隊員NO.4まこで~す
←加賀市ホームページより
加賀市刊行の民俗調査報告書『かが風土記~見て、歩いて、学ぶ旅~』に、
大聖寺中町で起こったというとってもこわ~い怪談が紹介されています。
越前屋善三郎の妻が幽霊となって後妻をとり
殺した話
大聖寺中町の越前屋善三郎という町人の建てた貸家に商人夫婦が住んでいました。
夫が旅商に行き、妻一人が家にいたある日の夕暮れ、表の戸をほとほとと叩く者が
います。「誰だろう」と妻が聞いてみると、女の声がして「ちょっと出てきて下さい」と
言います。そしてその声に聞き覚えがあって、三年前に死んだ大家さんの妻の声に
間違いありません。妻は狐狸の仕業だろうと、怖くてけっして外に出ませんでした。
すると女は夫の名を呼んで、「会いたいので、出てきておくれ!」と言います。
妻は夫が不在であると告げると、「明日の晩また来るので、必ず居るように伝えなさい。
さもなくば、恨みますよ!」と念を押し、消えていきました。
しばらくして夫が家に帰りました。すると、妻は真っ青になって倒れています。夫が
介抱し、薬を飲ませると、やっと正気を取り戻し、先ほどあったことを夫に話しました。
そこで、夫の商人は、翌日の仕事を休み家にいることにしたのです。
次の日の夕方、お寺の鐘がボ~ンとなる頃、案に違わず表の戸を叩く音がします。
「さぁ来たぞ」と妻は布団をかぶって打ち伏しました。夫が戸を開いて出てみると、
妻が言ったとおり、そこには三年前に死んだ大家さんの妻が立っています。
商人は驚きながら、「どうして迷い出て来たのか?」と問いかけると、その幽霊は
答えました。「迷う事情があって往生できません。大家の家の表の戸に祈祷の札が
貼ってあります。これを取り外して下さい。言うことを聞かないと、承知しませんよ!」と
それはそれは恐ろしい形相で話します。商人は自分の命を取られてはたまらないと思い、
「わかった」と返事をしてしまいます。さて、商人は家に入り、おびえる妻に事の次第を
話しますが、妻は「とにかくお札を取って欲しい!」と叫びます。
そこで、商人は仕方なく大家の門口に行って、そのお札を剥がしたのでした。
しばらくすると、大家の家が大騒ぎになりました。「水だ、薬だ。」と言う声が聞こえ
始めたので、商人が大家の家に飛び込み、「何事が起こったのか」と聞くと、たった
今大家の妻が何もなかったのに、息をしていないと言います。そして医者を呼んで
容体を診てもらったところ、もうすでに死んでしまったというのです。
何でも、この大家の先妻が3年前に病死するとき、幼い子どもが残されることを
心配して、夫に遺言したことがありました。それは、
「わたしが死んでも、幼いこの子が成人するまでは後妻を決してもらわないで下さい。
この子に継母が出来たら、きっとこの子は苦労するはずです。」という言葉でした。
しかし、この大家は遺言を守らず、三年経って後妻を迎えていたのでした。
商人があのお札を剥がしたので、恐ろしいことが起きてしまいました。先妻の幽霊が
後妻をとり殺してしまったのです。商人は、このことが知れたら、自分も人殺しに荷担した
ことが分かってしまうと、このことを誰にも話さなかったそうです。
後年になって、商人はこの話を友人の竹屋七左右衛門に初めて明かしたと言います。
(ブログ作成にあたっては、『かが風土記~見て、歩いて、学ぶ旅~』75~77ページを
参照させていただきました。)