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Living Is Difficult with Eyes Opened

2011年 映画ベスト10(後篇)

2011-12-31 13:55:21 | 2011 年間ベスト

 

分割公開する映画に辟易してたくせに、自分はさらりとやってしまう前後篇。

今回は2011年に劇場公開され(私が劇場観賞した)作品の中からベスト10を考えました。

こういうのを考えるときって、その結果(ラインナップ)にも個人の好みや生き方(大袈裟!)が

現れると思うけど、その選定基準というか選び方にも各人の特徴が見えそうですよね。

ちなみに、私は大抵、観た作品の横に五段階評価の数値をダーッって入れていき、

それをソートして、「5」または「4」の作品の中から20作品程度をピックアップしてきて、

その上で色々な尺度や打算(笑)を経ながら絞りこんだり並べたりしていきます。

 

ちなみに、今年のノミネート作品(?)は以下の通りです。

 

[5点] (五十音順)

愛の勝利を ムッソリーニを愛した女 / アリス・クリードの失踪アンストッパブル

アンチクライストイリュージョニスト / エリックを探して / 神々と男たち

ゴーストライター / ゴモラ / 猿の惑星:創世記 / ザ・タウンザ・ファイター

ソーシャル・ネットワーク / ソウル・キッチンツリー・オブ・ライフ / トゥルー・グリット

蜂蜜 / ヒア アフター / 光のほうへ / 127時間ブラック・スワン

ブルー・バレンタインマイティ・ソーマネーボールミスター・ノーバディ

ミッション・インポッシブル:ゴースト・プロトコル四つのいのち

ラビット・ホール / ルルドの泉で (29作品)

 

どんだけ基準甘いんだ>俺・・・って感じで満点連発な印象ですが、

俺の五段階評価の基準は一応ダブルスタンダード方式になっており、

個人的尺度(主観優先)と客観指標(他人の眼、気にしまくり)を併せた評価。

だから、ぶっちぎりに「大好き!」でも、所謂「出来」と呼ばれるスケールでそぐわなそうなら

「5点」とかつけるのは躊躇ってしまうし、「うーん・・・」って感じでも得点欠けたりしたら

「こいつ、わかってないじゃん」って思われる恐怖に負ければ点数やや上乗せといった感じ。

そうした日和見主義的ご都合主義万歳なノミネーションです。最低!・・・だけど、

これはブログを始めてから変わった「見方」とも関連していて、以前は、

切り捨て御免スピリット と 好きこそものの上手なれ(意味違わねぇか?)メンタリティ で

日々映画を観ては足蹴と抱擁の二者択一というネガティヴ一期一会を展開してきた自分。

でも、こうして不特定多数の人が閲覧可能な状態に晒して感想述べる以上、

しかも(数は微微たるものとはいえ)実際にそれを読んでくれる存在がいる以上、

斬るときも抱くときも真剣でいたいな、と。

そうして、相手(映画)と見つめ合ってると、刀を鞘にしまいたくなることもあれば、

ただ抱きしめて気持ちよくなるだけじゃダメな気がしてくることもあったりする。

おぉ!これが弁証法なのかぁ!!などと西洋人ぶったことを体感レベルで語れはせぬが、

とにかく作品に誠意や熱意がこもっていれば、受け手が同じ姿勢になったとき、

そこに「読みとれる」「受けとれる」何かがあるんだという事実に、今更少し気づけてきた・・・

気がします。とはいえ、必ずしも自己の敗北を宣言することで悦に入るだけじゃなく、

自己の勝利を確信しながら真剣に闘ってみることの必要性も忘れたくはないとも思います。

やたらカッコつけた書き方してますが、私がこれまで散々世話になってきた

「映画を語る市井の人々」には皆、そうした姿勢が共通していたように思うし、

そうしたところが共感や発見だけに拠らぬ《交信》を可能にしてくれた(る)ようにも思うので。

 

と、大好物のエクスキューズ物語を不適切な段階で披露した上で・・・ついでに、

 

4点 [五十音順]

