フランス映画祭2011にて観賞。
ファブリス・ゴベールはTV作品でのディレクター経験はあるものの、
映画初監督らしいのだが、音楽をソニック・ユースが(オリジナルで!)担当したり、
撮影がアニエス・ゴダール(クレール・ドゥニ作品で仕事してきた)だったりで、
随分と贅沢なデビュー作。
ちなみに、ヒロイン役のアナ・ジラルドはイポリット・ジラルドの娘だったりもする。
ちなみに、イポリットは役者のみならず(最近では)『ユキとニナ』を諏訪敦彦と共同監督。
アナ・ジラルドは(ゲストにも来ていた)ジュール・ペリシエと次回作(TV)で夫婦役らしい。
そのジェールは随分と日本に興味を示してくれている(ように勝手に)思ったので、
アナ・ジラルドも今度は是非、日本に来てください・・・と言いたくなるほど、
実に魅力的なアナ・ジラルドでした。
そう、本作の最大の見どころは、オープニング。
ジェールの家で開かれているパーティーに向かうため、
地味な住宅地の仄かな灯りのなかを颯爽と歩くアリス(アナ・ジラルド)。
Killing Joke の 「Love Like Blood」が80年代から90年代にかけての空気を
一気に呼び覚ます。舞台がパリ郊外だけあって、その「距離」が時間の距離にも
単純な「断絶」だけを感じさせることなく、離れることでうまれる普遍性を見事に演出。
4人の登場人物の視点から語られる数日間は、
彼らの物語を拠り合せることにより、徐々に真相が明らかになっていく形式で展開する。
しかし、こうした形式自体に新鮮さはなく、近年使い古された感のある手法でもあるゆえに、
そこには何らかの必然性を求める姿勢が観客には備わってしまうはず。
当然、ミステリーの謎解きのための手段であってはまろどっこいだけ。
語り手の主観がコントラスト鮮やかであったり、
中心の移動に発見があってほしい・・・
が、語りの形式に満足してる印象。
フランス版『エレファント』とも評された、といった紹介があるが、
あまりにも露骨に『エレファント』を意識しているような構成(前述の形式等)や
映像(カメラが一緒に歩きながら、前を行く俳優の背中越しに世界を眺めるさま等)なので、
『エレファント』ほどのストイシズムも感じられなければ、登場人物も饒舌ゆえに
じっくりと彼らの現実を観察するような見方が促されることはない。
映画を観ながら音楽制作したらしいソニック・ユースの音楽も、
(それを意図したのかもしれないが)非常に印象が薄く、
それこそ冒頭の(ならびに何度か劇中で流れる)Killing Joke の印象の方が
断然強い。しかし、ソニック・ユースのサントラのジャケットは見事な美しさで、
その場面(アリスがサッカー場で佇む)にはハッとさせられる色彩の妙があった。
木々のなか(森?)を歩き、サッカー場にやってきたアリスとシモンの目に飛び込む、
派手なユニフォームのサッカー・プレイヤー。街全体の停滞感と同様に、
服装にも鮮やかな色が見受けづらい分、そのユニフォームの色にどきりとする。
そして、手前のシルエット。向こうの「スポーツ」と不釣合いな短いスカート、長い脚。
もう少し、そのシーンをゆっくりみせるだけの「色気」があっても好かった気がするくらい。
そう、全体的に淡々としていて、抑揚に欠け、編集も極めて淡白で事務的に思えてしまう。
で、この高校生連続失踪事件の真相がラストで明らかになるのだが・・・
映画の最初のシークエンスにも登場したシーンにつながる。
ジェレミー(ジュール・ペリシエ)がそこですれ違った男、そいつこそがシモンを殺した男。
どうやら知人でも何でもなく、ジェレミーが通り過ぎた後にやってきたシモンに、
煙草を吸うために火を貸してくれるよう頼むのです。そして、着火後に・・・
いわゆる通り魔的な犯行なのでしょう。が、そこから私が勝手に解釈するに、
これはもしかしたら「反喫煙」的メッセージを込めた展開だったりするのでは!?
つまり、スポーツバッグを持ち、フード付トレーナーにジージャンのジェレミーには声をかけず
(吸いそうにないから)、革ジャンのシモンに声をかけ・・・案の定、喫煙者ゆえに火を貸し・・・
それが死への引き金に。つまり、喫煙は死を誘う、と。
なぜ、そんなことをふと思ったかと言うと、フランスは低年齢の喫煙者が多いようで
(喫煙は16歳から認められたと思う)、昨年には「反喫煙広告」が物議を醸していた。
いやぁ、さすがに凄い広告だわ・・・。
でも、おぞましさや下品さがありながらも、どこか文芸の香りが・・・さすが御フランス(笑)
さてさて。会場にゲストとして登場したジェレミー役のジェール・ペリシエは、
驚くほど「好青年」で、まだ21歳だというのに非常に謙虚であり、
フランス人だというのに(失礼)たびたび日本に敬意を評したり
日本と親睦を深めたい旨のコメントを繰り返したりで、めちゃくちゃ好印象。
それは、「日本語を喋れたら好いのになぁ」といった発言をリップサービスではなく、
しみじみ語ってくれたりする(これもサービスの一環?)誠実さにも拠るし、
昨年のアンヌ・コンシニよろしく、質問者に自らマイクを渡しに行ったりもした。
本作がまだ出演2本目らしいのだが、1本目にあたる『バス・パラディウム』は
昨年のフランス映画祭で上映され、実は私も観賞済だった。
全然彼のことは憶えてないが・・・
ちなみに、エージェントはロマン・デュリスと同じらしいので、今後の仕事にも期待。
ただ、彼に申し訳ないというか不憫だったのが、会場の微妙な空気。
それは。おそらく作品に対する観客の素直な感想の表れかもしれないが、
上映終了後まったく拍手がなかったのだ。ゲスト登壇のない場合でも、
どんなに疎らであれ、映画祭において拍手は起こるものなのに、
(この時期に貴重な)ゲスト登壇があるにもかかわらず、
全くといって好いほど拍手の聞こえない会場の冷え込み具合が、
あれほど感じの好いジュールが登場してもなかなか払拭されずに、
質問もなかなか出ず(しかし、質問者はそんな中でも優しく丁度好い質問をしてくれていた)
そうした「もったいなさ」というか「気まずさ」を終始感じながら、「心配」が絶えなかった。
しかし、最後には皆の義理もプラスされたかのような強めの拍手を受けて、
名残惜しそうに舞台袖へ入っていくジュールを見て、些か安心。
ちなみに、本作の次に上映された『マムート』を観に戻った際、
サイン会も終った後だったろうに(予定ではかなり前に終っているっぽかった)、
ロビーでも快くサインに応じているジュールの姿を見かけた。
やっぱりこんな時期にもかかわらず来日を英断してくれるフランス人は好いひとばかりだ!
って、そういう短絡的な発想もバカだし、やや卑屈かもしれないけれど、
情けは人のためならず。きっと、彼らに恩返しできる機会も巡ってくるだろう。