ゲイリー爺さんと愉快な仲間達による歳末たすけあいザ・ムービー『大晦日』。
年末年始の特番なみにゆるぅ~い寸劇ぞろいだからこそ、
お祭り気分の中で観ればひたすら高揚まちがいなし。
したがって、賞味期限切れると食あたり。
5日過ぎての賞味の可否は?
予告に出てくるメイン(?)キャスト以外にも矢継ぎ早なカメオ出演の嵐。
懐かしの面子から、今をときめくテレビスターまで。ヴァラエティ感200%。
しかも、交通整理がシンプル過ぎて(「ハイ、次!」みたいな)、
これぞ《雑・エンタテインメント》!
「新春かくし芸大会」のハリウッドリメイク版的寸劇十番勝負。
「ロバート・デ・ニーロ(本物)」とかいうテロップが今にも出てきそう。
ツッコミどころとかは枚挙に暇がないし、それは《使命》のようなもの。
というか、ツッコミたくなるのは、説明が杜撰だったりするからで、
説明しなきゃ好いんだよね。ま、それこそいよいよツッコミ出す人いるだろが。
映画のマジックは反則スレスレの省略にあると思っている私としては、
説明省略の醍醐味を映画で味わえたときこそ、映画を賞味。
だから、「なんで0時05分にしたの?」とかって謎(だよね?)は、
(あぁ、映ってないところで出産を通じていろいろあって優しくなれたんだねぇ~)
という自動脳内変換機能が瞬時に作動すれば感動できてしまうわけ。結構、俺単純。
でも、「映ってる部分」で語るメディアだからこその反作用を取り込めれば、
いや取り込まなければ、映画というのはやっぱりハンパなメディアでしかない故に、
そういう省略からうまれる《from ? to !》の束の間小旅行は心地好い。
勿論、脳内変換の楽しみもあるけど、ミシェル・ファイファーとザック・エフロンの
後だしジャンケン的エスコートな語り口が魅力なのも、そんなとこかな、と。
リストを最初から観客と確認しないから、余計な詮索もないかわり、
ほんの一瞬の解答時間直後に正解バーンッ!って反復は心地好い。
まぁ、ギャップや落差やムチャが最も際立ってるのもこの二人だし、
そうした意味では、誰もが感情移入(応援)しやすい組み合わせ。
12月31日という1日分しか目の当たりに出来ない観客に
背後の時間を十分に想像させるためには、よっぽど巧く描かなきゃならない。
そういう意味では、それが成功しにくい条件(登場人物や小話が雑多すぎる)の下、
ミシェル&ザックとリア&アシュトンの2組が魅惑たるのも当然かもしれない。
そういう魔法を信じさせてくれる場所《ニューヨーク》が最大の功労者だけどね。
とはいえ、本当に「捨てエピ」も多い印象受けたし、
エピソード間の有機的互換性完全無視のダイジェスト的編集は
紅白ラストのドヤ顔ブサイク編集のダイジェストに通ずるもの感じたし、
総じてRottenの過剰反応(フレッシュ7%!)も納得は納得だけど、
年末年始のゆるぅ~い特番に一喝する方が無粋なわけで、
これはこれでクリスマスから大晦日までの期間限定で
フレッシュ!なわけですよ。
そうした意味では、23日公開って選択も至極賢明に思えたりする。
日本じゃクリスマスと年越しは極めて「別物」感が漂いまくってるし。
一昨年、デプレシャンの『クリスマス・ストーリー』が公開直後は寂しかったのに、
クリスマス直前には大盛況だったって話を思い出したりして。確かに季節感、重要。
『ラブ・アクチュアリー』を2月とかに公開しやがった(バレンタイン商戦のつもり)
いまはなきUIP(日本法人)より遥かに正しい。(事情いろいろあったんだろうけど)
そういえば、本当にみんな『ラブ・アクチュアリー』好きだったんだねという事実。
いや、俺は本当に本当に大好きで(恥)、毎年クリスマスシーズンには欠かさず観てた。
それで一昨年末にようやくブルーレイ化されて「わぁーい」って大喜びで購入観賞・・・
そこに浮かび上がる明朝体の字幕・・・。なんだ、あれ?
字幕のフォント変えられたりしないよね?