愛する人 / 悪魔を見たアレクサンドリアアンノウンアジョシ明かりを灯す人

生き残るための3つの取引永遠の僕たち英国王のスピーチ / X-MEN:First Class

エッセンシャル・キリング / 彼女が消えた浜辺 / カンパニー・メン / クロエ

恋とニュースのつくり方SOMEWHEREザ・ウォード 監禁病棟 / しあわせの雨傘

灼熱の魂人生、ここにあり!ジュリエットからの手紙スプライス

水曜日のエミリア タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密テザ 慟哭の大地

トライアングルトランスフォーマー ダーク・オブ・ザ・ムーン

名前のない少年、脚のない少女ピラニア3D / ファンタスティック Mr. フォックス

MAD探偵 7人の容疑者 / 未来を生きる君たちへ / ミッション:8ミニッツ

Monsters 地球外生命体ラスト・ターゲットラブ・アゲインリアル・スティール

ワイルド・スピード MEGA MAX

 

こちらだって38作品もあるという、おめでたいノミネーション。

5点と4点の差は、何らかの絶対的な価値が主観的 or 客観的に見出せるか否か

といった点が分かれ目です。だから、明らかに客観指標で「傑作」だと解しても、

個人的にピンと来ずじまいだと、自分として5点にはし難いといった決め方です。

逆に、4点と3点の差は単純に「普通(3点)」と言い切って終われるか否かの違い。

その作品でしか味わえぬ(美味でも不味でも)確かな手応えがあれば、

そこにはプラスアルファしたくなるといった心情に裏打ちされた結果です。

5点では、『アリス・クリード~』や『マイティ・ソー』あたりが個人的ストライク暴走の賜物だし、

4点では、ラブコメ2作の「ときめき」成分やイベントもの(X-MENやトラフォ)の過剰分泌が

見事「普通域圏」突破を成し遂げました。また、4点ゾーンには「4点が満点」的作品も。

 

また、「えぇ~、アレ入ってないのぉ~」って思われるようなソレは、

きっと観てないのです(笑)  アピチャッポンもマチューも、マイク・リーも見逃したままだし。

そういった作品は来年に何とかリカバリー観賞したいと思っております。

『抱きたいカンケイ』と『ステイ・フレンズ』を見逃して真の『ブラック・スワン』パーフェクトを

成し遂げられなかったことも今年最大の不覚として記憶せねばならぬこと。

また、年末公開組で未見のものも当然入っていません。ただ・・・

『風をそよぐ草』(紛れもない個人的超快作!)は昨年のフランス映画祭関連で観たり、

ミラノ、愛に生きる』は輸入盤で観たりしていますが、今年劇場で観ていないので対象外。

今年は途中から観賞記録をサボってしまったので、抜けてる作品ありそうで怖いけど・・・

 

というわけで、前置き長っ!な当ブログの特徴を最後までひきずりつつ、

マイ・ベスト10をカウントダウンで語ります。(前篇同様、基本想い出の自分語り)

 

第10位 『名前のない少年、脚のない少女』(2009/エズミール・フィーリョ)

シアターイメージフォーラムで観賞。映画を好きなのは、映画館が好きだからかもしれない。

そんな自分にとって、観賞する劇場の決め方はある意味、偏執狂(笑・・・えない)。

だから、シネスコなのに上下が縮まっていくときに覚える敗北感

(この感覚が貧乏臭くて我ながら情けないが)に耐えられず、

縮みシネスコ劇場でのシネスコ作品観賞はなるべく避けるようになってしまっていた。

ゆえに、本作も私的にはシアターイメージフォーラムで観るべき作品ではなかったのだが、

えも言われぬ引力が作用して、公開直後に足を運んでしまったら・・・

切なさと美しさと儚さの調合が、「僕のため?」ってくらいの胸キュン小品で吃驚。

おまけに、特筆すべきは音響の素晴らしさ!専門的知識に乏しいので詳細明言できないが、

この作品の音響設計も、劇場の再現能力もピカイチだった!今年一番の「音」かもしれない。

俺はこういう繊細な音と静寂のブレンドが好きだから、爆音上映ちょっと苦手なのかも。

シアターイメージフォーラムの小劇場ながら絶妙そうなスピーカーたちは飾りじゃなかった!

