晴山陽一『365日物語』(創英社/三省堂書店) P.33
1月28日 スペースシャトル「チャレンジャー号」爆発
> 1986年1月28日、アメリカのスペースシャトル「チャレンジャー号」が発射73秒後に爆発し、七人の搭乗員全員が亡くなった。「チャレンジャー号」は10回目の飛行だったが、民間人として初めて高校教師のクリスタ・マコーリフが搭乗員に選ばれたことから話題になっていた。 彼女は周回軌道上から生徒たちに「宇宙授業」を行なう予定だった。
> 爆発は、補助ロケット接合部のゴム製のリングが過度に低い気温のために損傷したのが原因と言われている。シャトルは、高度14,400メートルで爆発分解した。搭乗員の乗ったキャビンは爆発時には壊れず、約3分後に海面にたたきつけられた。搭乗員の死亡はこの瞬間だったことが当時の報道からわかる。
> シャトルの初飛行からすでに5年が経過し、宇宙開発が日常化したと感じられていた頃である。人々のスペースシャトルに対する関心を呼び戻すための政治的シンボルとして民間人搭乗者が募集され、クリスタ・マコーリフは一万人以上の希望者の中からスペースシャトル計画のスポークスマンとして選ばれたのだった。皮肉にも彼女の名前はこの痛ましい事故とともに永遠に残ることになった。
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クリスタ・マコーリフのことは知らなかった。どんな科目を教えていて、どんな授業を準備していたのだろうか。一方、搭乗者の中に日系三世のオニヅカ空軍大佐が含まれていたことは、新聞一面の写真とともによく覚えている(Ellison Shoji Onizuka, 日本名:鬼塚 承次)。日系アメリカ人の物語は既に日本ではなくアメリカの文化と伝統に属するものだが、そうとわかっていても心が弾み、また傷むものである。
もう一つ、「原因」となったリングについては事前に問題の存在が指摘されていたのに、担当職員が打ち上げ準備中に過度の睡眠不足に陥っており、せっかくの情報を適切に活用できなかったとの指摘がある。睡眠の重要性を強調する文脈では、必ずと言ってよいほど引き合いに出されるものとなっている。
日米戦争末期のレイテ湾突入作戦失敗に、同じく睡眠不足による判断ミスがあったとも言われるが、こちらはいま一つ確証に欠けるようだ。
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