のことである。学校に行くために家を出ると、よっちゃんの家の前の道路に茶色地に黒の縦縞の入った布団ひとかさねと白地に紺の縦縞の湯飲みひとつが放り出されていた。布団が土の上にあるのであるから汚れて勿体ないなと思いながら登校したのでよく覚えている。

 お昼過ぎに帰宅した時には、布団も湯飲みもなかった。母親にあの布団勿体ないなと言うと、母親はいつもは怖い顔しているのにこの日だけはにやにやしながら

「オマエも遊んでばっかりいたらアないなことになるねんで。」

とだけ言った。

アないなことの意味は分からなかったが、ここを追及するとまたいらざる母親のお怒りを誘発しそうであるから黙っておいた。しかし近所の遊び仲間に聞くと、よっちゃんは婿養子であったがあんまり遊び歩いたために離縁になったという話であった。たしかにその後よっちゃんの顔は見たことないし表札からもいつの間にか佳三の名前は消えていた。

わたしは小さいころから勤労精神のない人間で、それまでよっちゃんのようにぶらぶらした生活を送りたいと考えていたのであるが、この事件でわたしの人生観はかなりの変更を被った。

その後いつのことであったか、何かの折に母親がひどく腹を立ててわたしの布団を玄関から放り出しそうになった時は本当に怖かった。この時はとなりのおばさんがとりなしてくれたので、放り出されなくて済んだ。そんなわけでおばさんには今でも感謝している。同時に母親のように気性の激しい人はどうも苦手になった。



コメントを投稿