ピュアさを売りにしないガス・ヴァン・サントみたいな「まっすぐ」さがたまらない。

あとは、それを巧く「売り」へと昇華できれば、飛躍の道も開けてきそう。

でも、俺はこういう思春期そのもの(回顧でも懐古でもなく)で瑞々しいだけでもない

ヒリッとしながらヒヤッともするイタイタしさが、大好きだ。

 

第9位 『トスカーナの贋作』(2010/アッバス・キアロスタミ)

このベスト10には、初見ではないものも含まれていて、本作もそんな作品のひとつ。

但し、初見の時の衝撃が再見を遥かに凌いでいる場合は敢えて外してしまったものも。

例えば『愛の勝利を ムッソリーニの愛した女』は、昨年のイタリア映画祭で観たときの衝撃、

その後輸入盤で再見したときの更なる満足に比して、シネマート新宿で観た時の満足感が

なぜかパッとしなかったので、今年のベスト選定からは気持的に除外してしまったり。

おそらく余りにも正視に耐えない邦題の没風流に萎えすぎたせいかもしれない。

『エリックを探して』も初見が一昨年の秋だし、公開は昨年末だから除外した。

そんな理由で?って根拠も、苦渋の選出作業には好都合な言い訳になるってことで。

本作も昨年のフィルメックスで観たときの満悦感覚をそのまま再現した訳ではないものの、

フィルメックスで観たフィルム版とは明らかに異なる印象をうけたDCP上映がむしろ、

原題の「Certified Copy(保証された複製)」をより体現させてくれたことは興味深い。

更に、輸入盤を我が家で観てみると、これまた更に異なったCopyを享受する体験。

作品内における絶え間ないイマジネーションのイリュージョンは、

作品外における仕掛け(それは現代の芸術鑑賞のスタイルそのものを利用するかたちで)

にこそ強烈に働きかける力を発揮するのだと気づいたとき、

ようやく一つの完結を迎えるのだと気づけた収穫。

そして、ごくごくごくごく微力ながら(ほんの数千円だけどね)、

キアロスタミ新作撮影に貢献できた独り満悦も今年のちょっといい話。

 

第8位 『アンストッパブル』(2010/トニー・スコット)

10の作品を選ぶ際、それぞれ「〇〇枠」的な意識でピックアップをしてくるが、

本作と枠を争ったのは『ワイルドスピード MEGA MAX』や『ミッション・インポッシブル ~』。

前者よりは明らかに引き締まっているし、後者よりは明らかに緩い・・・なのに、90分台!!!

いいかげんな基準のようだが、この手の作品における「いいかげん」な基準ほど

好い加減もないわけで、いずれの三作も大好きだけど、2回観に行っちゃったし、これ。

最上の興奮を全身にみなぎらせ続けるようなスピード感より、

溢れんばかりの才気を精緻な技術で仕上げる逸品より、

職人が鼻歌まじりに差し出す「一丁あがり」が大好物。

ある意味、ベスト10内における最高の麻薬(笑)

 

第7位 『永遠の僕たち』(2011/ガス・ヴァン・サント)

完成度だとか芸術性だとかいった尺度では、ふさわしくない選定だろうとも、

それらによる判断は「WE」のための目安に過ぎない。

だから、「I」(哀?愛?)のためだけに在ろうとする本作に、

そうした基準はナンセンス。作中でも、それをこそ否定し(ながら、それで終わらず)

超克しようともがくのだから。その結果、見つけた「ぼく」だけが想い出せればいい世界。

実体が目の前から消えようと、写真も何もなくたって、消えることない記憶があれば、

その幸福で美しい記憶は永遠だ。それって、決して所有できない「映画」と似てる。

駆け込み乗車ばりの反則技でテン入りしてる気もする本作。でも、瞬間最大風速も大事だ。 

 

第6位 『ヒア アフター』(2010/クリント・イーストウッド)

これほど置き場に困る代物もないってわけだ。そもそも序列に組み入れることが躊躇われる。

しかし、本作に限って言えば、いつもの「イーストウッド監督作」という後光によるところより、

本作における含蓄の深奥に未踏であるよな感覚が観賞後の自分を見舞ったからだ。

本来なら、そうした不完全さは消化不良となって不十分な気持に満たされるのに、

なぜか後悔と満足とが融和することでもたらされる奇妙な飛躍が訪れたのだ。

《死》のもつ不可解さと《生》のもつ確かさを見事に「体験」させてくれたかのような。

死に痛む胸が、死を悼む心を取り戻したとき、その死によって生が息吹き返す。

いろんな意味で、今年の日本を考えるうえで「たいせつ」な映画となった気がしてならない。

 

