jump in the box

この小さな箱の中で飛んだり跳ねたりしてみます(笑)

ボクサー

2004年04月15日 | テレビ
乾いたリングにもう何ラウンド目かわからないゴングが鳴った。
チャンピオンは誤算と焦燥を隠す事無くリング中央に向かった。

もともとこのマッチメイクはチャンピオンサイド(自称)が強引に進めたものだったし
ルールも計量もないまま一方的に開始のゴングを鳴らした。

チャンピオン陣営の作戦は明確だった。
開始早々的確にジャブを当てて主導権を握り
相手の懐に入り込んだら一気にたたみかける。
後はそのままロープ際に追い詰めてラッシュをかけるか
反撃に出たところをカウンター一閃でマットに沈める。
ヘビー級ボクサーらしく早いラウンドでのKOが狙いだった。

しかし挑戦者はタフだった。

何度となく強烈なパンチを打ち込まれ
ダウンも奪われたがその度に立ち上がり
細かいパンチを返してくる。


3年前、自称ヘビー級チャンピオンはダウンを喫した事がある。
反則ともいえる不意のパンチにやられたのだ
どうしてもそれが許せなかったチャンピオンは
同じジムの背後にいると思われる挑戦者に白羽の矢を立て
半ば強引に記者会見を開き今回の対戦を決めた。


チャンピオン陣営としてはセコンドの手前
メンツにかけても負けるわけにはいかない戦いであり
その勝負を決するにはKO以外ありえない。

1R,2Rと序盤はチャンピオンペースで試合は進んだ
的確にパンチを浴びせるチャンピオンに挑戦者は防戦一方
たまに繰り出す挑戦者の反撃も有効打とは程遠い。
このままKOかと思われた。

ところがタフな挑戦者はなかなか倒れない
ダウンしてもまたすぐ立ち上がる。
チャンピオンは焦っていた。
とにかく早く決着をつけねばならない。

チャンピオンの強引な大振りのパンチが空を切るシーンが多くなる
と同時にほとんど反則に近い挑戦者のパンチが当たりはじめる。
試合は泥沼の様相を呈してきた。

観客からはブーイングも飛び始めた
チャンピオンサイドのセコンド陣は早く倒せ!とけしかける

どんなに挑戦者が反則ギリギリの反撃を繰り返そうと
自称チャンピオンが倒れることはないだろう。
おそらくは挑戦者もKOされる事はないだろう。

自称チャンピオンの顔から自信の色が消えかけている。

レフェリーは存在しないに等しいから
判定で決着がつくことはありえない。
観客も関係者も誰もこの試合を止める事はできない。

セコンドアウト!

チャンピオンは無言で立ち上がると
小さく見えない挑戦者相手に今日もパンチを出し続けるのだ。


今日も乾ききった砂漠のリングにゴングが鳴る。

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