映画館の上映でもデジタル化の影響もあってか、
味気ない字幕の字体に寂しさ覚えるけど、明朝体って・・・
『ラブ・アクチュアリー』の縁の下の力持ちは、出番は少ないながらも印象的なスコア。
これまでは、壮大系や重低ビートの職人だったクレイグ・アームストロングが挑んだ
ハートフル胸キュンときめきスコア。ラストでは壮大系スキルも相まって感動スコア。
そのスコア、今でもしばしば映画の予告で使用されている。
ちなみに、フィギュアスケート(全然興味なかったけど、このまえちょっと観たら
結構楽しみどころ満載なんだと気づく)で誰かが「ロミオとジュリエット」って演目?で
クレイグの曲を使用していたのだが、ラストにかかるのはロミジュリじゃなくて
『プランケット&マクレーン』(リドリー・スコットの息子Jake Scottが監督)の曲。
「Escape」ってタイトルだけど、報道番組とかでもよく使われてるし、
以前ラジオ番組で「予告篇につかえる音楽集」があるって聞いたことあるけど、
『プランケット~』や『ラブ・アクチュアリー』のスコアはその手に登録済なのかも。
まぁ、クレイグ自身も自曲のつかいまわしよくやってるからな(笑)
(『ウォールストリート』でも、『プランケット~』の「The Ball」を使用。
ちなみに、その曲は『ザ・バンク 堕ちた虚像』の予告編でつかわれてた。)
というわけで、本作にはクレイグばりの胸キュンスコアには欠けるものの、
どちらも選曲はスカしも外しもしないで抜群な直球勝負で心地好い。
『ラブ・アクチュアリー』の「All I Want For Christmas Is You」にあたるのが、
本作では「Auld Lang Syne」(「蛍の光」の元唄)。最高に素敵な愛しき直球選曲。
しかも、これを適度にお洒落加工してくれてるから、閉店BGMに聞えず好い塩梅。
そして、日本人にも馴染み深い「蛍の光」しかり(これは配慮ではないかもしれぬが)、
しょっちゅう映りまくる「TOSHIBA」やら「TDK」の華々しいアピールしかり、
どこか日本への愛というかエールみたいなものを勝手に感じてたりしたら、
パーティーで使用されてるピアノまでが「KAWAI」だったりするものだから・・・
まぁ、徹頭徹尾「大人の事情」による偶然の産物なのかもしれないけれど、いや、
実際まだまだ日本経済(というより日本のモノづくり)底力維持なのかもしれんけど、
2011年の日本(日本人)は戦後最大級のダメージと危機感にまみれた一年で、
そんな日本人のメンタリティにはしみじみと映ってしまうのも、必定かと。
そこにきて、ラストのナレーション。
「地震や洪水なんかは自分じゃどうしようもないけれど、
自分で出来ることは頑張れよ!」みたいなメッセージ(ちょっと違うかも)。
なんて、好い人達なんだ・・・。まぁ、自意識過剰かもしれないし、
自分たち(米国人)が世界の中心(NY)から不幸に見舞われたアジアに
思いやり示して能天気な祝宴の贖罪おさえておいただけかもしれない。
でも、どんな理由であれ、思いやりが滲めば表情も綻んでしまうよね。
そこでラストにP!NKの「Raise Your Glass」で弾けちゃってくれるんだから、
ズタボロパッチワークも許す許すっ!・・・とか思った矢先に余計なこと始めるし。
ザックのダンシング観られてアップ、つまらんNG観てダウン。その繰り返し。
でも、単なるNGじゃなくて最後の最後の面白オマケはなかなか好きだった。
ので、許すことにしたが、『バレンタインデー』が双子じゃなかったら許してない(笑)
ちなみに、私はその前作を未見のままなので、今度こそ時季を逃さず観てみます。
というわけで結論としては、賞味期限切れも3秒ルールでオッケーよ!
◇日本ネタといえば、小澤征爾の顔をどこか(ポスターか何か)で見かけた気がする。
◇ラストは多くの人が期待したであろう、全員集合でダンス!ってシーンが見たかった。
ギャラが一桁違えば可能かもしれないが、スケジュール的にも不可能だよね。
内田有紀版『花より男子』(観てる人いないよな・・・※)のようにはいかないね。
あの映画は、あのラストだけ妙に輝いてたなぁ。
それか、リアが合流して『ハイスクール・ミュージカル』と『glee』、夢の競演!
もっと無理か。
◇アビゲイル・ブレスリンの鼻は、ニコール・キッドマンみたいな特殊メイクだよね!?
そうだよね? そうだと言って・・・美しき青きリトル・ミス・サンシャイン・・・
◇ゲイリー・マーシャルと言えば、『プリティ・ウーマン』に便乗した
「プリティ」シリーズの邦題でおなじみで、邦題聞くたびに興醒めしてたけど、
『プリティ・バレンタイン』とか『プリティ・ニューイヤー』とかまで頑張ってたら、
正直ちょっと見直したんだけどな(ウソ)。
ところで、ニューイヤーズ・イヴを「大晦日」という字幕でみる度に生じる違和感。
それは各表現がもつイメージが明らかに対照的ゆえに当然かもしれない。
「大晦日」は《晦日》の《大》トリって意味だけど、「晦日」は月の最後の日を表す。
「晦(日)」は「つごもり」とも読むけど、それは「月隠り(つきこもり)」に由来。
だから、どちらかというと一年の総括(過去が集約)される静かな日という印象。
しかし、英語の表現だと明らかに未来志向。前夜祭。新しい年へのカウントダウン。
そうした対照性は面白い。紅白歌合戦がどんなに前倒しして時間延ばしても、
後ろに延長してカウントダウンしてバカ騒ぎしないのは、文化的背景に由来かな。
確かに、紅白終わった後に聞こえる除夜の鐘の音とそれを包む静けさこそ、
「大晦日」って響きにはぴったりなイメージだよな。
そして、世界の色色な年越模様。
※おぉ!
奇遇にも『花より男子』(IMDb)で道明寺役を演じた谷原章介ナレーション版予告!