第5位 『ルルドの泉で』(2009/ジェシカ・ハウスナー)

『永遠の僕たち』のヘンリー・ホッパーの表情には、

2011年を締めくくるに相応しい輝ける悲しみの優しい希望を感じ、

清らかな(気がする)涙をこぼしたが、やはり本作のラストシークエンスは

今年ダントツでパーフェクト!もうずっとあの歌(「フェリチータ」)が頭から離れない・・・

いやいや、ラストに限らず、本当全篇に渡って、画面全体に渡って、

一点一画も忽せにせぬ精緻な「ドキュメンタリー」芸術の極北。

《聖》を《俗》で皮肉らず、《俗》を《聖》で蔑むこともない、

聖俗の混沌をそのままみせる語りは真実。

 

第4位 『猿の惑星:創世記』(2011/ルパート・ワイアット)

今年は一時期(特に春から夏にかけて)SF作品が大挙して公開されたりしたが、

そのどれもがそれなりにユニークながら、作品の小ぶりさがメッセージの小ぶりさにつながり、

現代やら人類やら文明やらをグラつかせる域にはなかなか到達せずじまいだった。

ところが、まさかの伏兵に虚を衝かれ、鮮烈なカタルシスと静穏な感動を同時に浴びて、

その後一週間のTIFF通い中も再見を模索したくらい(結局行けなかったけど)。

映像における技術の高さは素人眼にも一目瞭然ながら、メイキング記事を読んでみると

コンピュータ上の処理による飛躍というよりも、実体ある現物を通常以上に取り込みながら

画も動きもつくっていったといった印象だったので、更にその姿勢に感嘆しまくったものです。

そして、物語の持つ力はSFというジャンルに留まらぬ重量級の直球で我が胸に迫り来て、

俺のなかでは、『トロピカル・マラディ』なんかよりよっぽど(あれも好きだけど)

「山月記」(中島敦)の精神と共鳴する、人間の条件を真摯に考察した作品。

それを、一見キワモノ・ルックなハリウッド大作で成し得た才能と熱意にただただ脱帽。

 

第3位 『神々と男たち』(2010/グザヴィエ・ボーヴォワ)

こちらも初見ではなく、昨年の東京国際映画祭で一度観ていた作品。

あまり好みではないシネスイッチ銀座での公開だったので、後回しのつもりだったものの、

震災直後に観賞すべき作品として自分に浮上したからには、観ておかねばなるまいと・・・

すると昨年観た時を遥かに凌ぐ感涙に襲われる・・・それは、

自分自身が一連の危機的状況で味わったり感じたりしたことに影響されてもいるが、

恐怖と信仰の葛藤のなかで「受容」に耐えようとする厳粛な信念をもった「人間」の姿に、

希望の道筋を照らしてもらえた気がしたからかもしれない。

完璧主義者らしきキャロリーヌ・シャンプティエ(撮影中は黒しか着ない)の撮影は、

まさに神々しいばかりの久遠の美を漂わせ、本作を神話の域に高めていった。

監督のグザヴィエ・ボーヴォワは、『マチューの受難』(2005)を1月にNFCで観たのだが、

実に興味深い「語り」を持った作家だということを再確認。今後の作品も是非観続けたい。

 

第2位 『ソーシャル・ネットワーク』(2010/デヴィッド・フィンチャー)

実は恥ずかしながら(?)今年最も観た作品。劇場で3回も観たことは絶対秘密だ(笑)

おまけにブルーレイ購入後も(必要があったからとはいえ)何度か観賞&研究(?)。

すると、制作過程も含め浮かび上がってくる作品の魅力の根底には、

現在という特殊性 と 過去と未来をも内包する普遍性 の 接近と背反 が反復させるも

絶対に交わらせたりしない、意地は悪いが極めて正しいリアリズムが透徹されていた。

今年は、アカデミー賞関連作品が軒並充実したものだったのが、非常に印象的だった。

『ザ・タウン』、『127時間』、『ブラック・スワン』、『ブルー・バレンタイン』、『ラビット・ホール』、

どれもベスト10に入れても好いくらい気に入った作品たちだ。『マネーボール』だって極上だ。

強い個性と普遍性を兼ね備えた作品群。

大味の感動(それも嫌いじゃないけど)だけじゃない、

そんな作品を評価する(観客が支持する)動きも又、

コミュニケーションの変容と連動してそうだ。

 

第1位 『蜂蜜』(2010/セミフ・カプランオール)

この作品が、他のどの作品よりもガツンと来たというわけではない。

ただ、観ている間ずっと微かに灯りつづけた明かりがいつまで経っても消えず、

熟読玩味をどこまでも続けねばならないような、まさに奥の深い作品だ。

しかも、本作封切時には本作の後日譚的二作『卵』『ミルク』も公開されていた。

「ユスフ三部作」と呼ばれる(俺のなかでは「ミルクセーキ三部作」(笑))3作を、

制作年次を遡るかたちで観ていくと、ユスフが年をとっていくという不思議な体験。

時代も地域も超越した普遍の物語は、あまりの静謐さゆえに無限の雄弁さが潜んでる。

当ブログの年間1位を記念して(ちがいます)、早稲田松竹では来年1月7日から一週間、

ユスフ三部作を上映(三本立!)します。3本観ても300分程度だし、是非是非ご観賞下さい。

2月にはWOWOWのベルリン国際映画祭特集で『蜂蜜』の放映がありますが、

そちらはあくまで咀嚼用。未見の方はこの機会を逃さず、フィルムで三部作制覇あれ。

とまぁ、今年『ヤンヤン 夏の想い出』とガレル2本立てを上映してくれた早稲田松竹に

超微力ながら恩返しを済ませたとこで、年間ベストの発表も終わりにしようかと・・・

 

ちなみに、2011年の劇場観賞は昨年より微減の300本弱。

(ただ、自宅観賞はほぼ半減して100本弱しか観ていない。)

ただ、そのうち新作がどの程度の比率かは算出しておらず。

新作日本映画の劇場観賞は年々減っているようにも思われ、今年は30本弱。

距離のとり方(?)が難しい(現代)日本映画は、どうしても選り好みしてしまう傾向が。

ベスト10も外国映画にしぼって決めてしまっている要因がそこにあります。

(「日本映画ベスト10」を語るには余りにも分母が小さいし、外国映画との混成は苦手だし。)

ちなみに、今年観た日本映画で前述の五段階評価を試みて4点以上になるだろう作品は、

(五十音順で)

『一枚のハガキ』、『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』、『家族X』、『奇跡』、

コクリコ坂から』、『サウダーヂ』、『東京公園』、『ノルウェイの森』、『白夜行』、

Peace』、『マイ・バック・ページ』といったところかな。

映画祭で日本映画は基本的に観ないものの(劇場公開されるだろうと思うから)、

フィルメックスで観た『KOTOKO』(塚本晋也)は面白かった。

不惑のアダージョ』も作品の内容自体は本当特筆に価する出来だとは思った。

上記のなかでどれが一番好きかと言われれば、『ノルウェイの森』かなぁ・・・ってとこだけど、

初見は昨年だし、その好さって外国映画的要素に見出しちゃってる気がするし

(ある意味近しい感覚は『東京公園』とかにも共通するかも)、

やっぱり自分が日本映画に求めてしまうのは、

外国映画では味わえない言葉や感覚の共有で、

そうした意味では『奇跡』や『Peace』の慈悲深さと、

『白夜行』や『マイ・バック・ページ』の時代感覚(世代を越境した再構築)が、

今年の日本映画のなかで最も印象に残った味わいだった気がします。

 

(最後に)

このブログを始めて、事実上1年が経ちました。

実際には昨年の8月に始めたものの、数回の更新以降年末まで放置だったので、

定期的に記事をアップするようになってからは1年です。

このブログの存在は自分のことを知っている人間には誰にも知らせずに書いているので、

自己分裂気味だったりメルヘン臭たちこめたりしてても平気なのですが(開き直り)、

基本自分のため(これは忘れないようにしたい)に書いているとはいえ、

やはり読んでくれる人がいることを期待するのも性ってもんで、

ほんのたまにでもブログやツイッターなんかで紹介(?)してくれたりする方がいると、

無性に嬉しくなってしまったりするのも事実です。ありがとうございます。

とはいえ、未だどこにも出て行ったこと(どこかにリンク貼ったり、

ツイッターやフェイスブック利用したり)がないので、

継続的定期的に覗いて下さっている方など僅少稀少かと思いますが、

またもし気が向いたときにでもお越し頂ければ幸いです。

いつまで続くかわかりませんが、とりあえず来年もベスト10とか発表できれば嬉しいな。

それでは皆様、よいお年をお迎えください。

 

 


2011年 映画ベスト10(前篇)

2011-12-29 23:36:58 | 2011 年間ベスト

 

映画ブログを運営(って表現、大袈裟だな)する者にとって、

避けては通れぬ最大の義務。それが、年間ベストの発表。

まぁ、そんなことしてなくとも、多くの映画ファンの心が自然に向かう、

年間ベストのコンペティション。ランキングを考える(無責任な)苦しみと(それゆえの)楽しみ。

自分の好みを改めて認識してほのぼのしてしまう瞬間と、

自分が「どう見られたいのか」って意識まで露になってしまう気恥ずかしさ。

そんなせめぎ合いのなかで浮かび上がってくるセレクションとその並び。

 

というわけで、2011年に観た映画のなかからベスト10を発表してみます。

何の「縛り」もない方が眺める側にとっては面白かったりするのもわかるのですが、

二つの理由から、公開作品と未公開作品の二つに分けてベストを考えてみることにしました。

一つには、誰かに聞かれた時(特にライト映画ファンとか)に前者のランキングあると便利。

というか、何となくオフィシャルな感じするぅ!(誰にとっても同じ条件だから)ってのもある。

二つめは、二つに分けた方が、より多くの作品をランクインさせられるっ!という単純な発想。

とはいえ、分け始めたらキリないんだけどね。公開作品だって未見のものもあるわけだし。

 

とにかく今回はまず、

劇場未公開作品(映画祭や特集上映などで観たもの)からのベストを考えてみました。

(ちなみに、いずれのベストも「劇場観賞」した作品に限定して選定しました。)

 

というわけで、盛り上がりそうな(誰が?)カウントダウン方式で。

コメントは基本的に想い出トークに過ぎませんので、あしからず。

 

第10位 『私たちの好きな八月』(2008/ミゲル・ゴメス)

昨年のNFCでガッツリ通っておかなかった自分に後悔しきりだった、ポルトガル映画祭。

川崎アルテリオとアテネで何とかリカバリーするものの、旬をのがしたような寂しさもあり。

特に、川崎アルテリオでは期間中に震災があったりもしたので、別の感慨もあったりして。

(当日その場にいたわけではありませんが)

本作はEUフィルムデーズの方で初見したのですが、

この作品でしか味わえない感覚が確かにあるし、

そこにどっぷりじっくり身を浸すことの心地よさは格別だったので、

どうしても入れたかった作品。ポルトガル映画祭からは、

『トランス』(テレーザ・ヴィラヴェルデ)も入れたかったんだけど、

観た一ヵ月後に元夫ジョン・ジョストが同じアテネフランセで

テレーザに娘を「誘拐」された話を滔滔と語ってるのを聞いてドン引きしてしまい・・・

というのは嘘だけど(半分は本当だけど、そもそも話が半分本当ってな位だし)、

『トランス』入れるとポルトガル映画祭から3本も入れちゃうことになるから、泣く泣く選外。

(ちなみに、超絶フェイバリットな『トラス・オン・モンテス』は昨年観たので対象外)

ちなみに、ジョン・ジョストは来年2月末からの5日間、アテネで特集があるみたい。

9月に観た『パッサージュ』は心酔というより酩酊状態にさせられたから(好い意味で)、

そちらの特集も今から結構楽しみだったりします。

話がそれてしまったけれど、とにかく『私たちの好きな八月』は、

映画という旅を愛する「私たち」の好きなフィルムであること請け合いの、

今年最も可憐な清涼さを届けてくれた一本でした。

 

第9位 『ベガス』(2008/アミール・ナデリ)

日本で映画ファンを自負するものは等しく、

2011年末にアミール・ナデリの挑戦状を受け取ったはず。

私は脆くも惨敗したが、前哨戦では激しい殴打で散々やりあったもんさ(笑)

『CUT』(そのうち感想書くつもり・・・たぶん)がヒットしてくれたりして、

勢いで旧作(イラン時代の作品とか観られてないので是非!)とか

せめて最近の作品とかでも観られる機会ができると好いなぁ~

『サウンド・バリア』も変だけど変だけじゃなく変なのが凄かったけど、

『ベガス』は、あの小さな物語のなかにアメリカ(ひいては近代社会)の

問題すべてを凝縮濃縮して寓話化してみせる手腕に脱帽しまくったものです。

そして、劇場を後にする際に、ナデリと交わした微笑みを僕は忘れない(笑)

 

第8位 『夏の終止符』(2010/アレクセイ・ポポグレブスキー)

なんでも「三大映画祭週間」で上映された作品はいずれもDVD化が決定したそうで。

本作は第一弾(3作品)として3月2日発売予定。輸入盤ブルーレイ買っちゃったよ・・・

でも、向こうじゃこの手の作品までブルーレイ出てるっていうのに(流通量僅少っぽいけど)

日本じゃ一向にブルーレイ普及しないよね。本作のブルーレイはリージョンが「B」だから

日本のプレーヤーじゃ再生できないものの、米盤とかは「A」でリージョン同じだから再生可。

「B」って表記でも事実上リージョンフリーなものも結構あるけどね。

という雑談はさておき、本作は作品の魅力も去ることながら、

やはり我が日本におけるタイムリーさも手伝って、印象深さは倍増したんだと思う。

たった二人の登場人物と、広大な自然の背景のコントラストは、

東日本で生きる我々の多くを見舞った「対峙」の体験と重なりもした。

DVD化されることもあるし、これを機に多くの人に観て(色々語り合って)もらいたい。

 

第7位 『黄色い家の記憶』(1989/ジョアン・セーザル・モンテイロ)

本来なら、1位爆走級の衝撃の邂逅を果たしたジョアン・セーザル・モンテイロ。

本作も出会いの遅さに歯痒さ炸裂で、何も言えなくて・・・夏。

全作観たい!監督特集組んでくれ!って切実に願う映画監督大本命。

「普通に面白い」って方向と「通な味わい」とが、まったく無計画にごちゃまぜ発酵。

ウディ・アレンからペダンチック殲滅し、神が気まぐれ降臨したかのようなスケベ爺モンテイロ。

本作を上位にもってこられないのは、昨年に観てなかった自分が悪いってこと(言い訳)で、

とりあえず数字だけは幸運に、この位置で。

 

第6位 『雨さえも~ボリビアの熱い一日~』(2010/イシアル・ボジャイン)

(先行上映ではなく劇場未公開という)映画祭上映作品といえば、所謂アート系が多いが、

本作は芸術性もさることながら、映画を信じた制作者が映画で訴えようとする熱量が法外だ。

それでいて、決して独善的にはならず大衆を短絡的に蔑むこともせぬ作風は、

ケン・ローチの正当な後継者かと思わせるほど。日本でも公開すれば好いのになぁ。

 

第5位 『アウトサイド・サタン』(2011/ブリュノ・デュモン)

今年の東京国際映画祭ワールドシネマ部門で上映された作品。

いままでブリュノ・デュモン作品を追いかけてきて、当初覚えていた「違和感」が、

『フランドル』あたりで自らに浸透し過ぎるからだと気づいてから、

肯定モード固定状態になってしまったブリュノ・デュモン。

『ハデウェイヒ』 がフランス映画祭で上映された際、

初めて「会った」デュモンから受ける誠実な態度がそれを加速させ、

もはや新作を最も期待する監督の一人にまでなっていた・・・んだと今回痛感。

そんな〈超ホーム〉な心象状態で観賞したが故かもしれないが、

多くの人が「全否定」な分だけ「全肯定」で全然自然。

自らを文法化しながらも、世界を見渡し続ける監督の感覚。

それに惹かれてしまう人は、どこまでも引きずられていってしまうのだろう。

 

第4位 『ゴーストタウン』(2008/趙大勇)

今年は初めて参加する映画祭がいくつかあったけど、なかでも特に印象深かったのが、

望外の悦びで日々言葉を弄し続けてしまった中国インディペンデント映画祭。

どの作品も日頃劇場で向き合う作品とは全く異なる「対話」で迫ってくる稀少な体験だった。

本作は私にとって、一際沁み入る感覚が観賞後いつまでも持続するような、

滋味掬すべき作品だった。オリジナル(?)は4時間近くもあるらしく、

そちらの版を観てみたい。今年最も「発見」を味わった監督。

 

第3位 『宣戦布告』(2011/ヴァレリー・ドンゼッリ)

日仏学院にて9月に開催された「第15回カイエ・デュ・シネマ週間」にて観賞。

アップリンクの配給で公開も決まったらしい。英語字幕にも関わらず結構大入りしてたし、

第二の西島秀俊(それは、村上淳か!?)こと、染谷将太君も観賞したという本作。

俺が観た時は、片桐はいりが来てたし、一部では今年最注目だった一作かも。

とはいえ、実際は「綱渡り的ポピュラリティ」でもあるから、ダメな人はとことんダメそう・・・

しかし、ハマってしまうと、ヴァレリーの宣戦布告にゃ全面降伏せざるを得ない。

このベスト10に女性監督は二人しか入っていないが(個人的に女性監督苦手な俺としては

多い気もする)、何しろ女性監督の凄さって「失うもの気にしない潔さ」に尽きると思う。

衒いの無さという武器は、芸術において或る種の破壊的魅力を注入してくれるという証左。

だから、多少のスノビズムがちらつこうが結局凄さが宿ってしまうソフィア・コッポラとか、

タランティーノが確信犯的にやってることを自然にやっちゃう常習犯。(そりゃ惚れるだろうよ)

俺が勝手に提唱してる「巨匠二世は女高男低」の法則の要因も、そこらへんにあるのかも。

本作が劇場公開時にどんな受け止められ方をするのかは、来年の楽しみの一つかな。

ちなみに、公開時の邦題は『宣戦布告』から変更するらしく、現在募集中みたい。

同じくアップリンク2012年配給予定のロウ・イエ監督『LOVE AND BRUISES』の邦題も。

こちらも、今すぐ観たい作品の一つだな。

 

第2位 『昔々、アナトリアで』(2011/ヌリ・ビルゲ・ジェイラン)

こちらも今年初めて参加したSKIPシティ国際Dシネマ映画祭

え!? 埼玉の川口!? え!? 駅から更にバスで数十分!? とかいう無精を何とか払拭し、

足を運べばそこに広がる「新しい世界」。

あんなに、のんびり穏やかに観賞できる映画祭なんて、

TAMA CINEMA FORUM 以来かも。だんだんと喧騒から離れていって、

静寂の映画のなかへ入っていく感覚は、来年も味わいに行きたいと思わせるものでした。

ただ、本作の上映前には開会式がついており、その滑稽さはTIFFなぞ可愛いほどの

クラシカルな破壊力でちょっと面食らってしまったけどね。

で、その映画祭のオープニングを飾ったのが、

2007年に『CLIMATES』でグランプリを獲ったヌリ・ビルゲ・ジェイランの最新作。

もはやカンヌの常連(しかも毎度のように何かしら受賞)となった彼の作品を未見だった俺は、

Amazon.ukで格安になったDVDを買い込んで予習バッチリ!で臨む

はずだったのに、志半ば未満で赴く始末。

しかし、そんなの関係ないほど大きな大きな包容力に身を任せておけばそれで好い、

深遠、深淵、親縁な作品で感服、満腹、悦服でした。

デジタル上映の設備としては日本でも最高峰らしい環境だったので、

確かにばっちり鮮やかできっちりエッヂな高画質ではあったんだけど・・・

「闇」が大部分を蔽う作品だっただけに、フィルムでも観てみたかったなぁ。

近いうちに開催されるであろう(勝手な妄想です)トルコ映画祭での観賞が叶えばなぁ。

 

第1位 『ニーチェの馬』(2011/タル・ベーラ)

今年最も悔やまれた映画観賞未遂がタル・ベーラ(『サタンタンゴ』)なら、

最上の観賞体験もタル・ベーラ(『ニーチェの馬』)。

奇しくも、当ブログ最初の記事で扱ったのもタル・ベーラ(『Damnation』)。

公開日(来年2月11日)も決まり、いよいよカウントダウンの本作。

その約1ヶ月後には『戦火の馬』も公開されるし、2012年は馬映画イヤーの予感!?

これで、午年だったら完璧なのに(笑)

と、ウマいこと言った気になって、つまらない自分語りも終わりにします。

 

劇場公開作品のベスト10も何とか年内にアップしたいと思ってますが、

この期に及んで10入りしようとした駆け込みコンビの扱いに当惑中です・・・。

とはいえ、年内は新作の観賞納め済ましたつもり故、何とか年内に片付けたいな。